映画『ツイスターズ』が2024年8月1日(木)から上映中だ。パッと見からわかりやすく「竜巻」を扱っており、もちろん本編もスタンダードな「災害パニックもの」もの。1996年の『ツイスター』の続編的な立ち位置ではあるが、物語の連続性はほぼないので、そちらを観ていなくても問題なく楽しめるだろう。
結論から申し上げれば、本作は面白い!昔懐かしの「木曜洋画劇場」で観た古き良き娯楽映画にまた出会えたような、それでいて映画館で観てこその臨場感もたっぷりと味わえる、夏休みにピッタリな内容だったのだから。しかも、ただ「竜巻怖い!」だけでなく、後述するドラマ面もなかなか「今の映画らしい」工夫もあって感動したのだ。
そして、ここではぜひ「4DX」上映もおすすめしたい。座席の移動などのさまざまな演出が楽しめる4DXは、やはり文字通りにアトラクション的な体験ができる本作にはピッタリだったのだ!
前置き1:4DXの上映回数が少ないことに注意!
期待以上に楽しめた具体的な理由は後述するが、その前に注意点がある。実は、ファミリー向けの映画が大渋滞していることもあって、この『ツイスターズ』は記事執筆時点で公開されたばかりにもかかわらず、4DXの上映回数がすごく少ないことだ。
これほどわかりやすく「4DX向け」と思える作品もなかなかない、いや後述するように「2度とはない4DX体験になるかもしれない」のに、少々もったいないところだ。
基本的には4DXは(リバイバルされない限り)その作品の上映が終わると体感する機会が永久に失われてしまうので、今のこのタイミングを逃さないでほしい。
前置き2:MX4Dよりも4DX、さらに「熱風あり」の劇場もおすすめ
筆者は「MX4D(+1200円)よりも4DX(+1000円)のほうが200円安い」「4DXしかない演出もある」といった理由で、基本的にMX4Dよりも4DXをおすすめしているのだが、やはり今回の『ツイスターズ』でも同様。4DXのみにある、劇場上空から降る「雨」の演出が、今回は他作品に比べてもたっぷり使われていたからだ。
さらに、4DXの一部の劇場では「熱風」のエフェクトもある。詳しくは秘密にしておくが、今回の『ツイスターズ』でも、熱風が「そこでやはり使うよね!」と思うばかりの印象的な場面で、実にいい仕事をしてくれたのだ。熱風ありの劇場もぜひチェックしてほしい。
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前置き3:“3画面”も同時に味わえる「ULTRA 4DX」もマッチしていた!
さらにおすすめなのが「ULTRA 4DX」だ。以前は「4DXScreen」だった名称が改められ、“最高にプレミアムな映像体験”がうたわれた、4DXに加えて「3画面の広がり」が楽しめる上映方式なのだ
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この3画面の広がりは、正直に言って作品においては「アクションでは3画面」「そうではない場面では1画面」とコロコロと切り替わるため、好みが分かれそうだと思っていたのだが、今回の『ツイスターズ』ではその切り替わり込みで実にマッチした演出になっていた。
なぜなら、3画面に広がる場面では「そこにいる」ような臨場感を味わえる上、さらに「撮られたビデオ映像では1画面になる」ことに必然性があるからだ。このおかげで、「ここは劇中の登場人物が撮った映像」だとよりわかりやすく、メリハリも生まれているというわけだ。
4DXでは鑑賞料金に+1000円、ULTRA 4DXは+1400円〜(※)とやや割高ともいえるが、4DXからさらに400円〜をプラスするだけで、「竜巻のすぐそばにいる」スリルをより味わえるのだから、むしろおトクだ。
また、ULTRA 4DXは3画面の特性上、前の方の座席に座ってしまうと視界に全てが入らなくなってしまうのでご注意を。前の方の座席でももちろん迫力を感じられるだろうが、座席に余裕があるのであれば、なるべく中央から後方の座席を確保するのがおすすめだ。
その「ULTRA 4DX」は、現在「109シネマズ グランベリーパーク(熱風エフェクトもあり)」「グランドシネマサンシャイン池袋(熱風エフェクトもあり)」「シネマサンシャインららぽーと沼津」「アースシネマズ姫路」の4劇場のみで展開中。お近くにお住まいの方は、ぜひ候補に入れてほしい。
さてさて、前置きが長くなったが、ここからは具体的な『ツイスターズ』の4DXの魅力を書いていこう。なるべく本編の物語のネタバレにならないように書いたつもりだが、それでも一部内容と4DXの演出には触れているので、何も知らずに楽しみたい方は、先に劇場にかけつけてほしい。
※ULTRA 4DXの鑑賞料金は劇場によって異なります。事前にご確認のうえ、ご鑑賞ください。
–{「雨」と「水」以外でもヤバいのは?}–
1:「雨」と「水」がヤバい!
この『ツイスターズ』で脅威となるのはもちろん竜巻であり、ほとんど「嵐」ともいえる。実は4DXは、劇場全体を吹く「風」と、劇場上から降る「雨」の合わせ技で、まさにその嵐を表現できるのだ。
今回は竜巻が1本、2本、さらにはもっと大規模な「暴れ方」もするので、その嵐の演出もやはり全開!もちろんずぶ濡れになったりはしないとはいえ、竜巻に巻き込まれそうな「風と雨の勢い」をたっぷりと体感できるだろう。
さらに、前から「プシュッ」と吹き付ける「水」のエフェクトも、今回はとある「イヤなやつに一矢を報いる」痛快な場面で使われていた。そのイヤな奴への攻撃を観客に向けるんかい!とツッコミもできるが、それ込みで笑って楽しめるだろう。なお、水のエフェクトは座席横のボタンでOFFにもできるので、苦手な方も安心してほしい。
2:ダートコースを疾走するような車の挙動がヤバい!
4DXにもっとも相性がいいのは、やはりカーアクション。上下左右に動く座席が激しく運転する車のシートに重なるため、わかりやすく劇中の登場人物と同じ「ライド感」が味わえるのだ。
今回は補整されていない道を「オフロード車」が荒っぽい運転をする上に、竜巻にも突っ込んでいくため、もはや「ダートコースを疾走するレース」のような感覚にもなる。普通のカーアクションとは一味違う揺れっぷりになっていたのだ。
さらに、4DXには足をカサカサと「くすぐる」演出もあるのだが、これも今回の車特有の「ギミック」に見事に生かされていたので、そちらも楽しみにしてほしい。
3:やはり竜巻(特にクライマックス)がヤバい!
カーアクションも目立つが、それでもやはり今回の主役は竜巻。特にクライマックスでは、前述した嵐だけでなく、「風で体が浮き上がる」「激しく風に揺さぶれる」の感覚も、座席の動きで表現してくれるのだ。
さらには、このクライマックスのとある舞台が、映画館という環境でこそより没入感を味わえるばかりか、4DXの演出がさらに「今ここにいる」感覚を加速させてくれるのだ。これは4DX史上、2度とはない体験になるのかもしれない。
おまけ1:真面目な気象学者VS軽薄な(?)YouTuberのドラマも面白い!
そんな『ツイスターズ』は、ドラマとしてもちゃんと面白いものになっている。何しろ、主人公は悲しい過去を経験してもなおも竜巻への対策に挑む(元)女性気象学者で、ライバルとして竜巻を追うのは見るからに軽薄そうな自称「竜巻カウボーイ」のYouTuberなのだ。
もちろん主人公はそんなYouTuberを毛嫌いし、観客としても真面目な主人公のほうに同調し応援できるのだが、「それだけではない」ことが重要だ。このYouTuberが「実は……」ということがわかる会話や、主人公の言動とシンクロしてる場面もある、つまりは「知らなかった一面」が明らかになっていく様がそれだけで興味を引く上に、現実のYouTuberに対しても抱きがちな偏見なのかもしれないと、ハッと気づかされるのだ。
それは同時に、この実際にある自然災害をエンターテインメントとして楽しもうとしている観客の心境とも、一部がシンクロしているともいえる。それは確かに不謹慎なのかもしれないが、そこにも「それだけではない」アンビバレントな気持ちや人間としての信念も見える。劇中には被災者の気持ちをないがしろにする問題への批判もあり、やはり災害を映画にすることへ自己批判的な精神も備えているのだ。
そんな現代的かつ渋いドラマを作り出したのは、『ミナリ』のリー・アイザック・チョン監督、『レヴェナント 蘇えりし者』のマーク・L・スミスの脚本、加えて『トップガン マーヴェリック』のジョセフ・コシンスキーが原案という豪華な布陣。単純なエンタメ性に加えての「奥行き」を備えているのも、間違いなく本作の美点だ。
しかも、その軽薄な(?)YouTuberを演じるのが『トップガン マーヴェリック』でも強烈な印象を残したグレン・パウエルであり、吹き替え版で観ると津田健次郎がいい感じにうさんくさくもあるけどチャーミングな様を見事に表現しているのもたまらない。
ていうか、「初めはあんなにイヤなやつだと思っていたのに、ぶつかり合うたびに気になってしまって、良いところも見えてきて……」という流れを鑑みれば、彼は完全に少女漫画に出てくるキャラクターである。そんなグレン・パウエルを観たい、津田健次郎ボイスが聴きたい方も必見だ。4DXを選べば、「イヤなやつのはずなのに惹かれてしまうアイツが荒っぽい運転をしている車の隣に座っている」ドキドキ(?)も体験できるだろう。
他の吹き替え版キャストも、主人公のデイジー・エドガー=ジョーンズ役の小芝風花に加えて、浪川大輔・下野紘・瀬戸麻沙美・青山穣・田中美央・江口拓也・朴路美と豪華で、もちろん演技も絶品だった。
おまけ2:こちらの軽薄で迷惑なYouTuberが出てくる映画もぜひチェックを!
『ツイスターズ』ではもう1人の主人公といえるYouTuberが「軽薄なだけでない」少女漫画っぽいキャラクターになっているのも見どころというわけだが、2014年の同じく竜巻の災害パニック映画『イントゥ・ザ・ストーム』では、めちゃくちゃ迷惑で腹の立つYouTuberが出てきたりするので、今回の比較として観るのも面白いかもしれない。
さらには、現在劇場公開中の『温泉シャーク』では完全にウェーイ系で軽薄そのものなインフルエンサーたちが遠慮なくサメのエサになったりもする。YouTuberやインフルエンサーの多様性を知るためにも(?)併せて観てみるのもいいだろう。
(文:ヒナタカ)
–{『ツイスターズ』作品情報}–
『ツイスターズ』作品情報
ストーリー
気象学の天才ケイトはニューヨークで自然災害を予測し被害を防ぐ仕事に熱中していた。そんな中、故郷オクラホマで史上最大級の巨大竜巻が群れをなして異常発生していることを知る。竜巻に悲しい過去を抱えたケイトだったが、学生時代の友人ハビからの懸命の依頼で、夏休みの一週間の約束で竜巻を倒すために故郷へ戻ることに。そこで出会った知識も性格も正反対の竜巻チェイサーのタイラーら新たな仲間と、無謀ともいえる“竜巻破壊計画”に立ち向かっていく―
予告編
基本情報
出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル、アンソニー・ラモス、ブライドン・ペレア、キーナン・シプカ、デヴィッド・コレンスウェット
監督:リー・アイザック・チョン
公開日:2024年8月1日(木)
配給:ワーナー・ブラザーズ映画