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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第63回を紐解いていく。
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揉める遺産問題
「あ〜」ではじまり「ああ〜っ!」で終わった第63回。
寅子(伊藤沙莉)は困ったような大声を出し、多岐川(滝藤賢一)に咎められます。
大庭家の遺産相続問題は家裁の調停に進みましたが、一向に解決しません。
長男・徹太(見津賢)が遺産をすべて自分が相続するの一点張りで譲らないのです。いまの法律では家族で分けることになっているにもかかわらずなぜ主張を続けるのか、と思うのですが、この時代、過去の家制度にしがみつく案件が多かったようです。
梅子(平岩紙)は昔からさんざん徹太に軽視されていたにもかかわらず、3人で平等に配分してほしいと願います。3人とも自分の子供ですから。
それにつけても徹太。いまの法律では男女平等になったのですから、過去の父と自分の女性蔑視を反省し改めても良さそうなものですが、相続のルールも同じで、身についたものはなかなか手放せないもののようです。それもそのとおりで、昨日今日で急にルールが変わったと言われても簡単に切り替えることはなかなか難しいです。
ただ、徹太は法律家であるのに、法律に倣わないうえ、そもそも極めて差別主義者であることが信じがたいです。
そうこうしていると、常(鷲尾真知子)が徹太の妻が気に入らず、世話になりたくないので、財産は光三郎(本田響矢)に多く相続させ、面倒を見てほしいと言い出します。
梅子に面倒を見させようという考えなのですが、光三郎が常の希望を受け入れる代わり、梅子をいじめないことを条件にあげます。
とことん自分本位の長男、戦争で負傷し心にも傷を負ったせいで、捻くれてしまった次男・徹次(堀家一希)。このふたりのことは、梅子がもともと諦め気味で、光三郎だけはねじれた育て方をしたくないと願っていました。その梅子の思いがかなったと感じた寅子は、「ああ〜っ!」と歓喜の大声をあげました。
でもまだ解決してはいません。大庭家の遺産問題は審判に向かいます。
いろいろ忙しい寅子。遅く帰宅し、夜食を食べると、それは道男(和田庵)が修業で作って失敗したいなり寿司でした。
道男の話をまた楽しそうにする花江(森田望智)に、息子・直人(琉人)は「俺にはわかる 恋は人を笑顔にする」と言い出し、寅子と直明(三山凌輝)はあっけにとられ大笑い。
直人は真顔で、「人間何があるかわからない」とはる(石田ゆり子)の言葉を引き合いに出します。
しかも、優三と寅子がまさか結婚するとは思ってなかったのに結婚したという事実を持ち出されると、寅子も何も言えなくなってしまいます。いや、それとこれとは……。
「俺にはわかる」はたいてい外れてきたので、恋ではないと思いたい。誰を好きになるのも自由ではありますが、花江と道男はちょっと受け入れがたいものがありませんか。大丈夫ですか。
直人があまりにものわかりがいいのは、いい子だなあと思いますが、多様性を認めるという現代的な視点のうえに描かれているような気がして、しっくり来ない感じもしますが、そんなことないですか。
(文:木俣冬)
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–{「虎に翼」第13週あらすじ}–
「虎に翼」第13週あらすじ
人手不足のため「特例判事補」になった寅子(伊藤沙莉)は、仕事が増えて大忙し。多岐川(滝藤賢一)は家庭裁判所の存在を広く全国に知ってもらうため、「愛のコンサート」の開催を一方的に決定。その担当を寅子に指名したため、寅子はますます忙しくなる。そんな中、遺産相続の案件で家裁を訪れたのは、なんとあの梅子(平岩紙)だった。担当弁護士として轟(戸塚純貴)とよね(土居志央梨)がつくことになり、相続問題に明るい兆しが見え始めるが―。
–{「虎に翼」作品情報}–
「虎に翼」作品情報
放送予定
2024年4月1日(月)より放送開始
出演
伊藤沙莉 、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、 松山ケンイチ、小林 薫ほか
作
吉田恵里香
音楽
森優太
主題歌
「さよーならまたいつか!」(米津玄師)
ロゴデザイン
三宅瑠人、岡崎由佳
語り
尾野真千子
法律考証
村上一博
制作統括
尾崎裕和
プロデューサー
石澤かおる、舟橋哲男、徳田祥子
取材
清永聡
演出
梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか