『マッドマックス:フュリオサ』は4DXが“最適解”だった「5つ」の理由

映画コラム

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映画『マッドマックス:フュリオサ』が2024年5月31日より劇場公開中。本作は2015年公開の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の女戦士・フュリオサを主人公としたスピンオフ作品であり、その前日譚に当たる。

劇中では『怒りのデス・ロード』に「つながる」描写がある一方、物語そのものは独立しているので、今回初めて『マッドマックス』シリーズを観る方でも楽しめるだろう。

PG12指定ならではのバイオレンス、上映時間が2時間28分とやや長尺(どちらも作品には必要なもの)というハードルはあるにはあるが、それ以外では万人に文句なしにおすすめできる、堂々たるアクション大作だった。

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前置き1:MX4Dではなく4DXを強く推奨

そして、ここではぜひとも4DXをおすすめしておきたい。座席の激しい動きなどのアトラクション的な感覚が味わえる4DXは、前作『怒りのデス・ロード』の時も相性が抜群だと称賛されていたが、今回もまったく負けてはいない。後述する様々なエクストリームなカーアクションを文字通りに体感できるだろう。

また、今回はTOHOシネマズ系で展開している「MX4D」ではなく、ユナイテッド・シネマやコロナワールドなどにある「4DX」上映を強くおすすめしておく。作品によってはどちらでも構わないと思うこともあるのだが、今回は4DXだけにある演出が、後述するように実に効果に使われていたからだ。

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前置き2:ファイルーズあいを筆頭とする最高峰の吹き替え

4DX上映ではほとんどの場合は吹き替え版となるが、この吹き替えが最高峰の素晴らしさだった。特に主人公のフュリオサ(アニャ・テイラー=ジョイ)にファイルーズあいというキャスティング、その期待に最大限に応えた演技がどれだけ褒めても褒め足りない。

劇中のフュリオサは口数がかなり少なく、言うまでもなくファイルーズあいが声を出すシーンも多くはない。しかし、だからこそ、「ここぞ」という時の不屈の精神そのものにも思える「がなる」声の力強さ、未熟である一方でとことん「やる時はやる」キャラクターに説得力を持たせた表現そのものに感動があったのだ。

このフュリオサというキャラクターの印象は、ファイルーズあいが声優を志すきっかけとなり、見事にアニメ版での役を射止め、やはり絶賛の嵐となった「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の主人公・空条徐倫にも近い。そちらに匹敵する、またはそれ以上に、ごくわずかなセリフの一つひとつに魂を込めたような熱演を、吹き替え版で堪能してほしいのだ。

さらに、もうひとりの主人公といえるディメンタス将軍役は「クリス・ヘムズワースといえばこの人」な三宅健太で、めちゃくちゃ楽しそうにユーモラスなキャラを表現していて(主人公にとっては憎むべき相手のはずなのに)ついつい笑顔になってしまう。

さらには、フュリオサの母親役に小林ゆう、戦士ジャック役に津田健次郎、イモータン・ジョー役に大塚明夫など豪華絢爛。一度字幕版も観たという人にとっての2度目の鑑賞のチョイスとしても、「4DX吹き替え版」は“最適解”だろう。

さてさて、前置きが長くなったが、ここからは具体的な4DXの演出の見どころを記していこう。物語上の決定的なネタバレには触れないようにしたつもりだが、それでも予備知識なく4DXも含めて楽しみたい方は、先に劇場へと駆けつけてほしい。

–{荒廃した世界も演出してくれていた}–

1:荒廃した砂漠の世界を「煙」「風」で表現

『マッドマックス』シリーズ(『2』以降)の大きな特徴は、文明が荒廃した後の砂漠で覆われた世界観。

今回の『フュリオサ』では、砂煙が舞う様を、スクリーン手前で立ち上がる「煙」と、劇場全体を吹く「風」で表現してくれた。より作品内世界に没入できるだろう。

2:エンジンの「振動」が伝わりまくる

何しろ4DXのメインの演出は「座席の動き」。クルマやバイクが全力疾走し、急にターンし、時にはジャンプまでもする。そんな「ライド感」こそが4DX最大の魅力であり、前作にも勝るとも劣らない本作の狂った(褒め言葉)カーアクションにベストマッチなのは、言うまでもないだろう。

しかも、それ以前に「エンジンの振動」もリアルに演出してくれたことにも感動がある。序盤にごくわずかに「馬に乗っての振動」も演出してくれるのだが、そちらとの違いも味わってほしい。

3:槍や銃撃をギリギリで避ける「エアー」など、演出が大盤振る舞い!

中盤では本作の白眉といえる、約15分にわたる「ウォー・タンク(ウォー・リグ)」という巨大な乗り物を巡っての攻防戦が展開する。

ここでほぼ全ての4DX演出が大盤振る舞いとなるのだが、特に「飛んでくる槍」「蜂の巣にされそうな機関銃」での攻撃をギリギリで避ける様を演出した、プシュッと吹き付ける「エアー」の演出がスリリング。めいいっぱいアトラクション感を楽しんでほしい。

4:巨大なタイヤのトラックに乗った感覚が特にヤバい

本作には様々な「暴力的」という形容がふさわしい乗り物が登場するが、特に「シックス・フット」と呼ばれるトラックはクレイジー極まりない。

巨大なタイヤのおかげで他のクルマを軽々と乗り潰し、普通のバイクなら横転してしまう急激な坂道も軽々と登ってしまうのだ。もちろん4DXの演出も遠慮がなく、「超ヤバい車に乗って超危険なオフロードレースに挑む」ような感覚も味わえるだろう。

5:クライマックスに驚きの「雨」の演出が!

MX4Dにはなく、4DXのみに存在する演出には「雨」「雪」「シャボン玉」があり、今回の『フュリオサ』ではこのうち「雨」が非常に効果的に使われている。画面手前に飛んでくる「血飛沫」を吹き付ける水(座席横のボタンでOFFも可能)で演出しているというのもいい意味で悪趣味だったが、さらに笑ってしまったのが、クライマックスで上から落ちてくる雨だったのだ。

詳細はネタバレになるので秘密にしておくが、「そ、そんなふうに雨を使うの!?」と驚いたと共に、「そこで使うしかないよね!」と納得もできて、ついつい笑顔になってしまったのだ。そちらも含めて、『フュリオサ』の4DXをめいっぱい楽しんでほしい。

(文:ヒナタカ)

–{『マッドマックス:フュリオサ』作品情報}–

『マッドマックス:フュリオサ』作品情報

ストーリー
世界崩壊から45年。バイカー軍団に連れ去られ、故郷や家族、人生のすべてを奪われた若きフュリオサ。改造バイクで絶叫するディメンタス将軍と、鉄壁の要塞を牛耳るイモータン・ジョーが覇権を争う”MADな世界(マッドワールド)”と対峙する!怒りの戦士フュリオサよ、復讐のエンジンを鳴らせ!

予告編

基本情報
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース

監督:ジョージ・ミラー

公開日:2024年5月31日(金)

配給:ワーナー・ブラザース映画