2024年5月10日(金)より『猿の惑星/キングダム』が劇場公開されている。
本作はSF映画『猿の惑星』シリーズの最新作。初代映画が公開されたのは1968年。あの『スター・ウォーズ』よりも長い歴史を誇っている偉大なシリーズだ。
前置き1:『メイズ・ランナー』の時から「そうじゃないか」と思ってた
そして、大きなトピックであるのが、本作で監督を務めたウェス・ボールが、あの世界的人気を誇るテレビゲーム「ゼルダの伝説」の実写映画でメガホンを取ると発表されていることだろう。
これまでのウェス監督の代表作である『メイズ・ランナー』も、石造りの建造物の「ダンジョン感」や「謎を解くギミック」に「ゼルダっぽさ」があり、その時点で適任だと思っていた。
だが、この『猿の惑星/キングダム』はそれどころではなかった。「これゼルダじゃん!」「あれもゼルダじゃん!」と、5分に1回レベルでゼルダっぽさを感じられる以上に、「このクオリティーならゼルダの実写映画を任せられる」という信頼感が半端ではなかったのだ。
前置き2:同じく猿が多い『ゴジラxコング』とは別物
ところで、4月26日(金)より劇場公開中の『ゴジラxコング 新たなる帝国』が、「実質『猿の惑星』じゃん」と話題になっている。
タイトル通り猿(キングコング)との共闘が描かれているばかりか、「スカーキング」という敵の猿も、他の猿の集団までも登場するので、正直「また猿がたくさん出てくる映画か……食傷気味だな……」と思っている方も多いのではないだろうか。
結論からいえば、そんな心配をする必要はまったくない。その理由の筆頭は、突き抜けたバカ映画(超褒めてる)だった『ゴジラxコング』に対して、この『猿の惑星/キングダム』はとってもマジメな作風だから。
『ゴジラxコング 新たなる帝国』 © 2024 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
もちろんどちらが良くてどちらが悪いというわけでなく、映画の作風でここまで猿の集団への印象が変わるのかというギャップは、両者を見比べてこそ楽しめると思うからだ。(ただ映画の猿が供給過多だという意見は否定しない)
余談だが、その『ゴジラxコング』でのスカーキングが「猿たちになんの労働をさせているのかさっぱりわからない」という意見が散見されるが、公式Xでは「ショーを運営するため」と発表されている。
┣ #ゴジラxコング トリビア 3⃣ ┫
《巨大な敵・スカ―キング》?アダム監督
「彼は長い間、地下空洞に住む猿の部族を支配してきました。
猿たちを自分の下で働かせショーを運営する悪魔なのです。」#ゴジラ#ゴジラxコング新たなる帝国 pic.twitter.com/JbPsijr2nD— 映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』公式 (@GodzillaMovieJP) May 5, 2024
まあ、そう言われても、劇中ではシュールな「謎労働」にしか見えなかった気もするが……対して、『猿の惑星/キングダム』では猿たちに労働させる理由がちゃんと明確だったりするので安心してほしい(?)。
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前置き3:事前のトイレは必須!でも万人が楽しめるエンタメに
『猿の惑星/キングダム』は完全新作と銘打たれていると同時に、2011年にリブートされた『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』から続くシリーズの第4弾となっている。
とはいえ、今回は過去作を観ていなくてもまったく問題なく楽しめる。シリーズのオマージュは込められていたりもするが、未見の方でも意味がわからないポイントはほとんどない。
何より、ゼルダっぽさを抜きにしても、(後述する様々な理由もあって)ひとつのエンタメ映画として抜群に面白い。今回はシンプルかつバラエティー豊かなアドベンチャー要素が詰まっているので、ずっとのめり込んで観ることができた。観る人を選ばない、万人向けの娯楽映画としてもひとつの理想型だ。
ただ、注意しておくべきなのは上映時間が2時間25分とやや長尺であること。そのため、事前のトイレは必須。そして、その上映時間よりもはるかに短く感じたのは、やはりとてつもなく面白い映画だという証拠だ。あとは、後述する項目2の要素が苦手な人は、ある程度の覚悟を持っていたほうがいいだろう。
さて、すっかり前置きが長くなったが、ここからが本題。筆者が独断と偏見で選ぶ、「この監督だったらゼルダの実写映画を任せられる」と心から思えた「10」の理由を記していこう。
決定的なネタバレはないように書いたつもりだが、一部内容は記しているので、何も知らないまま観たいは、先に劇場へ駆けつけてほしい。
–{ここがゼルダだ!な10のポイントを一挙解説}–
1:冒険の基本的な移動手段は馬
「ゼルダの伝説 時のオカリナ」では、主人公のリンクは馬に乗り移動をする。そして、今回の主人公であるノアの移動手段も基本的に馬なのだ。
これまでの『猿の惑星』シリーズでも「猿が馬に乗る」画はよくあったのだが、今回は主人公がひとつの場所にとどまらず、旅に出るアドベンチャー要素が強めなため、さらに馬での冒険にゼルダっぽさが出ているのだ。
2:断崖絶壁の高低差アクション
今回の冒頭から大きな見せ場として、崖を登ったり、あわや落ちかけてしまう、ハラハラドキドキの「崖っぷちアクション」が繰り出される。
3Dになってからの「ゼルダの伝説」シリーズも、同様に「高低差」を生かしたアクションやギミックが多い。両者に共通しているのは、「高所恐怖症の方は要注意」なヒヤヒヤがあること。「怖すぎるよ!」と、どちらかといえば良い意味での文句も言いたくなるだろう。
3:孤独な(だがお供もいる)冒険
「ゼルダの伝説」の魅力として、いい意味での「孤独感」があると思う。基本的に主人公のリンクはひとりで冒険し、その道中でプレイヤーは不安も抱えるが、だからこそ様々なキャラクターとの出会いと、自由で未知なる冒険そのものを楽しめるのだ。
その一方で、そのリンクにヒントを与えてくれる、お供となる妖精などのサブキャラクターもいて、そちらもとても愛おしくなったりもする。
今回の『猿の惑星/キングダム』の冒頭では、主人公のノアはとある悲劇を経て、まさにたったひとり、孤独での冒険を余儀なくされる。早めに冒険の仲間を得たりはするものの、それぞれの主人公をサポートする役割も、「ゼルダの伝説」のお供のキャラクターを連想させたのだ。
何より、美しい自然の多い、広大な世界での冒険そのものが、ビジュアルからして「ゼルダの伝説」にかなり近い。随所に人間の文明を感じられる、まるで廃墟を体験しているワクワク感があるのは、同じく任天堂のゲーム「星のカービィ ディスカバリー」もほうふつつとさせた。
ちなみに、冒頭で主人公が旅立つ流れは『もののけ姫』を思い出す方も多いだろうが、ウェス・ボール監督が意識していたのは2006年の映画『アポカリプト』らしい。そちらへのリスペクトは「観ればわかる」と言っておこう。
4:冒険には鳥もついてくる
さらに「ゼルダの伝説 時のオカリナ」では“ケポラ・ゲボラ”という、道ゆく先々でヒントを与えてくれる(ちょっとウザくもある?)フクロウのキャラクターがいたりもする。
今回の『猿の惑星/キングダム』では、同じように鳥のキャラクターが陰ながら冒険についてくるのだ。なんだかかわいい鳥のキャラクターを愛でたい方も必見だ。
5:ほぼほぼ「Z注目」していた
突然だが「ゼルダの伝説 時のオカリナ」におけるゲームの歴史を変えた大発明として、「Z注目」がよく挙げられている。これは対象の敵や物体をロックオンし、回り込んだり攻撃を加えることができるシステムで、3Dゲームの操作性やカメラワークの問題を解決した画期的なものだと絶賛されたのだ。
そして、『猿の惑星/キングダム』では、偶然なのか意識したのか、カメラが後ろに周り、敵と間合いをとりながら回り込み攻撃を隙を窺うという、まさにZ注目をしているようなカメラワークおよび「動き」のアクションが展開していたのだ。
その他のダイナミックなアクションそれぞれでも、ゼルダっぽさは大いに感じられるだろう。
6:明らかに怪しい罠もある
「ゼルダの伝説」シリーズでは「落とし穴」をはじめとした罠もよく登場する。それと同様に、『猿の惑星/キングダム』でも冒険の道中で明らかな罠が登場するのだ。
特に、流れの激しい川を横切る「橋」はあからさまに危険な雰囲気に満ち満ちていた。具体的にこの橋を渡るとどうなるのかはネタバレになるので秘密にしておくが、そこにもゼルダっぽさを感じたのだ。
7:見つからないように潜入するミッションも展開
「ゼルダの伝説」シリーズでは、「敵に見つからないように目的地まで潜入する」こともよくある。ゲーム「メタルギア」シリーズを思い出す方もいるだろう。
同様に、とある理由で『猿の惑星/キングダム』でも「スニーキングミッション」が展開する。「見つかったら終わり」なシチュエーションは、やはりシンプルにハラハラできるはずだ。
8:「文化」を感じさせる場所があり、その支配を目論む大悪党もいる
「ゼルダの伝説」シリーズは作り込まれた世界観、個性豊かなキャラクター、はたまた様々な人種が登場することも大きな魅力だ。
今回の『猿の惑星/キングダム』で登場するのは見た目こそ同じ猿ではあるが、異なる文化や価値観を持つ、それぞれの種族の特徴が表れているのも面白い。特に終盤に訪れる場所は、テントが張られた見た目から「ゼルダの伝説」シリーズの「ゲルド族」の文化も連想させたのだ。
とはいえ、『猿の惑星/キングダム』のその場所は冷酷な独裁者が支配している。
その独裁者の正論めいた言動に理性を感じる一方で、本質的には邪悪な存在に見える様は、「ゼルダの伝説」シリーズにほぼ共通して登場する大悪党・ガノンドロフを思い出す方もいるだろう。
9:場所に「歴史」も感じさせる
『猿の惑星』シリーズはSFではあるが、現実の人間の社会や人種にまつわる問題を風刺しているのも大きな見どころだ。今回は前述した通り、独裁者の浅ましさをストレートに描いているわけだが、さらに「現実の人間の歴史」をつぶさに見せる場面もある。
とある場所で、書物やアイテムから「過去に起こったこと」を読み取る様は、どちらかといえばゲーム「バイオハザード」シリーズっぽくもある。
同時に、とあるギミックを半ば「謎解き」的にクリアーしていく様や、それぞれの文化に長い歴史があると想像させるほどの作り込みも、またゼルダっぽいと思わせるのだ。
10:ネタバレ厳禁の衝撃のラストもゼルダっぽい?
初代『猿の惑星』は、何しろ衝撃的なラストが取り沙汰されやすい。今では「ネタバレ前提で語られるほどに有名なオチ」ではあるが、知らない方は是が非でも知らないまま観ていただきたいと願うばかりだ。
そして、今回も「ネタバレ厳禁の衝撃のラスト」が待ち受けていた。なるほど初代の二番煎じにもならないし、『猿の惑星』を知らない方にも十分すぎるほどの驚きがあると思えたし、それもまた「ゼルダの伝説」シリーズある感動に通じていると思えたのだ。
筆者個人は、「ゼルダの伝説 夢をみる島」のとある“秘密”に震えるほど衝撃を受けたことをよく覚えている。
ともかく、『猿の惑星/キングダム』は「ゼルダの伝説」シリーズのような世界観やアクションはもちろん、(ベクトルは多少異なる気もするが)物語上での感動にも、ぜひ期待してほしい。
(文:ヒナタカ)
–{『猿の惑星/キングダム』作品情報}–
『猿の惑星/キングダム』作品情報
ストーリー
今から300年後の世界、猿たちは絶対的支配を目論み、巨大な帝国<キングダム>を築こうとしていた。一方、人類は退化し、まるで野生動物のような存在となっていた。 そんな世界で生きる若き猿ノアは、ある人間の女性と出会う。 彼女は人間の中で“誰よりも賢い”とされ、猿たちから狙われていた。 猿と人間の共存は不可能なのか。はたして、この世界で生き残るのは―。
予告編
基本情報
出演:オーウェン・ティーグ、フレイヤ・アーラン
監督:ウェス・ボール
公開日:2024年5月10日(金)
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン