2月23日(金・祝)より公開された映画『マッチング』に狂気のストーカー・永山吐夢役で出演している、Snow Manの佐久間大介。
普段の明るいイメージとはかけ離れた役に驚く声も多いが、ファンの多くは「こういう機会を待ってました」と思ったのではないだろうか。なぜなら、彼は明るさだけでなくさまざまな面を持っており、演技も上手いからだ。
本記事では、映画『マッチング』の公開を記念して、演技を含めて彼の振り幅について振り返っていきたい。
【関連コラム】土屋太鳳の魅力と手数の多さを知る“3作品”|『マッチング』公開記念
【土屋太鳳・佐久間大介インタビュー】作品からは想像がつかない?明るい現場のチグハグ感
※本記事では『マッチング』の一部シーンに触れています。未鑑賞の方はご注意ください。
映画『マッチング』で確信した、抜け出せない沼
映画『マッチング』で彼が演じた吐夢は、主人公・輪花(土屋太鳳)とマッチングアプリでマッチング後、ストーカーと化す人物。本人曰く“世界一静かな佐久間”と言っていた通りあまり喋らないし、喋ったとしてもボソボソとしている。
個人的に感じたのは“重さ”だ。普段の佐久間大介は、軽やかな印象のある人だと思う。明るく朗らかな話し方はもちろん、アクロバットで宙を舞っているときやダンスしているときの彼は「彼のまわりだけ重力が存在していないのでは」と思うほど軽い。
©2024『マッチング』製作委員会
対して吐夢からは、闇や影をそのまま背負っているかのような重さが伝わってきて、観ているだけで息苦しくなりそうだった。彼はよく「目のハイライトを操れる」と言われるが、自分を取り巻く空気の重さまで操れたのか……。
吐夢は、たとえ彼のファンであったとしても「いやこえーよw」「それはさすがに気持ち悪い……」とツッコみたくなるような言動が多々あり、アイドルとは別の意味で浮世離れしている。ティザービジュアルやあらすじからは“怖さ”を感じるが、実際に作品を観るとツッコみたくなるような面も多くて、途中から謎の親しみを感じていた。
©2024『マッチング』製作委員会
吐夢はいったい何者なのか。観客ははじめから終わりまでその正体を追うことになる。
“佐久間大介”と“吐夢”は全然違うけれど、生き物が好きなところや好きなものに一途なところは本人とも共通している。そして彼が度々口にしているように、元々は人と話すのが苦手な陰キャだった。
彼の演技の凄さを実感するとともに、これまでの彼が生きてきたさまざまな要素が吐夢を作っているのだなと感じた。
特に、ラストの“ある表情”には完全にやられた。「これだから佐久間大介の沼からは抜け出せない」と思った。“あの顔”を見たくて、何度も映画館に足を運ぶ人も多いのではなかろうか。
「ラヴィット」にトレードマークのピンクではなく白に近い金髪で登場し、「白佐久間」と話題になったのは2022年9月。「お仕事で金髪にした」という本人の言葉から、発表されるまでが長かった。
それまでもすでに多くの分野で活躍していたが、「なぜ演技の仕事が少ないんだろう」「演技上手いのにな」「一度何かに出たら彼の演技を評価する人もオファーも増えそうなのに」と少しだけ思っていた。きっと同じように思っていた方も多いのではないだろうか。
そして今回ついに「佐久間大介 単独の演技仕事」は最高の形で叶い、その姿が全国公開されたのだ。
彼にとって初の単独実写映画出演が、内田英治監督の『マッチング』で心からよかったと思う。
『マッチング』作品情報
-
『マッチング』
2024年2月23日(金・祝)全国公開
配給:KADOKAWA
©2024『マッチング』製作委員会
–{【振り幅】パフォーマンスの魅力}–
佐久間大介のパフォーマンスでしか得られない養分がある
ここからは、彼の振り幅についてあらためて振り返りたい。
まずなんと言っても、その振り幅を最大限に魅せてくれるのはパフォーマンスだ。彼のパフォーマンスを初めて観たときの衝撃は忘れられない。
ダンスが上手いのは間違いないのだけど、「上手い」なんていう言葉では到底表せない感動と感情を私たちにくれる。こんな人、今まで観たことない。月並みな言葉かもしれないが、佐久間大介のパフォーマンスでしか得られない養分が確実にある。一生だって観ていたいと思う。
得意なダンスのジャンルを聞かれて「全部!」と答える彼は、引っ込み思案で感情表現が苦手だった頃にダンスに出会い、ダンスをしているときだけは自己表現できた、という内容の話をよくしている。事務所に入ったのもダンスの先生に薦められたからだという。
キレが良く、時にしなやかで時に力強いダンスは、彼がどこにいたって惹かれてしまう。どんな曲でもその音楽の一部であるかのように、最適な表現を見せてくれる。
MVを何度も観る際に「今回はこのメンバーを見るぞ」と思っているのに、気がついたら彼に目がいってしまったこともよくある。MVやダンプラが出るたびに“他担狩りの佐久間”と言われるのも納得である。
技術だけでなく、自分の顔や身体をどう動かしたら魅力的に見えるか、完璧にわかっている。アクロバットもそこだけ重力がなくなったように見えるし、着地のタイミングまでも音に合わせている。どうして人間にこんな動きができるんだろう?と思う。
これまでのどれだけの努力を続けてきたのだろう……と思うと気が遠くなると同時に、そんなパフォーマンスを目にできるこの時代に生きていることに感謝したくなる。
デビュー曲「D.D.」の振り付けを教えに行く動画で放った「俺、反復練習好きなんだよね」という言葉は今も忘れられない。出来ないことでも何度もやるとできるようになると。反復練習なんて好きじゃない人が大半だと思うのに、笑顔で好きと言えてしまうこと、間違いなく実際にそうしてきたであろうことがわかってとても刺さった。
彼の完璧なパフォーマンスはそういう長年の努力の上に成り立っているのだと実感して胸が熱くなってしまう。しかも、練習したからできるようになったみたいな方法論や説教みたいな言い方ではなく、「好きなんだよね」という表現が本当に素敵だ。
2023年のアルバム、ラウールとのユニット曲「Bass Bon」はすごかった。歳を重ねたらできることが減るのではなく、この先どんな表現を見せてくれるんだろうと楽しみにさせてくれる。
今後のパフォーマンスでも見たことのない佐久間大介を期待したい。
あらゆる場面で見せる、“明るくて元気な太陽”な姿
メンバーといるときや番組出演で見せる、明るくて元気な彼は太陽のようで、メンバーからも「疲れているところを見たことがない」と言われるほどだ。
もともとは陰キャで人と関わるのが苦手だったけど、「グループのために性格を変えた」というのが、よりこの明るさを魅力的に見せているのだと思う。生まれつき根アカな人だったら、こんなに惹かれなかっただろう。
歌番組やバラエティー番組ではメインで出ていないときにも全力でワイプに映り、見ているだけで元気をくれる存在だ。
また彼は個人の媒体でも、その振り幅を見せてくれている。自身のラジオ「待って、無理、しんどい」でも、相手に対して本当に敬意を持っている様子が伝わってきて、彼の人柄の良さがうかがえるのだ。
最近はX(Twitter)で個人のアカウントを開設して、ファンはより一層近い距離でその日常と“小悪魔な”魅力を見ることができている。
彼は演技やパフォーマンスだけでなく、多くの場面でその魅力の振り幅を存分に発揮しているのだ。
これからも振り幅に惑わされたい
「最後の推しになってやる」というのは彼の名言のひとつだが、そりゃ彼のような人は他にいないもんなと納得してしまう。唯一無二ってやつだ。
『マッチング』で「吐夢の正体はなんだろう」とハラハラしながら見守った気持ちは、佐久間大介が次にどんな姿を見せてくれるのだろうとワクワクする気持ちと少し似ている。
彼が見せてくれるさまざまな姿は、いつもその奥にある別の一面まで感じさせるからこそ、より魅力的なのかもしれない。
これからはきっと、演技という面でもたくさん新しい姿を見せてくれることだろう。願わくば一生、彼の振り幅に惑わされて生きていきたい。
(文:ぐみ)