「ブギウギ」愛助の実家・村山興業は「わろてんか」の北村笑店<第52回>

続・朝ドライフ

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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第52回を紐解いていく。

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偶然に次ぐ偶然

 スズ子(趣里)の前に突然、現れた青年・村山愛助(水上恒司)
スズ子の大ファンだと言います。
梅丸楽劇団での「ラッパと娘」を見て、心打たれたことを滔々と語ります。
真面目に褒めながら、「こんなおもろい生き物」と言ってしまうところもご愛嬌。

不器用だけど、好青年ふう。宿代の半分も出して去っていった愛助は何者。
偶然、帰りの汽車でも乗り合わせます。
でも小夜(富田望生)は泥棒呼ばわり。追いかけて来たに違いない、「この世に偶然はねえ」と疑います。

混んでる汽車のなかで、泥棒、泥棒と、証拠もないのに大騒ぎするのは、感心しません。
同席の少女チセが愛助をかばいます。お芋もくれたと。

スズ子は、貧乏な学生さんと思い込んでいますが、宿代は半分払い、芋を譲り、と気前がいいというか、羽振りがいいというか。

その愛助を、たまたま居合わせた軍人が「坊っちゃん」と呼び、うやうやしく接します。
なんと、愛助は有名な村山興業の御曹司でした。

お金持ちだから宿代の半分くらい払えてしまう。でも、けっしてえらぶらず、むしろ謙虚。おとなしいのは、食事の席で「僕は戦地は……」と言っていたので、カラダが弱くて戦地に行けないのかもしれません。そこが六郎(黒崎煌代)とは違います。しかし、スズ子は、六郎を亡くしたのに、戦地に行くでしょ、と世間話のように切り出すのが意外な気もしますが。

村山興業の御曹司と聞いた途端、五木(村上新悟)が態度を急に軟化させます。まったく調子のいい人です。

汽車で偶然、隣り合わせる、知り合いの軍人が現れる……と、これは、朝ドラ名物「ご都合主義」
であります。それはともかくとして、村山興業は、吉本興業をモデルにしているとは明言してはいませんが、暗黙でそういう感じです。
つまり、「わろてんか」のヒロインてん(葵わかな)が切り盛りしていた北村笑店とほぼ同じです。
「わろてんか」では、てんの息子は準也で成田凌さんが演じていました。

愛助の正体がわかったところで、小夜が失くしたお金を見つけます。足袋のなかに入っていたなんて、お風呂にも入らず、寝る時も脱がなかったのでしょうか。不自然過ぎる。これは、愛助登場に合わせた吉本新喜劇的なドタバタのノリ?(偏見?)と思いましたが、考えてみれば、ないないと大騒ぎしたすえ、意外なところにあったという経験は誰しもあるものです。

小夜のドタバタなふるまいを、スズ子の歌う「ふるさと」が一気に浄化します。
少女のリクエストで歌うスズ子を、汽車の乗客たちは、しんみり聞き惚れます。一井(陰山泰)のトランペットの伴奏がさらにムードを高めました。

汽車の走行がずいぶんと静かで、まるで汽車が停まってしまったのかと思うような雰囲気でしたが、スズ子の歌で、世界が一瞬、止まったようなイメージかもしれません。

汽車に乗り合わせた人たちは、それぞれの目的地に向かっています。少女が、故郷を離れ岡山に行くのがちょっと寂しく思っているように、楽団の人たちは東京で公演できないから地方を転々と回っていて。汽車に乗る人は皆、目的に向かう希望や不安を抱えています。スズ子の「ふるさと」はそんな心に染みて、汽車のなかはひととき、永遠になったのです。

放送後の「あさイチ」では水上恒司さんがゲスト出演。大阪弁の難しさを語っていました。

(文:木俣冬)

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–{「ブギウギ」第11週あらすじ}–

「ブギウギ」第11週あらすじ

昭和18年、スズ子(趣里)たちは順調に地方公演を続けていた。そんなある日、楽屋にスズ子の大ファンだという学生(水上恒司)が訪ねてくる。学生の行動にはじめは怪しむ一同だったが、村山興業の御曹司・村山愛助だとわかり、納得する。やがて、スズ子が東京に戻ると、愛助から何度も手紙が届くようになる。そして、ついにスズ子の下宿に愛助が訪ねてきた――。スズ子と愛助、二人の人生を大きく左右する運命の出会い!

–{「ブギウギ」作品情報}–

「ブギウギ」作品情報

放送予定
2023年10月2日(月)より放送開始

出演
趣里、水上恒司 、草彅 剛、蒼井 優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎 ほか


足立紳、櫻井剛<オリジナル作品>

音楽
服部隆之

主題歌
中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」(作詞・作曲:服部隆之)

ロゴ・タイトル制作
牧野惇

歌劇音楽
甲斐正人

舞台演出
荻田浩一

メインビジュアル
浅田政志

語り
高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

制作統括
福岡利武、櫻井壮一

プロデューサー
橋爪國臣

演出
福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠 ほか