「ブギウギ」戦争がはじまって、なぜバンザイなのか<第47回>

続・朝ドライフ

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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第47回を紐解いていく。

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ただただ悲しい

「なんや部屋におるほうがしんどいねん」
スズ子(趣里)の気持ちはよくわかります。
部屋では梅吉(柳葉敏郎)が心労で寝ているから。

ただ、梅吉が寝ているのはいつもの酒浸りのせいではなく、
六郎(黒崎煌代)の戦死の報告が届いたからです。

たった1枚の簡素な報告では信じられないのは当然です。
梅吉は、間違いだと自分に言い聞かせます。
スズ子も「わからへん」と混乱。
いつも屈託のない小夜(富田望生)すら言葉に詰まっておろおろするばかり。

大事な身内が亡くなったと聞いたとき、ただ悲しがって泣くのではなく、事態が飲み込めず混乱し、立ち尽くすしかない。哀しみはあとからじょじょにじょじょに湧き上がってきて、全身を覆うのでしょう。

翌朝、寝坊してしまうスズ子。やっぱり心が疲れているのです。そんな彼女に、チズ(ふせえり)はおにぎりをふたつ、手渡します。

果敢に楽団に出勤すると、小夜が事態を楽団員に話していました。いつものスズ子だったら、勝手に話すなと怒りそうな気もしますが……そんな気力ももはやない。逆に、じょじょに湧き上がってきた哀しみや絶望を抑えきれなくなったスズ子は小夜に思いを吐露し、支えられます。梅吉には弱音を履けない分、小夜がいてよかった。

そうしているうちに、ラジオで臨時ニュースが流れます。

1941年(昭和16年)12月8日、日本海軍がハワイ真珠湾にて、アメリカ太平洋艦隊へ攻撃した「真珠湾攻撃」を発端に、開戦しました。

戦争がはじまれば、日本が勝つだろう、そしたら景気もよくなるだろうと、国民は大人も子供も信じ「バンザイ」「バンザイ」と盛り上がります。

この戦争で日本はひどい目にあって、敗戦することを知っている視聴者としては、信じがたい反応ですが、当時は、戦争反対気分よりも戦争を肯定する空気もあったようなのです。でも、この戦争で突然、弟を亡くしたスズ子は、いち早く、この状況がおかしいことに気づいています。彼女の「バンザイ」はこんなこと認められないような、やけくそっぽかった。

今、過去のことを物語にしたとき、ある種の救いは、今を生きる私たちは、戦争をしたら日本はこてんぱんに負けるのだということを知っていることです。当時は、戦争に不安を感じても、イケイケムードみたいな空気が蔓延して、流されてしまったけれど、それをやっちゃいけない。同じことは絶対に繰り返してはいけない。戦争のドラマを繰り返し作ることは、そのためだとおもいます。

とまあ、そんな重たいことを考えてしまったのですが、ラジオのニュースに耳をそばだてている楽団のピアニスト・二村を演じるえなりかずきさんが、年齢相応の大人の顔であることに注目しました。子役の頃から大人顔で、振る舞いや口調もそつがなく、その違和感がおもしろかった俳優ですが、1984年生まれで、39歳になっています。ニュースを聞いてる表情は、その空間に自然に溶け込んで、慎重に、物事を考えているふうでした。

(文:木俣冬)

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–{「ブギウギ」第10週あらすじ}–

「ブギウギ」第10週あらすじ

スズ子(趣里)は自身の楽団を旗揚げする。しかし、ジャズは敵性音楽だと言われ公演の機会は全く無かった。一方、りつ子(菊地凛子)も何度も警察に捕まり、自由に歌える場所は減っていた。ある日、スズ子と梅吉(柳葉敏郎)のもとに六郎(黒崎煌代)に関する知らせが入る。スズ子は動揺し、歌をうまく歌えなくなってしまった。そんな状況を見た善一(草彅剛)は、スズ子とりつ子の合同音楽会を開こうと提案する。

–{「ブギウギ」作品情報}–

「ブギウギ」作品情報

放送予定
2023年10月2日(月)より放送開始

出演
趣里、水上恒司 、草彅 剛、蒼井 優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎 ほか


足立紳、櫻井剛<オリジナル作品>

音楽
服部隆之

主題歌
中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」(作詞・作曲:服部隆之)

ロゴ・タイトル制作
牧野惇

歌劇音楽
甲斐正人

舞台演出
荻田浩一

メインビジュアル
浅田政志

語り
高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

制作統括
福岡利武、櫻井壮一

プロデューサー
橋爪國臣

演出
福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠 ほか