<どうする家康 関ケ原・徳川幕府編>40話~の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

2023年1月8日放送スタートしたNHK大河ドラマ「どうする家康」。

古沢良太が脚本を手がける本作は、弱小国の主として生まれた徳川家康が乱世を生きる姿を描いた波乱万丈エンターテイメント。大河ドラマ初主演となる松本潤が従来のイメージとは異なる「ナイーブで頼りないプリンス」の家康に扮する。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事では、家康が石田三成らと戦いながら、天下を目指す40話~の記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第40話ストーリー&レビュー

・第41話ストーリー&レビュー

・第42話ストーリー&レビュー

・第43話ストーリー&レビュー

・第44話ストーリー&レビュー

・第45話ストーリー&レビュー

・第46話ストーリー&レビュー

・第47話ストーリー&レビュー

・第48話ストーリー&レビュー

第40話ストーリー&レビュー

第40話のストーリー

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秀吉(ムロツヨシ)が死去し、国内に動揺が走る。家康(松本潤)は三成(中村七之助)と朝鮮出兵の後始末に追われる。秀吉の遺言に従い、家康は五大老たちと政治を行おうとするものの、毛利輝元(吹越満)や上杉景勝(津田寛治)は自国に引き上げ、前田利家(宅麻伸)は病に倒れる。家康は加藤清正(淵上泰史)ら諸国大名たちから頼られる中、やがて政治の中心を担うようになる。そんな家康に野心ありとみた三成は警戒心を強め、二人は対立を深めていく。

第40話のレビュー

兎が狸になった。

秀吉(ムロツヨシ)が亡くなり、石田三成(中村七之助)を始めとした五奉行と、徳川家康(松本潤)ら力を持つ五大老による十人衆が話し合いで進めていくことになる。

が、三成はさっそく、朝鮮から戻ってきた加藤清正(淵上泰史)らと衝突してしまう。

人心を読むことには長けていないとはっきり言われていた三成だが、さもありなん。
そら朝鮮出兵で苦労してきた清正たちに、「戦のしくじりは不問にしますゆえ」「茶会でも開いて」などと言えば怒りますがな……。

そして家康らがなだめようとすると「私は何も間違ったことはしていない」ときっぱり。三成の心にあるのは秀吉が遺した言葉を守ることだけだ。真面目すぎると融通が利かなくなるが、まさに三成がそれだ。

うまくできない三成。

その影で家康が動き始める。三成らと敵対する伊達政宗や福島正則(深水元基)、蜂須賀家政との縁組を進めている。この時代、勝手に婚姻を結ぶことは禁じられている。
「天下簒奪の野心あり」と見なされた家康に、三成は謹慎を申し渡す決意をする。

以前であったら、家康は慌てふためくだろう。が、逆に三成を追い込むことに成功する。
とは言え、家康としては事を荒げたくない。三成と分かり合おうとするが、拒否されてしまう。そもそも、三成と家康が仲良くすれば、おもしろくない人物は多いはずだ。茶々(北川景子)を始めとして。そして真面目な三成は周りの言葉を素直に聞き入れてしまう。

どうして分かってもらえないのか……と前田利家(宅麻伸)に相談する家康。
利家はそんな家康を「オロチ」だと言う。今川義元のもとで育ち、織田信長、武田信玄・勝頼親子、豊臣秀吉と渡り合ってきた。一方、三成が生まれたのは桶狭間の戦いがあった年。

そう聞いて、思わず三成に同情してしまう。そんな人と対立したくないし、どうにかできる気がしない。
三成自身の性格的なものもあるだろうけれど、頑なになるのもやむなし、だろう。

歴史上の事実だけをバラバラに聞いていると、おいしいところをかっさらったようにも見えるけど、こうして改めて流れを知ると、家康が天下を獲るのは必然と言える。

三成は佐和山に隠居することになる。代わりにトップに立つのは家康だ。
虎視眈々と狙っていた天下に王手をかけた……と周りからはそう見えるかもしれない。一方で「やれやれ」という少々諦めに似たようなものを感じなくもない。

そしてここからスムーズに天下を手に入れられたというわけではない。秀吉が死に、野心を持っているものも少なくないのだ。
最後の大きな戦いが、着実に近づいている。

それにしても、ここに来てものすごいスピード感で物語が進んでいるような……気のせいだろうか。

※この記事は「どうする家康」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第41話ストーリー&レビュー}–

第41話ストーリー&レビュー

第41話のストーリー

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家康(松本潤)の決断で、佐和山城に隠居させられた三成(中村七之助)。一方、家康は大坂城・西ノ丸に入り、政治を意のままに行い、周囲から天下人と称されていた。そんな家康を茶々(北川景子)は苦々しく見ている。ある時、会津の上杉景勝(津田寛治)に謀反の噂が広がる。家康は茶々から天下泰平のため、成敗に向かうべきと諭されるが、大坂を離れることに一抹の不安を感じ、留守を鳥居元忠(音尾琢真)に預けることにする。

第41話のレビュー

「とんでもない大戦になっちまいそうですな」
それは天下分け目の戦い。大戦が近づいている。

 
石田三成(中村七之助)が失脚。
代わりに政務を務めるのは家康(松本潤)だ。後継者として秀吉の子・秀頼(重松理仁)がいるが、まだ幼く政は難しい。そのそばに茶々(北川景子)がいたとしても、だ。世間はすでに家康が天下人だと思い始めている。

一方で家康を亡き者にしようと企てる者もいる。争いを嫌う家康だとしても、こればかりは見逃すことはできない。厳しい処罰を下すことで、家康に対して恨みを持つ者たちは怒りを滾らせていく。

うぅん、でも、家康が天下を獲ることで、平和が訪れるならそれはそれでいいのでは? と現代を生きる者としては思ってしまう。
あいつはずるい、いいところをかっさらっていった、とか悪口を言っていたりするんだろうか。
庶民にとってはどうでもいいだろうに。
極論を言ってしまえば、トップが誰であろうと、戦がなくて、生活が落ち着いていればそれが何よりなわけで。

……などと言ってみたところで、家康の周辺が落ち着くわけではない。
大老の上杉景勝(津田寛治)が不穏な動きをしていると知らせが入る。上洛をするように促しても一向に応じない。
そればかりか家康を愚弄し、煽る始末。それならば、最後の手段。戦しかない。

要となる伏見を、家康は幼馴染である鳥居元忠(音尾琢真)に任せ、出陣を決意。

そして、家康のもとには忠臣たちが集まる。本多忠勝(山田裕貴)、榊原康政(杉野遥亮)、井伊直政(板垣季光人)……彼らの登場にその場がざわめく。家康と同じように忠勝たちもレジェンドなのだろう。
中の人たちがお若いので忘れてしまいそうだが、彼らももう老境である。
それでもこうやって戦場に出ようとするのは、家康が天下を獲る姿を見たいからに他ならない。
忠勝が家康を「主として認めない」と言いながら浜辺に転がしていたころが懐かしい。

しかし、家康が挙兵後、事件が起こる。三成が動いたのだ。家康を逆賊に仕立て上げ、討とうとしている……。

三成は秀吉が決めたことを全うしたいだけ、そして豊臣家を頂きに。
当の秀吉は、「豊臣家は一代で終わる」と言っていたのに、三成はそれを知らない。
穏やかに見えて猪突猛進の男は、真っすぐに進むことしかできないのだ。

一方、大阪城の茶々からは三成が勝手なことをしていて怖くてたまらない、なんとかしてほしい、と書状が届く。
もちろん、これは戦を焚きつけているだけである。

別に彼らにとって、戦で人が死のうがどうでもいいのだな、と思ってしまう。自分の信念が貫ければ、誰かが死ぬこともいとわない。
こうなってくると、狸と呼ばれる家康が平和な時代を迎えるには必要な人物だったとしか思えなくなってくる。
関ヶ原の戦いまで、あと53日。

※この記事は「どうする家康」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第42話ストーリー&レビュー}–

第42話ストーリー&レビュー

第42話のストーリー

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上杉征伐に向かう家康(松本潤)のもとに、三成(中村七之助)挙兵の知らせが届いた。小山で軍議が開かれ、西国大名の多くが三成につく中、家康は天下分け目の戦に臨むため、西へ戻ると宣言する。秀忠(森崎ウィン)に真田昌幸(佐藤浩市)の攻略を任せ、江戸に戻った家康は、各国大名に応援を働きかける。一方、京では千代(古川琴音)とともに伏見城を守る鳥居元忠(音尾琢真)は、三成の大軍に囲まれ、最期の時を迎えていた。

第42話のレビュー

「あっ、なんか急に石田三成が嫌いになってきた……」と申し訳ないけれど思ってしまった。

 

逆臣とされた徳川家康(松本潤)。諸国大名たちは続々と三成(中村七之助)につき始めている。周りは敵ばかり。

そんな状況に一瞬弱気も見せるが、もうかつての家康ではない。家臣たちにも支えられて、徳川方の武将たちをまとめていく。家康は石田三成から天下を取り戻す。そう宣言する。

七之助(岡部大)はそんな家康を見て感慨深げだ。

信康(細田佳央太)と瀬名(有村架純)を守れなかったことをずっと悔いていた七之助。今となってようやく2人の願いをかなえることができる。

戦なき世へ。

ここまでで分かったのは、そんな「戦なき世」を望む者が全てではないということ。少なくとも、石田三成は違うように思える。

 

心はひとつになったとて、戦況は家康が劣勢だ。彦右衛門(音尾琢真)が守っていた伏見城は落ちた。側室の千代(古川琴音)も一緒だ。彦右衛門は逃げるように言ったが、千代は首を横に振った。ずっと死に場所を探していた。それが愛する人と共に、なら千代にとっては幸福なのかもしれない。

長く共に戦ってきた友の死は、家康たちの心に暗い影を落とす。しかし悲しんでいる暇はない。今は三成と家康、どちらがより多く味方を得るかに戦いの行方はかかっている。

一方、家康の命で信濃の真田征伐に向かった秀忠(森崎ウィン)。

若者は真田に翻弄されていた。昌幸(佐藤浩市)から降伏状が届き、喜ぶ秀忠。同行している正信(松山ケンイチ)と小平太(杉野遥亮)は怪訝な表情を浮かべる。
降伏状は届いたが、昌幸はなかなか上田城から出てこない。

正信らの案で真田を引っ張り出そうとするがうまくいかない。真田の目的は秀忠を足止めすること。家康は秀忠に美濃・赤坂に駆けつけるように書状を送っていたが、これも真田によって邪魔をされていた。決戦に秀忠は間に合わない……。

家康はすっかり威厳を身に着けたし、猪突猛進だった家臣たちも落ち着いてしまった。そんな中で秀忠の天真爛漫な感じにちょっとホッとする。

が、乱世ではそんな人柄に和んでいるわけにはいかない。ご存じのとおり、秀忠は天下分け目の決戦に間に合わない。徳川方の本軍は秀忠なのである。

 

もう三成は目の前。
しかし家康は、決戦の場所は関ヶ原だろうと当たりをつける。
「天下分け目の大戦」が始まる。

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–{第43話ストーリー&レビュー}–

第43話ストーリー&レビュー

第43話のストーリー

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秀忠(森崎ウィン)率いる主力軍が来ない。真田の罠にはまってしまったのだ。西軍に圧倒的に数で劣る家康(松本潤)は、野戦での勝負を決断。決戦の地に関ヶ原を選ぶ。そして大量の密書をばらまき、敵に切り崩しを仕掛ける。優位に立つ三成(中村七之助)は呼応するように兵を進め、両陣合わせ15万が集結、天下分け目の大戦が始まる!一方、大坂では家康の調略に動揺する毛利輝元(吹越満)に、茶々(北川景子)は不満を募らせる。

第43話のレビュー

あんなに嫌だ嫌だと言っていたのに、家康の人生は戦ばかりだ。
乱世に生まれたのだから。

 
天下分け目の大戦のときがやってきた。

……というが、辿っていくとなくてもよかった戦なのでは、と思ってしまう。寧々(和久井映見)が言うように、豊臣家中の喧嘩であることは間違いない。

 
さて、形勢は家康(松本潤)のほうが不利だ。本軍3万の兵を任された秀忠(森崎ウィン)は間に合わない。と、すれば今ある兵で戦うしかない。
あとはここまで展開してきた調略がどこまで成果が出てきているかどうかだ。

鍵を握るのは小早川秀秋(嘉島陸)。まあ、石田三成(中村七之助)のことを裏切って家康につくわけなのだが……。大河でも何度も描かれている関ヶ原。気になってくるのはどのようにして裏切るのか、というところだろう。

今回の小早川はギリギリまで、戦を見極めてからの裏切りだった。進軍し、戦場のど真ん中に出た家康。敵はひるみ、味方の士気があがる。こうなると小早川も動かざるを得ない。
家康を「さすが戦巧者」と言い、大谷吉継(忍成修吾)の陣を攻める。ここから三成優勢だった戦が変わる。

裏切り、とは言うけれど、それぞれに家臣がいて民がいるわけで。己の行動が、その者たちにも影響を与えることになる。そう考えると、最善をその場その場で選んでいかなければならない、ということはあるだろう。とは言え、後世にわたって裏切者だと言われてしまう可能性はあるのだけれど。

 
徳川率いる東軍勝利で終えた関ヶ原。
西軍の武将たちはそれぞれが仕置きを受けた。そして捕縛された石田三成と、家康の対面。

「戦なき世で会いたかった。さすれば無二の友となれたはず」と語り掛ける家康。どうしてこのようになったのか。三成を戦に駆り立てたものとは、と。

しかし、三成は頑なだ。

「私の内にも戦乱を求むる心が確かにあっただけのこと」

それは誰の心にもあること。家康にもある。関ヶ原の戦を引き起こしたのは自分であり、あなただ、と三成。

そして、「乱世を生き延びるあなたこそ戦乱を求むる者」。

戦国時代を生き抜いたのだから、戦が嫌だと言っても、という話なのかもしれない。

「戦なき世などなせぬ。まやかしの夢を語るな」

しかし、天下人はまやかしと思える夢を実現するから天下人なのかもしれない。
戦乱を求めるのは自分のエゴ。多くの人のことを考えるなら……?

信長は天下をとったあとが大変だと言っていた。それは戦いを続けることより、「戦なき世」を保ち続けることの難しさを語っていたのだろう。
それでも、家康が望む、夢のような世は近づいている。

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–{第44話ストーリー&レビュー}–

第44話ストーリー&レビュー

第44話のストーリー

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家康(松本潤)は大坂城で、関ヶ原の戦勝報告を行う。茶々(北川景子)から秀頼と孫娘・千姫の婚姻を約束させられ、不満を隠せない。時は流れ、征夷大将軍となり江戸に幕府を開いた家康。ウィリアム・アダムス(村雨辰剛)らと国づくりに励むが、秀忠(森崎ウィン)の頼りなさが不安の種。そんな中、忠勝(山田裕貴)が老齢を理由に隠居を申し出る。一方、大坂では大野治長(玉山鉄二)が茶々の下に戻り、反撃の機会を伺っていた。

第44話のレビュー

なんとも寂しい。寂しいなあ。

関ヶ原の戦いが終わり、時代は徳川幕府誕生に向けて動いていく。

と、まあ歴史の教科書であれば数行で終わってしまうところなのだが、そこには多くの思惑が渦巻いている。

家康(松本潤)がすぐにその地位を盤石にできたかというとそうでもない。
何しろ、茶々(北川景子)がいる。天下を我が息子・秀頼に。
天下を手にすることは母・市に誓ったことだという想いがあるのだろう。家康と茶々の化かし合いのようなやりとりが続いていく。

そんな中、家康のもとには続々と若い才能が集まり始めていた。

戦いばかりの世が終わり、平和な世の礎を作る。そうなると、必要となる才も変わってくる。
家康自身の後継についてもそうだ。誰を自分の跡目にするか。
ただ天下を獲ればいいというわけではない。家康の中には、「平和な世を作る」という志がある。自分が死んだあとに、その想いを継いでくれる者がいなければならないのだ。

家康の跡取りとして目されるのはふたり。次男の結城秀康(岐洲匠)、そして秀忠(森崎ウィン)だ。

秀忠への家康の当たりは強い。関ヶ原に遅れたことを未だに怒られているのを見るのは辛い。
見かねた榊原康政(杉野遥亮)がみなの前で怒るのはいかがなものか、と諫言。秀忠のプライドを傷つけていたのは間違いない。そして、家康が秀忠ぐらいの年齢のときも頼りなかった、と。
確かに……戦に行くのは嫌じゃ嫌じゃとダダをこねていた。

しかし家康は穏やかに言う。
「自分にはお前たちがいた」と。
叱ってくれる家臣たちがいた。しかし、秀忠を叱れるのは自分しかいない。

家康は征夷大将軍の座を一年以内に秀忠に譲ることを告げる。
驚く秀忠に、本多正信(松山ケンイチ)は「才があるからこそ秀康を選ばない」ときっぱり。
その点、秀忠は全てが人並みも「偉大なる凡庸!」と言い切る。

才ある者が継ぐと、みな主に頼りきってしまう。そして一代でつぶれる。そう聞いて、あの顔やこの顔……が浮かぶのではないだろうか。
家康もまた、とびきりの才能があるかといったらそうではない。
だからこそ、迷うことなく秀忠を叱れるのだろう。

凡庸と言い切られて怒ったりしないのが秀忠の良いところである。人を疑わなさそうな爛漫さが、平和な世にはふさわしいのだ。
それにしても、森崎ウィンの笑顔がとてもイイ。

 

若手への世代交代が進む中、家康を支えてきた康政と本多忠勝(山田裕貴)にも老いがヒタヒタと近づいてきていた。

家康と共に、若いころから暴れていた二人の老いる姿はなんとも心に迫るものがある。
身体の老いと、時代が変わろうとしている今、退くべきである、という考え。なんとも切ない話である。確かに、家康が征夷大将軍となった。しかし、それは平凡な家康を支える彼らがいたからである。そして有能な人間とは引き際さえも心得ているのか。

同時に、共に時代を過ごしてきた康政と忠勝が夕日の下、いつから家康のことを主と認めていたか、などと話すシーンはまるで少年のようで微笑ましい。そして寂しい。
ふたりがナンパしていたことが懐かしい。

仲間たちが一足先に別の世にいってしまった。
が、家康はまだまだ踏ん張らなければならない。戦なき世を作るために。

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–{第45話ストーリー&レビュー}–

第45話ストーリー&レビュー

第45話のストーリー

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関ヶ原で敗れ、牢人となった武士が豊臣のもとに集結していた。憂慮した家康(松本潤)は、秀頼(作間龍斗)を二条城に呼び、豊臣が徳川に従うことを認めさせようとする。しかし、初めて世間に姿を見せた秀頼の麗しさに人々は熱狂。脅威を感じた家康は、秀忠(森崎ウィン)の世に憂いを残さぬためにも、自らの手で豊臣との問題を解決しようとする。そんな中、豊臣が大仏を再建した方広寺の鐘に刻まれた文言が、大きな火種になる!

第45話のレビュー

嫁ぎ先に茶々がいるの、嫁としては荷が重すぎるな……と思ってしまったのだが、皆さまはいかがだろうか。

立派に成長した秀頼(作間龍斗)。
もともと秀吉の人気は高く、その息子である秀頼も多くの者たちの心を掴んでいた。

これ以上、豊臣に力を持たせるわけにはいかない……家康(松本潤)は秀頼を二条城に呼び、今の力関係を知らしめようとしたが、そんな思惑は豊臣側もお見通し。
家康と相対した秀頼はハツラツと挨拶をする。

ここで繰り広げられる、どちらが先に部屋に入るか、どちらが上座に座るかの駆け引き。
そんな……しょうもな……と思ってしまうが、現代でもこの辺りは重要視される場面はたくさんある。

秀頼は自分の妻の祖父である家康より先に入るわけにはいかない、という。
そして最終的には家康を上座に座らせる。長らく面会に来なかった無礼を詫びるが、その笑顔はさわやかで余裕が見られる。

この会見で秀頼の評判はうなぎのぼりに。当然、徳川家は礼儀知らずの無礼者とそしりを受ける。まんまと茶々(北川景子)と秀頼の思うつぼ、ということである。
秀頼について感想を求められ、「涼やかで様子のいい秀吉」と家康。
難敵であることは、間違いない。

そんな秀頼の様子にすっかり自信を無くしているのが秀忠(森崎ウィン)だ。

自分は凡庸である。
家康が死んだときのことを思うと夜も眠れない。

そう赤裸々に語り、さらには秀頼に「負ける自信がある!」と堂々と言う。

己の力を過信しているよりもいいのでは……と思うが、秀忠からすれば毎日が恐ろしくて仕方がないのだろう。

そんな秀忠に向かって、家康は以前の自分とよく似ている、と微笑む。
秀忠の弱いところは、かつての家康とそっくりだ。しかし、戦乱の世では許されなかったこと。
平和な世では、間違いなく秀忠の才は生きる。人を信頼し、託し、共に成功を喜ぶ。平和な世なら、確かにそんな人と働きたい。

秀忠のためにも、家康は再び戦乱を招くようなことがあってはならない、と思っているようだ。

 秀忠を力強く励ますことができたのは、今川氏真(溝端淳平)の存在も大きかったのだろう。
家康のもとに訪れた氏真は、今は妻と共に歌を詠んで過ごす穏やかな日々を送っている。だからか、氏真の表情はとても落ち着いたものだ。

戦のない世など来ないのかもしれない。そう弱音を吐く家康の想いを受け止め、優しく励ました。
かつてはライバル同士であった家康と氏真がこのような関係になるとは。

今回のサブタイトルは「二人のプリンス」。秀頼と秀忠、そして家康と氏真のことを指しているのかもしれない。

 
すでに時代の主役は秀忠、秀頼に移り始めている。
そんな中で、家康が成すのは自分たちの時代の後始末。
大切な者たちのために、家康はまだ休むことはできない。

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–{第46話ストーリー&レビュー}–

第46話ストーリー&レビュー

第46話のストーリー

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豊臣家復活を願う方広寺の鐘に、家康(松本潤)を呪う言葉が刻まれたという。家康は茶々(北川景子)が徳川に従い、人質として江戸に来ることを要求。激怒した大野治長(玉山鉄二)は、両家の仲介役・片桐且元(川島潤哉)の暗殺を計画。家康はついに14年ぶりの大戦に踏み切る。全国大名に呼びかけ、30万の大軍で大坂城を包囲、三浦按針(村雨辰剛)に用意させたイギリス製大筒を配備。そんな徳川の前に真田丸が立ちはだかる。

第46話のレビュー

戦争がしたければ、適当な理由でもいいのだな、と思い、口の内側を噛み締めてしまった第46話冒頭。

秀吉(ムロツヨシ)の悲願であった方広寺の大仏殿再興。その開眼供養を控え、徳川家はザワついていた。
問題となっていたのは大仏殿の鐘に刻まれた「国家安康君臣豊楽」という銘。
「家康」の名前を胴と首に切り分け、豊臣を主君とする世を楽しむ、ということであるそうな。
え~そんなひどいこと書いてたの? 心が清らかだから気づかなかった! などと言ってスルーできないものだろうか、と思ったが、できないらしい。
放っておけば徳川家の権威は失墜、処罰しようものなら豊臣をつぶすための言いがかりだと言われる。嫌な一手だ。

戦いを避けたかった家康(松本潤)だが、豊臣方はそうではない。もう、仕方がない。
鐘をすりつぶし、秀頼(作間龍斗)が国替えするか、江戸に参勤するか、茶々(北川景子)を人質として江戸に差し出すか、という究極の三択を繰り出す。
が、茶々が受け入れるはずがない。そうなれば、進む道はひとつ。

戦である。大阪の陣だ。

家康が出陣することとなるが、秀忠(森崎ウィン)は気が気ではない。娘の千姫(原菜乃華)は秀頼の正室である。もし、共に戦に巻き込まれることとなったら……。
それなら自分が総大将で、と考える。

しかし、家康は譲らない。

「この戦は徳川が汚名を着る戦」「汚れるのは自分ひとりで十分」

そばにいるのは本多正信(松山ケンイチ)だ。
かつては家康を裏切った男が最後までそばにいることになるとは。
年を経ても、変わらないふたりの小気味の良いやりとりが、おもしろく、切ない。

戦は数で勝る徳川が優位で進む。

しかし、大阪城は難攻不落。
唯一の弱点をついて侵入しようとするが、そこに待ち構えるのは真田信繁(日向亘)だ。有名な真田丸である。次々と徳川の兵を鉄砲で仕留めていく。
信繁を演じる日向亘は今期のドラマで「うちの弁護士は手がかかる」でポンコツ(?)パラリーガルの岩淵を演じているが、ギャップにめまいがする。
その凛々しさよ……! 今年は「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」や「君となら恋をしてみても」などで瑞々しい高校生役を演じていたが、ここにきてこのギラギラした感じは罪である。

真田の善戦、落ちぬ城。

家康は用意していた大砲を使うことを決める。秀頼がいる場所を目指して。

これに秀忠の顔色が変わる。秀頼のそばには千姫がいる。

止めようとする秀忠に、家康は「主君たる者、身内を守るために多くの者を死なせてはならぬ」と言う。
それは家康が母から言われた言葉。
でも、家康はかつて自分の妻である瀬名(有村架純)と子どもたちを助けるために家臣たちを動かした。

大砲は大阪城に届いた。逃げ惑う女たち。
その中には茶々や千姫の姿がある。千姫は砲撃に震え、動けずにいた。そしてその上には攻撃によって破壊された天井部分が。そのままでは直撃する……というところで千姫をかばったのは茶々だった。
嫁愛おしさにかばったのか、それとも、家康の助けを待っていた母を思い出したのか、いや前者か。
茶々は鬼のような顔を見せることもあれば、どこか弱い、人間らしさも見せる人だ。

続く攻撃に秀忠は呆然とし、それから家康に食ってかかる。

「こんなのは戦ではない!」
かつて、信康(細田佳央太)が長篠の戦いで同じように問いかけていた。
家康はまるで信長のように「これが戦だ」と非情な答えを返したけれど、「この世で最も愚かで醜い人の所業」と続ける。
だから、秀忠には平和な世を築け、というメッセージか……。

一方、大阪城。自分をかばい、意識を失った茶々を見て千姫が叫ぶ。

家康からはもう乱世を繰り返させまい、という強い想いが感じられる。が、ひとつ間違えれば、第二の茶々を生み出すことになるのでは、と思わずにはいられない。

ひとつを守ろうとすれば、どうしても手放さなければならないものがある。
手放された側の傷はどうしたって、癒えない。憎しみで傷口は深くなるばかりだ。

※この記事は「どうする家康」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第47話ストーリー&レビュー}–

第47話ストーリー&レビュー

第47話のストーリー

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家康(松本潤)の大筒による攻撃で難攻不落の大坂城は崩壊。茶々(北川景子)の妹・初(鈴木杏)と阿茶(松本若菜)が話し合い、秀頼(作間龍斗)が大坂に留まることと引き換えに、城の堀を埋めることで和議が成立する。だが乱世を望む荒武者たちは全国から大坂城に集まり続け、豊臣を滅ぼすまで平穏は訪れないと、家康は再び大坂城に兵を進める。そんな中、初と江(マイコ)は、姉・茶々を止められるのは家康だけだと訴える。

第47話のレビュー

乱世も、佳境へ。

家康(松本潤)が大阪城に大筒で攻撃を仕掛けた。豊臣家が受けた打撃は大きい。
長引くかと思われた戦は和議へと進む。

和議は家康の側室・阿茶(松本若菜)と茶々(北川景子)の妹・初(鈴木杏)によって進められた(そして初の後ろに控える大竹しのぶ演じる大蔵卿局。突然の登場に二度見した)。
秀頼(作間龍斗)が大坂に留まることと引き換えに、大坂城の堀は埋めることに。難攻不落と言われた城は、これで丸裸の状態だ。

しかし、これで平和がやってきた、というわけではない。大坂城には荒武者たちが集まり続け、いつなんどき戦が起こるか分からない。
何年も続いた乱世。乱世でなければ生きていけない。そう思う者たちも少なくないのだ。

堀も埋められ、豊臣に勝ち目はない。それでも茶々が天下をとること……家康にこだわるのはなぜなのか。
紐解かれていくのは、茶々の心のうち。

寧々(和久井映見)は言う。親の仇の男の側室になり、子どもを産み、家を乗っ取った。
頭のいい茶々があそこまで意地を張るのは家康のせいではないか……。
そして、初と江(マイコ)も茶々を止められるのは家康だけだと言う。

茶々は家康を憎んでいた。どうしてそこまで憎むのか。母を助けにきてくれなかったからなのか。
それもある。が、同時に、母が慕っていた家康のことを茶々も慕っていたのだ。母を助けに来てくれなかった。つまりは自分のことも助けに来てはくれなかった。
裏切られたという気持ちが膨らみ、憎しみへと変わる。

愛情から憎しみに変わった心は重い。今の茶々を作ったのは家康だったのだ。

家康は茶々に手紙を書く。
茶々を乱世に引きずり込んだのは自分。乱世の生き残りを根こそぎ連れて滅ぶ覚悟がある。
一方で秀頼を生き延びさせることが母の役目だとも説く。かつて、母であるお市がそうしたように。

茶々が解放すれば、秀頼は自由になれるのか……。
茶々も一旦は決意をしたが、秀頼の自由など、とっく存在していなかったのだ。秀頼は茶々が育てた。家康を憎むように。乱世を生きるように。秀頼の心のままに、と決断をゆだねるが、秀頼は家康との戦いを選ぶ。

茶々の言葉が全てであった秀頼が、違う道を選ぶことなどできない。
織田家と豊臣家の血を引いた秀頼こそが乱世の最後の生き残り。
そして、ある意味、家康がやってきたことのツケがここで回ってきた、とも言えるではないのか。

弱虫で泣き虫で、なかなか判断が下せずに手遅れになったこともたくさんあった。そんな家康の行動が、乱世を引き延ばしていたのか、とも思う。
誰よりも戦のない世を望んでいたはずなのに。でも、望んではいたけど、自分のそんな世を作ろうとはなかなか決意ができなかった。
今の彼にできることは、茶々に伝えたように乱世の生き残りを連れて死ぬことだけ。

もう、新しい世は目の前。
戦国の世を生き抜いてきた者たちの最期が近づいている。

※この記事は「どうする家康」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第48話ストーリー&レビュー}–

第48話(最終話)ストーリー&レビュー

第48話のストーリー

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家康(松本潤)は豊臣との決戦に踏み切り、乱世を終える覚悟で自ら前線に立った。家康の首をめがけ、真田信繁(日向亘)らは攻め込む。徳川優勢で進む中、千姫(原菜乃華)は茶々(北川景子)と秀頼(作間龍斗)の助命を訴えた。だが家康が下した決断は非情なものだった。翌年、江戸は活気に満ちあふれ、僧・南光坊天海は家康の偉業を称え、福(のちの春日局/寺島しのぶ)は竹千代に“神の君”の逸話を語る。そんな中、家康は突然の病に倒れる。

第48話のレビュー

家康は神か、狸か、それとも。

豊臣と徳川、決戦の時がついに訪れた。大坂夏の陣。

しかし、堅牢だったはずの大坂城は堀を埋められ、丸裸状態。豊臣と共に戦った武将たちも次々と討ち死にしていく。

家康(松本潤)の陣には真田信繁(日向亘)が突っ込む。乱世の亡霊たちをみな連れて死んでいく。そう言った家康だが、もはや死ぬことを待ちわびていたようにも見える。

勇猛果敢な信繁も討ち死にし、大坂城からは火の手が上がる。茶々(北川景子)と秀頼(作間龍斗)は腹を括っていた。千姫(原菜乃華)だけを徳川に返し、自分たちは大坂城で死ぬつもりだった。

千姫は抗う。自分は豊臣家の人間、逃げるなら秀頼と茶々と一緒でなければ、と。秀頼たちはそれを許さない。千姫を愛しているから。千姫も秀頼と茶々を愛しているから受け入れられない。

徳川の陣に連れられてきた千姫は家康に向かって頭をこすりつける。茶々と秀頼を助けてほしい、と。
秀頼は前途ある若者。自分だけではなく、慕っている者が多くいる。

家康は首を横に振る。戦とはそういうもの。そして前途ある若者ならなおさらだ。何より、茶々と秀頼が死ななければ、この乱世は終わらない。

炎に包まれた大坂城。そこで秀頼が腹を斬り、武将たちも次々と自害する。ひとり残った茶々。炎の中にいるその姿は美しく、悲しい。最期に紡ぐ言葉は、重い。

「日ノ本か。つまらぬ国になるであろう。正々堂々と戦うこともせず、万事長きものに巻かれ、人目ばかりを気にし、影でのみ妬み嘲る。優しくて卑屈なかよわき者たちの国に」

その言葉に胸が痛む。何か、現代に問いかけているような。

強い口調で言い、怒りをにじませるが一転、見上げ、言う。

「茶々はようやりました」

「ようやった」と彼女を迎え抱きしめてれる存在がいることを願ってやまない。

かくして、平和な世が訪れる。

平和な世が続くためにはなさなければならないことが多い。それらの役目は少しずつ次の世代へと引き継がれていく。

また、南光坊天海によって家康の功績を後世に残すための書が作られていた。天海を演じるのは昨年、「鎌倉殿の13人」で北条義時を演じた小栗旬だ。事前にサプライズ出演として発表されていたが、なるほど、言われていないと分からなかったかもしれない……。

「吾妻鏡」と「源氏物語」を手に取り、ある種、大河と大河をつなぐ役割を果たした。そんな天海のセリフは「かの源頼朝公にしたって、実のところはどんなやつか分かりゃしねぇ」。

いや本当にねぇ……と遠い目をしてしまう(昨年は何度「全部頼朝のせいだ」と思ったことか)。

そして家康には最期の時が近づいていた。

一方では神の君と崇め奉られ、一方では狸とそしられる。どちらにせよ、恐れられ、怖がられていることは間違いない。人非ざるものだから。阿茶(松本若菜)はそんな家康の人生を幸せだったのだろうか、と慮る。

家康は自分の人生を振り返ったときに、何を思っていたのだろう。この物語の中での家康は決して幸せなものだったとは思っていなかったはずだ。

そんな家康のもとに訪れたのは瀬名(有村架純)と信康(細田佳央太)だ。ある意味、家康の「始まり」ともなったふたりが家康の人生を肯定する。自分の跡を継いでいく者たちが鎧を着て戦に出なくて済む世を作った。それは何よりの功績だ。そして瀬名が望んだ世だ。

夢か現か、家康が見るのはかつて家臣たちと過ごした時間。信康と五徳の祝言の日だ。信長(岡田准一)から贈られた鯉がいなくなり、大騒ぎする家康と家臣たち。でもみんなで大笑いして、えびすくいを踊って。きっと、家康が一番楽しかった時なのだろう。

乱世を生き抜き、恐れられた家康はひとりで床に臥せっていたが、彼を笑顔で待っている者たちがたくさんいる。

どうする、と問いかけられ続けた家康の人生の答えが、そこにはあった。

※この記事は「どうする家康」の各話を1つにまとめたものです。

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