「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第24回を紐解いていく。
[※本記事は広告リンクを含みます。]
信じられんことが
東京から視察に来た松永大星(新納慎也)と辛島一平(安井順平)は梅丸少女歌劇団のレビューを見て、スズ子(趣里)と秋山美月(伊原六花)を東京の梅丸楽劇団に来ないかと誘います。
ちょうどスズ子も秋山も、いまの自分に満足していなくて、自分を変えたくて、何かしたいと思っていたところ。勝負したいと考えます。なんで、私じゃないのと苛立つリリー白川(清水くるみ)はお約束。
タイ子(藤間爽子)も背中を押してくれたので、さっそく父母に相談すると、思いがけない反応が……。
梅吉(柳葉敏郎)はすんなり賛成しますが、ツヤ(水川あさみ)が猛反対。
これまでずっと、スズ子のやりたいことをなんだって全力で応援してくれたツヤがなぜ……。
やっぱり、本当の親子じゃないから? なんて疑心暗鬼もよぎりますが、六郎(黒崎煌代)は、本当の家族だからこそ、離れたくないのだと言います。鋭い。
ここのところ、六郎が大活躍です。ふだんは少しズレた言動をしがちですが、感性が豊かで、ものごとの本質を捉える人物なのです。すばらしい。
ツヤの気持ちを想像すると、本当の家族ではないから、離れていると、縁が切れてしまうのではないかというおそれがあるのではないでしょうか。これまでスズ子を目に入れても痛くないほどかわいがっていたのは、本当の子じゃないからという矛盾からで。
いろんな後ろめたさや心配と、止められないあふれる愛情がぐちゃぐちゃに混ざり合って、スズ子を過保護のように扱っていたツヤの苦しい思いを、スズ子はなかなか理解できないでしょう。
スズ子のほうは、このまま実家にいると、気まずいので、なんとかしたかった。
東京に出れば、日々の気まずさは味わなくていいし、ツヤがいつものように全力で応援してくれたら、
家族愛を再認識できると思っていたのでしょうけれど……。
本当の家族であることをツヤとスズ子、互いが実感するには、遠く離れても切っても切れないものがあることを自覚することなのでしょう。
一緒にいるだけが家族ではないのです、たぶん。
もやもやするスズ子は易者(なだぎ武)に占ってもらうと、信じられないことが起こる、と言われます。
いつも当たらない占いが、このときだけ当たってしまい……。
かなり衝撃的な、信じられない出来事でした。いや、もう、レビュー書いてるどころじゃない。何も手につかないほどの脱力感を視聴者にくらわす出来事であります。
第23回で、あんなにキラキラ、将来に思いを馳せていた大和礼子(蒼井優)が……。
東京から来たユーモラスな視察のふたり(セレブな松永と小市民的な辛島の組み合わせが絶妙)で盛り上げて、スズ子とツヤの母子の確執で心を揺らして、久しぶりのタイ子の日本舞踊がしっとり色香があって素敵で、大和さんのことをすっかり失念していたところに、ドカン!と来た。
15分のなかに、いろんなことがあって、濃密な回でした。
(文:木俣冬)
木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中
–{「ブギウギ」第5週あらすじ}–
「ブギウギ」第5週あらすじ
ツヤ(水川あさみ)と梅吉(柳葉敏郎)が本当の両親ではないと知ったスズ子(趣里)は、キヌ(中越典子)の元を訪ねる。そこで、スズ子は自分が生まれた時の状況を知るのだった…。
3年後、スズ子は歌が認められ、劇団の二本柱になっていた。しかし、スズ子は自分の歌にどこか物足りなさを感じていた。そんな時、会社から東京での挑戦を打診される。スズ子は東京へ行きたいとツヤに相談するのだが…。
–{「ブギウギ」作品情報}–
「ブギウギ」作品情報
放送予定
2023年10月2日(月)より放送開始
出演
趣里、水上恒司 、草彅 剛、蒼井 優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎 ほか
作
足立紳、櫻井剛<オリジナル作品>
音楽
服部隆之
主題歌
中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」(作詞・作曲:服部隆之)
ロゴ・タイトル制作
牧野惇
歌劇音楽
甲斐正人
舞台演出
荻田浩一
メインビジュアル
浅田政志
語り
高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
制作統括
福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー
橋爪國臣
演出
福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠 ほか