「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第15回を紐解いていく。
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橘アオイの真剣さ
会社の上層部の横暴にストライキを行う決意をする大和礼子(蒼井優)に、お客様のためにストライキを反対する橘アオイ(翼和希)。
ふたりが話し合うロッカールームに花が飾ってあるところに、彼女たちの心の清らかさを感じます。賃金削減状況なのに花を飾り続けるってすてきです。
社会的理想に燃える礼子もすてきですが、お客様を優先し、お客様には現実を見せることなく夢を見ていただこうとするアオイがとてもとてもすてきでした。ストライキは「最悪の現実や」というセリフが印象的。「ひとりになっても踊る」というアオイ。さすが、羽がなくても踊っただけはあります。
はじめて連続ドラマに出演した翼和希さんが初々しく、ワンシーンワンシーン、全力で演じているので胸を打ちます。いや、もちろん、蒼井優さんだって趣里さんだって全力だと思います。揺らがない信念をもった表情をする蒼井さん、「なんやさっきから聞いとったらコラァー」と凄んだり、真面目なのに「ストライキ」を「ストライク」と間違えたりするスズ子を懸命に演じる趣里さん。おふたりとも、切実さが伝わってきます。ただーー。
やっぱり映像ではじめて見る翼さんのフレッシュさが勝るのです。感情がビシビシ、発泡水のように弾けて見えました。
要するに、全員、ものすごい緊張感でいい演技をしていて、それぞれの生きる道を求める本気度がビシビシ伝わってくる回でした。
前にもレビューに書いた気がしますが、「あさイチ」にゲスト出演したとき、滝に打たれているときの全力や、動物を見て、声にならない声を挙げている表情など、一挙手一投足がフレッシュな、翼さん。きっとファンになった人は多いと思います。彼女が所属するOSKを観にいきたくなりました。
話を戻します。
ストライキなんてしたら、ただでは済まない。なんとしても止めたい。「絶対に行かせへん うちは うちは あんたのことを……」(片方の目が隠れているアップがまたすてき)と通せんぼするアオイを、そっと抱きしめる礼子。ふたりが長年、育んできた感情が滲みます。
その前に、スズ子(趣里)たちが、アオイは礼子が好きなのだという話をしていましたが(好きを指摘したのはリリー白川〈清水くるみ〉)アオイの“好き”はどの好きなのでしょう。友情の好きなのか、恋に近い好きなのか。
はっきりしないところがまた余韻があってよかったです。
一方、礼子が好きと言っていた股野(森永悠希)は、礼子の意思に反して一時金を受け取っているへたれであります。音楽家をやる場所がほかになくて仕方ないのです。一時金を惜しそうにした梅吉(柳葉敏郎)といい、男性陣はへたれに描かれています。そして、ツヤ(水川あさみ)はなぜ、へたれの夫・梅吉を支え続けるのかというと「女の意地」。映画の夢を捨てられない梅吉と同じく、ツヤもまた、梅吉への愛が捨てられないってことなのでしょう。「ブギウギ」はたぶん、やめられない人たちの物語なのです。
礼子は、アオイの意思を尊重しますが、自分の意思も曲げません。お客様を大事にする前に自分を大事にすることと礼子は考えています。
そして、ストライキに突入。仲間たちと山寺に籠城します。なんで、山寺……。
週末は、華やかなラインダンスが見られるかと思いきや、来週までお預けとは、いけずーー。
(文:木俣冬)
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–{「ブギウギ」第3週あらすじ}–
「ブギウギ」第3週あらすじ
昭和8年、18歳になったスズ子(趣里)は劇団を脇役として支えていた。同期のリリー白川(清水くるみ)や後輩の秋山美月(伊原六花)らが人気となる一方で、スズ子は自分自身の才能や売りは何なのか迷っていた。そんな折、同じく芽が出ない同期の桜庭和希(片山友希)が、劇団を辞めると言い出す。大和礼子(蒼井優)は必死にみんなをまとめようとするのだが…。さらに、会社からは人員削減や賃金削減が通告されてしまう。
–{「ブギウギ」作品情報}–
「ブギウギ」作品情報
放送予定
2023年10月2日(月)より放送開始
出演
趣里、水上恒司 、草彅 剛、蒼井 優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎 ほか
作
足立紳、櫻井剛<オリジナル作品>
音楽
服部隆之
主題歌
中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」(作詞・作曲:服部隆之)
ロゴ・タイトル制作
牧野惇
歌劇音楽
甲斐正人
舞台演出
荻田浩一
メインビジュアル
浅田政志
語り
高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
制作統括
福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー
橋爪國臣
演出
福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠 ほか