「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第123回を紐解いていく。
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標本を背負って逃げる万太郎
大正12年、9月1日、万太郎(神木隆之介)も六十代。孫の虎太郎(森優理斗)も愛くるしい。
資産家・永守(中川大志)の協力を得て、いよいよ図鑑を出版することに。
印刷する原稿の入稿を翌日に控え、大事な原稿をこの手で印刷所に届けようとしていたとき、大きな地震が……。
関東大震災です。
万太郎の書斎にうず高く積まれた標本は雪崩のように崩れます。
寿恵子(浜辺美波)を助け、長屋の井戸のところに避難。千歳(遠藤さくら)も虎太郎を必死にかばいます。
ほぼ全壊した長屋を真俯瞰で撮影。古い長屋ですから、地震に耐えられなかったでしょう。長いこと使用した長屋のセットが思い切り破壊されています。
外では、また揺れが来る、神社に避難しようという声が聞こえます。
ここで「神社」です。合祀しようとしていた神社は、こういうとき、避難場になるのです。
そうしていると、火事が……。
成長した千鶴(本田望結)が戻ってきて、五人で避難しようとしますが、万太郎は標本も避難させようとします。仕方なく、寿恵子たちも手伝って……。
このとき万太郎は、今まさに入稿しようとしている「原稿」よりも、まず標本と考えます。やっぱり標本が第一。「標本を救わんと」と、図鑑を作ることよりも、植物のひとつひとつの存在表明のようなものを大事にしているのだなと感じました。
あるだけ持って避難しますが、このパニック状態のなか、背負子は邪魔で、まわりからも迷惑がられます。そのうえ、ドサクサに紛れて物盗りもいて……。
朝ドラでは震災のほか、関東大震災が描かれてきました。
朝ドラ辞典2.0 【関東大震災:かんとうだいしんさい】大正時代を舞台にした作品では外せない出来事。主人公やとりまく人たちの大切な人が亡くなる悲しみが描かれることが多いが、喪失を乗り越えて立ち上がっていく転換点にもなる。忠実な奉公人を失う「おしん」、夫が行方不明になる「あぐり」、妹にプロポーズした人物が亡くなる「花子とアン」、実家の安否を心配したり、恩師が亡くなったりする「ごちそうさん」、大阪から救援物資をもって行ったことをきっかけに主要キャラの生き別れの母との再会が展開する「わろてんか」など。関連語:喪失感 戦争 震災
その頃、千歳の夫・虎鉄(濵田龍臣)は神田の大畑印刷所にいました。大畑(奥田瑛二)は元火消しの矜持として、火事を食い止めようと奮起します。
ここで、大畑がかつて火消しであった設定が生きてきます。
実際に当時、神田和泉町と神田佐久間町の一角だけが焼け残ったそうです。
NHK首都圏ナビの2023年5月30日の記事によると、こうあります。
言い伝えや専門家の分析では、周囲に耐火性のある建物があったことなど複数の好条件が重なったことに加え、このポンプ所などの水利施設を使って住民たちが必死の消火活動を行ったことが要因とされています。
「らんまん」では、この歴史のなかの人たちの魂を、江戸の心意気と技能・火消しの生き残りである大畑に託して描きたかったのではないでしょうか。
万太郎が61歳ですから大畑はそうとうの年齢でしょう。大丈夫なのかな。でも実話があるからたぶん大丈夫。
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第25週あらすじ}–
「らんまん」第25週「ムラサキカタバミ」あらすじ
万太郎(神木隆之介)は、自分の植物学を貫くために大学を辞職。そして、時代は変わり大正12年。東京を襲った関東大震災は下町を焼き尽くし、十徳長屋も被害を受ける。万太郎たちは、間一髪で持ち出した標本と共に寿恵子(浜辺美波)の店に避難。全ての標本を救えず落ち込む万太郎だが、焼き荒れた道ばたで見かけた「ムラサキカタバミ」に勇気づけられ…寿恵子もまた大きな決断をする時がきていた。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか