【おすすめは4DX】映画『ホーンテッドマンション』が「楽しく愉快なお化け屋敷」を目指した意義とは?

映画コラム
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『ホーンテッドマンション』が2023年9月1日(金)より公開中。ホラーというジャンルではあるが、後述する理由もあって怖さはマイルドであり、様々な屋敷内の“仕掛け”をたっぷり楽しめるコメディよりの作風となっている。

その時点で子どもから大人までおすすめできる万人向けの映画なのだが、さらに4DXで観ることもおすすめしたい。何しろ元々がディズニーランドの同名の人気アトラクションなので、まさにアトラクション的な演出を楽しめる4DXとは相性抜群。遊園地に行かなくても、しかも2時間の映画のボリュームで楽しめるのはお得というほかない。

また4DXではほぼほぼ吹き替え版となるが、八代拓・片岡愛之助・土屋アンナ・温水洋一・小林幸子らによる声のハマりぶり&演技も素晴らしいので、安心してご覧になってほしい。さらなる魅力を記していこう。

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予想外のスリルも味わえる4DXの魅力

本作の4DXの楽しさは、屋敷の中でおっかなびっくりな、でも愉快なギミックにマッチした演出の数々にある。例えば以下のようなものだ。

1:座席の動き

これは本家アトラクションと同様。映画の中でキャラクターの乗った椅子が(アトラクションよりもはるかに速く)移動する場面があり、それに合わせて座席が上下左右にぐわんぐわんと動くのだ。

2:吹き付ける水

「屋敷が舞台なのに水が出る場面があるの?」と思うかもしれないが、これが「ある」のだ。その理由は秘密にしておこう。場面によっては、上から落ちてくる「雨」、そして劇場全体を吹く風との合わせ技での「嵐」の演出もある。

3:プシュッと吹き付けるエアー

本作ではいわゆるポルターガイスト現象より何かが飛んでくる場面があり、それをギリギリで避けたりする様をプシュッと吹き付けるエアーで表現していたりする。よりスリルを味わえるだろう。

4:フラッシュ

これも詳細は秘密だが、とても効果的な場面でスクリーン斜め上が光る演出があるのでお楽しみに。

本作は暗く陰惨なタイプのお化け屋敷ではなく、やはり子どもが観ても大丈夫なエンターテインメント。幽霊が襲ってくるだけでない、様々なアクシデントが起こる屋敷の中の冒険こそを楽しんでほしいのだ。そこに4DXを盛れば、さらに楽しいのは言うまでもない。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』的なクセの強すぎるキャラたちの共闘

本作のさらなる特徴は個性豊か……という形容を超えて、良い意味でクセの強すぎるキャラクターたちだ。

  • 科学者でもあるため幽霊の存在を信じていない心霊写真家
  • 悪魔祓い専門として小遣い稼ぎをしている神父
  • 何かと派手で大袈裟にしがちな性格の霊媒師
  • 幽霊の研究に熱心なあまり頑固で気難しい歴史学者
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一方で、新たな生活を始めようと屋敷に引っ越してきたシングルマザーの医師と、その9歳の息子は比較的常識人。その母子が屋敷内にいる総勢999人の幽霊たちに悩まされ、実質的な主人公である心霊写真家を家と招き入れるのだが、幽霊の存在を信じていない彼が「はいはい」となあなあで対応する様がなんとも可笑しい。

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いうまでもなく、その後に彼はガチの心霊体験に遭遇し、一転して幽霊を本気で信じなくてはならなくなる。また、こうした住む家の中に幽霊が出るタイプのホラー映画は「だったら引っ越せばいいじゃん」ということがよくツッコミどころにもなるのだが、本作ではそこにもとある理由づけがあり、それこそが大きなコメディの見せ場にもなっていたので感心した。

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その後、幽霊退治のために集まったクセの強すぎるキャラクターたちは、出会ったばかりということもあって協調性がなく、やっていることも空回りでドタバタしているばかり。

そんなダメダメな彼らが幽霊たちの謎を解くために行動し、どのようにお互いを理解し、助け合い問題に立ち向かっていくか、というドラマも見どころとなっている。

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また、普段は社会のはぐれもので、人生の負け犬でもあるキャラクターたちが連帯し共闘していく様は、現在レンタル配信中の『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』にも通じている。主人公の抱えたとある葛藤と、それを乗り越える過程にグッと来ることも両者は共通していた。

2023年版『ホーンテッドマンション』はホラー版『ダンジョンズ&ドラゴンズ』という言い方だってできるだろう。

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–{初めだけはちょっと怖いけど……な元々のアトラクションの魅力}–

初めだけはちょっと怖いけど……な元々のアトラクションの魅力

ここで、元々のディズニーランドのアトラクションのことについても触れておこう。幽霊屋敷によくある不気味な屋敷にすることも検討されていたそうだが、ウォルト・ディズニーは「開園したばかりのディズニーランドに、今にも崩れ落ちそうなボロ屋敷があると雰囲気が壊れてしまう」と考え、豪華で立派なプランテーションハウスにすることを決めたのだそうだ。

そして、実際のホーンテッドマンションは、一般的なお化け屋敷で重要視される恐怖体験ではなく、「アトラクションを体験しながら徐々に感じられるコメディ要素」を強めている。初めは不気味な部屋をいくつか通り、ポルターガイスト現象や半透明の幽霊を垣間見た後、一転して大勢の幽霊たちのパーティや陽気な歌を聴いたりもする。

いわば、「初めだけはちょっと怖いけど、楽しそうでかわいらしくさえある幽霊と屋敷のことが好きになる」というアトラクションになっているのだ。

“愉快なお化け屋敷”というコンセプトそのものが斬新であるし、楽しい思い出を作る夢の場所のディズニーランドにも見事にマッチしている。子どもも大人も楽しめるアトラクションを追及し、多数のアーティストの力によって愛されるエンターテインメントを作り上げたこと、それ自体が偉大だ。

そして、今回の映画『ホーンテッドマンション』にも陽気で愉快な仕掛けが踏襲されている。終わらない廊下(エンドレスホールウェイ)・伸びる部屋(ストレッチングルーム)・書斎・屋根裏部屋など、美術セットが完璧に再現されている。アトラクションのファンはもちろん、乗った記憶が少しでも残っている方でも、それぞれに「あったあった!」と嬉しくなるだろう。

音楽も時にはおどろおどろしく、時には勇ましく映画を盛り上げてくれるし、アトラクションでおなじみの楽曲「グリム・グリニング・ゴースト」のアレンジ版も聞こえてくるので、ぜひホーンテッドマンションのファンは楽しみにしてほしい。

2003年版とは異なる&同じ魅力がたくさんある

アトラクションのホーンテッドマンションが実写映画化されたのはこれが2度目。2003年版(日本公開は2004年)は、不動産を営んでいる夫婦とその2人の子どもが幽霊屋敷の騒動に巻き込まれるという、今回の2023年版とは少し異なる物語が展開していたのだ。

主役をひとつの家族に絞った2003年版と、ダメダメな仲間との共闘が描かれる2023年版はその時点で違った魅力がある。

2003年版は一時的に離れ離れになった子どもたちと妻のために奔走する主人公に感情移入しやすいし、かなりギョッとする(小さい子が観ると怖すぎるかもしれない?)ハラハラドキドキのシチュエーションもふんだん。エディ・マーフィのコミカルなリアクション芸もたっぷりと楽しめる。この2作は別の魅力を持つ映画として楽しめるだろう。

それでいて、「屋敷を訪れた人間たちが(初めこそ自分本位の行動するが、いつしか)幽霊たちの問題を解決しようと奮闘する」という物語の流れは両者で共通。2003年版の過去の物語は具体的な言及はないものの人種差別の問題が反映されるように思えたし、2023年版では性別も年齢も人種もバラバラになったチームが集結するというのも感慨深い。

どちらも楽しいエンターテインメントでありながら、「今までは縁もゆかりもなかった誰かのためにみんなで行動する」尊さを噛み締められる内容とも言えるだろう。

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また、2003年版はシンプルな内容にふさわしく上映時間が88分と短いのも長所。一方、2023年版は過去に起こったことの説明が多い上に複雑ですんなりとは納得しにくく、そのためもあってか上映時間が122分と長めでやや散漫な印象があるのが個人的に不満に感じた部分だったりもする。

とはいえ、それも個人的な好みの範疇。両方を観た人と「2003年版と、2023年版のどちらが好き?」と話し合ってみるのも一興だろう。単なるお化け屋敷を超えた楽しく愉快な冒険を、ぜひたっぷりと体験してほしい。

▶︎2003年版『ホーンテッド・マンション』を観る

(文:ヒナタカ)

–{『ホーンテッドマンション』作品情報}–

『ホーンテッドマンション』作品情報

ストーリー
物語の舞台は999人のゴーストが住む館“ホーンテッドマンション”。生活を始めるため医師である母親と9歳の息子は、ニューオーリンズの壮大だけどちょっと不気味な館に引っ越してくる。しかし、この館は何かがおかしい・・・。二人の想像をはるかに超える不可解なことが止まらない。この館の謎を解明するため、幽霊を信じない心霊写真家・ベン、調子が良すぎる神父・ケント、何かと大げさな霊媒師・ハリエット、幽霊屋敷オタクの歴史学者・ブルースの4人に助けを求めることに。だが、このエキスパートたちもワケアリのメンバー・・・。館に住む999人のゴーストたちと、仕掛けられた数々のトリック。不気味な体験を通して、メンバーたちは遂に館に隠された悲劇的な真実に気づき始めるのだった・・・。

予告編

基本情報
出演:ロザリオ・ドーソン/オーウェン・ウィルソン/ティファニー・ハディッシュ/ラキース・スタンフィールド、ダニー・デヴィート、ジャレッド・レト/ジェイミー・リー・カーティス

監督:ジャスティン・シミエン

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 

原題:Haunted Mansion

公開日:2023年9月1日(金)

製作国:アメリカ