『ジョン・ウィック:コンセクエンス』映画史に残る戦いを、体感せよ

映画コラム

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※本記事は『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の一部ストーリーに触れています。未鑑賞の方はご注意ください。

魂が燃える。
脳味噌が沸騰する。
血が蒸発する。

あの『ジョン・ウィック』シリーズ最新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を観た直後は、高確率でこのような状態となる。

したがって、短いスパンで2回観てはいけない。干からびて死んでしまう。ストレッチやアイシングなどして十分にクールダウンした後、2戦目に臨んでほしい。

なぜこのように、諸々沸騰したり蒸発したりするのか。

あの真田広之が、あの“イップ・マン”ドニー・イェンが、キアヌ・リーブスと熱い戦いを繰り広げるのだ。この3人はアクション界の“現人神”だ。我々は、神々の戦いを見せつけられたのだ。
魂や血や脳味噌が、えらい状態になるのもわかってもらえるだろう。

キアヌ・リーブス演じるジョン・ウィックが、前屈立ちで巻き藁に正拳突きを打ち込むシーンから、映画は始まる。サンドバッグにコンビネーションを打ち込んだりするのではなく、魂を込めた正拳突きを一発一発打ち込むというクラシカルな鍛錬法こそが、ジョンには似合う。

彼は、スポーツの練習をしているのではない。その拳を「人殺しの凶器」にするべく、鍛錬しているのだ。ちなみに、序盤のこのシーンで既に脳味噌や血がグツグツ言い出す。しかしこの段階で沸騰してしまっては、とても完走はできない。なにしろ今作は、169分もあるのだから(体感は30分)。

気になる真田広之師とドニー・イェン師は、ジョンの昔の仲間であり、親友という設定だ。過去3作を観ていればわかると思うが、ふたりの内どちらか(あるいは両方)は、ジョンを殺すために現れたのだ。

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真田広之=シマヅ

真田広之演じるシマヅは、コンチネンタルホテル大阪の支配人。ちなみにコンチネンタルホテルとは、世界中に出店された“殺し屋たちの憩いの場”である。この場での殺人は掟で禁じられており、禁を破ると抹殺される。

相変わらず組織から追われているジョンは、シマヅが牛耳るコンチネンタル大阪に逃げ込む。シマヅは前3作の過去の仲間のように、ジョンを狙ったりはしない。もはや残り少なくなった、今も昔も変わらない、ジョンの仲間である。

JAC所属の80年代は過剰なほどアクティブに躍動し過ぎていた真田広之だが、62歳となった今、そのアクションは重厚極まりない。ぶれない体幹、地に根が生えたような安定感、それでいてスピードに衰えは見えない。

世界各国のアクション・スターを向こうに回し、「日本代表」として“あの”真田広之が奮戦している。

筆者は子供の頃、『里見八犬伝』『伊賀忍法帖』『百地三太夫』『魔界転生』など、80年代のアクション時代劇に熱中していた。ほとんどの作品において、真田広之の師匠的な役柄で“サニー”千葉真一が出演していた。

そして今、真田広之自身が当時の千葉真一のような姿で、役柄で、動きで、ハリウッドのスクリーンいっぱいに戦っている。感無量だ。

今作の真田広之=シマヅのアクションでもっとも印象に残ったのは、その落ち着いた“納刀”の美しさだ。

みんながみんな次から次へと殺して行くため、殺したら殺しっぱなしになりがちな本作において、その殺した後の“余韻”は、異彩を放っていた。

日本武道における“残心”という概念を表現するには、やはり日本人アクション・スターの代表である、真田広之でなければならない。

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ケイン=ドニー・イェン

かつてジョンやシマヅの仲間であり親友でもあったケインだが、今回ジョンを狙うのは、残念ながらこのケインだ。

ケインは目が見えない。杖をついて歩いている。もちろん、ただの杖ではない。真剣を吞み込んだ仕込み杖だ。ケインの闘法は、“仕込み杖&カンフー”である。座頭市とイップ・マン(ドニー・イェンを代表する役柄)を合体させたようなキャラである。

ケインの強さは、もはや異次元だ。その剣さばきも、蹴りのスピードも、体のキレも、肉眼では捉えきれない。「人間は、こんなにも速く美しく動くことができるのか……」と、ただただ感動してしまう。

例によって、人間を次々に殺しているシーンなわけだが。

–{ジョン・ウィックVSケイン=キアヌ・リーブスVSドニー・イェン}–

ジョン・ウィックVSケイン=キアヌ・リーブスVSドニー・イェン

掟に基づき、ジョンとケインは正式な“決闘”で勝負をつけることとなる。決闘前夜、教会でケインは、ジョンに語りかける。

「会いたかったよ、ジョン。友と話せて嬉しい」

そして、恐ろしくいい顔で笑う。決闘は決闘、友情は友情として、心から友との再会を喜んでいる顔だ。これから乾杯して、旧交を温め合うような顔だ。

対してジョンは、複雑な表情だ。ジョンは既に何人も、自分を殺しに来た「旧友」を、返り討ちにして殺している。ジョンは、ケインのように割り切ることができない。

決闘は、開始時刻に遅れても自動的に負けとなり、処刑される。例によって賞金首となったジョンに、今度はパリ中の殺し屋が襲いかかる。

殺しても殺してもキリがなく、いよいよ間に合わない!と、ジョンが観念しかけた時……。ケインが助けに現れる……!ケインは、「正々堂々と殺し合いをするために」助けに来たのだ。

決闘が始まる時、ケインが呟く。

「来世で会おう、兄弟」

全アクション映画フリーク、号泣である。

クライマックスの決闘も、アクション映画史に永遠に残るだろう。

黒澤明の名作『椿三十郎』での三船敏郎と仲代達矢の決闘、『スパルタンX』でのジャッキー・チェンとベニー・ユキーデの決闘、そして今作でのキアヌ・リーブスとドニー・イェンの決闘。この3つの決闘を称して、「世界三大決闘」とする。筆者が決めた。

この歴史に残る決闘は、必ずスクリーンで観なければならない。「歴史の目撃者」に、なりたくないか?

(文:ハシマトシヒロ)

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–{『ジョン・ウィック:コンセクエンス』作品情報}–

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』作品情報

2023年9月22日(金)全国公開

【予告編】

【ストーリー】
裏社会の掟を破り、粛清の包囲網から生還した伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。地下に身を潜めながら、全てを牛耳る組織:主席連合から自由になるために立ち上がった。組織内での勢力拡大を狙う若き高官、グラモン侯爵は、これまで聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破、ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケインを強引に引き入れ、ジョン・ウィック狩りに乗り出す。そんな中、日本の友人、シマヅの協力を求めてジョンが大阪のコンチネンタルホテルに現れた…

【クレジット】
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス ドニー・イェン ビル・スカルスガルド ローレンス・フィッシュバーン 真田広之 リナ・サワヤマ イアン・マクシェーン ほか
配給:ポニーキャニオン 2023/アメリカ/英語/シネスコ/5.1ch/原題:JOHN WICK:CHAPTER4