「らんまん」女学校廃止で田邊(要潤)の立場が危うい<第98回>

続・朝ドライフ

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第98回を紐解いていく。

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佑一郎との変わらぬ友情

「美しいきこそ 強い」
(佑一郎)

ミシシッピの橋の工事に参加していた佑一郎(中村蒼)が帰って来ました。

寿恵子(浜辺美波)が気を利かせて子供たちを連れて席を外し、
万太郎(神木隆之介)と佑一郎は二人きりで、積もる話を語り合います。

寿恵子は白玉を食べに行こうと言ってましたが、あんなに借金していて、白玉を食べるお金はあるのか心配になります。
路地を歩いているとき、男の子が躓いたのは、たぶん偶発的なことでしょう。転ばなくてよかった。

佑一郎は橋の機能美を称え、「美しいきこそ 強い」という認識に到達しました。それを万太郎は理解します。植物はどれも美しく、強いですから。橋も、植物も、虚飾がない。余分なものがない。その姿はすべて、何かを行うのに必要なもので成り立っています。削ぎ落とされたものは美しい。

ふたりの目の前には洗濯した浴衣が干してあります。浴衣もシンプルで美しい。

でも佑一郎は、アメリカで人間のすばらしさを目の当たりにすると同時に、人種差別のおそろしさも味わっていました。北部と南部で繰り広げられている戦争の元は奴隷制、それもつまり奴隷差別で……。

それを語るとき、彼は、紙風船を持っています。赤、黄色、緑、白……紙風船は色々な色が張り合わせてできています。こんなふうに色々な肌の色の人たちが調和した世界になればいいのです。

万太郎は植物に優劣をつけず、同等に扱っています。

でも、紙風船を万太郎は、ぱしっと部屋の奥にはたき入れてしまいました。ここは、紙風船を大事に抱えてほしかったかも。いや、絶望の表れか…。

佑一郎は北海道で教授になると言います。出世です。
出世していた田邊(要潤)は、突然、女子学校廃止を知らされます。事前に聞かされるのではなく、いきなり官報で知るのはショックでしょう。
目をかけてくれた森有礼(橋本さとし)が殺されたので、立場は危うい。

いつも廊下ですれ違い、嫌味を言う美作秀吉(山本浩司)がここぞとばかり嫌味を言いまくります。このふたり、熾烈な出世争いを繰り広げていましたから。

峰屋の分家たちも最終的にはいい面があって、完全にいやな人はいないように配慮されているように感じる「らんまん」ですが、美作と高藤(伊礼彼方)にはいやな面しか出てきていません。おそらく今後、高藤の再登場は期待できず、いい面を見ることもなさそうですが、美作もこのまま、廊下で嫌味を言うだけで終わるのでしょうか。名優・山本浩司さんの無駄遣いはもったいない気がします。

ただ、美作と田邊の確執は、偏見によるもので、この偏見こそ差別の元であり、それを歴然とさせるという意味で重要です。

(文:木俣冬)

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–{「らんまん」第20週あらすじ}–

「らんまん」第20週「キレンゲショウマ」あらすじ

万太郎のもとに、虎鉄たちから続々と植物標本が送られてくるようになった。一つ一つ丁寧に調べ、返事を書いて、日本中に万太郎の植物仲間が増えていった。それから3年の月日が流れ、長屋の面々はそれぞれ旅立ち、寿恵子は3人目の子を妊娠する。一方、田邊は後ろ盾を失い、学長や大学の評議員などすべての役職を辞任。失意の田邊だったが、妻の聡子に背中を押され植物の研究に本腰を入れるようになる。学生たちと採集旅行に出かけた田邊は、そこで見つけた新種の植物を、大学の総力を挙げて研究し「キレンゲショウマ」と名付け発表する。

 

–{「らんまん」作品情報}–

「らんまん」作品情報

放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始


長田育恵

音楽
阿部海太郎

主題歌
あいみょん「愛の花」

語り
宮﨑あおい

出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか

植物監修
田中伸幸

制作統括
松川博敬

プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久

演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか