<どうする家康・秀吉天下人編 >29話~39話までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

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2023年1月8日放送スタートしたNHK大河ドラマ「どうする家康」。

古沢良太が脚本を手がける本作は、弱小国の主として生まれた徳川家康が乱世を生きる姿を描いた波乱万丈エンターテイメント。大河ドラマ初主演となる松本潤が従来のイメージとは異なる「ナイーブで頼りないプリンス」の家康に扮する。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事では、本能寺の変後、豊臣秀吉(ムロツヨシ)が天下人となっていく29話~39話までの記事を集約。1記事で複数話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第29話ストーリー&レビュー

・第30話ストーリー&レビュー

・第31話ストーリー&レビュー

・第32話ストーリー&レビュー

・第33話ストーリー&レビュー

・第34話ストーリー&レビュー

・第35話ストーリー&レビュー

・第36話ストーリー&レビュー

・第37話ストーリー&レビュー

・第38話ストーリー&レビュー

・第39話ストーリー&レビュー

第29話ストーリー&レビュー

第29話のストーリー

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信長、死す――。衝撃的な知らせが世を駆け巡る中、光秀(酒向芳)の命令で、家康(松本潤)は、浪人から村人まであらゆる者から命をつけ狙われることに。岡崎へ帰還すべく、家臣団と共に逃亡する家康に、半蔵(山田孝之)は、服部党の故郷である伊賀を抜けるべきだと進言する。光秀の追手を欺くため、忠次(大森南朋)らと別れた家康は、伊賀の難所を超えて、一路岡崎を目指すが、道中で謎の伊賀者たちに襲われてしまう!

第29話のレビュー

もしかして、武士たるもの「どうする?」と聞かれる前に行動しなければならないんじゃなかろうか。

信長が死に、家康(松本潤)は光秀(酒向芳)によって命を狙われる立場に。
堺から岡崎までの道のり、約250km。家康は家臣たちと共にその道をひた走ることになる。

険しい帰路、服部半蔵(山田孝之)は伊賀を抜ける提案をする。伊賀は服部党の故郷。安全だと踏むわけだが……。

伊賀越えと言えば、家康の人生を語る上では欠かせない出来事だ。三河一向一揆、三方ヶ原の戦い、そしてこの伊賀越えだ。

伊賀越えの手前で身を寄せた小川城。ここには甲賀忍者の多羅尾光俊(きたろう)がいる。家康らは警戒しているが、多羅尾は大歓迎。
さらに伊賀越えは危険だと言い、別のルートを提示。護衛までしてくれると言う。

が、家康は疑心暗鬼だ。半蔵に意見を求めると「親切すぎる」との回答。
半蔵の言葉に従い、家康らは伊賀越えを決断するが、これが裏目に出る。伊賀者たちに捕まってしまう。
半蔵よ……活躍している感じはあるのだけれど、ちょっと締まらない。

信長にひどい目に遭わされていた伊賀者たちにとって、信長が討たれたことは朗報。
伊賀の頭領・百地丹波(嶋田久作)は家康の首を明智に届けると言う。絶体絶命の大ピンチ。
そこに姿を現したのは、本多正信(松山ケンイチ)だった。伊賀の軍師として身を置いていたのだ。

三河一向一揆以来の再会。正信は「家康を恨んでいる」「首を斬ってしまえ」と煽るが、その一方で「信長が生き延びているという噂がある」とも言う。
首が見つかっていない以上、死んだとは言い切れない。もし生きていれば、明智は討たれる。
そこに信長の弟分とも言える家康の首が届いたとしたら?
いやいや、そんなことを言っても信長は死んでいるに決まっている。さあ家康を殺してしまえ、まあ信長の首は見つかってないけどな……と押したり引いたり、伊賀者を揺さぶる。

そして家康は言う。

首が見つかっていない以上、信長の家臣たちは様子を伺う。いま、明智に味方する者はいない、と。そして、自分が明智を討ち、伊賀者たちの恩に応えようと約束する。

かくして、本多正信のイカサマに加えて、家康が懐の深さを見せ、無事に伊賀越えに成功したのである。
松山ケンイチのなめらかな喋りには圧巻だった。

無事に岡崎に到着した家康。明智を討つことを誓うが、すでに動いていた者がいる。

豊臣秀吉(ムロツヨシ)だ。

秀吉は、家康が信長を討つと踏んでおり、その心づもりをしていた。家康とは見ていた未来が違う。相手が変わっただけで、やることは変わっていないのだ。速やかに明智を討ち取って見せた。
またしても、家康は先を越された。
 

ここからは、家康の前には秀吉が立ちはだかることになる。
家康にとって、信長よりもよっぽど厄介な相手になるに違いない秀吉。
笑わない目が家康を捉えて離さない。

※この記事は「どうする家康」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第30話ストーリー&レビュー}–

第30話ストーリー&レビュー

第30話のストーリー

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無事、浜松へ戻った家康(松本潤)。一方、秀吉(ムロツヨシ)は織田家の跡継ぎを決める清須会議で、信長の孫・三法師を立てつつ、織田家の実権を握ろうとしていた。そんな秀吉の動きを苦々しく見ていた市(北川景子)は柴田勝家(吉原光夫)との結婚を決意。秀吉と勝家の対立が深まる中、家康は旧武田領に手を伸ばす関東の雄・北条氏政(駿河太郎)との一戦に臨むことになる。

第30話のレビュー

新たな戦の時代が幕を開ける。

秀吉(ムロツヨシ)が明智光秀(酒向芳)を討った。
伊賀越えのあと、家康(松本潤)がすぐに動かなかったことに平八郎(山田裕貴)などは不満を口にするが、今は近隣諸国を安定させることが大事。
家康は秀吉とは事を構えず、北条家との戦いに臨むことになる。

 

一方、秀吉が力を持っていく中で、市(北川景子)は柴田勝家(吉原光夫)と婚姻を結ぶ。秀吉に好き勝手にさせないためだ。そして織田の誇りを守るため。

まもなく、秀吉と勝家は対立。
織田家の家臣たちは勝家につくかと思われたが、次々と調略され、一気に形勢は不利に。
その中でも、市は家康が助けに来てくれると信じていた。小さいころに交わした「お市様のことは、この竹千代がお助けします」という約束。
家康も覚えていたが動くことはできない。動けば、国が危機にさらされることになる。きっと、それは市だって分かっていただろう。
市の中で、家康とのその思い出がお守りのようになっていたのかもしれない。
ひとりめの夫が殺され、兄が死に、家の誇りを守るために二度目の結婚。想像してみれば、そんなささやかな約束が心の支えになっていたっておかしくはない。
 

しかし、市の娘・茶々(白鳥玉季)は憤っていた。

「(家康は)見て見ぬふり」
「徳川様は嘘つきということでございます。茶々はあの方を恨みます」

市は茶々をたしなめる。
そして、市は茶々ら3人の娘を秀吉に預ける。
秀吉自身は市をもっとも望んでいた。自分の妻にする。
それはずぅっと昔から秀吉が叶えたくて仕方がなかった願いだろう。しかし、市はそれを拒否したのだ。

秀吉は表向きとしては「織田家の血筋を入れたい」。
だから市が欲しかったというわけなのだろうが、実際は……。

しかし、秀吉は強がる。市がいなくとも、3年も経てば代わりができる。
そう言って秀吉は茶々の頬をなぞる。観ているだけでもゾワッとしてしまうシーンだったが、茶々は怯えるどころか、秀吉の手を取り、微笑んだ。それにわずかに動揺したのは秀吉だ。

そんな秀吉を見て、茶々は手を離し、立ち去る。

秀吉は、人の心を掴むことに長けている。相手の懐に入り込み、利用する。信長のことさえも。
逆に、圧倒的弱者だと思っている相手に利用されることにはきっと慣れていない。

茶々は市との別れ際、「母上の無念は茶々が晴らします。茶々が天下を獲ります」と言っていた。

ご存じの通り、茶々は家康の最大の敵としてこの先立ちはだかることになる。その伏線が張られたことになる。

本能寺の変では明智に先を越され、明智討伐は秀吉に先を越された。そして、何もできないまま市は自害。
ここまで、家康側からすると「やった!」と言えるような成功体験が少ない。だからこそ、観ている側のフラストレーションも溜まっていくのかもしれないが……そんなフラストレーションを今後どのように発散していくのか。

家康と秀吉の関係、戦いも多くの人が知っているものだ。
それをどのように解釈し、描いていくのか、期待が高まる。

※この記事は「どうする家康」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第31話ストーリー&レビュー}–

第31話ストーリー&レビュー

第31話のストーリー

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お市を死に追いやった秀吉(ムロツヨシ)に、家康(松本潤)は激怒、打倒秀吉の意志を固める。だが勢いに乗る秀吉は信長の次男・信雄(浜野謙太)を安土城から追放、着々と天下人への道を進んでいた。信雄からも助けを求められ、10万を超える秀吉軍と戦う方法を考えあぐねていた家康は、正信(松山ケンイチ)の日ノ本全土を巻き込む壮大な作戦を採用。しかし、その策も秀吉に封じられ、大ピンチに追い込まれ……。

第31話のレビュー

殿は立派にはなられたはずなのに、どうしてそこはかとなく不安を感じてしまうのはなぜか。

市(北川景子)が死に、秀吉(ムロツヨシ)を討つことを決意した家康(松本潤)。

家康は直近で「討つ」と言った相手をことごとく逃している。
そしてここまで大きな功績を上げているのかというと、印象が薄い。

一方、秀吉は農民の子から天下が手に届くようなところにまで這い上がってきた男だ。おそらく決断も早く、下手をすると信長よりも冷酷になれる男。

その証拠に、自分が世話になった信長の次男・信雄(浜野謙太)を安土城から追放。天下を獲るのは織田家ではなく、秀吉である。そう宣言しているかのようだ。

そして信雄が頼ったのは家康だった。秀吉を討つと宣言している家康だが、相手は強大。それでも家康は決断した。秀吉と戦を構える、と。

家康の中には迷いもあったが、そんな中でも家臣たちの言葉に耳を傾ける。
若い者たちが多い中で、むしろ家康が行動を起こさなければ、離反していくだろう。
とは言っても、それぞれ何かしらの不安や迷いはある。だからこそ、人間みがある家康のそばにいるのかもしれない。

一方、秀吉のほうは人間みがあるように見えてサイボーグのようだ。息をするように相手をだますし、演技もできる。そして目がピクリとも笑わない。
(人ってそんな演技ができるのだな、と思ってしまう、ムロツヨシさん)

家康などは、秀吉の本性を知っているからおおよそは動じなくなってきたが、庶民たちからすればそんなことは分からない。そして武将たちはと言うと、得な匂いがしそうなほうへと吸い寄せられていく。秀吉はうさんくさいが金払いはいい。

戦いを前に、徳川方は池田恒興(徳重聡)を味方につけていたが、戦直前で裏切られてしまう。
まさに池田にとっては秀吉についたほうが得をするからだ。

何を考えているのか分からないけど、なんとなく自分に得なことしてくれる社長と、真面目で誠実で人柄は良いけれど、我慢しなければいけない場面が多い社長だったとしたら、どうだろう。よっぽどの信頼がないと後者は裏切られることのほうが多いはずだ。

それでも、家康に人がついてきているのは人柄……と戦国の世の先にある平和な国を臨んでいるから。
家康が見据えているものが今回、よりはっきりした。

同時に、うろたえる信雄を「総大将がうろたえるな!」と叱りつけるだけの威厳も見せる。
結局、今の家康を作っているのは瀬名(有村架純)と信長(岡田准一)なのか。

なら、家康は本当はどうなりたかったんだろう。やはり、家族とひっそり穏やかに暮らすことだけが夢なのだとしたら、あまりにも苦しい。

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–{第32話ストーリー&レビュー}–

第32話ストーリー&レビュー

第32話のストーリー

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家康(松本潤)は秀吉(ムロツヨシ)10万の大軍に対し、あえて前進し、小牧山城に兵を集めた。互いにどう動くか探り合いが続く中、康政(杉野遥亮)は秀吉の悪口を書き連ねた立札をばらまいて秀吉を揺さぶる一方で、城の周辺に謎の堀をつくり始める。徳川軍が守りに入ったと考えた池田恒興(徳重聡)は、秀吉に、家康を引っ張り出すため岡崎城を攻撃するという策を献上。進軍を開始するが、まさにそれこそが家康の狙いだった。

第32話のレビュー

回を追うごとに秀吉の不気味さが増していく。

 

家康(松本潤)と秀吉(ムロツヨシ)がついに全面衝突だ。

秀吉の軍は10万。大軍だが、内部は統率が取れているわけではない。手柄を狙う武将たちがひしめき合っているだけではなく、秀吉への信頼度は低い。そのため、強気に攻めることもできない。
家康がいる小牧山城と秀吉のいる楽田城でにらみ合いが続く。

そんな中、秀吉勢の池田恒興(徳重聡)は「中入り」という戦法を提案する。守りが薄くなっている岡崎城を攻め、家康を引っ張り出そうというものだ。

しかし、家康側の本多正信(松山ケンイチ)がこの策を見抜いていた。さらに、榊原康政(杉野遥亮)が中入りのための軍をつぶす策を考え付き、急ピッチで準備が進められていく。

出陣を前に家康は家臣たちに、弱く、臆病だった自分がどうしてここまでやってこられたのか……と語る。

「今川義元に学び、織田信長に鍛えられ、武田信玄から兵法を学び取ったからじゃ。そして何より、よき家臣たちに恵まれたからにほかならぬ」

何度も死にそうになった場面があった。それでも今、家康が生きているのは家臣たちがいたから、だろう。この戦で家康の力となったのは、康政のほか、井伊直政(板垣李光人)、本多忠勝(山田裕貴)ら。
若者が育ってきている感がある。
かつては忠勝に対抗心をむき出しにしていた康政だが、冷静に自分と忠勝の違いを分析していた。そして、どうすれば家康の役に立てるかも。

直政はかつて、家康の命を狙ったことがある。
しかし、家康に助けられた。
直政は同じように家康の命を狙った正信と「どうして自分たちのような者を助けるのか」と話す。
「(家康は)恨んだり憎んだりするのが苦手なんだろう」と正信は言うが、直政は戦がない世を作るのはそういうお方だ、とも。

そして、そんな家臣たちの柱となるのが酒井忠次(大森南朋)だ。
見事に勝利を収めた徳川軍は天下を獲ると盛り上がりを見せる。
総大将の織田信雄(浜野謙太)もご機嫌だ。

しかし、その中で浮かない顔をしている人物がいる。石川数正(松重豊)だ。
1度、秀吉に勝っただけ。秀吉がこのままで済ませるとは思えない、と。

秀吉のシーンは多くはないが、その表情が狂気じみていてゾッとする。
まだ「何か企んでいそうだ」と思わせてくれていたほうがいい。目が笑っていない、などではなく、一体どこを見ているのか分からない、と言った印象を受ける。
もしかしたら、この戦国の世で「天下を獲る」ということに一番己を狂わされているのは秀吉なのかもしれない、とふと思ったり。

勝利の喜びはつかの間、次回予告ではすでに不穏な空気しか流れていない。キーパーソンとなるのは数正だ。また、佐藤浩市演じる真田昌幸の姿もあった。昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を観ていた者としては、つい期待が高まってしまうが……。

どちらにせよ、家康の受難はまだまだ続く。

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–{第33話ストーリー&レビュー}–

第33話ストーリー&レビュー

第33話のストーリー

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家康(松本潤)は小牧長久手で秀吉(ムロツヨシ)に大勝。しかし秀吉は織田信雄(浜野謙太)を抱き込んで和議を迫り、さらに人質を求めてくる。その上、秀吉が関白に叙せられたという知らせが浜松に届き、家康は名代として数正(松重豊)を大坂城へ送る。そこで数正は、改めて秀吉の恐ろしさを痛感。徳川を苦しめる真田昌幸(佐藤浩市)の裏にも秀吉の影を感じた数正は、決死の進言をするが、家康の秀吉に対する憎しみは深く――。

第33話のレビュー

家康が、勝てない。

小牧・長久手の戦いで勝利した家康(松本潤)。
そのまま勢いづくかと思ったが、秀吉(ムロツヨシ)は家康側の総大将・織田信雄(浜野謙太)のまわりを攻めて行く。もともとどっしりと構えていられなかった信雄。秀吉に取り込まれてしまう。
総大将がいなくなったら、家康たちに戦う大義名分がないのだ。

さらに、その後、秀吉は関白に任命される。信長を越え、天下統一に大手をかけたことになる。
そんな秀吉が気にかけるのは家康だ。家康を取り込みたい秀吉はあの手この手で攻める。

家康側は交渉に石川数正(松重豊)があたるが、なかなか有利な状況にはならない。
でも、当然なのかもしれない。今、秀吉が圧倒的に強い立場なのだから。
それでも、秀吉が家康にこだわるのは、目の上のたんこぶだからだろう。
思い通りにできないのなら、今後必ず邪魔になる。だから、今のうちにどうにかしておきたい。
当然、どうにかされたくない家康。そして間に挟まれた数正。

数正は家康に不利なことをしたいわけではない。
しかし、秀吉のもとを訪れ、秀吉の強大な力を目にしてしまった以上、戦をして「勝てる」とは言えない。
ならば、秀吉に従い、機を伺うべきでは?

が、秀吉の今の力を知らない者たちは、数正が秀吉に調略されたのでは? と疑う。
イチ視聴者としては、もはや世間知らずが実力を見誤りやんややんやと言っているように見えてしまうのが切ない。前回は彼らの若さが頼もしかったけれど、今は心許ない。

それでも、家康の説得を受けて数正は表情を変える。
数正は家康と共にあり、自分の夢は家康を天下人にすることだ、と宣言する。
まるで、改めて自分のやるべきことを確認したかのように。

その矢先、数正は家族、臣下ともども出奔する。

わが身かわいさ、と見えるかもしれない。が、ここまで見てきた数正は決して器用なタイプではない。だとしたらこの出奔も考えがあるはず。

そもそも、秀吉が数正を調略しようとしているのは、数正が家康の右腕だから。能力があるから、欲しいわけではない。
自分の家臣になったとて、長年仕えてきた主を裏切るような人物を重用するだろうか。決して、この出奔は数正が得するとは限らない。

すっきりと勝てたのは本当に前回だけで、家康の前途が多難であることは変わりがない。

これから、家康の前に立ちはだかる真田家の面々も登場した。
真田昌幸(佐藤浩市)は食えなさそうだし、溌剌とした真田信繁(日向亘)は「日本一の兵」としての片鱗もワンシーンながら感じる。

しかし、少し思ってしまう。
戦がない世が作られるならば、それは家康でなくてもいいのではないか、と。
家康は「国」がなくなることを恐れている。
が、国がなくなることこそが安寧の世につながるのだ……と聞くとなんとも複雑な心持ちになる。

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–{第34話ストーリー&レビュー}–

第34話ストーリー&レビュー

第34話のストーリー

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打倒・秀吉(ムロツヨシ)を誓ったはずの数正(松重豊)が豊臣方に出奔、徳川家中に衝撃が走る。敵に手の内を知られたも同然となり、家康(松本潤)は追い詰められるが、そこに未曽有の大地震が発生し、両軍戦どころではなくなる。何とか家康を上洛させたい秀吉は、妹の旭(山田真歩)を家康に嫁がせ、さらに老いた母まで人質に差し出す。秀吉に屈服するか、全面対決するかの二択を迫られた家康は……。

第34話のレビュー

天が味方する。それはやはり天下人の条件なのか。

秀吉(ムロツヨシ)が関白となり、天下に大手をかけた。その中で抗うのが徳川家康(松本潤)である。

しかし、家康は窮地に追い込まれていた。石川数正(松重豊)の出奔だ。
数正が秀吉側についたことで家康側の手の内は裏の裏まで知られていると思ったほうがいい、と本多正信(松山ケンイチ)。家康は気丈に振る舞いつつも、数正が秀吉と共に自分を殺しに来る夢を見る。数正がいなくなったことは大きすぎる痛手だった。

その矢先、大地震を襲われる。甚大な被害を負ったのは秀吉。戦どころではなくなる。戦を止めたのが天災とは皮肉な話だ。

そこで、秀吉は家康を上洛させるために、自分の妹・旭(山田真歩)をわざわざ離縁させてまでして差し出す。家康にとって正室は瀬名(有村架純)だけのはずだったが、ずっと空席だった正室の座が埋まる。

それでも、家康は突っぱねる。秀吉には屈しない……しかし、秀吉はさらに自分の母親を送りつけると言い出す。それでも上洛しないなら、戦も辞さないということだ。

 

決断を迫られる家康。

戦か上洛か。その評定の場に於愛(広瀬アリス)が、数正が残した仏像と木箱を持ってやってくる。木箱の中に入っていたのは押し花。まるで築山に咲いていた花のようだ。

そして於愛は言う。

「お方様が目指した世は殿がなさなければならぬものなのでございますか」
「ほかの人が戦なき世を作るなら、それでもよいのでは」

また、酒井忠次(大森南朋)も家康の心を縛り付けていた鎖を解いてもいいのでは、と言う。

自分が戦なき世を作らなければ、と思っていた家康。天下を獲ることをあきらめてもいいかと尋ねると、忠勝(山田裕貴)はこれは数正のせいだと言う。

「数正のせいじゃ、殿は悪くない」「あほたわけ」

泣きながらそう言う家臣たち。

数正の出奔は、やはり家康のためにほかならなかった。

特に仕事を与えられるわけでもなく、屋敷で静かに暮らしている数正。
妻の鍋(木村多江)は数正と一緒に過ごせる時間ができてうれしいと言い、「誠に、殿がお好きでございますな」と微笑む。そんな鍋に数正は「しーっ」と諫め、「あほたわけ」と笑う。
なんと温かい「あほたわけ」か。

こうして、家康は上洛を決意する。

しかし、瀬名は家康がなかなか決断できないから行動を起こしたわけで。瀬名の行動があったから家康は少しだけ強くなれたわけで……。

亡き妻の想いに縛られていた、というと美談に聞こえるけれど、それって相変わらず自分で決断はできないということでは……? と考えてしまうのはあまりにも情緒がないだろうか。
ある種、今回の選択は原点回帰にも思えるけれど……。

家康が早く決断していれば、数正が出奔することも、旭が離縁させられることもなかった。
しかし、ここまで粘ることで得られるものがあるのかも、しれない。と信じたい。

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–{第35話ストーリー&レビュー}–

第35話ストーリー&レビュー

第35話のストーリー

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秀吉(ムロツヨシ)は母・仲(高畑淳子)を、家康(松本潤)の上洛と引き換えに人質として岡崎へ送る。秀吉は家康を歓待する中、妻の寧々(和久井映見)や弟の秀長(佐藤隆太)を紹介し、諸大名の前で一芝居打ってくれと頼みこむ。大坂を発つ前夜、秀吉から北条・真田の手綱を握る役目を任された家康は、一人の男と出会い興味を持つ。それは豊臣一の切れ者と名高い石田三成(中村七之助)だった。

第35話のレビュー

刀を振り回さずとも、銃を撃たなくても戦はありまして。

 

ついに上洛した家康(松本潤)。
まずは秀長(佐藤隆太)が家康らを出迎えたが、秀吉(ムロツヨシ)も予定を変更して迎える。
家康の上洛を涙して喜ぶが家康は「もうそういうのはいいから」とぴしゃり。
秀吉の猿芝居はもうお見通しである。

宴会が始まり、家康の家臣たちを妻の寧々(和久井映見)に紹介して回る。
家康の家臣の名前と特長を全て把握している秀吉、怖すぎないか。

今回少しばかり秀吉の本性が見えたように思う。

人を油断させるのは秀吉の得意とするところ。それは寧々も秀長もいるからこそ成り立つ。
狸寝入りしている秀吉のそばで寧々たちは家康に語り掛ける。

「人は自分より下だと思う相手と対するとき本性が現れる」

秀長の言った言葉で、これまでの秀吉の行動に全て説明がつく。
長い時間をかけて、秀吉は自分の周りの人間たちを見てきた。馬鹿なフリして、本性をあぶりだす。

そして寧々が続ける。

「信用できると思えたのは今までにふたりだけ。信長様と徳川殿。どちらも裏表がない」

裏表がないというか、ふたりとも人に対して態度を変えないということか。ふたりとも「裏で考えていること」はある。

それを自分が狸寝入りをしているうちに妻と弟に言わせる秀吉。ある意味、秀吉も裏表がない。身内以外には本性を見せないのだから。

さすがに、家康もそんな秀吉の考えていることぐらいわかるだろう(わかっているよな……?)。

一方、人質として徳川のもとに送られた大政所(高畑淳子)はお気に入りの井伊直政(板垣李光人)にぼやく。

「ありゃあ何者じゃ? わしゃ何を産んだんじゃ? とんでもねえ化け物を産んでまったみたいでおっかねぇ……」

秀吉の不気味さがこの回だけで十分に伝わってくる。

そして、秀吉が戦をやめる気がないことも節々から伝わってくる。また下卑た笑いを浮かべたのは茶々の話題が出たときだ。「もうすぐ……」と言いかけた秀吉を秀長がたしなめる。きっと、秀吉がいまいるのは秀長と寧々がいるからだろう。そんなふたりが秀吉についていっているということも、秀吉の人徳なのかもしれないけれど。

秀吉以外にも家康の頭を悩ませる人物はいる。
食えないのが真田昌幸(佐藤浩市)。
家康との対峙のシーンから伝わるのは一筋縄ではいかないということ。もし、家康や信長が裏表がある人物だとしたら、昌幸は裏表を使い分ける人物だろう。

が、そんな昌幸を見ていると大河ドラマ「真田丸」を観返したくなる……。

そして、やがて家康と対立することになる石田三成(中村七之助)がついに登場。
星を見て家康と語り合う三成は朗らかでロマンチストだ。これまでの石田三成像とはまた一線を画しそうだ。
後半に向けて、新たな人物も続々と登場するし、戦国時代のラストの山場に向けてどのように描いていくのか期待が高まる。

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–{第36話ストーリー&レビュー}–

第36話ストーリー&レビュー

第36話のストーリー

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家康(松本潤)は真田昌幸(佐藤浩市)から、北条に領地を渡す代わりに徳川の姫がほしいと頼まれる。忠勝(山田裕貴)の娘・稲(鳴海唯)を養女にして嫁がせようとするが、父娘ともに猛反対。そんな中、家康が探させていた武田の女を、元忠(音尾琢真)がかくまっていたことがわかる。説得に向かった忠勝は、抵抗する元忠と一触即発の危機に陥る。改めて、於愛(広瀬アリス)が元忠に話を聞くと、意外な事実が――。

第36話のレビュー

それぞれの戦いが、ある。

 
今回、スポットが当たったのは家康(松本潤)の側室、於愛(広瀬アリス)。瀬名(有村架純)と信康(細田佳央太)が亡くなる少し前から家康と共にいた。

そんな彼女もまた戦で夫を亡くしていた。

夫の死と共に自分の心も死んだという於愛は、自害することも考えるが思いとどまる。
そして家康のもとへ。
於愛は登場時から家康のお尻を威勢よくはたくなど、ユーモアたっぷりな様子を見せていた。彼女のチャームポイントは笑顔。
正直、於愛が登場して以降は悲劇とも言えるシーンが多かった。だからこそ於愛の笑顔は視聴者にとっても癒しだったと言ってもいいかもしれない。

しかし、その笑顔こそが於愛の武装だった。

於愛は真摯に家康を支え続け、でも、ただ媚びるだけではなく時には助言もした。家康のことを敬ってはいるけれど、慕っているわけではない。ただただ、家康を支える。それが自分の役目だと思っていたのだろう。

そんな於愛を家康も信頼している。
病を患っているであろう於愛に自分が薬を煎じて飲ませている様子は、愛情の印にも見える。
於愛はまもなくこの世を去る。瀬名が亡くなったときも於愛は家康を支えていた。その悲しみはいかばかりだっただろうか。

於愛以外にも、今回は女性たちの戦いぶりが印象的だ。

家康は、真田昌幸(佐藤浩市)から北条へ領地を渡すかわりに徳川の姫を妻として寄越すよう要求されていた。
家康は本多忠勝(山田裕貴)の娘・稲(鳴海唯)を養女にして真田に嫁がせることを考えるが、親子そろって猛反発をする。

一方で、鳥居元忠(音尾琢真)が千代(古川琴音)を匿っていたことが分かる。千代はもともと武田家の人間で、家康が探していた人物だ。やはり徳川家の人間としては信用できないところだろう。しかし、元忠は千代を愛してしまった。

元忠が千代を匿っていたことを知ると、忠勝は「真田の間者の可能性がある、そんなところに娘はやれない」と息巻く。
前回はこのままだと輿入れ先がないと言っていた忠勝だが、なんてことはない。娘を嫁にやりたくないのだ。

家康が千代を認めたあとも忠勝はダダをこねるが、稲は千代が元忠の寝首をかけば、自分が真田の寝首をかいてやる、と言う。普通ならなかなかできないことだろうが、稲ならできる。忠勝に小さいころから鍛えられていたので……。
稲の登場は前回からだが、たった2回でも忠勝が娘を溺愛しているのが分かる。素直ではないので愛情表現がちょっとイカついが。

そんな女性たちの決意と戦いにグッと来ていたところで、終盤に強烈な登場を果たしたのが茶々だ。
誰が演じるのかと話題になっていたが、お市を演じた北川景子が一人二役を務める。
オープニングのクレジットで茶々=北川景子という盛大なネタバレをしていたが(事前に発表していなかったのだから、登場まで伏せられないものだったのだろうか)、それにしたってインパクトがある。

お市は凛としていて、健やかな美しさがあった。
茶々は幾何か派手で、その笑顔はどこか残酷さも感じられる。
共通しているのは武芸に秀でているところだろうか。

茶々と相対して驚く家康に向かって銃を構え、「ダーン!」と撃つフリをして笑顔を見せる茶々。
笑っているが、まるでいつかこんなふうに殺してやる、と宣戦布告しているよう。
でも、そういえば、お市が家康の前に現れたときもインパクト大だった。お面をかぶって家康と戦っていたな……抱く思いによって表情がこんなにも変わるものなのか、と驚いてしまう。

美しきラスボス。家康はどう対峙していくのか。

※この記事は「どうする家康」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第37話ストーリー&レビュー}–

第37話ストーリー&レビュー

第37話のストーリー

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茶々(北川景子)が秀吉との子・鶴松を産んだ。勢いづく秀吉(ムロツヨシ)は、北条攻めを決定。和平を主張する家康(松本潤)に秀吉は先陣を命じ、勝てば北条領を全て与えると言う。しかし、それは故郷・三河を離れることでもあった。家康は家臣たちに事情を話せないまま、出陣を命じる。秀吉が20万もの大軍で小田原城を包囲する中、家康は氏政(駿河太郎)に降伏を促すが、全く応じようとしない。氏政には関東の雄としての意地があった。

第37話のレビュー

欲は尽きることがないのはなぜか、と考えずにはいられない。

側室の茶々(北川景子)が息子・鶴松を生み、勢いづく秀吉(ムロツヨシ)は北条攻めを決定。
いや、勢いづくな、子どもが生まれたら城にいろ、攻めこむな! と言ってしまいたくなるが……。

そんな秀吉に対し、家康(松本潤)は和平を、と言い続けるが、聞き入れられない。家康に先陣を務めるように命令し、勝てば北条の領土を全て与えると言う。
一見、良い条件のように聞こえるが、故郷の三河を離れることになる。
秀吉は全てを手に入れたい、しかし、人からは奪いたいんだなあ、とつい家康に肩入れしたくなってしまう。

ついに始まってしまった小田原合戦。
秀吉は20万の大軍で小田原城を包囲。家康は氏政(駿河太郎)に降伏するように言うが、ままならない。

氏政はどうしても秀吉に屈したくなかったのか……と思うが、「小田原評定」という言葉がある。
人が集まって相談しても結論が出ず、決定できないことを言うが、このとき、北条氏で行われていたとされる会議が由来だ。
氏政の決断が遅かった、ということだろうか。

家康がなかなか上洛しなかった理由を問うと、氏政は瀬名(有村架純)が考えていた「慈愛の国」に期待をしてしまっていた、という。
こうなってくるともはや「慈愛の国」の話が呪いのようになってこないか? 大丈夫か?

 
さて、北条氏が降伏したとなると、国替えを三河家臣団に伝えなければならない。
家康としては秀吉に物申したいところだが、同じように不服を申し立てた織田信雄(浜野謙太)は改易された。家康のもとを訪れた石田三成(中村七之助)からその話を聞いた家康は黙るしかない。

家臣たちを前に国替えを伝える家康。反発すると思った家臣たちだが、意外にも落ち着いている。
声を荒げる者もいない。実は前もって、大久保忠世(小手伸也)が本多忠勝(山田裕貴)らに話をしていたのだ。もちろん、そのときは暴れ、文句を言っていたが、吐き出してしまえば落ち着く。
ちなみに、忠世に言い含めたのは本多正信(松山ケンイチ)である。

申し訳ない、と頭を下げる家康だったが、誰も怒ったりしない。
この乱世を生き抜いたのだ。あの泣き虫な主のもとで。
今川、武田、そして織田。あの群雄割拠の中で、生き残った。それだけでも奇跡のようなことだ。本当に。

徳川の家臣団はそれぞれが城持ち大名になる。所領が与えられていく中で、これまでの徳川家臣たちと家康の絆を振り返っていく。

本当に……よく生き残ったな……と思わずにはいられない。

こうして、天下統一がなされ、平和な国の礎を作っていく……といきたいところだが、秀吉は戦をやめない。目線は海の向こうへ。

 
家康はのんびり平和に過ごすことが望みだったし、戦だってやりたくなかった。
出世にも大して興味がない。
しかし、秀吉はどん底から這い上がって、上へ上へという気持ちが尽きることがない。彼は平和などは望んでいない。いつまでも、自分をヒリヒリさせてくれる戦いを臨んでいるのではないだろうか。

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–{第38話ストーリー&レビュー}–

第38話ストーリー&レビュー

第38話のストーリー

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天下統一を果たした秀吉(ムロツヨシ)は、次の狙いを国外に求めた。江戸開発に勤しんでいた家康(松本潤)をはじめ、諸大名を肥前名護屋城に集め、唐入りを命じる。朝鮮に渡った加藤清正たちから連戦連勝という知らせが届き、秀吉はご満悦だが、家康は苦戦を強いられているという裏情報をつかむ。家康は石田三成(中村七之助)とともに渡海しようとする秀吉を必死に止めようとする。そんな時、家康の前に茶々(北川景子)が現れる。

第38話のレビュー

ラスボスであることは分かっていたけれど、あまりにもラスボスのオーラが凄まじい。

 
天下統一を果たした秀吉(ムロツヨシ)。しかし、それでとどまらず、唐入りを目指す。さらに天竺、南蛮も手に入れると高らかに宣言。大名たちも熱に浮かされたように、秀吉に賛同する。
どれだけの者が本気で秀吉の言葉を信じているのだろう。
盛り上がっている中、浅野長政(濱津隆之)は正気の沙汰と思えないと言う。狐に取りつかれている、と。
そんな長政に向かって刀を抜く秀吉。石田三成(中村七之助)らが長政を引かせ、間に家康(松本潤)が間に入ってどうにかその場を収めるが、かつての織田信長とはまた異なる、「逆らうことができない」という空気を感じる。
失敗は許されない、というより、機嫌を損ねられない。
実際、唐入りは苦戦を強いられていた。が、三成らはその話を秀吉にできずにいた。

秀吉は老いた。
若いころのような底知れぬ恐ろしさがなくなり、ただ茶々(北川景子)に惑わされているばかりのように見える。
秀吉の代わりに、茶々が得体の知れない不気味さを身につけていた。
茶々は家康にも近づく。
何かあったら家康を頼るように秀吉から言われたと平然と嘘をつき(秀吉が言ったのは前田利家)、家康のもとを訪れる。

母は家康を慕っていた、どうして母を助けに来てくれなかったのかと問い詰める。そして、もしかしたら家康は自分の父だったかもしれない、と言いながら距離を詰め、家康のそばに近寄る。
そして手を握り、父のように慕ってもいいかと目に涙を溜めながら尋ねる。

そこに割って入ったのは家康の側室・阿茶(松本若菜)だ。

「殿下にとりついた狐がいるとのうわさを耳にいたしました」
「わが殿にもとりついてはなりませぬゆえ、狐を見つけたら退治しようと…」

そのセリフを狐(茶々)に向かって言う阿茶のふるまい……!
本来なら失礼な物言いだが、改めて阿茶は「この女が狐」と家康に伝えているのだろう。

父だったかもしれない、という発言から「どうする家康」において、家康と市(北川景子)が夫婦になっていたのだとしたら……と考えてしまう。大きく歴史は変わりそうだ。でも、家康の正室が市だったら、天下統一をなしていないようにも思う。

家康は秀吉に茶々を遠ざけるよう言い聞かせる。
茶々に惑わされる自分ではない、という秀吉を家康は一喝。さらにそこに足利義昭(古田新太)が乱入。

「てっぺんに立ってると全てが見えて何もかもが分かっていた」「でも実のところは全く逆。かすみがかって何も見えていない」とまさに今の秀吉を現すような言葉を発する。

家康、そして義昭。現実を突きつけるような言葉に、秀吉も正気に戻る。
(「周りがいいことしか言わない、自分はそうはならんと思っていてもそうなる」この言葉は年を取っていく己にも言い聞かせたい言葉である)

茶々を京に帰し、唐入りも休止。
ようやく、落ち着くかと思った矢先、秀吉のもとに茶々から文が届く。「子ができた」と。

え、その子どもは本当に秀吉の子ですか……? と思っていたら、次回予告で茶々が「あなたの子だとお思い?」と言い放っていて震えた。
茶々の子・秀頼の父親は誰なのか、さまざまな説があるが……?
ゾッとしかしない。

それにしても、白兎は狼と戦ったり、猿だったり、狐だったり……。
ずいぶんと勇猛なうさぎさんになったものである。

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–{第39話ストーリー&レビュー}–

第39話ストーリー&レビュー

第39話のストーリー

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茶々(北川景子)に拾(後の秀頼)が生まれた。家康(松本潤)の説得により、明との和睦を決めた秀吉(ムロツヨシ)。しかし、石田三成(中村七之助)たちが結んだ和議が嘘とわかると、朝鮮へ兵を差し向けると宣言、秀吉の暴走が再び始まった。都が重い空気に包まれる中、家康は息子の秀忠(森崎ウィン)を連れて、京に隠居していた忠次(大森南朋)を訪ねた。忠次から最後の願いを託され 悩む家康に、秀吉が倒れたとの知らせが届く。

第39話のレビュー

最期は、その人の人生を映すものなのだろうか。

 

喰えない男・秀吉(ムロツヨシ)の最期が迫っている。

茶々(北川景子)に息子が生まれ、イキイキとし始めた秀吉だったが、心は元気だったとしても、身体はついていかない。倒れ、そのまま床に臥す。

秀吉が死ぬとなると、今後への影響は大。秀吉がいなくなったあとに、どうするのか。三成(中村七之助)は天下人を立てるのではなく合議制を提案。家康(松本潤)も賛成する。
え、みなさん去年の大河ドラマ観てない……? 「鎌倉殿の13人」って話があってね……と囁きたくなる。でも、家康は「吾妻鏡」を読んでいるはずだ。
もしかして、合議制がうまくいかないのは見越していたのでは? と思ったり。

正直、家康は天下人になりたいわけではないだろう。しかし、戦がない世は作りたい。彼は戦は嫌いだ。
秀吉が天下人になったとて、平和は続かなかった。

家康の忠臣である忠次(大森南朋)もいう。

「戦が嫌いな殿だからこそ。嫌われなされ。天下を取りなされ」

信長にも、秀吉にもできなかったことが家康にはできるはず。そう言って忠次はこの世を去った。
物語の冒頭から視聴者の目を楽しませてくれた「えびすくい」を、徳川秀忠(森崎ウィン)にしっかりと伝授してから。
殺伐とした空気が強まっていく中で、朗らかに笑う秀忠が今後、どのような影響を与えていくのかも気になるところだ。

そして、今回の物語の大きな山場となったのは秀吉の死だ。
家康と面会した秀吉は言う。

「(秀頼に)ひでえことだけしねぇでやってくれ」

秀吉の望みはこれだけ。
「天下なんぞどうでもええ」「天下はどうせおめえにとられるんだろう」「あとはおめぇがどうにかせえ」と、天下のことを完全に放り出す発言。
秀吉はただただ、天下を獲りたかっただけなのか。

豊臣は自分一代で終わると言い切った。

もう、家康に何か偽ることもないのだろう。秀吉は淡々と話す。

「おめえさんが好きだったにゃあ。
信長さまはご自身のあとを引き継ぐのはおめえさんだったと、そう思ってたと思われるわ。悔しいがな」

なんだかもう、天下を獲るとはなんなのか。何のために戦をしていたのか、分からなくなってくる。

そんな秀吉の最期はわびしいものだった。
血に溺れ、苦しそうにしている秀吉を冷たい目で見つめる茶々。

秀吉に向かって、茶々が秀頼について「あなたの子だとお思い?」と問いかける。
予告でも気になっていたシーンだが、このあとはこう続く。

「この私の子」「天下は渡さぬ」

なんというか、織田家の血を引く人だな、と思わせられる。
それでも、秀吉がこと切れたことに気がつくと、ハッとしたように抱きしめ、涙をこぼす。人間は矛盾があるものだし、それがあるからこそ憎めない。
それは茶々だけではなく、秀吉も。
逆に家康のような人のほうが怖いのかもしれない。

盛者必衰。
いよいよ、家康の天下が見えてきた。

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