「らんまん」木に寄生するヤッコソウ、妻に寄生する万太郎<第95回>

続・朝ドライフ

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第95回を紐解いていく。

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「どうにかします」

遍路宿の少年・虎鉄(寺田心)の案内で出会った見たことのない植物に眼を輝かせた万太郎(神木隆之介)

4ヶ月の放浪の旅を終えて、東京に帰って来ました。

万太郎が連れ帰った植物を「お酒に浸かったヤッコさん」(ホルマリン漬け?になっている)と表現する寿恵子(浜辺美波)は、万太郎からこの植物が「帽子がとれると女になる」(帽子のような雄しべのなかに雌しべがある)と知ってびっくり。

栄養は椎木に寄生して取ることも含め、独特な植物のようで、これを研究するにはお金がかかる。万太郎は寿恵子にお金の工面を頼みます。

「得体がしれない。仕方ない! 借りましょう。どうにかなります。いえ、どうにかします」とたのもしい寿恵子。

「得体がしれない」から「借りましょう」って寿恵子の思考回路がどう繋がっているのか謎ですが、万太郎はほんとうにすばらしいパートナーと出会ったものです。

この植物は木に寄生していましたが、万太郎は実家や妻に寄生しています。

藤丸(前原瑞樹)波多野(前原滉)も変わらない友情で、万太郎を助けます。

藤丸、波多野、万太郎の3人で調べた結果、新種だとつきとめ、「ヤッコソウ」と名付けます。寿恵子が「ヤッコさん」と言ったからですね。

学術名には、虎鉄の名前を入れます。虎鉄の名前を勝手に使用するのではなく、ちゃんと報告とお礼の手紙を書きます。

虎鉄からの返事を読んだ万太郎は、ひとりではないと勇気づけられます。
藤丸、波多野もいて、何より寿恵子もいて。全然ひとりではないです。万太郎は人に恵まれているのです。いろんなものに寄生しているのです。寄生したっていいことは、植物の生態からわかります。動植物は寄生していても誰にもそしられません。

それに、万太郎は自分のやりたいことばかりしているように見えますが、植物に夢中で、自分のことはあとまわしです。

なにしろ、名前にこだわる万太郎ですが、自分の名前を名乗るのはかなり後。虎鉄に聞かれてはじめて名乗るのです。

田邊(要潤)がつくった新しい植物図鑑を見て、さぞ怒りや悲しみが湧いたと思いますが、冷静に受け止めていました。

そういう人だから、植物を通じて、自然と人が集まってくる。
大事なのはビジョン。目的。

フランスの哲学者・ルソーの言葉に「広場のまんなかに、花で飾った一本の杭を立てなさい、そこに民衆を集めなさい、そうすれば楽しいことが見られるのです」という言葉があります。

長屋が広場であるように、万太郎も、広場に花で飾った一本の杭を立てて、そこに人が集まってきているのです。

先週、今週と陰鬱な話が続いて、どうなることかと思いましたが、明るい前向きな気持ちで週の終わりを迎えることができました。

寄生することは悪いことではないのだ!

(文:木俣冬)

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–{「らんまん」第19週あらすじ}–

「らんまん」第19週「ヤッコソウ」あらすじ

長女の園子が亡くなり、悲しみに暮れる寿恵子だったが、万太郎や母のまつに支えられながら無事に第2子を出産する。そんなある日、ロシアからマキシモヴィッチ博士が亡くなったとの知らせが届く。ロシア行きを断念した万太郎は、今、自分のやるべきことをやると決心。まずは田邊から寄贈を命じられた標本制作のため、植物採集の旅に出ることにする。高知の山奥で虎鉄という少年と出会い、彼の案内で珍しい植物を発見する。その植物を新種だと認定した万太郎は「ヤッコソウ」という和名をつける。

–{「らんまん」作品情報}–

「らんまん」作品情報

放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始


長田育恵

音楽
阿部海太郎

主題歌
あいみょん「愛の花」

語り
宮﨑あおい

出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか

植物監修
田中伸幸

制作統括
松川博敬

プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久

演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか