「らんまん」田邊は「槙野にご執心」寿恵子の鋭い指摘<第94回>

続・朝ドライフ

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第94回を紐解いていく。

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「らんまん」第94回レビュー

「(本当のことを)知らないのに人に石を投げつけているの」
(寿恵子)

新聞に、田邊(要潤)聡子(中田青渚)をモデルにしたいかがわしい小説が掲載されて、購読者たちがけしからんと田邊邸に押しかけます。

怯える子どもたちに、聡子は懸命に田邊に尽くしているのだと語りかける寿恵子(浜辺美波)。
これは、万太郎(神木隆之介)のモデルの牧野富太郎と妻をよく知らずして、
お金にルーズで自分のやりたいことのために他人に頼ってばかりの夫と信じられないくらい献身的な妻というように、実際この眼で見てないことにもかかわらず、記事などを読んで安易に思い込んでしまうことへの警鐘にも思います

が、最も思い浮かべるのは、現代のネット炎上です。

小さな火がたちまち燃え移って大きくなってすべてを焼き尽くしてしまう。
いつの時代も、人々は激しく燃えます。

人の良いえい(成海璃子)ですら、新聞の内容だけ聞いて「最低。なにそれ」と火がついていました。寿恵子から事情を聞けば、理解するでしょうけれど、知らなければ、実話だと思いこんで、田邊を責める側に回っていたかもしれません。

寿恵子が聡子と子供たちを励ましていると、田邊が現れ、冷たい言葉を吐きます。

寿恵子は「槙野にご執心なのはあなたさまではありませんか」と鋭く言い返します。頼っているとかいう言葉ではなく、「ご執心」という言葉を選択するところが文学好きの寿恵子らしい。彼のなかの愛憎みたいなものを見抜いているのでしょう。

寿恵子は「殿方のことは私とお聡さんにはいっさい関わりがありませんから」と田邊と万太郎の確執と、自身と聡子の友情を切り分けます。そんな彼女を「無教養」と田邊はそしるのですが、それはそれ、これはこれと、分けて考えられないことのほうが教養のなさだと思います。それに気づけない田邊は、悪い人ではないけれど、残念な人です。

世間にも、田邊にも寿恵子がプンプンゆだっているとき、四国では万太郎が植物採集を行っています。植物標本を田邊に寄贈しないといけないから、ゼロからやり直しているわけです。そこで、出会った、遍路宿で働いている少年・山元虎鉄(寺田心)から不思議な植物を教えてもらいます。

「こんまいお遍路さん」と少年が呼ぶそれは、白くて小さくて群生しています。見たことのない植物に出会って、万太郎の探究心が燃え上がります。情熱の炎は善き炎。

「名前は?」と植物の名前を聞いて、少年が「山元虎鉄です」と答えてしまうところが微笑ましい。

おりしも夏休み、お盆休み、自然に触れに行きたくなりました。暑いですが。

余談ですが、田邊家に石を投げ、汚い言葉を投げつけ、子供を脅かし、暴徒と化す一般市民も、ふだんは善良な一般市民なのでしょう。彼らの姿を見て思い浮かんだのが、明治のあと、大正になって関東大震災が起こったとき、人々の誤解が取り返しのつかない事件に発展したことを映画化した「福田村事件」(9月1日公開)です。この映画は、人間が容易に他人を糾弾する側に回ってしまう、それも集団化して。そういうときのおそろしさを突きつけてきます。ご参考までに。

(文:木俣冬)

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–{「らんまん」第19週あらすじ}–

「らんまん」第19週「ヤッコソウ」あらすじ

長女の園子が亡くなり、悲しみに暮れる寿恵子だったが、万太郎や母のまつに支えられながら無事に第2子を出産する。そんなある日、ロシアからマキシモヴィッチ博士が亡くなったとの知らせが届く。ロシア行きを断念した万太郎は、今、自分のやるべきことをやると決心。まずは田邊から寄贈を命じられた標本制作のため、植物採集の旅に出ることにする。高知の山奥で虎鉄という少年と出会い、彼の案内で珍しい植物を発見する。その植物を新種だと認定した万太郎は「ヤッコソウ」という和名をつける。

–{「らんまん」作品情報}–

「らんまん」作品情報

放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始


長田育恵

音楽
阿部海太郎

主題歌
あいみょん「愛の花」

語り
宮﨑あおい

出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか

植物監修
田中伸幸

制作統括
松川博敬

プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久

演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか