「らんまん」藤丸が休学したらうさぎの世話は誰がしているのか<第78回>

続・朝ドライフ

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第78回を紐解いていく。

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「弱さもよう知ったら強みになる」

コロナ禍が収まってきたからか、演出に凝ることができるようになってきた気がします。

「満開じゃ」「絶景かな 絶景かな」

日本植物誌第2巻のヤマザクラの絵を刷って天井から吊るして乾かしたものを床に寝転がって眺める
万太郎(神木隆之介)寿恵子(浜辺美波)。

妊娠7ヶ月でお腹の子が動き、万太郎が寿恵子の頬に口づけすると、天井の絵が風にはためきます。
それはふたりの心のざわめきのようで、すてきな場面でした。が、風に煽られて、翻弄されるふたりには、このさき、心配事も待っているようにも見えます。

第69回に次いで風の使い方が印象的でした。

競い合うことに疲れ、すっかり落ち込んでしまった藤丸(前原瑞樹)は万太郎に「助けて」とすがります。

「万さん運がいいもん。全部うまくいくもんね」とちょっとぼやきモード。これが数多いる凡人の気持ちの代弁です。

運がいい人、才能に恵まれた人にはどうしたってかないっこないのです。が、そんな藤丸は、万太郎のことは好き。同じように執着する人間でも、伊藤家の孫・孝光(落合モトキ)とは同じと思いたくないと言うのです。孝光がちょっとかわいそう。彼は彼で屈辱を味わっているのに。フラットであろうとしつつ、やっぱり主人公に重きが置かれています。当たり前ですが。伊藤家の孫を主人公にした物語だったらまた視点が違うでしょう。

万太郎は、植物と同じで「同じ人はひとりとしておらん」と言い、「徹底的に誰もおらんところを探したらええ。競い合いは生まれんき」「弱さもよう知ったら強みになる」と藤丸を励まします。

ニッチ、隙間を探すことはビジネスチャンスでもあります。でもまた、それが当たるとそこに人が押し寄せて来て奪い合う。よっぽどの第一人者にならないとあっという間に奪われますから要注意です。
という現実的なことはさておき。おゆう(山谷花純)は、逃げるのと、特性を探しにいくのは違うと前向きに考えるように藤丸を促します。

藤丸は休学し、万太郎の手伝いをしはじめます。こうして、植物図鑑の2巻が出来上がるわけですが、
そういえば、藤丸が休学した今、うさぎの世話は誰がやっているのでしょうか。藤丸は単にうさぎに弱い自分を癒してもらっているだけで、彼らの世話を責務にしていたわけではなかったのだろうか、と思うと愕然とします。植物学教室に通うのはつらいけれど、うさぎのために通い続けるという生き方もあるのではないか。こんなにやさしいドラマなのですから、きっと、うさぎの世話だけはしに来ていると信じたいです。

(文:木俣冬)

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–{「らんまん」第16週あらすじ}–

「らんまん」第16週「コオロギラン」あらすじ

万太郎(神木隆之介)は大窪と共に新種ヤマトグサを発表。そして図鑑を発刊したことで植物学者として世に認められ、まさに順風満帆の日々を送っていた。一方の田邊(要潤)は、新種として発表しようとしていた植物が、イギリス留学中の日本人学者に先を越されて発表されてしまい、失意のどん底に…。そんなある日、長屋に藤丸(前原瑞樹)がやってくる。新種発表をめぐって学者同士が激しく競い合う状況に気を病んだ藤丸は、大学を辞めると言い出す。

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–{「らんまん」作品情報}–

「らんまん」作品情報

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放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始


長田育恵

音楽
阿部海太郎

主題歌
あいみょん「愛の花」

語り
宮﨑あおい

出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか

植物監修
田中伸幸

制作統括
松川博敬

プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久

演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか