「らんまん」癒やしの存在・藤丸が大学を辞めようとする<第77 回>

続・朝ドライフ

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第77回を紐解いていく。

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自分語りに次ぐ自分語り

前回(第76回)では田邊(要潤)が帰宅すると、妻・聡子(中田青渚)が玄関先で待っていました。女中より先にお迎えできるからという健気な彼女を田邊はシダのように得難いと言います。「私はおまえの静けさを愛している」と。

一方。万太郎(神木隆之介)が帰宅すると、寿恵子(浜辺美波)が寝込んでいました。つわりがひどいのです。
何も食べれない寿恵子が唯一、食べたいのはかるやき。万太郎は作り方を長屋の皆に聞いてまわりますが、わからず、困っているところに、藤丸(前原瑞樹)が現れます。

藤丸は、かるやきではなく、義理の姉がつわりのときに作っていたという、じゃがいもを揚げたものを作ります。手作りポテトチップスです。家で揚げたポテトって美味しいですよね。
寿恵子は美味しいと目を輝かせます。浜辺美波さんってほんとに愛らしい。

「藤丸は優しいき 誰よりも優しいき」と万太郎。
この物語のなかで、聡子と藤丸は、近いポジションかと思います。
難しいことはわからなくても、さりげない気遣いのある優しい属性の人たちです。

優しさ属の藤丸が長屋に何をしに来たかというと、大学をやめると言います。戦場になってしまった大学にはもういられないのです。

それを聞いた長屋のおゆう(山谷花純)は「そんな言い草大嫌い」「いなくなったほうがいい理由なんてかき集めたって無駄」と叱咤激励します。

結局後悔するのだから、腹くくって、自分で引き受けるしかないのだと。

それでも「俺、窒息するんだ」と藤丸は苦しそうです。

藤丸が話しだしたとき、丈之助(山脇辰哉)が遊郭に惚れた女がいると告白。
おゆうは再び、追い出された婚家に置いてきた子供の話。

自分語りに次ぐ、自分語り。
ああ、このドラマもまた、人の話にまた自分語りをはさんでくるのか……と一瞬寂しく思いましたが、丈之助はちゃんと藤丸に話を戻したのでホッとしました。

隙あれば自分語りも、戦場のひとつであります。
人間誰しも自分が一番です。誰もが自分の人生の主人公、それはもうどうしようもない事実。が、「らんまん」では、その自分、ひとりひとりの声をポリフォニーとして描こうとしているように感じます。ひじょうに知的かつ、高度な脚本です。

藤丸は優しく気弱で、それはそれで愛すべき人物ですが、英語や論文が苦手で、逃げがちであることは事実です。頑張っても頑張ってもできないのか、その前に怯んで逃げているのか、明確ではなく。彼が英語も論文も得意であれば、ここは戦場になってしまったと嘆くこともなかったかもしれません。

あるいは、植物学研究室はもともと吹き溜まりだったので、能力が劣っていたり、のんびりしたかった人にとって楽園だったのが、いつの間にやら、能力主義になってしまって、藤丸のような人物が居づらくなってしまったということでしょうか。

どんな人もフラットにいられる理想的な世界は何処にーー。

(文:木俣冬)

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–{「らんまん」第16週あらすじ}–

「らんまん」第16週「コオロギラン」あらすじ

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万太郎(神木隆之介)は大窪と共に新種ヤマトグサを発表。そして図鑑を発刊したことで植物学者として世に認められ、まさに順風満帆の日々を送っていた。一方の田邊(要潤)は、新種として発表しようとしていた植物が、イギリス留学中の日本人学者に先を越されて発表されてしまい、失意のどん底に…。そんなある日、長屋に藤丸(前原瑞樹)がやってくる。新種発表をめぐって学者同士が激しく競い合う状況に気を病んだ藤丸は、大学を辞めると言い出す。

–{「らんまん」作品情報}–

「らんまん」作品情報

放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始


長田育恵

音楽
阿部海太郎

主題歌
あいみょん「愛の花」

語り
宮﨑あおい

出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか

植物監修
田中伸幸

制作統括
松川博敬

プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久

演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか

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