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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第67回を紐解いていく。
シダ植物好きな田邊教授
「つまり君は相手がどれほどの地位であろうとも奪うものは奪う。そういうことだな」
(田邊)
田邊教授(要潤)の家に招かれた万太郎(神木隆之介)。寿恵子(浜辺美波)を連れて訪ねます。
これまで誰も招かれたことのない屋敷ーー。はたして万太郎にとって光栄なのか、恐怖が待っているのかーー。
玄関先に今週のサブタイトルになっている「ホウライシダ」が咲いていて万太郎はさっそく夢中になります。この植物が田邊のキャラを表しているのでしょう。きっと今週、どこかで田邊の心がわかるに違いありません。
後妻で若妻・聡子(中田青渚)の着物の帯が歯朶紋であることにもなにか心模様があるでしょう。羊歯は花や種子がなく胞子で増えていくので「霊草」と呼ばれ、繁栄や長寿のお守りのように考えられています。
最初は万太郎の味方かと思えた田邊ですが、じょじょに、やばい人なのでは疑惑が湧いています。西洋かぶれで、プライドが高くて、ワンマンで、野心が強そうで……。万太郎のこれからに障害になりそうないやな予感しかないですが、一面的でないのが「らんまん」の人々なので、田邊教授についてもまだわかりません。羊歯が好きなのは、単に繁栄への強い野心かもしれないし、ほかに意味があるかもしれません。
植物のことばかり考えている、やや多動症気味の万太郎のキャラだったら、教授に会うなり、ホウライシダの話をしはじめそうですが、ここで話をしだしたら物語にならないので、万太郎は礼儀正しく、お招きのお礼と寿恵子の紹介に留めます。
田邊は寿恵子に会うなり、高藤(伊礼彼方)の申し出を断った人物だと思い出します。そこで出たセリフが「相手がどれほどの地位であろうとも奪うものは奪う」でした。万太郎はそういう反権威みたいな考え方の人物ではないですが、田邊はそういう穿った見方をします。
その後、万太郎とふたりきりになると、万太郎に学歴がないからどんなに植物を発見しても発表できないと言います。学会誌を万太郎が作ったのに、その手柄も
どうやら田邊のものにしてしまっています。
「世間は単純なんだよ。学歴さえあればいい」とか銭湯でわめいている人には国政は動かせない、とか言う田邊のたとえも権威主義でいやな感じです。
権威主義で地位のないものを認めないけれど、相手がどれほどの地位であろうとも奪うものは奪う、ような人物が稀に世の中に現れることも知っていて、それに怯えてもいるような気もします。だから、自分たちの既得権益を守り、それ以外の芽をあらかじめ潰していくことばかり考えている。なんだか、こういう人たち、今の世の中にもいます。「らんまん」は明治という時代性の反映かもしれませんが、庶民がふだん思っている上への不満へのガス抜きをところどころでしてくれています。
そして、田邊が万太郎に持ちかけたのがーー
「私のものになりなさい」
どういう意味? と万太郎も、視聴者もざわつかせながら次回へーー。
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第14週あらすじ}–
「らんまん」第14週「ホウライシダ」あらすじ
タキ(松坂慶子)の法要を終え、東京に戻ってきた万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)。いよいよ長屋での新婚生活が始まる。万太郎は高知で採集してきた植物標本を手に大学へと向かう。その中に、新種かもしれない植物があることを植物学教室の面々に伝えると、田邊(要潤)から突然、その標本を持って自宅に来るよう命じられる。その夜、万太郎は、田邊から「専属のプラントハンターにならないか」との誘いを受ける。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか