【5分で分かる】『インディ・ジョーンズ』シリーズ<超>簡単講座

映画コラム

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いよいよ「インディ・ジョーンズ」シリーズの最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』が、2023年6月29日より公開される。

長年シリーズを追いかけてきた者としては、もう感無量。テンションが上がりすぎて、自律神経がおかしくなってます。勝手に脳内でレイダース・マーチが流れたり、猿の脳みそのシャーベットを食べる夢を見たりしてます。という訳でこの稿では、「5分で分かる『インディ・ジョーンズ』シリーズ<超>簡単講座」と題し、

の4作品について解説していこう。

『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年) 

時代設定

時代設定は1936年。ロカルノ条約で非武装地帯と定められていたラインラントへと強引に駐屯したり、夏季オリンピックがミュンヘンで開催されたりと、アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツが、国際社会でその存在感を示し始めた時期でもある。

目指すお宝

「偶像を作ってはならない」とか、「殺人をしてはいけない」とか、モーセに神様の意思が伝えられたという「モーセの十戒」。そのありがたいお言葉を石板に刻んで、箱に収めたものが聖櫃(アーク)。ヒトラーがオカルト好きだったのは有名な話だが、ナチスはそのホーリー・パワーで世界の覇権を握ろうとしているという設定だ。

ヒロイン

今作のヒロインを務めるのは、マリオン・レイヴンウッド。インディにとって考古学の恩師に当たるアブナー・レイヴンウッド教授の娘で、インディとはもともと恋仲だった。非常に勝気な性格で、酒もやたら強い。

マリオンを演じているのは、ジョン・カーペンター監督のSFロマンス映画『スターマン/愛・宇宙はるかに』(1984年)や、リチャード・ドナー監督のファンタジー映画『3人のゴースト』(1988年)でも知られるカレン・アレン。

仲間のキャラクター

インディの親友、サラー。エジプト・カイロでインディと再会し、アーク探索を手助けする。演じるジョン・リス=デイヴィスは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのギムリ役でも有名。野太いバリトン・ヴォイスが印象的ですね。

マーカスは、インディが教鞭を執るプリンストン大学の副学部長。インディの良き友人であり、父親がわりでもある。演じるデンホルム・エリオットは、ジェームズ・アイヴォリー監督の『眺めのいい部屋』(1986年)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたこともある名優だ。

敵のキャラクター

フランスの考古学者、ベロック博士。インディが必死になって手にしたお宝を狡猾に横取りする、長年のライバルだ。敵側のマリオンにも色目を使う女たらしでもある。演じているのは、実はイギリス人のポール・フリーマン。

いつも黒いレインコートに身を包んだゲシュタポのエージェント、トート。筆者は前々から思っていたのだが、桂文珍にソックリである。演じているロナルド・レイシーは、『最後の聖戦』にもヒムラー役で出演。本当に一瞬しか映らないので、インディがヒトラーに出くわすシーンを目を凝らしてご覧ください。

気持ち悪い生き物

『インディ・ジョーンズ』シリーズでは、やたらめったら気持ち悪い生き物が登場する。『レイダース』に出てくるのは、蛇。アークが隠されている「魂の井戸」には、数えきれないほどの蛇(コブラ含む)がウニョウニョいた。

メイキング動画を観ると、蛇で敷き詰められたセットを見渡して、スピルバーグは「まだまだ蛇が足りない!もっと蛇を調達しろ!」と叫んでいた。このくらいクレイジーじゃないと、世界一の映画監督にはなれないのかも。

パラマウントのロゴ

ユタ州にあるベン・ローモンド山をバックに、22個の星マークが円状に現れるパラマウント・ピクチャーズのロゴマーク。『インディ・ジョーンズ』シリーズでは、そのロゴの直後に山を模したカットに切り替わる、というのが定番。『レイダース』では、チャチャポヤン遺跡を目指すインディ一行の前にそびえ立つ山のカットがインサートされている。

Disney+(ディズニープラス)で『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』を観る

–{『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』}–

『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年) 

時代設定

時代設定は前作の1年前の1935年。1919年のインド統治法を改定した新インド統治法が制定され、イギリスの統治からインドの自治へと切り替わった時代でもある。

目指すお宝

所有する者に富と栄光をもたらすという、伝説の秘石:サンカラ・ストーン。宇宙の三次元を表わす線が3つ引かれている。村の人々はシヴァ・リンガと呼んでいた。一家に一つは欲しいですね、サンカラ・ストーン。

ヒロイン

上海のクラブ「オビ=ワン」(もちろんこの名前は『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービに因んでいる)の歌姫、ウィリー。映画の冒頭では、スタンダード・ナンバー「エニシング・ゴーズ」をゴキゲンに歌っていたが、何の因果かインディの冒険に巻き込まれ、インドまで連れてこられることになる。

とにかく泣きわめいたり、叫んだり、ワガママ言い放題のキャラクターで、演じていたケイト・キャプショー自身もあまりこの役には感情移入できなかったご様子。しかしこの映画をきっかけに、彼女はスピルバーグとめでたく結婚することになる。

仲間のキャラクター

インデイの良き相棒、ショート・ラウンド。演じるキー・ホイ・クァンは『グーニーズ』(1985年)にも出演し、80年代はアイドル的な人気を博していた。その後は人気が低迷し、裏方として仕事をしていたのだが、アカデミー作品賞を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年)のウェイモンド役でアカデミー助演男優賞を受賞。見事なカムバックを果たした。

しかも作品賞のプレゼンターはハリソン・フォードで、彼に抱きつくキー・ホイ・クァンの姿が印象的だった。しかも会場にはスピルバーグ、その妻でウィリー役のケイト・キャプショー、音楽を務めたジョン・ウィリアムズもいて、ちょっとした『魔宮の伝説』同窓会のような雰囲気になっていた。

ちなみに『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のなかで、ウェイモンドが「That’s very funny,(とても面白い)」というナレーションを入れるシーンがある。これは『魔宮の伝説』のエンディングで、ショート・ラウンドが象から転げ落ちたウィリーを笑い飛ばす時のセリフと同じもの。明らかなオマージュだ。

敵のキャラクター

邪神カーリーを崇拝するサギー教の司祭、モラ・ラム。素手で生贄の心臓をもぎ取るシーンを初めて見た時は、気を失いそうになった。演じるアムリーシュ・プリーは、『ガンジー』(1982年)など数多くの映画に出演している、インドを代表する俳優のひとり。

気持ち悪い生き物

虫、虫、虫、虫。パンコット宮殿の地下へと潜入するシーンでは、とにかく大量の気持ち悪ーい虫がウジャウジャと蠢いていた。虫だらけの現場でも必死に芝居を続けていたケイト・キャプショー姐さん、マジでリスペクトっす。

パラマウントのロゴ

山のモチーフが刻まれている巨大な銅鑼が映し出され、そのままクラブ「オビ=ワン」でのミュージカル・シーンに突入する、とっても気持ちのいい導入部。エニシング・ゴーズ!

▶Disney+(ディズニープラス)で 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』を観る

–{『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』}–

『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)

時代設定

時代設定は、ナチス・ドイツがオーストリアを併合し、本格的なユダヤ人迫害が始まった1938年。第二次世界大戦が起きるのは、翌1939年9月から。世界は次第に闇の時代へと突入しようとしている。

目指すお宝

最後の晩餐に使われたとされる聖杯。この杯に水を注いで飲み干すと、永遠の命を手にすることができる…といわれている。インディの父ヘンリーが、長年探し求めているお宝でもある。

ヒロイン

ヘンリーと共に聖杯探索の研究をしているオーストリア人考古学者、エルザ・シュナイダー博士。お美しい。実は、聖杯を手に入れるために裏でナチスと手を組んでいた。

演じるアリソン・ドゥーディは、『007 美しき獲物たち』(1985年)のボンド・ガールとして映画デビュー。ヘンリー役のショーン・コネリーは初代ジェームズ・ボンドだし、ドノバン役のジュリアン・グローヴァーは 『007 ユア・アイズ・オンリー』(1981年)で敵役を演じている。実は『最後の聖戦』には、「007」にゆかりのある俳優が多く出演しているのだ。

ちなみにアリソン・ドゥーディは、最近の大ヒット作『RRR』(2022年)にも出演。憎々しげな超悪役バクストン総督夫人を、貫禄たっぷりに演じていた。

仲間のキャラクター

『最後の聖戦』で特筆すべきは、何といっても実の父親ヘンリー役でショーン・コネリーが登場することだろう。もともとスピルバーグは熱狂的な『007』ファン。バケーション先のハワイでその想いをジョージ・ルーカスに伝えたところ、「それよりももっといいアイディアがある」と構想中のプロットを伝えられたのが、『インディ・ジョーンズ』の原型だった。初代ジェームズ・ボンドことショーン・コネリーがインディの父親役を演じることは、スピルバーグにとっても嬉しいプレゼントだったのである。

サラーとマーカスも『レイダース』に続いて登場。マーカスはインディの父親がわりということもあり、威厳を備えたキャラクターだったはずなのだが、本当の父親が登場する『最後の聖戦』ではキャラ被りしないように、自分の博物館でも迷子になるというオトボケ・キャラに激変させられてしまった。

敵のキャラクター

アメリカの大富豪でありナチス党員でもある、ウォルター・ドノバン。「用心を。誰も信用しないことだ」とアドバイスを送っていた彼自身が、実はインディの敵キャラだった。

ここでトリビアをひとつ。ドノバンの自宅でインディと談笑中にうっすらとピアノの旋律が聞こえるのだが、それが何と『スターウォーズ』のダースベイダーのテーマなのだ。ある意味で彼はヘンリーと対照を成す存在であり、インディを暗黒面へと誘う“黒い父親”なのである。

気持ち悪い生き物

かつて教会だったというヴェネツィアの図書館の地下で、聖杯騎士の墓所を発見するインディ。そこに待ち構えていたのは、大量のネズミ。シーンによってはゼンマイ仕掛けの人形も使っているが、映画のために数え切れないほどのネズミを繁殖させたんだとか。映画作りってタイヘン。

パラマウントのロゴ

ロゴが切り替わると、1912年のユタ州に広がる美しい山々が映し出される。そして少年時代のインディ(リバー・フェニックス)が、ボーイスカウト中に「コロナドの十字架」の盗掘を発見する冒頭のシークエンスへと繋がっていく。個人的には一番好きなオープニング。

▶Disney+(ディズニープラス)で『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』を観る

–{『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)}–

『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年) 

時代設定

キリスィマスィ島で初の水爆実験が行われ、ソ連が人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功した1957年。米ソによる冷戦構造がいよいよ深刻化した、時代の変わり目でもある。

ジョージ・ルーカスが手がけた青春映画『アメリカン・グラフィティ』(1973年)は1962年のカリフォルニアを舞台で、『クリスタル・スカルの王国』と時代設定が近いが、そう考えると冒頭で若者たちが車を走らせているシーンとか、ダイナーでインディとマットとが語らうシーンとかは、『アメリカン・グラフィティ』テイストが濃厚だったりする。

目指すお宝

黄金都市アケトーに納められていたといわれる秘宝、クリスタル・スカル。強い磁気で金属を引き寄せる。その正体は、異星人(異次元人?)の頭蓋骨だった。

ヒロイン

『レイダース』のヒロインだったマリオンが、27年ぶりに再登場。本当はめでたくインディと結婚するはずだったのだが、結婚式の一週間前ケンカ別れしてしまったんだとか。その後、インディの知人でもあるイギリス空軍パイロットのコリン・ウィリアムズと結婚。だがすでにそのお腹には、インディの子供であるマットを宿していた。

仲間のキャラクター

今回のインディの相棒役は、インディの実の息子であるマット。革ジャンでバイクに跨ったキャラクターは、どこか『波止場』(1954年)のマーロン・ブランドを彷彿とさせる。演じているのは、スピルバーグの秘蔵っ子と呼ばれていたシャイア・ラブーフ。スピルバーグが製作を務めた『トランスフォーマー』の主人公サム役に抜擢され、その後も『ディスタービア』(2007年)や『イーグル・アイ』(2008年)など、ビッグ・バジェット・ムービーに次々と出演するが、ドラッグストアに不法侵入して逮捕されるなど実生活でトラブルを起こし、最終的にはスピルバーグから見放されてしまう。

ある時はインディの味方、ある時はインディの敵。そのときの状況でコロコロと立場を変えるマック(レイ・ウィンストン)も、ナイスなキャラクターだ。

敵のキャラクター

頭脳明晰で剣術の達人。KGBの超スーパーエリートが、今作の敵役イリーナ・スパルコだ。ある意味でシリーズ最強のヴィランかも。演じるのは、今さら説明不要の大女優ケイト・ブランシェット。黒髪でボブカットという出立ちがナイス。

気持ち悪い生き物

群れで生物に襲い掛かる獰猛な蟻、グンタイアリ。スパルコの部下ドフチェンコ(イゴール・ジジキン)は、インディとの戦いの末にグンタイアリの蟻塚へと連れ去られてしまう。こんな末路、絶対嫌だ。

パラマウントのロゴ

パラマウントのロゴマークから、何かの盛り土にシーンが切り替わって「何じゃこりゃ?」と思っていると、可愛らしいプレーリードッグがひょいと顔をだす。今までで一番キュートなオープニングではないか?

▶Disney+(ディズニープラス)で『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』を観る

(文:竹島ルイ)