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「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第62回を紐解いていく。
竹雄と綾、万太郎と寿恵子
2組の男女の物語が描かれました。
まず、感心しました。
竹雄(志尊淳)の「あなたは呪いじゃなく祝いじゃ」というセリフ!
これまでずっと「呪い」という言葉が流行ってきて、ドラマでよく使われてきましたが、綾(佐久間由衣)が囚われていた「呪い」を解くのみならず、「祝い」に転換して、前進したのです。
誰もが生まれてきたことを、祝われ、寿がれる。
誕生日、おめでとう ってそういうことです。
竹雄は、身分制度から解き放たれたら、ますます魅力的になりました。少々の毒を放ちます。それも甘い毒を。
綾がはりきって酒蔵の組合を作ろうと、近隣の酒蔵を訪ね歩きますが、相変わらず女であることでどこも相手にしてくれず(「きれいな姉様がシャラシャラしたがを従えて」とか「おまんごと峰屋をもろうちゃる」とか)、落ち込んで、竹雄に夫婦になろうと持ちかけたとき、拒否したときのセリフがこちら。
「そうじゃあ。飲んだくれの女神じゃ。わしはそういう女神様に欲しがられたいがじゃ」
(竹雄)
めちゃくちゃ色っぽい口説き文句でありますし、竹雄の性癖がわかります。
開放的で創造的な人が好きなのでしょう。これはギリシャの酒神・ディオニソス的な存在ということ。お酒と神様は切っても切れない関係ですから。
そんな竹雄を「めんどくさい」と言いながら、綾と竹雄はーー。
この場面をかなり引きで、手前に狛犬(神様のお使い)を置いて見せます。「欲しがられたい」と意外と生々しいセリフのあと、うんっと引きで見せる上品さ。
そして地面にはバイカオウレンが咲いています。
綾が酒蔵を任されてから、まったくほかの酒蔵と関わりがなかったのかーとか、いっさいのつきあいもないのにいきなり組合の話を相談にいったのかーとか、気になる点も多々ありましたが、そのへんが気にならないほど、綾のまっすぐさと竹雄のちょっと危うい生命力がまぶしい場面でした。
竹雄は、綾に、闇の酒を作ればいいとか、
「滅ぶがだったら滅んだらええ。まっすぐに作りたい酒を貫く。それだけでええがじゃ」
(竹雄)
とか、なかなかやんちゃな意見を言います。規律正しい奉公人だったとは思えない自由さです。
でもこれは正論。たとえ、認められずとも、滅んでしまっても、自分のすべてを燃やしつくせば、神様に祝福される。自分を曲げてはいかんのです。
一方、万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)。万太郎が桜の病を治そうと必死に研究し、夕ご飯に顔を出ささないことで、寿恵子が苛立ちます。
これもまた、夕飯を万太郎の部屋に持ってきてあげればいいのに、とも思うけれど、いったん、部屋を出て、戻ってきて、食べ物(万太郎の好物・山椒餅)を置いて去っていったような描写はありました。
でも、ふたりのはじめての仲違いは、すぐに解消します。綾と竹雄と寿恵子が3人で万太郎の悪口を言って解消し、万太郎が平謝りで、ほっとなりました。
寿恵子を「邪魔」と言ってしまったあとのランプの明かりが暖色なので、印象が柔らかくなるし、そこで時間の経過が表され、寿恵子の置いていった食べ物が映り、万太郎が慌てる。ちょっとしたいさかいからの反省の流れが見事。脚本がいいから演出も乗っているのかなあ。
エンド5秒は「しそんじゅん」さんの投稿でした。
エンド5秒 朝ドラ辞典参照のこと
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第13週あらすじ}–
「らんまん」第13週「ヤマザクラ」あらすじ
植物学者・マキシモヴィッチからの手紙は、万太郎(神木隆之介)の研究成果を高く評価する内容だった。タキ(松坂慶子)は早く東京へ戻った方がよいと、二人の祝言を急がせる。しかし、タキの病状も悪化していたのだった。祝言の準備が進む中、万太郎、竹雄(志尊淳)、寿恵子(浜辺美波)の三人は横倉山へと植物採集に出かける。竹雄は寿恵子に万太郎の植物採集の手助け方法を教える。それからしばらく後、万太郎の祝言を無事に見届けたタキは、満開の桜に見守られながらあの世へと旅立つのだった。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか