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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第60回を紐解いていく。
最終回かと思った?
頑なに治療を拒んできたタキ(松坂慶子)が、医師・鉄寛先生(綱島郷太郎)を呼び、「わしを生かして」と頼みます。
ところが、鉄寛は間髪入れず「申し訳ありません」。
そんなドライな……。「らんまん」はやさしいだけのドラマではなく、命には限りがあるという現実から目を背けません。タキは、自分を生かす薬はないと知って絶望するのではなく、「すっきりした」と言います。潔い。
一方、鉄寛は、ただ期待を持たせないわけではなく、希望も語ります。これまで家のために生きてきたタキが、ようやく自分のための願いを持ったと、
「願いこそがどんな薬よりも効くことがあります」(鉄寛)
延命する薬は作れないけれど、人は自分の意思で生きることも可能である。他力でなく自分の力で生きることの大切さを感じます。
これまで、自分を抑えて、家を守るために生きてきたタキが、ようやく解放され、自分の意思をもった(自分のやりたいことのために生きたいと願った)瞬間が、亡くなる直前ということがいささか残念ではありますが。いや、もしかして、生きられるかもしれませんよ? 以前、松坂慶子さんが出演した「まんぷく」では、彼女が演じたヒロインのお母さんは生前葬をして、長生きされましたから。
さて。タキに生きる希望を与えた万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)は、万太郎の生まれ故郷・佐川を散歩します。
神社の森にはバイカオウレンがーー。
寿恵子は佐川で家族になりましょうと提案します。冒険好きで、実家の白梅堂もたたむ予定なので、寿恵子は思い切りがいいです。
そこへ、藤丸(前原瑞樹)と波多野(前原滉)からの手紙が。
マルバマンネングサが新種の植物と認められ、学名に、「槙野」の名前がついたことに、万太郎と寿恵子と竹雄(志尊淳)が3人丸くなって大はしゃぎする場面が、楽しげでした。
やってきたことが報われるのは、朝ドラあるある「最終回かと思った」です。
参照:朝ドラ辞典
ここでタキが亡くなって、植物に槙野の名前がついたら、最終回ですが、物語はまだ続きます。
嬉しい報告を訊いて、
「草の未知が海の向こうにもつながっちゅうがじゃろ」とタキ。
ほんとうは、万太郎と寿恵子といつか生まれてくる孫と一緒に暮らしたいと願っているけれど、また我慢して、東京に早く戻れと言うのです。
決して、弱音を吐かない、自分の辛さや悲しさをうちに秘めるタキの気持ちが切ない。
ただ、植物に「槙野」の名前がついたことで、槙野家が世界的に歴史に刻まれたのです。万太郎は、峰屋の伝統は継がなかったけれど、立派に「槙野」の家の歴史を永遠にすることに成功したのです。
すてきな話に水を差すようなんですが、タキの願いは、ひ孫が見たいで、実は「家」と密接に関係しているのです。脈々と続く血の継承を見たいという、これが人間の逃れられない業でありましょうか。
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第12週あらすじ}–
「らんまん」第12週「マルバマンネングサ」あらすじ
長屋にいる万太郎(神木隆之介)のもとに現れたのは、舞踏会のドレスを着た寿恵子(浜辺美波)。寿恵子の登場に沸く長屋の仲間たちの前で、二人は気持ちを確かめ合い、永遠の愛を誓うのだった。それから半年後の春、万太郎、寿恵子、竹雄(志尊淳)の三人は故郷の佐川へと里帰りをする。その頃、峰屋では綾(佐久間由衣)と市蔵(小松利昌)が酒屋に課せられる税金の制度が変わったことで窮地に立たされていた。ある日、万太郎のもとへ、植物学の権威・マキシモヴィッチ博士からの手紙が届く。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか