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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第53回を紐解いていく。
愛のために生きる
万太郎(神木隆之介)を諦めようとして、バラの絵をやぶこうとした寿恵子(浜辺美波)ですが、破くことができず、万太郎への思いが募ります。
その頃、万太郎は、植物の画に集中していました。
それを、下宿で見守る、波多野(前原滉)、藤丸(前原瑞樹)、丈之助(山脇辰哉)。
万太郎のなみなみならぬ集中力に感心します。
「〜僕も探したいな 僕の一生をパンパンにできること」
(波多野)
波多野は万太郎のように全身全霊でものごとに向かうことの尊さを語ります。
せっかく生まれてきたのだから、無為に過ごさず、やれることは全部やりきりたいのは当然のこと。それができるのも才能であって、万太郎は、やりたいことを全部やりきる才能がある人なのです。
自分たちはスカスカと反省する藤丸だって、東大に入れたほど勉強してきたわけで、十分だと思います。それでも真摯に反省する。その気持ちが人間を向上させるのでしょう。
「小説が爆誕しちゃうんだよ」と令和的な言葉を使う丈之助は万太郎に感化され、生涯かけてシェイクスピア全作の翻訳にチャレンジしようと考え始めます。丈之助は坪内逍遥先生がモデル説に真実味が増してきました。
時代が急激に変化していくなかで、大学生たちは夢にあふれ、花咲こうと膨らんだ蕾のようにやる気に満ち満ちていて明るい。時代の流れのなかで価値観を否定されたりなくなってしまったりするものを惜しむ気持ちもあるけれど、新しいものへの希望はそれに勝ります。
そこに竹雄(志尊淳)もお茶いれましょうかと加わって、一層にぎわいます。
竹雄は万太郎の力作を「まあまあ」と言うので、3人はぎょっとしますが、竹雄は「あなたがあなたを認められる絵を」と誰よりも万太郎を理解しているようです。
「あなた」って言うと、やっぱり竹雄が妻みたいです。仕事中に頃合い見計らって「お茶入れましょうか」とのぞきこむ行動も妻ぽい。
いまのところ竹雄が妻的存在ですが、未来の妻・寿恵子はどうしているかといえばーー。
「熱い、汗かいちゃった」
寿恵子はダンスのレッスンで、クララ先生(アナンダ・ジェイコブズ)に相手を想像して踊るように言われ、万太郎を思い浮かべて踊ります。
羽が舞うなかで笑顔で踊るふたりーーの妄想のあとのセリフが「熱い、汗かいちゃった」です。爽やかスポーツのあとでもこういうセリフはありますが、万太郎とのダンスの妄想のあとだと、なにかじんわり湿度を伴って聞こえます。
クララは寿恵子に「愛のために」「心のままに」生きることを教えます。
万太郎への愛で、寿恵子の器が徐々に埋まって、パンパンになってきているのを感じました。ドラマのなかから湿度のある熱情が溢れて溢れて留まるところを知らない。
植物学の学会誌の原稿も集まって。なかには「花と猫の関係」について論じられたものもあるのです。気になる!
誰もが、それぞれのテーマをもって生きています。
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第11週あらすじ}–
「らんまん」第11週「ユウガオ」あらすじ
万太郎(神木隆之介)が印刷所で修業を始めて1か月が過ぎた。石版印刷の技術にも磨きがかかり、雑誌創刊に向けて着々と準備を進めていた。そんなある日、竹雄(志尊淳)が働くレストランに、寿恵子(浜辺美波)と高藤(伊礼彼方)がやってくる。衝撃的な会話を聞いてしまった竹雄は、急いで万太郎に伝えにいく。しかし、万太郎は一人前の植物学者として寿恵子を迎えに行くと言ってきかず、今は、雑誌創刊を優先するという気持ちを曲げないのだった。寿恵子もまた、ある決意を胸に舞踏会の発足式へと挑む。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか