『最後まで行く』の爆笑ポイント“ベスト5”!この岡田准一ファンへのサービスが嬉しい!

映画コラム

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2023年5月19日(金)より『最後まで行く』が公開中だ。先にはっきりと言っておきたいのは、本作が「笑える映画」だということ。

最悪な状況にあたふたしている主演の岡田准一を観ているだけで笑えて仕方がなく、敵対する立場のはずの綾野剛もバラエティ豊かな「黒い笑い」を届けてくれるブラックコメディなのだ。周囲から笑い声が聞こえてくる、映画館で観てこそ面白さも増すだろう。

『最後まで行く』が笑える理由はこれだ!

映画におけるコメディは「劇中の登場人物は真剣そのものだけど、側から観ればバカバカしい」シチュエーションややり取りがもっとも笑えると思う。その大きな理由は、観客が「状況を俯瞰して観る立場」でいられるからだろう。

この『最後まで行く』では、良い意味で意地の悪いシチュエーションのオンパレードだからこそ、「こんなに目に遭わなくて良かった〜!」という安全圏にいられる様も楽しい。それぞれのコメディシーンはそれ単体で面白い上に、その後の展開との相乗効果というか「笑いのコンボ」が発生するのも面白い。

もはや顔芸と思えるところもあったが、そこまでの過程の可笑しさと、演技力そのものが半端ではない岡田准一と綾野剛だからこその最大級の顔芸の組み合わせはやっぱり笑ってしまう。

ここでは、筆者が独断と偏見で選ぶ、『最後まで行く』の爆笑ポイントベスト5を紹介しよう。結末だけは明確には書かないでおくが、いずれもネタバレに大いに触れているので、ぜひ観賞後にご覧になってほしい。

※以降、『最後まで行く』本編のネタバレに触れています。

5位:初っ端から「ああ…終わった…!」オンパレード

本作の主人公である刑事の工藤(岡田准一)は、初っ端から(実はその前から銃で撃たれている)人を轢いてしまい、その死体をトランクに詰めて証拠隠滅を企てて、さらには検問では飲酒の確認を誤魔化そうとする。いきなり死体遺棄と飲酒運転という犯罪コンボを繰り出す、冒頭から「こいつダメだ!」と思わせる主人公も珍しい。

それだけならドン引きするところだが、笑えるのはその後。トランクを開けられないようにするため、岡田准一が手足を大袈裟に振ったり顔をひん曲らせて大慌てになるのである。この時点で「ああ…終わった…!」と思った矢先、死体の服に入ってたスマホの着信音が鳴るダメ押しまで完備してくれていた。

その後も「悪事がバレるかバレるかバレないか」のハラハラドキドキが続く、意地の悪い笑いのフルコース。勝手な言動ばかりをする岡田准一を妻役の広末涼子がゴミを見るような目になるのも、ある意味でご褒美のようなものである。

4位:隠れ家で「いや〜ここにはいないんじゃないかな〜」

死体の正体である若いチンピラ(磯村勇斗)の隠れ家に行った時に、警察の同僚たちは銃を構えて隠れつつ侵入を試みるのだが、工藤はもちろん「もう死んでいることを知っている」ので「いや〜ここにはいないんじゃないかな〜」な態度で平然と近づいていくので、それはもう笑う。

ここでのさらなる笑いのコンボ、それは隠れ家の防犯カメラを見つけた時の岡田准一の、心の中の「や、やべ〜!」が出まくった顔芸だった。その防犯カメラの確認作業で、「自分の車だとバレるのか〜それともバレないのか〜」と確認する時の一挙一動も面白すぎる。

3位:靴を踏んづけられた上に顔面がめっちゃ近い

後述する「1位」のシーンを挟んで時間は遡り、エリート監察官の矢崎(綾野剛)の「ここまでの歩み」、というか思いっきり義父との癒着の関係にあることが明らかになる。

大間々昂によるどす黒い音楽のおかげで結婚式が禍々しいものに見える演出もすごいが、その後に義父に靴を踏まれて詰め寄られ責任を問われる様に大笑いしてしまった。目をひん剥く千葉哲也VSただ従うしかない綾野剛の、もはやキスでもしてしまいそうな「顔面ゼロ距離」の絵面は脳裏に焼きついてしまうことだろう。

2位:ドライアイスは自分で入れたい!

果たして、工藤は自分が轢いて殺してしまった(と思い込んでいる)死体をどう処理するのか……!?ということが見所になるわけだが、まさかの亡くなったばかりのお母さんの棺の中に一緒に入れて火葬してもらうという最低(褒め言葉)の発想に出る。このバカ!一応は棺に死体を押し込めることに「母ちゃんごめん!」と謝っているけど、この親不孝もの!

ここでも笑いのコンボが炸裂する。それは、ドライアイスを交換にしに来た業者への対応。「最後くらいは自分でやってあげたい!」と、ある意味では心からの本心で、泣きそうになりながら訴えて、業者にWの死体を見えないようにしつつドライアイスを詰めようとするところでももう爆笑するしかなかった。

不思議なもので、やっていることのほぼ全てが正しくない主人公であるのにもかかわらず、ここまで頑張る様を見ると応援したくもなってくる。その後の「幼い娘を救うことを第一に考える」様は、今までの正しくなさとのギャップと、岡田准一本人の魅力もあってか、超カッコよく思えてくるくらいだ。

–{爆笑ポイントの1位はこれだ!}–

1位:電話での「ば〜か!」からのリアルでボコられるのコンボ

映画を観る前から期待していたのは、予告編でも観られる、岡田准一が電話の相手へ「ば〜か!」と小学3年生のような罵倒をするシーンだった。実際に本編でお出ししていただいたのは、その期待をさらに上回っていた。「死体を埋めた場所を知っているんだな!(実際の死体はお母さんといっしょ)」というカマをかけてからの、「お前はなぁ、本当は何にも見ちゃいねぇんだな!」「ば〜か!」なので、そりゃもう大笑いするってもんである。

しかし、真の爆笑の理由はその後にあった。その「ば〜か!」を言ったばかりの岡田准一は、即座に車から引き摺り下ろされ、その電話の主の綾野剛にボコられるのである。電話越しだからこそ「ば〜か!」と言い切って、気持ちよく「ふぅ〜」と安心していたところへ、スピーディな引き摺り下ろしボコられコンボには吹き出さずにはいられなかったのである。

しかも、その後に明らかになるのは、矢崎が磯村勇斗演じる若いチンピラからメールでもバカにされてたという事実だった。その怒りの沸点が、リアルなボコボコっぷりで大爆発していたとわかるのもなんとも可笑しい。あと、結婚相手に手紙を読んでもらう最中でバカにするメールを目の当たりにするも、それでも手紙の内容に対して「感動した!」と笑顔で言う綾野剛の笑顔はなんだか守りたくなった(かわいそう)。

サービス満点のクライマックス!

笑いを通り越して感動したのは、オリジナル版にはない、というよりもその「先」を描いたようなような、二段構え、いや三段構えのクライマックスである。劇中では「砂漠の上で脚をバタバタさせる一匹のトカゲ」の話が繰り返し出てきているが、ここで本当にトカゲのように這いつくばりながらの攻防が展開するのである。

さらに、オリジナル版とは違うのはラストシーンそのもの。ある意味では「終わらない」ラストに賛否両論はあるかもしれないが、絵面としても最高にカッコいいし、タイトルさながら、その後に「最後まで行く」ことを「想像」させる、見事な幕切れだったと思う。

オリジナル版との違いは?

(C)2014 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND AD406 ALL RIGHTS RESERVED.

『最後まで行く』のオリジナルは2014年公開の同名の韓国映画。そのフランス版リメイク『レストレス』もNetflixで配信中だ。さらに、中国とフィリピンでもリメイクされるという人気ぶりで、それぞれを見比べてみてみるのも面白いだろう。

今回の日本リメイク版では、種々のシーンでブラックコメディ要素がマシマシになった他、エリート検察官のエピソードや、前述するクライマックスなどが付け加えられている。

ピンポイントで言えば、オリジナル版ではとある「おもちゃ」のギミックがある場面を、今回の日本リメイクでは『ダイ・ハード』よろしく身体を張ってダクトを通るという、これはこれでアクション俳優である岡田准一のファンに嬉しいサービス的な改変がされているのも嬉しかった。

搾取される側を描く、藤井道人監督の作家生は一貫している

本作は藤井道人監督作では珍しいブラックコメディかつリメイクであるが、「搾取されたり抑圧される人間を描く」作家生がやはり一貫しているというのも面白い。主人公の刑事・工藤も敵となるエリート検察官・矢崎もまったく正しくはない人物であるが、そこには「そうすることでしか生きられなかった」悲哀も多分に込められていたのだから。

(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会

思えば、直近のオリジナル企画の藤井監督作『ヴィレッジ』も、見方を変えれば「ひどすぎて笑ってしまう」内容でもあった。喜劇と悲劇は表裏一体。それを表現できるのも、また映画や創作物の豊かさだと思い知ったのだ。藤井監督作の過去作も振り返りながら、そのことを再確認してみるのも良いだろう。

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同じく韓国映画の日本リメイクの傑作『見えない目撃者』もぜひチェックを!

(C)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (C)MoonWatcher and N.E.W.

これほどまでに面白い、リメイク映画が日本で作られたことも実に喜ばしい。そして、同じく韓国映画のリメイクながら、見事なアップデートが行われた、2019年の『見えない目撃者』もおすすめしておきたい。

こちらでは吉岡里帆が視力を失った元警察官、高杉真宙が斜に構えた高校生を熱演しており、その年齢も性別も立場も違う2人の「バディ感」も見所。視覚以外の感覚も研ぎ澄まされるかのようなクライマックスの演出、ネタバレ厳禁のオリジナル版から改変された感涙もののラストなど、褒め称えるところばかりなのである。

R15+指定されるほどの猟奇的な描写もあるが、それも作品には必要なもの。先日のラジオ番組「アフター6ジャンクション」の投票企画「リメイク映画総選挙」で堂々の1位となったことも納得の出来栄えだ。ぜひ、こちらも優先的に観てほしい。

【関連記事】『見えない目撃者』が韓国版・中国版を超える傑作となった「3つ」の理由!

(文:ヒナタカ)

–{『最後まで行く』作品情報}–

『最後まで行く』作品情報

ストーリー
年の瀬の夜。刑事・工藤(岡田准一)は危篤の母のもとに向かうため、雨の中で車を飛ばす。
心の中は焦りで一杯になっていた。さらに妻から着信が入り、母が亡くなった事を知らされ言葉を失う。

――その時。彼の乗る車は目の前に現れた一人の男をはね飛ばしてしまった。必死に遺体を車のトランクに入れ立ち去る。そして母の葬儀場に辿り着いた工藤は、車ではねた男の遺体を母の棺桶に入れ、母とともに斎場で焼こうと試みた。

――その時、スマホに一通のメッセージが。

「お前は人を殺した。知っているぞ」 腰を抜かすほど驚く工藤。
「死体をどこへやった?言え」

メッセージの送り主は、県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)。追われる工藤と、追う矢崎。果たして、前代未聞の 4 日間の逃走劇の結末は?

予告編

基本情報
出演:岡田准一/綾野剛/広末涼子/磯村勇斗/駿河太郎/山中崇/黒羽麻璃央/駒木根隆介/山田真歩/清水くるみ/杉本哲太/柄本明 ほか

監督:藤井道人

公開日:5月19日(金)

製作国:日本