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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第47回を紐解いていく。
万太郎、砂をかぶる
万太郎(神木隆之介)は印刷工場で働き始めます。
若い青年が見倣いからはじめることは珍しくないけれど、大店の坊っちゃんが、自分で石板印刷をやろうという、他者から見たら無謀というか厚かましい了見のため、職人にいじめられるはめに。
いや、単に重い砂を渡しただけで、ひ弱な万太郎が受け取れなかっただけであり、いじめじゃなくてふつうのことなのかもしれませんが(それが現代ではハラスメントになる可能性はあります)。
砂をかぶった頭に水をかぶっていると、竹雄(志尊淳)が心配して止めます。
「暑いき」というのに「着ちょり」と布団をかけて無理に寝かせる竹雄のまめまめしさ。しかも竹雄は自分が石板印刷をやるとまで言い出します。相変わらず、健気です。
ところが、
「せっかくこんなおもしろいときに居合わせたんじゃ じっとしてはおられんじゃろう?」
(万太郎)
万太郎は植物学を日本に根付かせるためにがむしゃらです。
「前に進みたい」
なんの不自由もない峰屋の当主が下働きするなんて許せないと嘆く竹雄を見て、万太郎は印刷工場で住み込もうとまで考えます。
天才的な人物の考えや行動は常軌を逸しているもので。
凡人的には、万太郎の態度は、印刷工場の職人に失礼な気がしてしまうし、幼少期、肺が弱かったのに、いつの間にか直って、丈夫になって、砂まみれになっても平気。やりたいことのためなら、平気で誰にでも土下座できる。
万太郎には一般常識や世間体なんて関係ないのです。
カラダが実は丈夫になったのは、植物採集で野山を駆け回っていたからなんでしょうけれど。
心配した竹雄は
「朝飯はわしの目の前でちゃんと食べてください」
(竹雄)
と言い、美味しい朝ごはん(オムレツ)を万太郎に出して言ったことはーー
万太郎と竹雄の状況はまるで夫婦のようにも見えます。
夫が忙しいから、せめて朝ごはんだけ一緒に食べましょうというのは、栄養価のあるものをせめて朝だけ食べさせたいという思いやりでもあります。これがまるで妻の考えることのようではありませんか。
さらに、家庭の財布を、竹雄が管理しています。
つまり、万太郎は、妻のような(母とも言えるが)存在に支えられて日々の研究や生活を滞りなく行いながら、寿恵子(浜辺美波)に心惹かれているという状況なのです。
このへんも自由だなあと思いますが、選ばれた人はそういうものなのかもしれません。
寿恵子の母まつ(牧瀬里穂)は「あの人、前ばかり向いているんだろう。立ち止まって、あんたを振り向いて、(寿恵子の好きな本を)一緒に読んでくれるかねえ」と気にします。
万太郎は、竹雄から寿恵子に変わっても、ひとりで前を向いて進んでいってしまいそう。寿恵子は「足を引っ張るのもいやなの」と言うので、万太郎にとってちょうどいい相手なのかもしれません。
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第10週あらすじ}–
「らんまん」第10週「ノアザミ」あらすじ
植物学雑誌を作りたい万太郎(神木隆之介)は、大畑(奥田瑛二)が営む印刷所に向かい、見習いとして働かせてほしいと懇願する。自分が描いた絵をそのまま印刷できる石版印刷の技術を習得するためだ。大畑から許しを得た万太郎は、竹雄(志尊淳)の心配をよそに、昼間は大学で標本の分類作業、夜は印刷所で修業という生活を始める。一方の寿恵子(浜辺美波)は、万太郎が店に来なくなったことにヤキモキする毎日。そんな中、高藤(伊礼彼方)に思いもよらぬことを告げられる。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか