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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第44回を紐解いていく。
夏の最後のバラ
高藤(伊礼彼方)の屋敷で、ドレス姿の寿恵子(浜辺美波)にばったり出会った万太郎(神木隆之介)。彼女のあまりの美しさに見惚れて「きれいじゃ」「きれいじゃ」としか言えません。お花には「貴婦人」というすてきな例えを言えたのに。それだけ寿恵子が素敵過ぎたのでしょう。
室内楽のコンサートで演奏された曲は「夏の最後のバラ」を歌ったもので、万太郎はそこに「愛する者を亡くして誰がたったひとり生きられようか」という、亡くなった者への愛おしさを読み取り、その解釈を寿恵子にします。これはフラグ? 伏線? モデルの牧野富太郎さんは妻に先立たされているのです。
万太郎と寿恵子が見つめ合ったとき、高藤が現れて、寿恵子を抱きかかえて去っていきます。西洋では女性を抱えることが当たり前でも日本ではないことなので寿恵子はものすごく驚いて大騒ぎ。「いや〜」「おろしてください」と攫われていくような状況でした。
高藤の妻・弥江(梅舟惟永)は、夫の寿恵子への視線に対して不満を感じている様子でした。
万太郎は、お出かけした甲斐あって、田邊(要潤)に、植物学の雑誌を作る許可をもらえます。
ちょうど学会の会報誌を作ることになっていたのでそれと一緒にすればいいということになり……。
すべてがうまくいきそう。と思うと、少々問題もあって。
事務局長の大窪(今野浩喜)をさしおいて学会誌を万太郎が仕切ることになると、大窪のメンツが潰れます。けれど、万太郎はいつの間にか他者の気持ちを慮ることができるようになっていて、巻頭言を頼むのです。その栄誉にまんざらでもない大窪。万太郎、うまい。こういう気遣いって大事です。しかも、編集や印刷の知識もしっかりある。すごいです。
大窪役の今野さん、ちょっと意地悪なキャラをやってますが、この意地悪さが徹底的にいやな人ではなく、どこか抜けたところがあって、いやな感じがしないようなキャラを作っています。
「万事快調 望み通り」のはずですが、
なぜか、心につかえがありそうな万太郎。
故郷の神社の前の大地に寝転がったように、兎小屋の前に仰向けになります。
「兎は狛犬じゃないよ」
(波多野)
とぼけたセリフと万太郎の潤んだ瞳のギャップが印象的でした。
田邊に雑誌制作の許可をもらったあと、どこか浮かない顔をして、すりガラスの陰影にそっと手を触れる万太郎に叙情性がありました。
コミカルなこともできるし、こういう影のある演技もできる神木さんは万能であります。
夏の最後のバラについては、最後の1本の峰の月のことも暗示しているような気がしてなりません。
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第9週あらすじ}–
「らんまん」第9週「ヒルムシロ」あらすじ
いつか日本中の植物の名を明かし植物図鑑を作りたい、という夢を掲げた万太郎(神木隆之介)は、その第一歩として、植物学雑誌の出版を目指していた。一方、寿恵子(浜辺美波)は元薩摩藩士の富豪・高藤(伊礼彼方)から誘いを受け、舞踏練習会に参加することとなった。そして、万太郎も田邊教授(要潤)の誘いで高藤家のサロンへ行ったところ、ばったりと寿恵子と出会う。田邊から植物学雑誌を作ることの許しを得られたものの、どうも頭の中から寿恵子のことが離れず、仕事に身が入らなくなってしまった万太郎。長屋の住人である、りん(安藤玉恵)、えい(成海璃子)、ゆう(山谷花純)の3人の女性に励まされ、万太郎は自分の気持ちを伝えようと白梅堂へ向かうが・・・
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか