[※本記事は広告リンクを含みます。]
「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第42回を紐解いていく。
田邊とお出かけ?
「皆さんが勉学にご入用なもんがあったらどんとお申し付けください」
(竹雄)
竹雄(志尊淳)のこの言葉が衝撃的でした。
万太郎(神木隆之介)のみならず、御学友の皆さんにもお金を出そうとする、なんて豪気な。そして、なんと暢気な。
政府が近代化政策のため増税をはかり、酒への課税を増やそうとしています。今で言ったらたばこ税が上がっていくようなものでしょうか。これは庶民からとっているもので、お酒税は作った人からとるものですが。庶民いじめ(言い方)である点では同じです。
藤丸(前原瑞樹)の実家も酒屋で、「これから先日本中の酒屋が潰れていく」のではないかと心配していて、峰屋も? と気にかけますが、峰屋は大丈夫と竹雄は言うのです。
竹雄はほんとうに根拠なく大丈夫と信じているのか、それとも万太郎に心配をかけたくなくて強気を装っているのか、気になります。たぶん、後者……。
実際、峰屋は困っていました。
これまで売上に税金がかかっていたものが、できた時点で税金がかかるようになりました。どれくらい売れるかわからない段階から……。
峰屋に捜査が入って、密造酒の疑いをかけられたりして散々。
「運が悪かったら腐造やち……」と綾(佐久間由衣)は途方に暮れるのです。
腐造は女性が穢れているから起こると言われていましたが、そういう迷信的なことではなく科学的な根拠で考えられるようにはなっているようです。綾は政府の調査に対しても毅然と立ち向かっていました。
でも、心配なのはタキ(松坂慶子)の体調です。なんだか調子が悪そう。心臓が悪いみたいです。「あさイチ」では博多大吉さんが医者に行ったほうがいいと気にかけていました。タキは万太郎に知らせるなと言い含めます。
夢をもって遠くに旅立った者に何も語らず、明るい言葉を贈る、残された者の哀しい性分です。
万太郎は峰屋に刻一刻と近づいている不穏に気づかず、自分の夢実現に一生懸命です。持ってきた銘酒・峰の月があと一本になっているのも、何か暗示的でした。
気難しい田邊教授(要潤)に、植物の雑誌を作っていいか聞くタイミングを見計らう万太郎。西洋と日本の文化の違いについて問いかけたことで、教授の機嫌が良くなり、取り付く島ができてきます。教授は万太郎を”お出かけ”に誘います。こうして心象を良くしてお願いごとを取り付ける。万太郎もストレートではないやり方を学び始めたようです。
教授の知的好奇心をぴくりと動かした万太郎の話題は、絵も文学も、西洋の視点には「奥行き」があり、日本の視点は奥行きがないという指摘です。逆に、西洋の人は、平面的な日本の浮世絵に影響されたりもしているんですけどね。どちらにも良いところはあるんだと思いますがそれはまた別の話です。
藤丸が四つ葉のクローバーの押し花を持っているのがかわいかった。「これのおかげ?」と聞くトーンが「舞いあがれ!」のむっちゃんとはまったく別人。
(文:木俣冬)
木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中
–{「らんまん」第9週あらすじ}–
「らんまん」第9週「ヒルムシロ」あらすじ
いつか日本中の植物の名を明かし植物図鑑を作りたい、という夢を掲げた万太郎(神木隆之介)は、その第一歩として、植物学雑誌の出版を目指していた。一方、寿恵子(浜辺美波)は元薩摩藩士の富豪・高藤(伊礼彼方)から誘いを受け、舞踏練習会に参加することとなった。そして、万太郎も田邊教授(要潤)の誘いで高藤家のサロンへ行ったところ、ばったりと寿恵子と出会う。田邊から植物学雑誌を作ることの許しを得られたものの、どうも頭の中から寿恵子のことが離れず、仕事に身が入らなくなってしまった万太郎。長屋の住人である、りん(安藤玉恵)、えい(成海璃子)、ゆう(山谷花純)の3人の女性に励まされ、万太郎は自分の気持ちを伝えようと白梅堂へ向かうが・・・
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか