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「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第33回を紐解いていく。
トントン拍子にうまくいく
第32回でクサ長屋の東大生・堀井丈之助(山脇辰哉)に、泣いて帰って来るだろうと予測されていた万太郎(神木隆之介)ですが、勇んで東大の植物学教室を訊ねます。
なんとか初代教授・田邊(要潤)と出会うことはできました。田邊は外国の大学を出ていて、何かと、英語を使います。いけすかない印象もありますが、いやな人ではないようです。
どちらかといえば周囲のひとのほうが無理解で。
万太郎の植物標本を「押し売り」と言ったり、小学校中退であることをばかにしたりします。
このままではやっぱり泣いて帰るはめに……と思ったら、田邊が土佐のひとには恩義があると「ノブレス・オブリージュ」という考え(地位あるものには義務がある)に則って、持ってきた植物標本を見ると言います。
ところが万太郎はけっこうですと突っぱねます。
「あなたがたは黙ってわしが世界に打って出るが眺めちょったらいい」
(万太郎)
と英語で啖呵を切ります。
強気に出るときは英語を使うのが万太郎流であります。
万太郎にはプライドがあり、お情けで自分の研究を見てもらう気はないようです。
「土佐の野山はわしの血肉じゃ」
(万太郎)
自分がいかに偉業を行っているか語ったあと、結局、標本を見せるのですが……。
自分をアピールするのがうまい。決して下手に出ず、堂々としているのは、お坊ちゃん育ちだからでしょう。
あまりに自信満々なので、次第にみんな興味を持ってしまう。
実際、珍しい標本を丁寧に作ってあったので、研究者たちはざわつきます。
万太郎は、この研究室にある標本を見せてくれたら、その検定も手伝うと交換条件を出します。ほかの研究者たちはその分、自分の研究をやれるので、すっかり万太郎を受け入れる気になっています。
交換条件はなくても、万太郎の標本には値打ちがあると田邊は出入りを認めます。
握手しようとしてぐっと抱きしめるという、
トントン拍子にいい方向に進むのは朝ドラあるある。
ただひとり徳永(田中哲司)だけが気に入らない様子ですが、旧幕府時代を引きずっている「化石」と田邊は窘めます。徳永は、設定では武家出身。人間を身分で分けるクセが身についてとれないのでしょう。東大に誇りを持ち、万太郎が小学校を出てないことにこだわります。
旧幕時代を引きずった者と、海外に目を向け広い世界を見ようとしている者。明治時代になっても、まだ江戸時代の開国派と攘夷派の対立が人々の心に根深く残っているようにも見えます。万太郎は徹底して新しい時代を切り拓いていこうとする人たちと出会ってきました。
「あいつはきっと火種になる」と意味深なことを言って去っていく徳永。彼の腰巾着的なのが、講師の大窪(今野浩喜)です。
なんとか第一関門は突破した万太郎ですが、これからどうなる? たぶん、だいじょうぶ。それが朝ドラ。のんきなうさぎもかわいかったです。
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第7週あらすじ}–
「らんまん」第7週「ボタン」あらすじ
長屋の住人らに見送られ、万太郎(神木隆之介)はいよいよ憧れの東京大学植物学教室へと向かう。青長屋とよばれる校舎に足を踏み入れた万太郎は、植物研究の最先端の場を目の当たりにして興奮する。教授の田邊(要潤)に「土佐植物目録」を見せ、大学へ出入りをさせてもらえないかと懇願するが、助教授の徳永(田中哲司)は猛反対。教室内に不穏な空気が流れるなか、田邊教授は意外にも万太郎と意気投合し、植物学教室への出入りを許可する。翌朝、万太郎は教室への差し入れを買おうと、白梅堂へと立ち寄った。寿恵子(浜辺美波)の好きな植物が「ボタン」だと知った万太郎は、彼女のために絵を描きプレゼントする。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか