<日曜の夜ぐらいは…>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

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主演に清野菜名、共演に岸井ゆきのと生見愛瑠が名を連ねる連続ドラマ「日曜の夜ぐらいは…」(ABCテレビ/テレビ朝日系)が2023年4月30日よりスタート。脚本家の岡田惠和が、あるラジオ番組がきっかけで出会った女性3人のハートフルな友情物語を紡ぐ。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・最終話ストーリー&レビュー

・「日曜の夜ぐらいは…」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

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公団住宅に車イスの母と二人で暮らす岸田サチ(清野菜名)に、いつもの朝が来る。食事の支度と母・邦子(和久井映見)の介助を淡々とこなし、慌ただしくアルバイトに出掛けていくサチに、邦子は何度も「ごめんね」を繰り返すが、サチは言葉を返さない…。

祖母と田舎暮らしの樋口若葉(生見愛瑠)は子どもの頃から周囲に避けられがちで、祖母の富士子(宮本信子)とともに働くちくわぶ工場でもなんとなく社員たちに疎まれている。タクシー運転手の野田翔子(岸井ゆきの)は、パッとしない営業成績で勤務を終え一人暮らしのアパートに帰って、缶チューハイをあおりながらふて寝する以外、他にすることもない。それぞれにつまらない日常を迎えている。

サチのバイト先はファミリーレストラン。本部社員・田所(橋本じゅん)の弱みを握るサチは、好きなだけシフトを入れさせるか、3000万円を払うかの風変わりな二択を迫り、結果として働き詰めの毎日を手に入れている。その間、家で一人過ごす邦子の相手はラジオだ。邦子は自分が参加するのは難しいと知りながらも、人気番組『エレキコミックのラジオ君』主催のバスツアーに応募。そして嫌がるサチを代理として送り込む。そのツアーには偶然、翔子と若葉も参加しており…。

第1話のレビュー

「女の子って、オチもない話をよく延々と続けられるよね(笑)」と、男性に言われたことがある。たしかに、私たちは「そういえばさ、こないだこんなことがあってね」「まじかあ、そういうの嫌だよね」「てか、こないだのあれ見た?」「見た見た!いいよねー!」なんて次々と展開していく何気ない会話を楽しめる生き物だ。

そこに、抱腹絶倒なオチや人生が劇的に変わる解決は必要ない。必要なのは、たくさん喋って疲れ切った後に得られる明日への活力なのである。

脚本家の岡田惠和さんはそのことを理解してくれているようだ。同じクールの他のドラマより少し遅めに始まった「日曜の夜ぐらいは…」第1話は、他愛もないおしゃべりができる相手の必要性に気づかせてくれた。

冒頭に映し出されるのは、違う場所で違う暮らしを送る3人の女性たち。とある団地で暮らすサチ(清野菜名)は、車イスの母・邦子(和久井映見)との生活を支えるため、研修の時に店長から受けたパワハラ・セクハラ被害を本社に告発しない代わりに好きなだけシフトを入れる権利を手に入れている。不満は口にしないけれど、邦子の口から何度も飛び出す「ごめんね」の言葉にはどう反応を返していいかわからない。

一方、北関東の田舎ではちくわぶの工場で働く若葉(生見愛瑠)が、暮らす家も勤務先も一緒の祖母・富士子(宮本信子)から「男と金には気をつけろ」と言われていた。多分、集合写真で顔にバッテンがつけられた母親が男と金で失敗したのだろう。富士子との関係性は悪くなさそうだけど、そこにいない母親の存在は2人を苦しめていそうだ。

タクシー運転手である翔子(岸井ゆきの)は楽しそうに仕事をしているが、つい喋りすぎてしまうのが玉に瑕。乗客に嫌な顔をされ、傷ついて帰っても家には誰もおらず、缶チューハイを片手に「つまんねえ人生」とつぶやく。

彼女たちに共通するのは、家と職場をただ往復する毎日を送っているということ。代わり映えがないから、楽しすぎることも悲しすぎることもない。だけど、胸の奥がキュッと痛む瞬間は確かにあって、痛いと打ち明ける相手もおらず一人で耐え忍んでいることだ。

そんな3人がある日、エレキコミックがMCを務めるラジオのリスナー限定のバスツアーで出会う。ドラマの第1話では必ずと言っていいほど用意されている、わかりやすい“変わるきっかけ”。だけど、それを人生を劇的に変えるものとして描かなかったところに本作の魅力が詰まっている。

3人のうち、1人だけ邦子の代理として参加したサチ。最初は1泊2日の旅をなんとなくやり過ごそうとしていた彼女は“おだいりさま”というあだ名をつけられ、容赦無く距離を詰めてくる翔子と、非日常への高揚感から早口で喋りまくる若葉に良い感じで調子を崩されていく。そのうち無意識に旅を楽しみ、笑っている自分の姿を写真で見たサチは目を真っ赤にしてこう言う。

「楽しいのダメなんだけどな。だって、楽しいと。楽しいことあると、キツいから。キツイの耐えられなくなるから」

冒頭で述べたように、友達との楽しい時間は本来活力になるもの。だけど、それは一方でお酒やタバコみたいに中毒性があるもので、耐性がない人からしてみたら、「それを摂取することで一瞬楽になれても、またすぐに摂取できなければ効果が切れてむしろ苦しみが増すのでは」という恐怖を抱いてしまうのかもしれない。

だったら、その甘美な魅力を知らないままでいたかったと考えるサチの気持ちはよく分かる。知ってしまった後でも依存することなく、良い思い出として手放せるのは彼女の強さでもあり、弱さでもあるだろう。キツイ時もキツイと思わないで済むように自分を無の状態で保つことが彼女にとっての生きる術なのだ。

結果、3人はそれぞれの日常に戻っていく。最初と最後で全くと言っていいほど変化がない。こんなドラマ初めてだ。だけど、唯一ちょっと変わったことといえば、サチの「煮詰まった時にはコンビニの一番高いアイスクリームを食べる」という自分なりの処世術を翔子と若葉も実践するようになったこと。

それは他愛もないおしゃべりに似ていて、日々の生活を劇的に変えてはくれないけれど、知らず知らずにうちに2人の活力になっている。多くの場合、月曜日から働く私たちにとって、この日曜ドラマもそういう存在となるだろう。

※この記事は「日曜の夜ぐらいは…」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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岸田サチ(清野菜名)、野田翔子(岸井ゆきの)、樋口若葉(生見愛瑠)が出会ったバスツアーから数週間。連絡先の交換を断り、覚悟をもってつらいだけの日常に戻ったサチだったが、うまくいかないことがある度、誰かに話したくなっている自分に気づき、やるせなさを募らせていく。

そんな中、エレキコミックのラジオ番組で、バスツアーの世話役兼リスナー代表の、市川みね(岡山天音)のツアーレポートが読まれる。一緒に聴こうという邦子(和久井映見)の誘いを断り、自室で気づかれぬようにイヤホンを着けるサチ。遠く離れた樋口家では、涙ぐみながら正座してラジオに向き合う若葉と、それを興味深そうに観察している富士子(宮本信子)。そして乗務中の翔子はカーラジオに聴き入る。それぞれの日常の中でラジオから流れる自分たちの出会いに耳を傾けていると、3人の心には言葉にできない感情が押し寄せる…。

その翌日、みねが突然、サチの働くファミレスに姿を現し…。

第2話のレビュー

かつて、こんなに自分ごとのように嬉しい再会があっただろうか。サチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)の3人を再び出会わせたのはたかが300円の紙切れ一枚。されど、人生を大きく好転させる可能性を秘めた幸せ行きの切符だった。

「日曜の夜ぐらいは…」第2話の放送時間約45分。うち37分という多くの時間の中で描かれるのは、バスツアーに参加する以前から変わらないサチたちの日常だ。それは有り体に言えば、わざわざドラマにする必要のない、平凡でつまらないものかもしれない。

しかし、若葉の祖母・富士子(宮本信子)のように双眼鏡で覗くみたく、よく目を凝らせば彼女たち一人ひとりの抱える事情が少しずつ見えてくる。

いつものように自転車でアルバイト先のファミレスへ向かう途中、サチは昔のことを思い出す。彼女が高校生の頃、母親の邦子(和久井映見)はサチが忘れたお弁当を届けようと駆け下りた階段で転倒。足を怪我して、車イス生活となった。

今でも「サチ、忘れ物!」という邦子の声を聞けば、悪い予感がしてどこに行くのも一緒な相棒の自転車を投げ捨ててまで駆けつけるサチは過去に苦しめられているようだ。離婚した父・博嗣(尾美としのり)は、邦子を支えるために高校を中退して働こうとする娘を前にしても何ら手助けしようとはしなかった。それでも、「自分のせいだから」と言い聞かせ、心の底から湧き上がる感情に蓋をしてきたサチ。

ただ日々懸命に生きているだけなのに、バイト先では彼女と社員の田所(橋本じゅん)が只ならぬ関係にあるのでは?とくだらない噂が流れ、田所自身もしめしめとそこに乗っかろうとする。

若葉の言葉を借りるなら、“ふつーにクソみたいな一日”。だけど、家に帰ってきたら邦子が誕生日を祝ってくれて、おまけにいつもの「ごめん」じゃなく「ありがとう」という言葉をくれたりして、嬉しいことが一つもないわけじゃない。

それは若葉も同じ。田舎の狭いコミュニティーの中で、幼い頃から彼女は父親が誰だかわからない子供として好奇の眼差しに晒されてきた。ちくわぶ工場の二代目バカ社長(飛永翼)をはじめ、別に好かれたくもない人から好かれ、おまけに同性からは嫌われて友達もできない。だけど、自分が落ち込んでいたら「しゃぶしゃぶ食べに行こう!」と気分を変えてくれる、まるで友達みたいな富士子に支えられ、何とか生きている。

一方、翔子に家族はいない。たまたま彼女のタクシーに乗り込んだ兄・敬一郎(時任勇気)との会話から察するに、翔子は家族から絶縁されているようだ。実の兄から軽蔑の眼差しを向けられ、母親が「自分の子どもは息子2人」と周りに流布しているなんてことを聞かされた翔子の気持ちを思うだけで胸が痛い。

そんな彼女の前に現れたバスツアーの世話役兼リスナー代表のみね(岡山天音)はさしずめ、幸運を呼ぶ妖精。ツアーで「人と人と人が出会った」瞬間を目撃したみねは偶然なのか、それとも必然なのか、サチがバイトするファミレスを訪れ、その帰り道に翔子が運転するタクシーに乗る。

別に3人を無理やり引き合わせるでもなく、ただふらっと現れただけ。だが、それはサチたちにとって奇跡が訪れる前触れだった。

もう一度みんなに会いたい。そんな思いでラジオ番組『エレキコミックのラジオ君』のバスツアーに参加した若葉と翔子。やっぱりサチは来ないかと二人が諦めた瞬間、バスが急停車し、サチが車内に乗り込んでくる。1等の3000万円と引き換えることができる宝くじを手に。

これまで彼女たちは「つまんねえ」と吐き捨てたくなる人生をどうにか自分を納得させながら歩んできた。自分の機嫌は自分でとる。それはたしかに大事なことだ。だけど、「身の丈に合った幸せはこれくらい」と限界を決めてしまえば、いつしかおしゃれなカフェに入るのすら躊躇われてしまうほどに自分の欲しいものも、やりたいことも分からなくなってしまう。

宝くじはある種、そんな私たちに「夢を見る権利」を与えてくれる切符だ。それを買うとき、誰もがもし当選したら……と想像の翼を大きく広げる。当たるか当たらないか以前に、普段は気づけない自分の願いに気づけることが大事なのではないだろうか。

3人の場合、宝くじが当たった未来には自分一人ではなく、みんなで笑い合う姿があった。どうか毎話最後に流れるED映像のように、めいっぱいオシャレしてはしゃぐサチたちをこの目に入れたい。

※この記事は「日曜の夜ぐらいは…」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

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一度目のバスツアーで、岸田サチ(清野菜名)、野田翔子(岸井ゆきの)、樋口若葉(生見愛瑠)の3人で買った宝くじのうち、サチが持ち帰った番号が1等3千万円に当選!サチは山分けの約束をはたすべく再度バスツアーに参加し、翔子、若葉と感動の再会を果たす。

バカみたいに何度も当選を確認しては、喜びを爆発させる翔子。若葉は、自分のことを思い出してくれたサチの気持ちが嬉しくて感動が止まらない。そんな2人の前でなら、ためらいなく心のうちを吐き出せるサチは、山分けにすると決めた本当の理由を打ち明ける。それぞれの気持ちに共感したりツッコみ合ったり、楽しく一夜を過ごした3人は、今度はちゃんと連絡先を交換。3人そろって銀行に行く約束をし、別れる。

手続きが済むまでの間、3人は頻繁に連絡を取りながら落ち着かない気持ちを共に支え合う。いよいよ、3人が当選金を手にする日がやってくるが…。

第3話のレビュー

「宝くじがもし当たったら何に使おう」

きっと、誰もが一度は考えたことがあるはず。とりあえず海外に旅行して、家を買うかリフォームするかしたら、ある程度好きなものを買って、あとは貯金?そんな風にどんどん夢が広がって考えるだけで幸せな気分になれる。

一方で、いざ当たったら怖いだろうなとも思う。世間では、「宝くじの高額当選者は不幸になる」という噂がまことしやかに囁かれているからだ。それはまるで、幸せになることが悪いことかのように。

1等の3000万が当たったサチ(清野菜名)も最初はそうだった。バスツアーで出会った翔子(岸井ゆきの)や若葉(生見愛瑠)ともせっかく仲良くなれたのに、後が辛くなるからと連絡さえ交換できなかったサチ。

そういう何か良いことが起きた時、真っ先に「自分の人生にそんな良いこと起きるはずない」と思ってしまう彼女は多くの人が喉から手が出るほど欲している一枚の紙切れを不幸の予告状みたいに思ってしまう。

それぞれ事情は異なれど、今の若い人たちが同じ状況下に置かれたとしたら案外みんなサチのような反応を示すのかもしれない。生まれた時から日本は不景気で、生活が苦しいのは当たり前。SNSで給料への不満を漏らそうものなら、コメント欄で不幸合戦が始まる。

そんな状況では、「みんな同じ」「まだ自分はましな方」と自分自身を納得させて生きていくしかない。それなのに突然幸運が降りかかってきたら、怖くなるのは当然だ。

だけど、サチの場合は「もし宝くじが当たったらみんなで山分け」という翔子や若葉との約束があった。自分の懐に入る金額は3分の1になるけれど、その分、恐怖も減る。

手放した家を買い戻すこともできなければ、嫌な仕事をすぐさま辞めれるわけでも、ホストクラブで豪遊できるわけでもない。それでも手が震えるほどの大金を手に、幸せを掴み取る勇気をサチは2人に分けてもらった。だから、「ありがとう」はなしで。

通帳にお金が振り込まれるまでの間、彼女たちがLINEで「あと何日」とやりとりするシーンが印象深かった。きっと3人に必要だったのはお金ではなく、こうして気持ちを分け合える友人だったのではないか。

自分でもうんざりするほど後ろ向きな性格を、「(現実に)背を向けてないのでちゃんと前向きです。ちゃんとしっかり前を見てるから慎重になったり拒絶したりしてしまうわけで。むしろ、それこそが前向きです。前向きだから、進まないという選択肢もあると思うのです」と変換してくれる友人が。

その証拠に、「絶対に幸せになろう」と誓って解散した3人だったが、以前と変わらぬ現実に打ちのめされそうになる。

邦子(和久井映見)に最新の車椅子を買ってあげるサチ。いつもなら手が出せないちょっと高いお土産を富士子(宮本信子)に買って帰る若葉。それほど欲しくないものを買って罪悪感に襲われる翔子。自分を喜ばせるよりも、誰かを喜ばせる方が得意な3人の性格がよく表れている。その優しさは美徳だが、悲しいかなそこに漬け込もうとする人はいるわけで。

だけど、楽しそうな3人の顔を見るだけで幸せになれるみね(岡山天音)や初めて入ったカフェで思い出し笑いをするサチにつられて笑顔になる賢太(川村壱馬)のような人もいて、世の中捨てたものじゃないなとも思わせてくれる。

自分が幸せになることが誰かの幸せに繋がる。不幸合戦でお互いを支え合うよりもそっちの方がよっぽどいい。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

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岸田サチ(清野菜名)のバイト先に父の博嗣(尾美としのり)が金の無心に現れる。離婚後のこととはいえ、邦子(和久井映見)が車イス生活を送ることになった際、一円の援助もしてくれなかった博嗣に、サチは恨み以外の感情を持てないでいるが…。

一方、久々に連絡をくれた同級生から高額の美容グッズを買ってしまうなど、こまごまと面白くないことが続いた野田翔子(岸井ゆきの)は、憂さ晴らしに一番高いアイスを買おうと立ち寄ったコンビニでさらなるトラブルに巻き込まれてしまう。また、樋口家には若葉(生見愛瑠)の母・まどか(矢田亜希子)が突如現れ、富士子(宮本信子)と壮絶な修羅場を繰り広げた挙句、若葉の通帳に手を伸ばし…!

3人で幸せになるはずが、全然うまくいかない現実に直面するサチ、翔子、若葉は、直に会うことにする。カフェに行き、買い物をし、サチの家に泊まることにした3人は、これまでの人生を語り合い、友達として過ごす他愛もない時間を心ゆくまで楽しむ。そんな中、サチは忘れていたあることを思い出し…。

第4話のレビュー

「なんか悪くないよね。人生やり直してるみたいな感じで」

サチ(清野菜名)が若葉(生見愛瑠)、翔子(岸井ゆきの)と一緒にパンケーキを食べながらつぶやいた一言に胸がキュッと締め付けられた。人生はゲームのようにリセットすることができない。そう頭ではわかっていても、やり直したいと思わざるを得ない日が人生には度々訪れる。

そこにあるのは、後悔だ。本当はこうしたかったのに、何らかの理由でできなかったという後悔は仕方なかったと納得していたつもりでも、時折自分に襲いかかってくる。

サチたちは一等の宝くじが当たり、それぞれ一千万という大金、いわば人生をやり直すチャンスを手にしたはずだった。だけど、現実はやっぱりままらない。

サチは、邦子(和久井映見)が車イス生活になった時に何もしてくれなかった父の博嗣(尾美としのり)にお金を無心され、3万を渡してしまった。若葉は同じようにお金を奪いにきた母のまどか(矢田亜希子)から一千万を守る代わりに、働いて貯めた92万を差し出し、翔子は欲しくもないものを次々と買わされてしまう。

人生をやり直すどころか、さらに後悔が積み上がっていく一方だった。

そこに歯止めをかけたのが、互いの存在だ。たまらなくなって連絡を取り合った3人は丸1日を一緒に過ごすこととなる。

カフェで映えるスイーツを食べ、ショッピングをして、サチの家でお泊まり。側から見れば、そんなことで?と思うようなことであったとしても、3人は嬉しくて楽しくてしょうがない。それは今まで彼女たちが手に入れたくても入れられない貴重な時間だった。

サチたちは1日を過ごしながら“友情の歴史”を語り合う。そこにはできれば忘れたい忌々しい記憶があった。

母親の介護のため、高校を中退することになったサチには心から心配してくれる親友がいたが、その優しさを受け取る余裕が当時はなかったのだ。これから楽しいことがいくらでも訪れるであろう親友の優しさが同情にしか思えず、八つ当たりし、袂を分かった。後悔してもしきれないほどの後悔が今もサチの頭を頭をもたげる。

一方、若葉は親友だと思っていた人に裏切られた記憶がある。教室でひとりぼっちだった若葉に「友達になろう」と言ってくれたその子は、裏で“本当の友達”に自分との間にあったことをネタとして提供していた。

遠慮のない性格の翔子はなぜかいつも友達に疎まれ、次第に孤立してしまう。こうしてる間にもいつか嫌われるんじゃないかという恐怖が湧き上がり、「恋人じゃないけど、別れる時はちゃんと別れようって言って。こういうとこ、嫌だからもう無理って。直すから一緒にいてとか言わないから」とサチと若葉にお願いする翔子の笑顔があまりに切ない。

誰もが友情が壊れる瞬間の痛みを知っているから、どこか慎重になってしまうのだろう。だけど、その日一日を一緒に過ごしてみて彼女たちはその恐れすら3人なら乗り越えられることを実感する。

3人でいれば、自分のためにお金を使うことができるし、一人なら躊躇ってしまうような場所にも行けて、聞こえてくる雑音も気にならない。そしてとうとう、若葉から「一緒にいたい。一緒に生きていきたい。一緒に使いたいです」と2人に希望が投げかけられる。

きっと人生をやり直すにはお金だけでは不十分で、本当に必要なのは「自分で自分を幸せにするための勇気」なのだろう。その勇気を互いの存在に与えてもらった3人は、残った全員分のお金を元手にカフェを開業することを決意する。

見たこともないほど晴れやかな彼女たちの笑顔は、同僚との楽しくないカラオケから抜け出し、3人の元に駆けつけたみね(岡山天音)が思わず涙してしまうのも分かるくらいに眩しい。3人の幸せは私たち一人ひとりの希望だ。あなたも幸せになっていいのだと言ってくれているみたいな気がする。

一方で、サチが働くファミレスのセクハラ社員・田所(橋本じゅん)と父親の博嗣が知り合ったことや、ケンタというタトゥーを入れた翔子にサチが近所にできたカフェの店員・賢太(川村壱馬)を紹介した時に若葉が浮かべた表情が妙に気にかかるのだ。

賢太はお店の人ではなく、カフェをプロデュースする会社で働いているとのことで今後彼女たちの取り組みに参加することが予想される。強力な助っ人になってくれそうだが、これまで好かれたくもない人に好かれ、それによって同性から理不尽なやっかみを受けてきた若葉のことだ。もし仮に誰かが恋愛に発展した場合、友情にヒビが入ってしまうかもしれないという恐れがあるのかもしれない。

一緒に何かをするにあたっては、そうしたトラブルの可能性も十分ある。ただそれも含め、彼女たちの人生の彩りになることを願ってやまない。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

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「3人でカフェを開く」という共通の夢を得て、岸田サチ(清野菜名)は毎日を生き生きと送り始める。ファミレスでのバイト中も、メニューを気にして見るようになるなど、自分自身の変化が新鮮で楽しい。野田翔子(岸井ゆきの)もまた、タクシー運転手の利点を活かし、おしゃれなカフェ情報を収集。無味乾燥だった日々が、ウキウキとした気持ちに彩られていく。ところが、周囲にカフェの「カ」の字もない田舎で、相も変わらず家とちくわぶ工場との往復を繰り返す樋口若葉(生見愛瑠)は、ひとり取り残されたような気分になり…。

そんな中、翔子は突然、兄・敬一郎(時任勇気)の訪問を受ける。絶縁状態にある敬一郎との久々の会話に、不安と喜びが交錯する翔子…。一方、サチは新たに気になる和風カフェを発見。そこには偶然、住田賢太(川村壱馬)の姿があり、なりゆきから2人は恋人のふりをすることに…!?

第5話のレビュー

「3人でカフェを開く」という共通の夢を得たことで、以前とは打って変わり生き生きとし始めたサチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)。将来開くカフェの参考になる情報をラインで送り合う3人の楽しげなムードを彩るのが、スピッツの楽曲「空も飛べるはず」だ。

〈君と出会った奇跡がこの胸に溢れてる/きっと今は自由に空も飛べるはず〉

「日曜の夜ぐらいは…」第5話は、まさしくそんな風に“無敵状態”となった3人が次々と自由を手に入れていく回だった。

3人のうち、最も変わったのはサチだろう。以前とは比べ物にならないほどの行動力を見せ、相棒の自転車でどこまでも飛んでいくサチ。その結果、彼女は強力な助っ人を得ることとなる。カフェのプロデュース会社に勤務する賢太(川村壱馬)だ。

たまたま気になるカフェに視察に訪れていた賢太と、サチは恋人のふりをしながら店内で過ごすことに。そこでサチが自分のカフェに入ったことがきっかけで夢を抱いたことを知った賢太は協力を申し出る。思わず感動して泣いてしまう彼の純粋さはみね(岡山天音)とも共通するもの。親身な姿勢でサチたちの相談に乗ってくれる未来がいとも簡単に想像できる。それもサチの行動力の賜物であり、ほんの少しの勇気で世界は一気に広がっていくのだ。

彼女は同じように、ある日ぱったりと連絡が途絶えた翔子の元にも数時間かけてペダルを漕ぎ続ける。遺産放棄させることを目的に自分の機嫌を必死に取ろうとする兄・敬一郎(時任勇気)の態度に傷ついた翔子にとって、サチのその行動はありがたかった。

重いかもしれない、迷惑かもしれない。今までだったらそんなマイナスの感情が先行して動けなかっただろう。でも翔子と若葉の存在が彼女を自由にしてくれた。同じように若葉も理不尽な世界に別れを告げ、サチと翔子がいる東京で新たな生活を手に入れる。

若葉が散々自分たちに嫌がらせをしてきた職場の人たちに怒りをぶつける場面は『痛快TV スカッとジャパン』(フジテレビ系)ばりに胸のすく思いがした。でも最後は「いいちくわぶを作り続けろ!」と喝を入れたのは、どんなに苦しくとも逃げずに戦ってきた彼女なりの矜持だろう。そんな若葉を讃えるように思い切り抱きしめるサチと翔子。邦子(和久井映見)が言うように、その姿は尊いとしか言いようがない。

若葉の決断が地元に固執していた富士子(宮本信子)の心まで自由にし、上京を決意させる。二人はサチが暮らす団地に引っ越してきて、その結果今度は人との関わりが希薄になっていた邦子の生活まで彩るのだ。

何もかも上手くいっている。いや、行き過ぎている。そのことに一抹の不安を覚えるのは私だけだろうか。明るい展開が続く一方で、同僚とのカラオケでみねが歌う中島みゆきの「空と君のあいだに」の歌詞が影を落とす。

〈空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る/君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる〉

みねにとっての“君”とはサチ、翔子、若葉のことである。職場の人間関係にどうしても馴染めず、どこか気持ちに空虚感を抱いている彼にとって今最大の幸せは3人の笑顔を見ること。そのためなら、自分が貯めたお金を彼女たちのカフ開店資金に差し出すことも厭わない。しかも、その信頼は一方的なものではなく、サチたちも彼を信頼して経理担当に任命する。

サチの父である博嗣(尾美としのり)や若葉の母・まどか(矢田亜希子)が彼女たちの財産を当てにしている今、彼らとは無関係のみねがお金を管理することが安心という見方もあるだろう。しかし、もしそれでも二人がお金を強奪しにきた場合、みねが何かを犠牲にしてでもそれを阻止しようとしそうで怖いのだ。

「人生は信用できる人と出会うための長い旅」と若葉は言う。たしかに大金を安心して任せられるほど信用できる人と出会いはそうそうなく奇跡に近いものである。だけど、信用は重い。それを預けられた側は嬉しい一方で、絶対に裏切ってはならないという重責を背負う。全員がそのことに無自覚な今の状況を手放しで喜ぶことはどうしてもできずにいる。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー

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タクシー運転手の利点を活かし、野田翔子(岸井ゆきの)がカフェにうってつけの賃貸物件を探し当てる。岸田サチ(清野菜名)、樋口若葉(生見愛瑠)に市川みね(岡山天音)も加わり、さっそく現地視察に向かう4人。ところが、理想的だった物件は一足違いで借り手が決まってしまい…。

やり場のない絶望感を味わうサチたち。だが、何も期待せずに生きてきたこれまでと違い、ちゃんと悔しさを感じている自分たちの変化にも気づくことに。それに今は、一緒に悔しがれる仲間がいる。4人はこの気持ちをバネに、改めて前に進むことを決意。夢や憧れではなく、現実的で具体的なビジョンを模索し始める。

後日、住田賢太(川村壱馬)にカフェのコンサルタント料200万円を支払う日がやってくる…。

第6話のレビュー

「日曜の夜に死にたくならない人は、幸せな人だと思う」

またこのドラマから共感必至の名言が飛び出した。

“わぶちゃん”こと、若葉(生見愛瑠)が小学生の頃に書いたという詩。世の中にはブルーマンデー症候群とか、サザエさん症候群などど言ったりするけれど、そういう名称が存在するほど月曜から新たに始まる学校や仕事を想像して憂鬱な気分になる人が多い。きっとその想像の中の自分は、無理して作ったものだから。

エレキコミックのラジオ番組主催のツアーで出会ったサチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉、そしてみね(岡山天音)。互いの通帳を預け合えるほどの信用を寄せられる人との出会いは、彼らに様々な効能を与えてくれた。中でも大きいのが、心の解放である。

一緒にカフェを開くことになった4人。翔子が理想的な物件を探し当てたものの、一足違いで借り手が決まってしまったり、賢太(川村壱馬)にカフェのコンサルタント料として200万円を一気に支払うことになったり、全ての経験が新鮮で新しい。

彼らはその度に思い切り悔しがって、ドキドキして、ふと騙されているんじゃないかと不安になる。こんなにも心が動く経験を誰も味わったことがなかった……というより、それどころじゃなかったという方が正しいだろう。

サチたちは、これまで自分じゃない自分を作り上げるのに必死だった。辛い現実に耐えうる自分、好奇な視線に晒されながら生き抜く自分、一人ぼっちの生活に慣れた自分、同級生から馬鹿にされない自分。そうなるために、心を押し殺し続けてきた。

だけど、どうしても辛くなった時のお守りが翔子、若葉、みねにとってはエレキコミックのラジオで、サチにとっては高いアイスだったのだ。誰にでも一つくらいは持っている、明日また頑張るための“何か”。その“何か”に自分たちがこれから作るカフェがなれたらと、4人はお店のコンセプトを固める。

店名は『SUNDAYS(サンデイズ)』。ちょっと高いアイスと長い名前のコーヒーを楽しめる、バリアフリーで誰でも気負うことなく入れて、エレキコミックのラジオみたいに元気が出るカフェだ。

日曜の夜が憂鬱で仕方がなかった彼らだからこそ思いついた、日曜の夜ぐらいは自分を甘やかしてほしいという優しさがそこには詰まっている。翔子のタクシーでエレキコミックのラジオを聴いて泣き笑いした女性のように、きっとサチたち以外にも日曜の夜に死にたくなる人がきっとこの世界にはたくさんいるのだろう。4人の作るカフェがそういう人たちの笑顔で溢れる場所になってほしいと願わずにはいられない。

誰かの笑顔を守ろうとするサチたちの笑顔を守ろうとする人もまた存在する。その一人が富士子(宮本信子)だ。あっさりと東京行きを決めた富士子だが、心の奥では縁もゆかりもない地でも新たなスタートに不安を抱えていた。それでも若葉についてきたのは、彼女に後ろめたさを感じることなく自分の幸せを追いかけてほしかったから。

そんな富士子を、今は邦子(和久井映見)という存在が支えている。富士子は邦子の役に立つことで自分の存在意義を確認することに罪悪感を抱いているが、邦子も邦子で富士子に“利用”されていることが嬉しい。人と人の関係は何かしらお互いを利用し合うことで成り立つものだけれど、そこに思いやりさえあれば、利用されるのも悪くないと思える。

サチたち4人と賢太の関係も、ただのクライアントとコンサルタント以上のものになりうる可能性が浮上した。ついに理想的な物件が見つかり、それぞれが過去の苦い経験を払拭する中、賢太の脳裏にも友人から今の仕事を揶揄された記憶が蘇る。彼にも4人と同様に、自分らしくいられなかった過去があったのだろう。

だけど、負けずにここまでやった結果、サチたちに信頼に値するコンサルタントとして指名された。純粋に役に立ちたいと思ってくれる仲間が増えたことは喜ばしいことだ。一方で、あまりに魅力的すぎる賢太を前に一抹の不安を覚えるのは、若葉の恋愛嫌悪が理由。ここまで意見や価値観のすれ違いが一切見受けられない分、「恋愛が嫌いなんで。というか恋愛気持ち悪いからしたくない」と言ってのける若葉の強い信念が後々波乱を巻き起こしそうな予感がする。

友情にしろ恋愛にしろ、相手と自分の考えが全て一致するとは限らない。たとえ一度はぶつかったとしても、彼らが最終的に互いの違いを受け入れ、より安定した関係が築けることを願うばかりだ。

※この記事は「日曜の夜ぐらいは…」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー

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カフェの名前は「サンデイズ」に決定する。物件も見つかり、興奮と不安を抑えきれない岸田サチ(清野菜名)、野田翔子(岸井ゆきの)、樋口若葉(生見愛瑠)、そして市川みね(岡山天音)の4人は、「警備活動」と称し、入れ替わり立ち替わり予定地を訪問。うれしはずかしそうに情報交換する娘や孫の姿を、邦子(和久井映見)と富士子(宮本信子)は愛おしく見守る。
そんな中、サチは、当せんくじを買った宝くじ売り場へのお礼参りが済んでいないことを思い出す。3人は富士子の軽自動車を借り、翔子の運転で一路、バスツアーで立ち寄ったサービスエリアへ。無事に猫田(椿鬼奴)との再会をはたすが…。

住田賢太(川村壱馬/THE RAMPAGE)のコンサルタントのおかげで、カフェ開業への道は順調に進む。その一方で、積み残していた難題やしがらみに、一人ひとりが向き合わなければならない時がくる。翔子は遺産相続問題で兄の敬一郎(時任勇気)と対峙。サチはバイト先のトラブル処理で田所(橋本じゅん)に協力を求められる。そして、若葉の知らないところで、母親のまどか(矢田亜希子)が動き始め…!

第7話のレビュー

宝くじで当選した3000万を元手に共同経営のカフェ「サンデイズ」のオープンに向けて走り出したサチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)。経理担当のみね(岡山天音)とコンサルタントの賢太(川村壱馬)という心強い仲間を手に入れ、理想的な物件も見つかった。

ここまでは全てが順調。少々うがった見方をすれば上手く行き過ぎていると言えなくもない。そこに、それぞれが向き合わねばならない“現実”が訪れた「日曜の夜ぐらいは…」第7話。だけど今は心を預けられる場所がある。そのありがたみを、感じざるを得ないエピソードだった。

物件が決まったことでようやくカフェ開業の実感が湧いてきたサチたちは浮き足立つ。震度2の地震がきただけで自分たちの大事な夢の場所が壊れていないか心配になり、居てもたってもいられず様子を見に行く……そんな3人の姿が微笑ましくて仕方ない。

邦子(和久井映見)や富士子(宮本信子)も私たち視聴者と同じ気持ちのようで、ちょっと遅れてきた青春を謳歌する彼女たちを愛おしく見守るのだった。

ただ、なにもサチたちは冷静さを失っているわけじゃない。泣いたり笑ったりと忙しいくらいに感情が動く日々の喜びを感じつつも、どこかで結局それをもたらしてくれたのはお金なのかという虚しさもある。でも一人で3000万を手にしたところで今みたいな幸せを感じることができたか、といえばきっとそうではないだろう。

全てはあの日、バスツアーでの出会いがあったからこそ。接客業に就くにあたって男性への恐怖を克服しようとする若葉に、「無理に克服しようとしなくていい。私たちが守るから」と語りかけるサチと翔子。そういう存在に出会えたからこそ、3人は幸せへの足がかりを掴むことができたのだ。

遺産相続問題について兄の敬一郎(時任勇気)と話し合うことになった翔子もそう。翔子は相続を放棄する代わりに、自分がタトゥーを入れたことで心のバランスを壊してしまった母親に謝りたいと敬一郎にお願いするも拒否されてしまう。

翔子が家を出て行った後、母親を必死で支えてきた敬一郎も敬一郎で様々な苦労があったのだろう。それでも再構築の機会さえ与えてもらえない翔子の孤独はいかばかりか。彼女に今、ありのままでいられる場所があること。それは何よりの救いである。

ただ、なにもサチたちは冷静さを失っているわけじゃない。泣いたり笑ったりと忙しいくらいに感情が動く日々の喜びを感じつつも、どこかで結局それをもたらしてくれたのはお金なのかという虚しさもある。でも一人で3000万を手にしたところで今みたいな幸せを感じることができたか、といえばきっとそうではないだろう。

全てはあの日、バスツアーでの出会いがあったからこそ。接客業に就くにあたって男性への恐怖を克服しようとする若葉に、「無理に克服しようとしなくていい。私たちが守るから」と語りかけるサチと翔子。そういう存在に出会えたからこそ、3人は幸せへの足がかりを掴むことができたのだ。

遺産相続問題について兄の敬一郎(時任勇気)と話し合うことになった翔子もそう。翔子は相続を放棄する代わりに、自分がタトゥーを入れたことで心のバランスを壊してしまった母親に謝りたいと敬一郎にお願いするも拒否されてしまう。

翔子が家を出て行った後、母親を必死で支えてきた敬一郎も敬一郎で様々な苦労があったのだろう。それでも再構築の機会さえ与えてもらえない翔子の孤独はいかばかりか。彼女に今、ありのままでいられる場所があること。それは何よりの救いである。


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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー

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バイト先の人員不足を一人でカバーする岸田サチ(清野菜名)は連日大忙し。カフェの準備もままならず、肉体的にもくたくたになるが、一方で、かつて無理やりシフトに入っていた時には感じなかった、不思議な使命感と充実感に目覚めていく。思考も冴え、元来の強さを取り戻したサチは、自分がバイトで参加できないにもかかわらず、野田翔子(岸井ゆきの)、樋口若葉(生見愛瑠)をはじめ、カフェ「サンデイズ」に関わるメンバーを岸田家に招集。何事かと集まった翔子、若葉、市川みね(岡山天音)、富士子(宮本信子)、邦子(和久井映見)に、事前に若葉に託したメッセージと、カフェ開店までのミッションを授ける。
 

第8話のレビュー

バイト先が人員不足に陥り、連日シフトに入り働き詰めのサチ(清野菜名)。邦子(和久井映見)はその姿がまるで武士のようと語るが、本当にそう。彼女はとにかく義理と人情に厚い。新人の頃に店長の田所(橋本じゅん)からセクハラを受け、パート仲間ともさして馴染めずにいたが、生活を支えてくれたのは事実だからと義を尽くす。またその一方で、サチは自分の心を支えてくれているみんなのことを考えていた。

ある日、岸田家に招集された翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)、みね(岡山天音)、富士子(宮本信子)。しかしながら、そこにみんなを集めた張本人であるはずのサチはいない。実のところ彼女は事前に若葉を呼び出し、全員へのメッセージを託していたのだ。

それはいかにサチが周りを見ているかを示すものだった。兄の敬一郎(時任勇気)に家族との関係修復のきっかけを望むも全力で拒否されてしまった翔子。自分と邦子や、若葉と富士子の楽しげなやりとりを眺める彼女のどこか寂しげな笑顔をサチは見逃さなかった。「悪いけど私は放っておかない」と宣言し、翔子に自分たちの近くにいることを命令するサチ。

一方でみねには、こうしろ、ああしろと何かを指示することはしない。なぜなら、彼がみんなのためならどんなことにも全力で応えようとする人間であることを分かっているから。でも、サチたちにとってみねはただの便利屋じゃない。大切な仲間だ。だからこそ、サチはみねに、ただずっと側にいてほしいと願う。

仲間といえば、邦子と富士子もカフェ「サンデイズ」のメンバーに加わった。サチがそれぞれに役割を与えたのだ。富士子が年齢的なこともあってなかなか東京で働き口が見つからないこと、車椅子生活で誰かの手を借りることが多い邦子が自分も人の役に立ちたいと願っていることもサチは気づいている。ただみんなに居場所を与えるのではない。そこに、“いる意味”を一人ひとりにサチは与えようとしている。

そして、最後にサチはこれまでたくさん辛い思いをしてきた若葉にこんな言葉を送った。

「毎日楽しいなと思うことが、一番の復讐!ね、やっつけよう過去」

嫌な過去はなくならないし、自分を傷つけてきた人への負の感情も消すことはできない。でも、それを糧に幸せを掴むことができたらどんなにいいだろう。過去の自分に負けず、未来の自分を形作っていくみんなの“現在(いま)”が眩しくて泣けた。

ドラマ的にはこう順調だと何かが起きるんじゃないかと不安になったりもするけど、こんなに何も起こってほしくないと願ってしまう作品も珍しい。「日曜の夜ぐらいは…」というタイトル通り、日曜日の夜ぐらいは、本作みたいにただ幸せな気分に浸れるドラマがあったっていいじゃないか。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー

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『サンデイズ』オープンまで2週間あまり。4階に岸田サチ(清野菜名)、野田翔子(岸井ゆきの)、樋口若葉(生見愛瑠)、3階に市川みね(岡山天音)、そして1階に邦子(和久井映見)と富士子(宮本信子)という組み合わせで、同じ団地に住み始めたサチたちの暮らしは、朝からたくさんの会話と笑顔であふれる。やっと輝き出したそれぞれの人生を守りたい、そんな思いを新たにする富士子のもとにある朝、一箱の荷物が届き…。

一方、団地の周りをうろつく中野博嗣(尾美としのり)の存在に気づいた邦子は、サチに迫る危機を察知。久しく会っていない別れた夫と対峙する覚悟を決めると、富士子に付き添いを頼み、博嗣が待つ公園へと出かけていく…。

第9話のレビュー

カフェ「サンデイズ」のオープンも目前。サチ(清野菜名)と邦子(和久井映見)が暮らす団地に翔子(岸井ゆきの)とみね(岡山天音)が引っ越してきて、ついに全員が一つの場所に集合した。

サチは4階で翔子と若葉(生見愛瑠)、みねは3階で一人、邦子は1階で富士子(宮本信子)と、それぞれ新しい生活を送る。とはいえ、階段一つで行き来できる距離にいる彼らはもはや大所帯の家族。あまりに楽しそうで「羨ましい……」と思わず声に出てしまった。

それに伴い、邦子はサチに「ごめんね」と言わなくなる。サチが高校生の頃に不慮の事故で車椅子生活になった邦子。博嗣(尾美としのり)は何もしてくれず、サチは学校を辞めて働く他に選択肢はなかった。

邦子は普段努めて明るく振舞ってはいるけれど、内心ではずっと娘の人生を奪ってしまったという罪悪感を抱えていたのだろう。なるべくサチの手を煩わせたくなくても一人で出来ないことも多くて、ついその一言が出てしまう。だけどサチ本人は犠牲になっているつもりなどないから悶々としてしまっていた。

邦子が「ごめんね」と言わなくなったのは、サチが以前とは違って楽しそうにしているからだけじゃない。自分にもできることがあると気づいたからだ。美味しいカレーを作る才能はカフェのメニュー開発に活かされ、その無著でお喋りな可愛らしい性格がみんなを癒してくれる。富士子もそう。二人がそこにいてくれるだけで、自分の家族と折り合いが悪い翔子やみねの心が満たされていく。

いつも感心させられるのは、サチの人を見る力だ。相手がどんな人で、何を思っていて、何が得意で何を苦手とするか。本人は無自覚かもしれないが、そういうのを見極めて役割を与えたり、自分の振る舞い方を決めるのに長けている。例えば、翔子がグループ内での疎外感に敏感なのを分かっているから、サプライズ一つとっても絶対に内緒話はしない。

彼女はいわば、“サンデイズ”という小国の長だ。長といってもかなり民主的で、全員が心地よく暮らせるようにみんなでルールを定める。みね独占禁止法はその分かりやすい例だろう。恋愛でのいざこざ、社会的な立場の違いによる対立やすれ違いを「まるで遠い国の出来事みたい」と語るサチ。彼女たちはそういうものから自由であろうとしている。

第9話はそんな自分たちの国と民を守るために、邦子とみねが立ち上がった回でもあった。博嗣がサチにお金をせびっていることを知った邦子は、彼に直接会って話をつける。「悪い方へ悪い方へ転がっていくんだ」と力なく呟く博嗣に、「自分の力でなんとかしなさい」と吐き捨てる邦子。博嗣には博嗣なりの事情があるのだろう。だけど、それは博嗣が自分で切り捨てたサチや邦子には全く関係のないことだ。

一方、みねは博嗣やまどか(矢田亜希子)の存在に怯えるサチと若葉にこう言う。

「どんな理由があっても大切な人を苦しめる人は敵とみなします。全ての人が守れるとは思えないので、大切な人だけ守ろうと思います」

世界人口約80億人。その全ての人と分かり合えるわけもなく、私たちは誰かを傷つけたり誰かに傷つけられたりしながら生きている。そんな中で、自分の味方しか存在しない小さな国(コミュニティ)を作り上げてきたサチたち。そこでは年齢や性別、障害の有無を問わず、誰もが安心して生き生きと暮らしている。

もしかしたら、私たちは今このドラマを通じてとても理想の世界を見ているのかもしれない。だとしたら、自分たちの国を守るために富士子が手に取ったスタンガン(=武器)は使われることなく、どうか平和的なラストを迎えてほしい。それはきっとここまで彼らを見届けてきた全員の願いだ。

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–{最終話ストーリー&レビュー}–

最終話ストーリー&レビュー

最終話のストーリー

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「サンデイズ」のオープンが迫った夜。サチ(清野菜名)たちの胸には、さまざまな思いが去来する。

サチは翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)とコンビニの高級アイスを食べながら、今の自分に高いアイスを食べる資格があるのだろうか?と、ふと考える。大金を手に入れ、仲間とカフェを始めるという夢の実現はもう目の前にある。けれど、胃が痛くなるような不安や、納得のいかない現実も無くなりはしない。そんなサチの心の揺れに、翔子と若葉がそっと寄り添う…。

みね(岡山天音)と賢太(川村壱馬)は二人で飲みに行き、そこで賢太は意外な真実を打ち明ける。一方、邦子(和久井映見)と富士子(宮本信子)は祈るような気持ちで一夜を過ごす。

そしてオープン当日。サチたちが「サンデイズ」の扉を開けると…。

最終話のレビュー

サチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)が「絶対に幸せになろうね」と誓ったあの日から、祈るような気持ちで3人を見守ってきた。

「彼女たちが不幸になるようなことが、何も起きませんように」「彼女たちが誰かに傷つけられることなく、明日も笑顔に過ごせますように」と。

なぜ赤の他人である彼女たちの幸せを、ましてやドラマの中の出来事に過ぎないにもかかわらず、こんなにも強く願ってしまうのか不思議で堪らなかった。でも、全10話を観終えた今なら分かる。その願いは自分自身に向けたものでもあったのだ。

私たちはいつも日曜日の夜、同じようなことを願っている。また新たなスタートを切る明日からの自分が幸せであるよう。せめて不幸が訪れぬよう。色んな不安が頭をよぎり、眠れなくなることもある。本作は、そんな私たちのためのドラマだった。

カフェ「サンデイズ」のオープンを控えたサチたちは“日曜の夜”みたいな日々を過ごす。ここまで何もかも順調で、だからこそ人は不安になるもの。本当に上手くいくのか、お客さんは来てくれるのか。心配要素を挙げだしたらキリがない。

特にサチは“身の丈に合った人生”をつい考えて、それ以上の幸せを享受することに抵抗を覚えてしまう人だから。夢の実現を前にして、さらにご褒美である高いアイスを食べるなんていけないことのように思ってしまうけれど、「そんなことない」と翔子と若葉は否定する。

あの日、バスツアーで購入した3千万の当たりくじがサチに与えてくれたのは多分、土曜日と日曜日だった。裏を返せば、サチはずっと月曜日から金曜日を意図的に繰り返していたとも言える。そうでもしなきゃ、辛い現実を乗り越えることができなかったから。

日曜の夜が辛くなるのは、それだけ土日が幸せだったことの裏返しでもある。「いっそ土日なんてなければ、月曜日が憂鬱に感じることもないのに」と考えるのがこれまでのサチだ。だけど、翔子と若葉に出会ったことで、彼女に休日(=心の休息日)がもたらされた。だからこそ、日曜の夜が苦しくなる。

じゃあ出会わなければ良かったかと言われたら、決してそんなことはない。その苦しみは祈りに変わるから。翔子や若葉たちとの幸せな時間を経たことで、サチは苦しい日々がデフォルトではないことに気づけた。だからこそ、日曜の夜に明日の自分が幸せであることを願えるのだ。

それに、サチには同士が大勢できた。翔子や若葉はもちろん、みね(岡山天音)に賢太(川村壱馬)、そして邦子(和久井映見)や富士子(宮本信子)と、一緒に願うだけじゃない、明日の幸せを共に作っていける仲間が。不安になった時、隣で「ケセラセラ!(なるようになるさ!)」の呪文を唱えてくれる人がいるというのは何よりも心強いことだ。

実際に蓋を開けたらカフェは大盛況で、エレキコミックとそのリスナーたちも駆けつけてくれ、全ての不安は一気に吹き飛ばされる。そんな幸せ一杯のオープン初日を見届けても、あと残りの放送時間で何か良くないことが起きるんじゃないかと不安になる私たちは、やっぱり以前のサチと同じで“不幸の先取り”が癖になってしまっているのだろう。このドラマはそういう私たち視聴者の翔子や若葉になってくれて、ずっとケセラセラと唱えながら、不安を一つずつ潰していってくれた。

何か裏がありそうと勘ぐってしまった賢太は他人から貼られた“イケメンだから人生楽勝”のレッテルを剥がすべく努力し続けてきた、しかもラジオネーム「キャッチャープー」の面白いごく普通の青年で、みんなを守らなきゃという使命感で潰れてしまいそうなみねはそんなにヤワな男ではなく、結託して何かしでかしそうだった田所(橋本じゅん)と博嗣(尾美としのり)の間には妙な友情が芽生えた。

また富士子のスタンガンも、まどか(矢田亜希子)ではなく「サンデイズ」に現れた強盗に使われるというオチ。一方のまどかはカフェに現れ、若葉を鼓舞して颯爽と立ち去っていった。こうして私たちが勝手に立てたフラグというフラグを全てへし折っていったのである。

まったく、こんなドラマありなのか。いや大いに結構だ。だって日曜の夜なのだから。日曜の夜ぐらい、幸せな気分で眠りにつきたい。そんな願いにこのドラマは全力で応えたくれた。

翔子が血の繋がった家族と仲直りできず、サチの妄想の世界で母親と再会する展開はちょっとしたスパイス。何もかも上手くいけばいいけれど、現実はそうはいかない。だけど、人生何が起きるか分からないから。それこそ突然宝くじに当たるみたいに、翔子にいつか母親とタクシーでドライブする日が訪れることだってありうる。

大事なのは、そうやって都合の良い夢を描けること。日曜の夜、布団の中で幸せな明日を夢見て眠りにつけること。そのサポートを本作はこの数ヶ月間してくれていた。だからこそお別れが寂しいけれど、最後に“ケセラセラ”と思えるサチのモノローグで締めくくりたい。

「いま2023年、令和5年にこの世界に生きている人はみんな傷だらけで戦ってる戦士みたいなものだと私は思う。すべての戦士たちの心に休息を。せめて日曜の夜ぐらいはみんなが一度深呼吸できますように。でないと戦えないよ。どうかお願いします。戦士代表 岸田サチ」

※この記事は「日曜の夜ぐらいは…」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「日曜の夜ぐらいは…」作品情報}–

「日曜の夜ぐらいは…」作品情報

放送日時
2023年4月30日スタート。毎週日曜22時~

出演
清野菜名/岸井ゆきの/生見愛瑠/岡山天音/川村壱馬(THE RAMPAGE)/和久井映見/宮本信子ほか

脚本
岡田惠和

音楽
日向萌

主題歌
「ケセラセラ」Mrs. GREEN APPLE(ユニバーサルミュージック/EMI Records)

企画・プロデュース
清水一幸

プロデューサー
山崎宏太 山口正紘 郷田悠(FCC) 浅野澄美(FCC)

監督
新城毅彦 朝比奈陽子 高橋由妃 中村圭良

制作協力
FCC

制作著作
ABCテレビ