<ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

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山田裕貴主演の“金10”ドラマ「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」が2023年4月21日放送スタート。本作は、山田裕貴演じる美容師・萱島直哉をはじめ、上白石萌歌演じる体育教師・畑野紗枝や、赤楚衛二演じる消防士・白浜優斗らが、乗車した電車内に閉じ込められ、近未来に飛ばされてしまうSFサバイバルストーリー。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・第10話ストーリー&レビュー

・「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

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2023年、春のある朝。
表参道の美容室で働くカリスマ美容師の萱島直哉(山田裕貴)は、ある人物に会うべきかどうか迷いながら電車に乗車しようとしていた。

同じ頃、高校の体育教師・畑野紗枝(上白石萌歌)は、通勤途中の駅ホームにいた。視線の先には、密かに思いを寄せる消防士・白浜優斗(赤楚衛二)の姿が。優斗もまた、ある複雑な思いを抱えながら電車を待っていた。

そんな3人が乗り込んだ車両には、有名大学農学部の院生・加藤祥大(井之脇海)、ネイリストの渡部玲奈(古川琴音)、ポップカルチャー専門学校に通う米澤大地(藤原丈一郎)、警備会社のサラリーマン・田中弥一(杉本哲太)、人材紹介会社を経営するキャリアウーマン・寺崎佳代子(松雪泰子)らが乗り合わせる。互いに見ず知らずの乗客が、それぞれの目的地へ向かうほんのひと時、同じ車内で思い思いの時間を過ごす。いつもと変わらない朝がそこにはあった。

そんな中、一瞬走るかすかな閃光をきっかけに、突如加速しトンネルへと吸い込まれていく電車、激しい衝撃音とともに揺さぶられる乗客たち!気づいた直哉たちの前には、想像を絶する光景が広がっていて……。

時刻は8時23分、秋葉原行きの電車。たまたま居合わせてしまった乗客乗員68名の、“ペンディング”された数奇な運命が幕を開ける――!

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第1話のレビュー

たまたま乗り合わせた電車が、30年後の未来へ飛んでしまったら、どうするか……。

美容師・萱島直哉(山田裕貴)が乗った8時23分秋葉原行きの電車が、地震の衝撃で近未来へタイムスリップしてしまった。同じ電車には、消防士の白浜優斗(赤楚衛二)、高校体育教師の畑野紗枝(上白石萌歌)など、ほかの乗客も乗り合わせている。

この電車が、約30年後の未来へワープしてしまった証拠は、以下のとおり。

まず、電車内に緊急地震速報が鳴り響き、まるで電車が脱線してしまったかのように衝撃が襲った。その際、何人かの乗客がこつぜんと姿を消している。おそらく、車両ごと未来へ飛んでしまったため、30年後に生存していない人間は消えてしまったのではないか。

乗客の一人、警備会社の社員・田中弥一(杉本哲太)が見つけた荒廃したタワーは、2026年に完成予定の東京ブルームタワーだ。なぜ、まだ完成していないはずのタワーがすでに寂れているのか。

高校生カップル、江口和真(日向亘)と佐藤小春(片岡凛)が見つけた缶ビールにも、2026年の期限の印字がある。……などの事柄から、この電車が近未来に飛んでしまったことはほぼ確実だ。そうなると、周りに極端に建物がないどころか、まるで文明が廃れてしまったような景色が広がっている事実は、どう受け止めたらいいのだろうか。

たまたま同じ車両に乗り合わせただけの複数の人間。萱島が言ったように、隣にいる人間が痴漢や詐欺師、はたまた嘘つきかも知れない……そんな状況で、無条件に他人を信用するのは難しいだろう。

しかも、食料や水が限られた極限状況だ。多くの乗客が車両外に助けを求めた。救助が来ないと悟ると、わかりやすく力尽きたり、「自由だ!」と理性を手放したりする人間も出てくる。萱島も、元来わがままで奔放な性格なのか、ことさらに単独行動をしたがる。

消防士らしい責任感を発揮する白浜の言葉も聞かず、一人で出ていってしまった萱島。案の定、崖から足を滑らせ谷底に落ちる寸前に……。白浜や畑野が間に合い、なんとか命を繋げることができた。このときの、山田裕貴の泣き笑いのような演技が後をひく。

「…………疲れた」

渾身の一言だった。車両ごと近未来へタイムスリップしてしまうという、ぶっ飛んだ設定のドラマだが、一つひとつのセリフに妙なリアリティが感じられる。1話の終盤、萱島の弟・達哉(池田優斗)のことを思い涙する演技も、思わず引き込まれてしまう強さを持っていた。

残された乗客たちのなかには、常識的な人間もいれば、自分のことしか考えていない人間もいる。どこへ歩いていっても砂漠か崖しかない場所に置き去りにされた彼らは、どのような希望を見出すだろう。まさに「やるだけやってみよう」としか言えない状況だ。ドラマの展開としても、何かしらの動きをつけないことには始まらない。

このドラマの主題歌を担当する、Official髭男dismの楽曲名が「TATTOO」であることにも、何かしらの因果を感じ取ってしまう。

インターネット上にあげられた文章や動画などのコンテンツは、たとえ元データを削除したとしても拡散され続けるため、完全に消し去るのは難しい。この現象を示した「デジタルタトゥー」という言葉がある。

近未来に飛ばされた乗客たちは、それぞれに人生があり、消せない過去を持っている……そして、それに苦しめられることもある。暗にそれを示したタイトルだとしたら?

加えて、タイトルにもある「8時23分」の意味も気になる。既にドラマファンの間では考察が進んでおり、「823」に宿された意味「Thinking of you(=あなたのことを思っています)」に行き着いている方も多い。

自分と向き合い、大切な人のことを思う。元の世界に帰るための壮大なサバイバルストーリーと並行して、乗客それぞれの人生に想いを馳せることになりそうだ。

※この記事は「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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自分たちが電車ごと30年後の未来へ飛ばされてしまったと知った直哉(山田裕貴)たちは、極限状態を皆で乗り切るため、紗枝(上白石萌歌)の提案で各々の持ち物を出し合い、平等に再分配することに。しかし優斗(赤楚衛二)が食料と水を集め始めた矢先、大量の飲み物が入ったカートを誰かが持ち去った痕跡が見つかる。犯人は誰なのかと疑心暗鬼に陥る佳代子(松雪泰子)、残り少ないモバイルバッテリーの電池を取り合い衝突する玲奈(古川琴音)と米澤(藤原丈一郎)、樹海の中から水源を見つけようと動き出す直哉と優斗、そして植物から水を作り出そうとする加藤(井之脇海)……。各々が生きるために必死でもがく中、ある人物が思わぬ暴走を始める。

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第2話のレビュー

水も食料もない、周りにはよく知らない人間ばかりで、ほかに行くところもない……。まさに極限状態のなか、萱島(山田裕貴)をはじめとする“30年後の未来に飛ばされた乗客たち”は、ギリギリで立っている。

こんな状況下においても、消防士である白浜(赤楚衛二)には正義感があり、どんな相手にも誠実に接する。田中(杉本哲太)が大量の水を盗んだことがわかっても、これまでと変わらずここにいるべきだと主張した。おまけに、畑野(上白石萌歌)と空を見上げながら、“満月が綺麗だ”と会話する余裕さえある。

ドラマだから違和感なく成立する人物設定だろうが、現実にはありえない、と思ってしまう。約2日間まともに飲食できていない人間が、空を見上げる心持ちになれるだろうか。田中のように、狂ったように歌いながら自分の歯を抜いたり、寺崎(松雪泰子)のように、家族のことを思って一目はばからず泣いたりしているほうが、まともな人間のように見えてくる。

そして、萱島のように、田中を追放するためわざと多数決の流れをつくったり、水を見つけた場所を隠そうとしたり、むやみに嘘をつき続けたりするのも自然に思えてくるから不思議だ。

萱島は、父親が違って12歳も離れた弟・達哉(池田優斗)を育てるため、生きるのに必死の生活を送ってきた。まだ本編で詳しく描かれてはいないが、人に騙された経験も多くしてきたはず。騙される前に騙す、それが萱島にとっての処世術だとしたら、言ってしまえば彼は“疑う者”。そして、白浜が“信じる者”だ。

信じる者と疑う者。この極限状態で、生き残るのはどっちだろう。

彼らが30年後の未来に飛ばされてしまったのは事実。水源を求めて崖を登った白浜が、その頂上から見た景色は、見渡す限り人も建物もない受け入れがたいものだった。救助が来るような気配もなく、水や食料も限られ、スマートフォンの充電は尽きていく。

彼らの心中には、言葉にならない思いがふつふつとわきあがる。その衝動が、届くとは限らないメッセージを残させる。親へ、子へ、友人へ、仕事仲間へ。

普通だったら、あの日あの時間に電車にさえ乗らなければ、いつも通りに会えていた大切な人たちに対し、万が一のための言葉を残す。その様子は、現実に生きる私たちをも立ち返らせるほど、切なく危機迫って見えた。いま言わなければ、二度と言えないかもしれない言葉。ありがとう、ごめん、元気でね。そんな他愛のない一言ずつが、静かな電車内に響く。

「なんで? もう起こってたことだよ」

「みーんな、見ないフリしてただけ」

文脈は違えど、萱島が言ったセリフが妙な後味を残す。もうすでに起こっていることなのに、見ないフリをしてなかったことにする。そういったことが、人生には多すぎる。

大切な人へ大切なことを伝える営み。確実に変化している地球環境。“現状維持”が決して良い意味を持つわけではない、この国の政治。

私たちはこのドラマを、サバイバルSFドラマとして見ている。けれど、極限状態のなか、生きるか死ぬかのやりとりをしている登場人物たちの人生は、詳らかにされるたびに突きつけてくる。このままでいいのか、見ないフリをしているんじゃないのか。

最後には、信じる者ではなく疑う者が生き残る。甘い汁を吸う。そんな世の中でいいのか、と。

そう簡単に答えが出そうにはない問いを、このドラマは投げかけ続けている。

※この記事は「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

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直哉(山田裕貴)たちが水源を見つけて飲み水が確保できたことで、乗客たちに少しの希望が見えたかに思われた矢先、直哉が大切にしてきた美容師道具のハサミが入ったバッグが田中(杉本哲太)によって持ち去られる事態が発生する。問い詰めると田中は、帽子を被った怪しい人物を目撃し、護身用としてハサミを持ち出したのだと言う。そんな田中の言い分を信じられず、バッグを紛失されたことにいら立つ直哉。一方、優斗(赤楚衛二)たちは食料を調達しに向かうが突如、紗枝(上白石萌歌)の身にある異変が生じて…。さらに、佳代子(松雪泰子)はここで生きていく希望を失いかけていて…。乗客たちに更なる試練が襲い掛かる…!

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第3話のレビュー

このなかに、殺傷事件の犯人が紛れ込んでいる。植物に詳しい、大学院生の加藤(井之脇海)が、おそらくその“異分子”に腹部を刺され、出血してしまう展開で終わった第3話。殺傷事件を起こすような人間が、水も食料も限られた極限状態に置かれたら……想像するだけで血の気が引いてしまう。

不安定な挙動が目立っていた田中(杉本哲太)も、ついに電車内から離脱することを決め、別個で暮らすことを決めた。現実世界に戻ることを完全に諦め、30年後の未来で生きることにしたらしい。それはそれで好きにしたらいいのでは、と思ってしまうが、人一倍正義感の強い白浜(赤楚衛二)はそれを許さない。

「俺は、みんなを助けたい。それだけだ」

そう言って、輪から離脱した田中さえ救おうと動く白浜。正義感を通り越して聖人君子、仏の生まれ変わりかと思うほど誠実な人間だ。いざ本当に自分が同じ状況に置かれたら、こんな人に場をまとめてもらいたい……と強く思う。それと同時に、ここまで人を疑うことを知らない存在から消えていくのが現実だろう、と無慈悲なことも考えてしまう。それほど、白浜は群を抜いて信頼できる人物だ。

またもや、白浜と対照的に描かれるのが、萱島(山田裕貴)だ。白浜が人を信じる立場なら、萱島はとことん周囲を疑うタイプと言えるだろう。

車内に乗り合わせた高齢者や外国人観光客に対し、「いつも誰かがなんとかしてくれると思うなよ」「動かない、役に立たない」「そういうヤツから死んでくぞ」と、少々乱暴な言葉で発破をかける萱島。荒いやり方だが、彼の言うことには一理ある。

何事にも筋を通そうとする白浜に対し「正しくいれば危険はなくなるか?」と萱島が問うシーンがある。いつだって、正論がまかり通るわけではない。ましてやこんな極限状態、役に立つか立たないかという、あからさまに人としての価値をジャッジされるような環境下で、正しいことばかりが善とは言えないだろう。

無事に生き残り、元の現実へ戻るためには、白浜と萱島どちらのスタンスでいるのが“正”で“善”なのだろう。簡単には答えが出ないような問いを、このドラマを次々と投げかけてくる。

萱島が発破をかけたおかげか、各々ができることを探し、少しずつ暮らしの土台が整ってきた。高齢者にロープの作り方を教わる高校生の構図などを見ていると、たとえば縄文時代などはこうやって生活していたのだろうな、と漠然と想像できる。彼らが飛ばされたのは30年後の未来だったはずだが、古代に回帰したかのような光景だ。

個別に行動しはじめた田中を探しに出た白浜だが、結局は姿をとらえることができずに帰ってきた。代わりに手にしていたのは、萱島の商売道具であるハサミのセットだった。

弟が幼い頃から必死で働き、ギリギリのところで生計を立ててきた萱島。彼にとって、弟・達哉(池田優斗)が事件を起こし警察に捕まってしまった事実は、そこはかとなく暗い影を落としただろう。

必死でやってきたのに、報われない。ここまで尽くしてやったのに、恩を仇で返される。萱島は、警察に連行される達哉の姿を見ながら、自分の無力さを悟っていたのではないか。達哉に対する文句や嘆きよりも、ここまでやってきたことは無意味だったのだと、自分で自分を責めていたのではないか。

そんな無意識な心の動きを、白浜は感じ取ったのかもしれない。「やるだけやってきて、立派だよ」……そう伝えると、萱島は、これまで必死に張ってきた防波堤を崩すかのように泣いた。そして、素直に「会いてえなあ」と言った。

現実世界で出所した達哉も、ラーメンを食べながら口元に手を当て、声を押し殺しながら泣いていた。その所作が、まるっきり兄である萱島と一緒だったことは、きっと偶然ではない。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

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森を探索していた加藤(井之脇海)が何者かによって刃物で刺される緊急事態が発生!犯人と思われるキャップ帽を被った人物は、すぐさま現場から逃走してしまう。加藤の命を救うため、乗客の持ち物の中から傷口の処置に使えそうなものを集める直哉(山田裕貴)や紗枝(上白石萌歌)、加藤が残したメモを元に森から薬草を調達してくる米澤(藤原丈一郎)たち。さらに医師志望の和真(日向亘)も加わり、乗客たちが一丸となって懸命な処置を行なっていた。しかしそんな中、優斗(赤楚衛二)はふと、火災現場で先輩隊員に怪我を負わせてしまった自身の辛い過去を思い出してしまい…。

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第4話のレビュー

加藤(井之脇海)を刺したのは、前回フラグが立っていた殺傷犯の仕業で間違いなさそうだ。まだ顔は映っていないが、刃物を持ち逃げまわる様子が見てとれる。今後、彼が仲間に加わることはあるのか……。少なくとも、萱島(山田裕貴)たちが元の現実へ戻るための“キーパーソン”になりそうだ。

加藤は刺され、三日三晩寝込むほど熱にうなされたが、白浜(赤楚衛二)の適切な応急処置と萱島の思い切りによって、なんとか一命を取り留めた。加藤自身が研究のためにつけていた、植物にまつわるノートも功を奏した形に。不幸中の幸いと言ってはなんだが、この一件がより彼らの団結を深めたのは間違いない。

キーパーソンはもう一人いる。突如あらわれた子どもの存在だ。小学生くらいの男の子が、前触れなく白浜と畑野(上白石萌歌)の前に登場したのだ。

元の世界に戻るため、どんなことでもいいから取っ掛かりを欲していた白浜たち。逃げる子どもの後を急いで追うが、子どもは「ママを連れてくるからここで待っていて」と言い残して去ってしまう。

川べりで火おこしをしながら待つ、白浜と畑野。そこに萱島も合流する。再び姿をあらわした子どもの誘導によって、彼らは目を疑うものを目にする。それは確かに「6号車」と書かれた車両、そして「初めまして、5号車のみなさん」と口火を切る男性、そして複数人の男女……。

素直に考えれば、彼らも現実から30年後の未来へワープしてしまい、元の世界へ帰ろうとしつつも叶わず、村のような自治体を形成し生活していることになる。「初めまして、5号車のみなさん」の言葉から、過去にもいくつかの団体が未来へワープしてきたこと、そしてあらかじめ、萱島たち5号車の人間がやってくることを予期していたことがわかる。

6号車の彼らは、どうやら現実へ戻る術を知っているようだ。知っていて、その条件が揃わずに苦しんでいる様子も感じ取れる。その“条件”が、仮に“一定数の人間が揃うこと”だとしたら、5号車と6号車の人間が引き合わせられたのはプラスに働くかもしれない。

果たして、彼らは現実に帰れるのか?

第4話では、火おこしに手こずる白浜の様子にも焦点が当てられた。誠実な人柄で、こんなに凄惨な状況でも場の空気を保ち、できることを着実にやってきた白浜。しかし、人一倍、正義感が強いがゆえにヤキモキする一面も。

加藤が刺されたときも、応急処置をするのが手一杯で、麻酔もなしに傷を縫うか縫わないかの判断ができなかった。そこを無理矢理に突破したのが萱島だ。

白浜の誠実さと信頼性、そして萱島の楽天家な気質と思い切りの良さ。確かに白浜は萱島の言うとおり、一人で背負い込みすぎだ。とくにこんなサバイバルな状況なのだから、各々ができることをやり、支え合っていくしか道はない。

「過去を変えることはできないけれど、今ここで火をつけることはできる」

「未来を信じましょう」

畑野の言葉は、まるで漢方のようにじわじわと沁みる。きっと白浜と萱島だけだったら、仲違いして終わっていたかもしれない。潤滑剤のような、クッションのような役割をする畑野がいたからこそ、彼らは生きて帰る希望を失わずに済んだ。

彼らが未来を信じるのと同時に、視聴者である我々も願わずにはいられない。どうか、彼らが現実に帰れますように。待ってくれている人の希望が繋がりますように。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

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自分たちの「5号車」と同時に未来に飛ばされた「6号車」の人々と遭遇した直哉(山田裕貴)、優斗(赤楚衛二)、紗枝(上白石萌歌)。IT企業の社長で6号車のリーダー的存在だという山本(萩原聖人)、工務店に勤める植村(ウエンツ瑛士)らの案内で彼らの居住場所を訪れると、そこにはなんと調理場やトイレに風呂、おまけに個室まで整えられた充実の暮らしが! 元の世界に戻るため、5号車の乗客たちとも協力し合いたいと提案するが山本たちを簡単には信用できない直哉たち。しかし、山本の口からどうして未来の世界がこうなったのか、そして元の世界に戻る手掛かりとなる衝撃の事実が次々と告げられて…。そんな矢先、紗枝は優斗に好きな人がいると知ってしまい…。直哉、優斗、紗枝、3人の関係も動き始める。

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第5話のレビュー

突如あらわれた“謎の6号車”と手を組むため、本格的に暮らしの環境を整えはじめる萱島(山田裕貴)たち。6号車のリーダーと思しき男・山本俊介(萩原聖人)は礼儀正しく、信頼できそうな雰囲気だ。

しかし、6号車のチームには、加藤(井之脇海)を刺して逃げた加古川辰巳(西垣匠)がいる。当初は、彼こそが“逃亡中の殺傷犯”と思われた。しかし、5話の終盤にて畑野(上白石萌歌)と玲奈(古川琴音)が、地中に埋められた“金髪頭”の死体を発見。田中(杉本哲太)の手にする新聞に掲載されている“殺傷犯”は、すでに亡くなっている可能性がある。

6号車の面々と手を組めば、できることも一気に広がると同時に、多くの情報も集められそうだ。しかし、リスクもある。実際、畑野と玲奈は6号車の男たちに襲われた。唯一、信頼できそうな山本が黒幕である展開も、容易に想像できる。少なくとも彼は、元の世界=過去に戻れる条件を知っている素振りを見せている。

過去に戻る方法を探るか、それとも、今=未来の世界で生きることを選ぶか。果たして、彼らにとってどちらが幸せなのだろうか。

過去に戻っても良いことなんかない、と頑なな態度をとっているのは、玲奈だ。生まれた環境、恋人や友人関係、仕事でのいざこざなど、過去に置いてきて清々したものはたくさんある。彼女の生き様は筋が通っていて美しくも見えるが、どこか痛々しくもある。

切なすぎる夢を垣間見た萱島も、やるせない。無事に過去に戻れた世界線で、萱島が勤める美容院へやってきた畑野。白浜(赤楚衛二)とともに3人でお好み焼きへ行こう、と屈託のない様子で誘う彼女は、リアルすぎた。目覚めた直後、途方に暮れる萱島の表情は、なんとも切ない。

「今までいろんなことあったけど、何が一番つらかったかって、期待して裏切られたときだよ」

毎度のことながら、萱島の言葉はストレートすぎるがゆえに、真に迫る。過去なんて必要ない、今を生きるほうがよっぽどいい、と無理やり前を向く玲奈とは、また違う。萱島は、本当に過去に戻れるなら戻りたいと、きっと誰よりも願っている。けれど、期待して裏切られたときの“痛み”や”絶望”を知っているからこそ、心を守るために防御しているように見える。


6号車のリーダー・山本は、奇跡的に繋がった無線から、決定的な情報を得たという。2026年、つまり彼らが生きていた(視聴者である我々が生きている)2023年から3年後、地球に隕石が落下した。30年後の未来であるはずなのに、建物ひとつない原始時代のような景色が広がっている理由は、人類が絶滅してしまったから……だという。

そんな荒唐無稽な! ありえない! と感じるだろう。そんなことは起こりっこない。頭では理解できる。それでも、誰も想像できないような“パンデミック”が現実に起こり得ることを、私たちはここ数年で嫌というほど思い知った。やけにリアルさを感じてしまうのは、無理もないのではないか。

過去に戻ったほうが幸せなのか、それとも……。この問題に、簡単に答えは出せそうにない。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー

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紗枝(上白石萌歌)と玲奈(古川琴音)は樹海を歩く中で、死体が埋められているのを見つけてしまう。唖然とする2人の前に6号車乗客の矢島(鈴之助)らが現れ2人を捕まえようとするも、紗枝だけが逃げ遅れてしまう。逃げてきた玲奈から事情を聞いた5号車の面々は、米澤(藤原丈一郎)の先導で護身用の武器を作ることに。加藤(井之脇海)を刺し、紗枝を危険な目に遭わせている6号車の人々を、5号車の一同は敵と見なしつつあるのだった。

一方紗枝を探して6号車へ辿り着いた直哉(山田裕貴)と優斗(赤楚衛二)は、乗り込んだ車内である衝撃的な光景を目撃し、山本(萩原聖人)を問い詰める。すると山本は、タイムワープ当日に起こった“事件”について語り始めて…。

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第6話のレビュー

電車に乗っていたら緊急地震速報が鳴り響き、大きな揺れに見舞われ、気がついたら約30年後の未来に飛ばされていた。周囲に目立った建物はなく、広がるのは草木や山ばかり。食べるものも限られ、やっと見つけた仲間と思しき人間たちは怪しさ満点で、あろうことか武器を持ち襲ってくる……。

そんな状況に陥ったら、誰でも気が狂ってしまう。6号車のリーダー格・山本(萩原聖人)自身が、実は地中に埋められた金髪の殺傷犯に手をかけた張本人で、おまけに無線でSOSを送っているという話も嘘だった。けれど、彼ばかりを責められない。こういった状況下では、たとえ虚構だとしても場をまとめる人間が必要だ。それが萱島(山田裕貴)の指摘したとおり、自己顕示欲にまみれたマウントだったとしても。

5号車の人間と6号車の人間が、お互いに疑心暗鬼に陥り、手作りの武器で戦い合う。予期せず30年後の未来に飛ばされてしまった状況は同じなのに、手を取り合うことはできなかった。今後、条件次第で和解はできるかもしれないが、きっと、一度争いあった“過去”は消えない。

襲われ、船に監禁までされた畑野(上白石萌歌)が無事に帰ってきたことが救いだ。まさかこのまま殺しはしないだろう、と思ってはいたけれど、故意ではないにせよ山本は人を殺めている。当初の想定どおり、キーパーソンとして注視しておいたほうがいい存在だろう。

山本が無線で送っていたSOSは嘘だった。この真実はおそらく、彼をリーダーに据え行動をともにしていた6号車の人間にこそ、衝撃的だったろう。それと比較すると、5号車の人間、とくに萱島や白浜(赤楚衛二)は警戒心が先立っていたように見える。いざSOSが嘘だとわかっても、「何にも期待しない。そう決めてる」とかねてから口にしている萱島にとっては、そこまでのインパクトはなかったようだ。

萱島は、徹底的に期待しない。約30年後の未来に飛ばされたとわかっても、無闇に「元の世界に帰れる」と期待して動くことはなかった。いや、心中では、現実に帰って弟に会うことを切望しているはず。それでも、さらに大きな“期待しない”という決意でもって、衝動に蓋をしているように思える。

彼は期待しない。期待して、裏切られてきたから。だから、畑野が無事に帰ってきても抱きしめなかった。ただ彼女のもとにそっと跪き、靴紐を結んだ。そのまま足元を手で包み込み、「よく頑張った」と言うに留めた。

萱島本人は、畑野がここまで頑張れているのは白浜のおかげ、と思っている節がある。しかし、畑野はじゅうぶん、萱島にも救われているだろう。萱島は白浜へ「気付いてやれよ」と言ったが、同じ言葉をそのまま返してあげたい気もする。そこまで望み薄ではないぞ、と伝えたい気も、するのだ。

※この記事は「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー

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治安が悪化した6号車から5号車への移住希望者が現れはじめる中、優斗(赤楚衛二)たちは、2026年に地球を激変させた大災害の経緯が書かれた航海日誌と、佳代子(松雪泰子)らが持ち帰ってきた光る不思議な石に、元の時代に戻るヒントがないかと思案していた。そんな矢先、玲奈(古川琴音)と明石(宮崎秋人)が、温水が出る川辺を見つける。しかしそこは6号車が領土を主張する場所で、5号車の面々は立ち入ることができない。そこで優斗と紗枝(上白石萌歌)が6号車へ交渉に向かおうとするが、紗枝の優斗への気持ちを知る直哉(山田裕貴)が2人を遮り、交渉役を買って出る。さらに、元の時代に戻れると信じていない直哉は6号車に移住すると言い出して・・・。

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第7話のレビュー

もともといた5号車から6号車へ移ると宣言し、向こうに行ってしまった萱島(山田裕貴)。その真意は定かではない。6号車のリーダーだった山本(萩原聖人)に変わって場を牛耳っている植村(ウエンツ瑛士)に対し、萱島は勝負を仕掛ける。商売道具のハサミを賭けて、5号車にも自由に魚釣りや塩の採取をさせる、それを条件に。

サイコロを使った博打で見事に勝った萱島。自由に海や川へ行けるようになったことを、白浜(赤楚衛二)や畑野(上白石萌歌)を含めた5号車の人間は喜ぶ。おそらく、萱島は5号車のため、そして畑野や白浜のために場所を移ったのだ。素直じゃない萱島は、決してそうとは言わないけれど。

素直になれない、何に対しても憎まれ口を叩く萱島に対し、畑野は問う。なぜ、素直になれないのかと。5号車にいたい、元の世界に帰りたいと言えないのはなぜか、と。真っ直ぐすぎる問いかけに、萱島は返す。「なんでかって? 怖いからだよ」と。

自分と弟を置いて、どこかへ姿を消してしまった母親。親代わりとして面倒を見てきた弟も、問題を起こして警察に捕まった。

「みんなどうせいなくなる」

「大事な人は戻ってこない」

「期待しても裏切られる」

雨風が吹き荒れるなかに、悲痛な叫びを紛れ込ませる萱島。誰にも何にも期待しない、と強い気持ちを露わにする彼を、畑野はそっと後ろから抱きしめた。

これまでの萱島の態度や言動が、すべて憎まれ口だとしたら。彼が弟を思いながら白浜に告げた「俺のことは忘れていてほしい」「忘れて、今を笑って生きてくれてたらいいよ」の言葉も、強がりの嘘なのだろうか。

元の世界に帰りたい者と、帰りたくない者。双方の思惑が乱れ合うなかで、現実に戻る“カギ”が見つかる。砕かれ、各地に飛び散っている隕石と、ワームホールの存在だ。

ワームホール、時空の歪みのようなものを見つけられれば、それが現実世界へと繋がる扉になるのだという。タイムワープについて研究している教授・蓮見涼平(間宮祥太朗)の存在も、重要なキーパーソンになりそうだ。前回に引き続き、登場シーンは少ないものの、しっかり存在感を残している。

メタ的な話をしてしまうが、話数もすでに7話である。現実に帰れるのなら、そろそろ具体的な事象がないと間に合わない。視聴者がそう思うのを見越してか、終盤ではワームホールが発見されて終わった。おそらく次回は、そのワームホールを通って現実に帰るか、それとも帰らないかの問答が起こるだろう。

次回予告から推察するに、もしかしたら萱島は、一人この世界へ残る選択をするのかもしれない。映画『ブレイブ 群青戦記』で、新田真剣佑が演じた主人公・西野蒼が過去に生きる選択をしたように、萱島は未来を生きることになるのだろうか。

※この記事は「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー

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嵐の中、5号車のトンネル内に突如謎の黒い歪みが出現した! これは元の世界につながるワームホールなのか? 飛び込むべきか? 危険はないのか? 優斗(赤楚衛二)たちがたじろいでいる間に、その歪みは消滅してしまう。しかし、一縷の希望を見出した一同は、再び歪みを出現させるため、物理学教授・蓮見(間宮祥太朗)のタイムワープに関する研究内容をもとに、加藤(井之脇海)の先導で過去に戻る糸口を探ることに。しかし玲奈(古川琴音)をはじめ、お腹に子どもを宿す小春(片岡凜)も危険を冒して過去に戻ることに消極的。乗客たちはそれぞれ複雑な思いを抱えていた。

一方、紗枝(上白石萌歌)への気持ちに戸惑いを覚える直哉(山田裕貴)。優斗もそれに気付きつつある中、直哉が思わぬ決断を。
そして、再び歪みが現れて…。衝撃のクライマックスへ!!

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第8話のレビュー

萱島(山田裕貴)が畑野(上白石萌歌)に対し「会えてよかった」と伝えた瞬間、ああ、彼は本気でここに残るつもりなんだと、その決心の強さを感じた。

「俺は、誰も信じられなかった。信じてこなかった。でも今はちょっとだけ、信じられるかもって思ってる」

誰にも期待しない、期待したぶん裏切られるのが怖いから、と言っていた萱島が、最後のつもりで口にしたメッセージ。ことあるごとに憎まれ口を叩く天邪鬼、いつまでも素直になれない彼が、めずらしく真っ直ぐな言葉で気持ちを伝えたのは、本当にこれが最後だと覚悟したからだ。

しかし、萱島よりも格段に真っ直ぐな男・白浜(赤楚衛二)がその壁をぶちこわす。「必ず帰ろう、みんなが待っててくれてる」と常にブレずに周りを鼓舞してくれた彼が、萱島の目を真正面から見据えて言った。

「萱島さんを助けられなかったら、俺は一生後悔する」

「俺を信じろ」

決死の思いで見つけ出した発電所から電気を引き、おそらく隕石であろう物体を使って電力を導く。暴風雨やオーロラなど、平常時とは違う状況下で奇跡的な条件がそろえば、ワームホールが開く。そのワームホールを通れば、元いた2023年に帰れるという仮説が立った。

皆とともに元の世界へ帰ると意を決した萱島が、電車に乗るギリギリのところで邪魔され、危うく取り残されるところだったが……。最後の最後で、田中(杉本哲太)が萱島を車内に押し入れ、扉を閉めてくれた。たった一人で残ると決めた田中が、良いところをかっさらっていった見せ場だった。

ワームホールに電車ごと飛び込んだ彼らは、結果的に、未来から過去へ戻ってくることはできた。しかし、そこは2023年ではなく2026年の5月1日。隕石が衝突し、大災害が起こるとされている年である。

果たしてこの2026年は、萱島たちが生きていた2023年と地続きなのか。加藤(井之脇海)が本編で話していたように、パラレルワールド(並行する複数の世界のひとつ)に飛んでしまった可能性もある。無事に戻ってこられた喜びを噛み締めながら、目前に迫った災害をどう回避するか、頭を悩ませることになりそうだ。

こうなってくると、一人で未来に残った田中が、またもや良い働きをしてくれると想像してしまう。彼の出番が今回で終わらないことを祈る。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー

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再びワームホールを出現させ、なんとか過去へ戻ることに成功した乗客たち。しかしたどり着いたのは元いた2023年ではなく、地球環境が激変する半年ほど前の2026年5月の東京だった! 元いた世界から3年後ではあるものの家族との再会を喜ぶ優斗(赤楚衛二)や紗枝(上白石萌歌)たち、成長した我が子を抱きしめる佳代子(松雪泰子)…皆が思い思いに過去へ戻った実感を味わう中、直哉(山田裕貴)もまた、気にかけていた弟・達哉(池田優斗)との再会を果たす。

やがて元の生活へと戻り、未来で見てきたこと、まもなく地球に起こる出来事について必死に訴える乗客たち。しかし警察や政府は彼らの証言を本気にしないばかりか、植村(ウエンツ瑛士)らの勝手な行動もあり、乗客たちは周囲からの好奇の目に晒されてしまう。ただ、加藤(井之脇海)が未来から持ち帰った隕石を手にした蓮見(間宮祥太朗)だけは、何かに気づき…。そんな折、直哉の体にはある重大な異変が起こっていて…。

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第9話の話のレビュー

現代(2026年)に戻ってきて早々、白浜(赤楚衛二)が闇落ちしてしまった。これはまさかの展開だ。もちろん最初は彼らしく、何度も警察へ通っては来たる大災害について訴えたり、「みんなで声をあげよう!」と仲間たちを鼓舞したり、またもや一匹狼になってしまった萱島(山田裕貴)に会いに行ったりしていた。

しかし、現実は厳しい。本編の萱島によるセリフを拝借すれば、たしかにこの世界は「最低でクソみてえなところ」だ。

突如、電車ごと姿を消してしまった乗客たち。現代にいた側は、3年経って戻ってきた彼らを歓迎するよりも、奇異の眼差しで見るのが普通だろう。家族や親しい友人ならまだしも、3年消息を絶ったあとに前触れなく戻ってきた人間が「あと半年で大災害が起こる!」なんて言い出したら、集団で頭がおかしくなったのだと思っても仕方がない。

世間は彼らを、芸能人か、はたまたプライバシーなんて皆無のおもちゃのように扱う。無断でスマホのカメラを向け、写真や動画を撮り、SNSという舞台に晒しあげるのだ。各々の興味本位と好奇心、そして煮詰まった自己承認欲求のあらわれに、見ていて思わず気分が悪くなってしまう。

萱島は、気づいていたのかもしれない。会いにきた白浜に対し「こっちに戻ってきて思うのはさ、戻りたい。あの場所に」と口にしたのも頷ける。

戻ってくるや否やイケメン美容師と騒ぎ立てられ、(おそらく未来にいた影響で)右手に力が入らず商売上がったり、自分と弟を捨てて出ていった母親は、さも人の良さそうな顔をしてインタビューに答えている。絶望を煮詰めて濃くしたような光景である。

久々に弟に再会できた感動も、満足に仕事もできない自分の存在が足枷となって薄れてしまう。

そんな萱島の訴えに対し、最初こそ「みんなを助ける」と強い意志を見せていた白浜だったが……。消防士として火災現場に向かった先で、野次馬の群れに遭遇。白浜に向け「イケメン消防士!」と好き勝手にスマホを向ける彼らに対し、命を脅かしたくない一心で手を出してしまった。

その様子がSNSに晒され、大炎上。様子を見かねた萱島が会いにいくが、時すでに遅く、白浜は「わかったよ、萱島さんの言うとおり。最低だな、ここは。こんな世界、もう終わればいい」と遠い目をしながら口にした。

次回が、ついに最終回。隕石について知見のある教授・蓮見涼平(間宮祥太朗)が動いてくれるか、それとも、ひとりだけ未来に残った田中(杉本哲太)が何かしらのファインプレーを起こしてくれるか……。事態は読めないが、どうか白浜が闇落ちから帰還してくれますように。

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–{最終話ストーリー&レビュー}–

最終話ストーリー&レビュー

最終話のストーリー

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事実ではないことがネット上で拡散され、苦境に立たされる5号車の元乗客たち。原因不明の手の震えに苦しむ直哉(山田裕貴)や、あらぬ誹謗中傷で休職を余儀なくされた優斗(赤楚衛二)もまた、「こんな世界、もう終わればいい」と思うほどの絶望の淵にいた。

しかしその頃、物理学教授の蓮見(間宮祥太朗)は、地球環境を激変させる小惑星の衝突について、新たな事実をつかんだようで…。そんな中、5号車のメンバーが集まる対策会議に連れてこられた直哉。そこには久々に顔を合わせる紗枝(上白石萌歌)の姿もあった。そして一同は、意を決した米澤(藤原丈一郎)の発案で一本の動画を公開することに。するとその動画をきっかけに、事態は思わぬ方向へと動き出していく。

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最終話のレビュー

こんな世界、終わってしまえばいい。前回、自棄になって闇落ちしてしまった白浜(赤楚衛二)は、12月9日に隕石がぶつかると確定しても、避難せず残ると決めてしまった。自暴自棄になって「もうどうにでもなれ」と思ったからか、それとも、最後まで消防士としての職務をまっとうしようとしたからか。

地球に隕石がぶつかり、滅びてしまうとわかったとき、人はどうするか。萱島(山田裕貴)や畑野(上白石萌歌)たちは、ネット上で情報提供したり、政府や大学教授らに訴えたりしながら、ひたすらできることをした。

できることをし尽くしたあとは、ただ「最後の日まで、どう生きるのか?」を考えた。きっと仮に、現代に生きる私たちにそんな運命が待っていたとしても、同じことをするのではないだろうか。

5号車で、ともに未来のサバイバル生活を生き抜いた仲間たち。そのうちの一人が言っていた言葉が、胸に迫る。

「生まれる前に戻るだけ。もともといた場所に帰るだけ。そう考えれば怖くないわ」

半年後に隕石がぶつかり、人類が滅びるとわかったら。避難する人間と、残ることを選ぶ人間とに二分するはずだ。避難する人間は、残る人間のことがわからない。残る人間は、避難する人間のことを思いやりつつも、生きる選択から距離をとる。5号車の仲間たちのなかでも、意見は割れた。

白浜も、ギリギリまで「残る」と決めた人間の一人だ。多くの人を助ける側にまわった。一度は闇落ちしてしまった白浜が、なぜ立ち直ったか。

それは、ともに生き抜いた仲間たちから「ありがとう」と感謝されたから。畑野や萱島ともう一度、一緒に海に来ようと約束したから。あの日々はつらいことばかりじゃなかった、と思えるようになったから。

しかし、それを許さない人間がいた。萱島だ。彼も残る側かと思われたが、それは白浜を説得するためだった。「なんでここに」と憤慨する白浜に対し、萱島は言う。

「お前みたいなやつがいるから、この世界も悪くない。生きよう。何があっても」

のドラマは、私たちに多くの問いを投げかけた。当初は「30年後にタイムスリップしたらどうするか?」とSFチックな問いかけで、非現実的な空想に過ぎなかった。

それでも少しずつ、彼らが間接的に投げかけてくる問いは深みを増す。

非現実的な状況で、初対面の人間と協力するにはどうしたらいいか。限られた条件で生き延びるためにはどうするか。リスクがあっても元の世界に戻る方法を試すべきか。苦境から脱せられたとして、今の自分をどう受け止め、そして、どう生きるか。

彼らの未来は新たな電車に乗せられた。その進む先に何が待っているかは、はっきりとは描かれない。彼らの行く末は、私たちの想像に任された。

萱島は言っていた。「その目で、耳で、体で、そいつの奥を見ろよ」と。「知りたかったら直接聞けよ、何を勝手に妄想してんだよ、そいつの奥を見ろって」と。この言葉は、きっと不確実な未来を生きると決めた私たちの、指針となってくれるに違いない。

※この記事は「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」作品情報}–

「ペンディングトレイン ー8時23分、明日 君と」作品情報

放送日時
2023年4月21日(金)スタート。毎週(金)夜22:00〜 ※初回15分拡大

出演
山田裕貴/赤楚衛二/上白石萌歌/井之脇 海/古川琴音/藤原丈一郎(なにわ男子)/日向 亘/片岡 凜/池田優斗/宮崎秋人/大西礼芳/村田秀亮(とろサーモン)/金澤美穂/志田彩良/白石隼也/濱津隆之/坪倉由幸(我が家)/山口紗弥加/前田公輝/杉本哲太/松雪泰子

脚本
金子ありさ

演出
田中健太
岡本伸吾
加藤尚樹
井村太一
濱野大輝

音楽
大間々 昂

プロデューサー
宮﨑真佐子
丸山いづみ

製作
TBSスパークル
TBS