[※本記事は広告リンクを含みます。]
「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第30回を紐解いていく。
「カエルじゃのうて人間です」
植物研究に好都合の住まいが見つかり、スタートラインを切った万太郎(神木隆之介)。
引っ越しのお礼に菓子を買おうと、白梅堂に向かいます。
発見したのは竹雄(志尊淳)でしたが、万太郎も「白梅堂」という名前を気にかけてはいたようで、期待して見に行くとーー。
寿恵子(浜辺美波)が!
と思ったら、それは妄想で、男性職人・文太(池内万作)でした。
店にあるお菓子を全部買って帰る万太郎。「峰屋は若の財布じゃない」と節約しろと言われているにもかかわらず、いきなり散財しています。いくら、長屋の皆さんへ振る舞うものとはいえ……。
万太郎が帰ったあと、寿恵子がお店に出てきます。お菓子を全部買っていった剛毅な客はどういう人かと見に外へ出ると(お菓子全部買わせたのはこのための振りですね)、落ち込んでタンポポに話しかけてる万太郎を見つけます。
遠くから「カエル様」と声をかけるのではなく、いきなりぐいっと万太郎と竹雄の間に割り込んで万太郎の顔をのぞきこむ寿恵子のインパクト。
そして、万太郎が植物に思いを語りかけているのだと言い訳すると、「でも人は口があるから お互いしゃべれますね」と微笑む寿恵子に、「ズギャン!」と撃ち抜かれる万太郎。
「ズギャン!」ってすごいワードです。
漫画みたいな流れになる理由はあとでわかります。寿恵子の部屋には本がいっぱい。「南総里見八犬伝」(表紙には「南総」の文字はない)を音読して、「桃園の義を結びぬ」というフレーズに「信乃と現八、尊い!」「馬琴先生天才すぎる〜」と悶えます。
寿恵子は、小説おたくだったのです。
万太郎の「実はわしカエルじゃのうて人間です」という妙な言葉を気に入った様子だったのは、作りこんだ世界ーー物語が好きだからなのでしょう。
寿恵子は万太郎との出会いによって、奇想天外な物語のような世界に足を踏み入れていくのだろうと想像が膨らみます。この彼女の導入部、甘酸っぱく、くすぐったい感覚を刺激されて、素敵。
信乃と現八の「桃園の義」(義兄弟の関係)は、万太郎と竹雄との関係をも彷彿とさせますから、きっと寿恵子は万太郎と竹雄の関係にも萌えることは想像に難くありません。
さらに、寿恵子の叔母・みえ(宮澤エマ)が彼女に縁談話を持ってきて言うセリフが、
「これからはどんな生まれの女だってお姫様になれるんだから」
(みえ)
おおおお。これまで、ちょっと固い言葉で男女平等を謳ってきたこの物語が、東京という文化が発展している場で、そこに生きる女性キャラの生活によって、柔らかな表現になってきました。
東京に咲く花は、高知とはまた違う。それが寿恵子です。
ところで。みえが貫禄ありすぎて、通りに立っている姿が、女すりみたいな怪しさでした。
(文:木俣冬)
木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中
–{「らんまん」第6週あらすじ}–
「らんまん」第6週「ドクダミ」あらすじ
東京に着いた万太郎(神木隆之介)と竹雄(志尊淳)は、野田基善(田辺誠一)らがいる博物館へ足を運び、植物談義に花を咲かせる。野田から東京大学への紹介状をもらった万太郎は、次に名教館時代の学友・広瀬佑一郎(中村蒼)を訪ねる。佑一郎の叔父の家を下宿先として紹介してもらったのだ。しかし植物標本などの荷物が多すぎるから捨ててほしいと言われてしまい、結局、自分たちで下宿先を探すことに。大八車を引いて東京の町をさまよう二人だったが、貴重な標本が入ったトランクを盗まれてしまう…。そしてたどり着いたのは、ドクダミが咲く薄暗い根津の長屋。そこに住む愉快な仲間たちと共に、東京での新たな暮らしがスタートする。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか