ついに2023年5月3日(水・祝)より公開されたマーベル・スタジオの最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』!!
今回はそんな本作の特に気になる5つのポイントについて、マーベルファンのライターが徹底解説します!
※この記事では、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の重大なネタバレに触れています。未鑑賞の方はぜひ観賞後に記事をご覧ください。
【目次】
1. 完結編で描かれた「死」
1. 完結編で描かれた「死」
本作ではアダム・ウォーロックの母・アイーシャ、カワウソのライラを含むロケットの親友たち、カウンターアースの住人など、多くのキャラクターの死が描かれました。
しかし、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(以下:GotG)のメンバーは誰一人死なないという意外な展開を迎えます。
これはシリーズファンにとって嬉しいサプライズと言えるでしょう。
というのも、これまでのGotGシリーズでは様々な死が描かれてきたからです。
第1作目では主人公・ピーターの母と仲間のグルート(のちに復活)、第2作目ではピーターの父・エゴと育ての親・ヨンドゥ、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では最愛の恋人・ガモーラと、ピーターがいくつもの死を乗り越えことで成長する物語が展開されています。
(また、本作の監督・ジェームズ・ガンの過去作『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』では、メインキャラクターが終盤にかけて次々と命を落としていきます)
本作では予告編同様、序盤から「死」の匂いが漂っていました。
アダムの強襲にネビュラ、グルートなどが重症、そしてロケットが瀕死状態に。
また、衛星オルゴスコープに潜入する場面ではドラックスが瀕死となり、クライマックスではピーターにまで死の危険が訪れます。
しかし、本作ではそのような展開を積み重ねた上で「メインキャラクターが死ぬという展開」が死を迎えた清々しいラストとなったと言えるでしょう。
また、結末でメンバーがそれぞれの道に進むこととなり、ある意味では初代GotGの「死」を描いた物語にもなっていました。
–{ラストシーンの意味とは}–
2. ラストシーンを解説
本作のラストでは最強の敵”ハイ・エボリューショナリー”との決戦を終えたメンバーがそれぞれの道に進むこととなりました。
以下ではラストで示唆された彼らの今後をまとめました。
スター・ロード/ピーター・クイル
……祖父のいる地球へ帰還ロケット
……新たなガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのリーダーグルート
……新たなガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバードラックス
……惑星・ノーウェアに残留し、ハイ・エボリューショナリーから解放された子供たちを育てる立場にネビュラ
……惑星・ノーウェアを統治する立場にマンティス
……自分探しのため、新たな旅へ
また、ガモーラ役ゾーイ・サルダナ、ドラックス役デイヴ・バウティスタは本作を最後にMCUを卒業することを公言しており、3部作の監督・ジェームズ・ガンもDC映画への移籍が発表されています。
このことから本作がGotGシリーズの完結編であることが決定づけられました(新たなガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの活躍が描かれる可能性もゼロではないですが……)。
そして本作のミッドクレジットシーンでは新たなGotGのメンバーが登場。
以下が劇中で明かされたキャラクターたちです。
・ロケット・ラクーン
・グルート
・クラグリン
・アダム・ウォーロック
・コスモ
・フィラ
“ラクーン”を名乗るようになったロケットを筆頭に、成長し強化形態となったグルート、クラグリン、コスモとGotGの一部メンバーは継続。
また、強敵だったアダム・ウォーロック、ハイ・エボリューショナリーの支配から救出した白髪の少女・フィラが新たなメンバーとなりました。
ちなみに原作のアダムはGotGの創設メンバー、フィラはフィラ・ヴェルという名前で登場するGotGのメンバー。
特にフィラはクエーサー、マーティルという別名を持ち、元キャプテン・マーベルでもあるキャラクターです。
ドラックスの娘でもあり、本作では彼の養子ともいえる位置づけなのかもしれません。
明確にはされていなかったですがドラックス、ネビュラも惑星・ノーウェアがチームの本拠地になっているため、メンバーに含まれるかもしれません。
エンドクレジット後にはスター・ロードことピーターが登場。
彼が祖父と数年ぶりの家族だんらんを迎える様子が描かれます。
この場面では祖父の読む新聞に「ケヴィン・ベーコン誘拐事件」の見出しが躍っていましたが、これは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』からの小ネタとなっています。
また、ラストの文言「伝説のスター・ロードは帰ってくる」は彼が今後もマーベル作品に登場することが示唆されました。
地球のヒーローと出会うのか?はたまた宇宙に戻るのか?シリーズの完結を踏まえると他作品へのゲスト出演が予想されますが、ひょっとすると配信ミニシリーズの主演になるなんてことも……。
ちなみにクリス・プラットは過去のインタビューでデアデビルの悪役・キングピンを演じたヴィンセント・ドノフリオとの交友関係を明かし、共演を希望していると言及。
真相は謎に包まれたままですが、期待が高まるばかりです。
–{劇中のサプライズとは}–
3. サプライズ演出の数々
本作では様々なサプライズ演出も魅力的でした。
シリーズではお馴染みとなったマーベルのオープニングロゴでは、GotGのメンバーとシリーズ過去の名場面が集結するファン感涙の演出に。
過去には『キャプテン・マーベル』でスタン・リー(マーベルヒーローの生みの親)が、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でチャドウィック・ボーズマン(ブラックパンサー/ティ・チャラ国王役)がフィーチャーされる類似の演出があり、共に故人を追悼する意図がありました。
本作はGotGの完結編と銘打たれており、ラストの展開も踏まえると初代GotGとのお別れを強調づける演出となったと言えるでしょう。
また、シリーズの顔ともいえる音楽面では意外な選曲がなされています。
レディオヘッド、アース・ウインド&ファイアー、ブルース・スプリングスティーンによる名だたる名曲群に並び、なんとボカロ曲が登場します。
『小犬のカーニバル 〜小犬のワルツより〜』は、ショパンの名曲『子犬のワルツ(ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1)』を基に作られた楽曲。
地球にそっくりの惑星・カウンター・アースの住人が聞く音楽として登場しており、聞き馴染みはあるものの何か違和感がある楽曲として、見事に作中での世界観を表現しています。
本楽曲はspotifyによる公式プレイリスト「Guardians of the Galaxy: The Official Mixtape」からも聞くことが可能です。
キャラクター面ではシルベスター・スタローン演じるラヴェジャーズのボス・スタカーをはじめ、ハワード・ザ・ドッグ、ヨンドゥが再登場。
『ピースメイカー』に出演したチャック・イウジ(今回はハイ・エボリューショナリー役)をはじめ、ジェームズ・ガン監督過去作から続投している俳優も多数登場しました。
特にオルゴスコープの場面では『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』でT.D.K役として出演したネイサン・フィリオンがGotGと遭遇する部隊のリーダーとして、また監督のパートナーで近年のDC作品では欠かせない存在・ハーコート役を務めたジェニファー・ホランドが同施設のセキュリティスタッフとして登場。
その他にもたくさんのジェームズ・ガン監督常連組が参加しているようなので、エンドロールでは出演者はもちろん、声の出演者にも注目してみてはいかがでしょうか。
–{“家族”のドラマに迫る}–
4. 「家族」とは何か
ジェームズ・ガン監督作では主に「共同体」に生きる人々のドラマが描かれ、特にGotGシリーズでは「家族」とは何かというテーマが物語の中心として描かれています。
第1作では母の死を経験したピーターがGotGの仲間たちと出会い、「家族」のような関係性になり、第2作では実親・エゴと育ての父・ヨンドゥとの別れを経て、GotGの仲間たちと「家族」のような関係性を深める様子が描かれます。
本作ではGotGメンバーの別れが描かれ、それぞれが自分自身と向き合う中で「家族とは何か」という問いの答えをみつける物語と言えます。
では、本作が指し示す「家族」とはどのような関係性なのか。
それは「ありのまま」を肯定できる関係性なのではないのでしょうか。
それぞれが孤独を抱え、不完全な部分も多いGotGのメンバーは「ありのまま」を認めて協力することで悪に打ち勝ちます。
本作の終盤、ハイ・エボリューショナリーに打ち勝ったロケットが彼に語る言葉からもそれは強調されていました。
まさしく家族とも言えるGotGのメンバーですが、今回のラストではピーターが祖父のいる地球に戻る決断をしたことをきっかけに道を分かつことになります。
過去からやってきたガモーラの「ありのまま」を認め、別れを決意した彼はついに地球に帰っていくことを決めるのです。
GotGシリーズではこれまで血縁関係に囚われない「家族」のあり方を提示してきましたが、たとえ場所が離れていてもそれは同じ。
また、ピーターが祖父の元へ帰るという展開は、本作が決して血縁関係としての「家族」を否定するわけではないというメッセージも伝えています。
–{監督・ジェームズ・ガンとは?}–
5. ジェームズ・ガンという作家
本作のメガホンをとったジェームズ・ガン監督は「作家性が強い」ことで多くの映画ファンに愛されている監督です。
「作家性が強い」とは「自身の思想や哲学をメッセージに落とし込むのが上手い」とも言い換えることが出来ます。
ホラーやSFなど現実離れした題材を選びながらも、何気ないセリフやキャラクターたちの行動に実体験を反映させることで私たちに感動を与えるのです。
集大成と言える本作では特にその傾向を強く感じました。
本作の脚本は2018年4月には完成していましたが、復帰後の2020年11月には少しだけ修正が行われたことが公表されています。
そのため、この間に彼が経験した2つの出来事が本作に影響を与えているのかもしれません。
1. 解雇騒動
製作中の2018年7月、ジェームズ・ガンは過去のSNSで行った差別的発言が炎上したことから監督を解雇されてしまいます。
彼は直後に謝罪文を更新し「過去の発言を反省して決定を受け入れること」と同時に「現在の自分が当時とは全くの別人に変わったこと」を公表。
キャスト陣やファンは彼を支持したうえで復帰を求める署名活動を行い、9か月後の2019年3月に正式に彼が本作に復帰することが決定されました。
この出来事は、本作の根底にある「人生はやり直せる」というメッセージに繋がります。
クライマックスでアダム・ウォーロックがグルートから伝えられた言葉はもちろん、大切な仲間を失ったロケットが新たな仲間たちと生きることを決める物語はまさしくその反映と言えるでしょう。
2. 父の死去
2019年8月、彼は父を亡くしました。
弟で俳優・プロデューサー・脚本家でもあるブライアン・ガンはSNSでその存在を「善人であり、悪人であった」「血の通った人間であった」と称しています。
また、ガン監督本人も「親友だった」「子どもの頃の私を理解はしてくれなかった」と彼が複雑な存在であったことを明かしています。
これは劇中のロケットと創造主・ハイ・エボリューショナリーとの関係性、ピーターが本当の家族を恋しく思う展開に繋がるのではないでしょうか。
また、父と子の関係性は前作でも強調されており、監督の近作でも強調して描かれるテーマ。
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』ではラットキャッチャー2と父との回想が象徴的に登場し、ドラマ「ピースメイカー」では父と決別した主人公のノスタルジックな場面で物語が締めくくられます。
ジェームズ・ガン監督は本作でマーベル作品を卒業し、今後はDC作品の製作を統括することが発表されています。
そして、彼が手掛ける次回作がアメコミヒーローの原点とも言えるスーパーマンを題材にした『Superman : Legacy(原題)』。
実は彼がDC映画に移籍した際、「スーサイド・スクワッド」よりも前に「スーパーマン」の作品を提案されていたという経緯があり、本作で監督がどのように作家性を爆発させるのかにも期待が高まります。
今回は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』を楽しむための5つのポイントを徹底解説しました!
マーベル映画を代表するシリーズの完結編として、そして、ジェームズ・ガン監督の集大成にもなったと言える本作。
ぜひ、何度でも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の壮大で楽しく、感動的な宇宙の旅を堪能してみてはいかがでしょうか!!
(文:TETSU)