「ヒロステ」4作目が開幕!喪失・成長・希望——集大成を感じさせるステージに

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4月28日(土)、「「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 最高のヒーロー」が東京・銀河劇場にて開幕した。

「週刊少年ジャンプ」に連載中の同名漫画が原作の本作。人口の8割が“個性”と呼ばれる能力をもっている世界を舞台に、田村心演じる無個性の主人公・緑谷出久(みどりや・いずく)が苦難や葛藤を乗り越えながら最高のヒーローを目指していく物語だ。

4作目となる今作は、デクこと緑谷出久や幼馴染でライバルの爆豪勝己(ばくごう・かつき)が所属する雄英高校1年A組の生徒たちを中心に、プロヒーローになるための一歩として仮免試験に挑む姿が描かれる。

「帰ってきたぜ、ヒーロー!」という言葉の偉大なパワー

オールマイトのヒーローとしての最期を描いた前作のラストから続くシーンに、まるでレクイエムのような荘厳な楽曲が重なり、幕が開く。家庭訪問など大事なエピソードを交えて、平和の象徴を失った悲しみや失意からヒーローの卵たちが立ち上がっていく姿を凝縮して描いた冒頭に、一気に作品の世界へ引き込まれる。

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シリーズで初めて1年A組のキャラクターが全員出演するということにも期待が高まっていた本作。

舞台に(キャストのいるキャラクターとしては)初登場となるクラスメイトたちも、これまでの物語の中にいて多くの危機に直面し、苦境を乗り越えてきたという背景を背負っている。新キャラクターという扱いではなく、A組揃ってのダンスシーンなどに初演から一緒にいた仲間であるような一体感があることにまず感動し、キャスト同士がいい関係を築いていることまで想像させられて、尊いとはこのことか…と天を仰ぐしかない気持ちになった。

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生徒たちが揃ったステージは力強いロックナンバーに切り替わり、狂言回しの役目も担うプレゼント・マイク(岡本悠紀)の「帰ってきたぜ、ヒーロー!」という言葉が響いて、体温が上がる。

公演の中止を余儀なくされたコロナ禍を経て、彼らが“帰ってくる”ことが当たり前ではないと痛感しているだけに、その言葉のパワーは偉大だ。その一声がステージと客席の境界線を破り、彼らの活躍を心から期待している観客たちを、物語を俯瞰する存在ではなくヒロステの世界の“市民”にしてくれる。こちらとしてはもう、「帰ってきてくれてありがとう!」の気持ちしかない。

実際、ヒロステは本編から離れた幕間で客席とのコミュニケーションがあったり、楽曲によっては手拍子を求められたり、ステージと客席の一体感が強いことも魅力のひとつだといえる。

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そして、原作ファンも期待していたであろうお部屋訪問の流れでは、本作で欠かせない生徒たちの“個性”の紹介を交えており「その手があった!」と舌を巻く。とにかく無駄がなく密度の濃い作品であることを再認識させられた。

また、キャラクターにあったバラエティ豊かなメロディに原作のセリフをのせた進行は、漫画のシーンをひとつひとつ思い出して楽しい気持ちにさせてくれる。ショックな出来事から立ち直ろうと奮闘する彼らの努力に、前作まで岩永洋昭が演じていた力強く、ユーモアあふれるオールマイト(マッスルフォーム)の不在に寂しさを感じていたこちら側まで元気になる。気づけば、すっかり感情移入しているのだ。

お部屋訪問では、サプライズと言っても過言ではない演出もあり(フォトギャラリーにネタバレあり)、会場を沸かせていた。

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–{4年の積み重ねを感じるデクと爆豪の対決シーン}–

目まぐるしく展開するシーンに目が足りない!

個人的には、仮免試験の試験官を務める目良さんがハマり役。士傑高校の3人もそれぞれ見せ場があり、ライバル校としての存在感を示していた。なかでも、デクたちの同期でトップの実力をもつ夜嵐イナサは、漫画ではコマ割りで強烈さを表現できるところ、舞台では芝居でそれを見せなければいけないだけに、演じる白柏寿大のポテンシャルを感じた。

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そんな新キャラクターとの絡みも描かれる仮免試験は目まぐるしく展開し、同時進行で戦う生徒たちの姿を追うには目が足りない!この感覚がまさにヒロステといった醍醐味のひとつで、何度でも足を運びたくなるのだ。

また、幕間の青山劇場も健在。原作で明らかになった部分もあいまって思わず涙がにじむシーンもある青山優雅だが、幕間で弾ける姿はヒロステならではのもの。客席の期待に応えて毎回プルスウルトラする姿は、サービス精神にあふれている。

4年の積み重ねを感じずにはいられないデクと爆豪の対決

これまで以上にプロジェクションマッピングを駆使し、2次元と3次元をつないだ演出が見事な今作だが、デクと爆豪のバトルシーンだけは雰囲気が異なる。

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ヴィランとの対決が描かれてきたこれまでの3作と違って、命懸けのシーンがあるわけではなく、そういう意味での鬼気迫るシーンは、攻撃的でありながら繊細さをのぞかせる爆豪と、爆豪の感情を受け止めることを決めた骨太な芯をもつデクの対決に集約されていた。

ほぼアナログな演出が、二人の生々しい剥き出しの感情のぶつかり合いを引き立てているが、デクと爆豪を演じる田村と小林が4年をかけて築いてきた関係性があるからこそ、より客席に訴えるものがある。むしろ、そうであってほしいと思うほどの思い入れをもって観劇に臨む、こちらの期待にしっかりと応えるシーンに仕上がっていた。

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そして、仮免試験がストーリーのメインということで学園モノ色がこれまで以上に強かった本作。クラスメイトというポジションの近いキャラクターが増えたら増えただけ、原作で描かれるシーンの取捨選択や演出は難しくなるはず。それでも、1-Aの生徒全員を登場させたのは、4年をかけて築き上げてきたそれを内包できるほどのカンパニー自体の成長と、本作に対しての覚悟なのかもしれないと感じた。

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これはあくまで筆者の想像でしかないが、同じ学校のクラスメイトたちを含めて、切磋琢磨して成長していく二人の姿を描く「僕のヒーローアカデミア」というタイトルへの敬意でもあるように感じる一作となっていた。

「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 最高のヒーローは、4月29日(土)から5月7日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、5月12日(金)から14日(日)まで兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobe、5月19日(金)から21日(日)まで日本青年館にて上演される。初日と千秋楽は、U-NEXTにてライブ配信される(見逃し配信あり)。

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–{「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 最高のヒーロー}–

「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 最高のヒーロー

演出:元吉庸泰
脚本:西森英行
出演:田村心、小林亮太、竹内夢、武子直輝、北村 諒ほか
原作:堀越耕平「僕のヒーローアカデミア」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
音楽:和田俊輔
振付:塩野拓矢(梅棒)

【公演期間】
東京:2023年4月29日(土・祝)〜5月7日(日) 天王洲 銀河劇場
兵庫:2023年5月12日(金)〜5月14日(日) AiiA2.5TheaterKobe
東京凱旋:2023年5月19日(金)〜5月21日(日) 日本青年館ホール

「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage公式サイト
「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage公式サイト。原作は大人気漫画「僕のヒーローアカデミア」(堀越耕平/集英社刊)。公式略称は「ヒロステ」。2023年春、新作公演上演!舞台でも、更に向こうへ!Plus Ultra!!