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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第22回を紐解いていく。
逸馬がかっこいい
万太郎(神木隆之介)と逸馬(宮野真守)があまりに生き生きしていて、彼らの自由を求める運動を夢中になって視聴していましたが、これは政府打倒の運動であることを思い知らされました。
万太郎と逸馬は警官に捕まって牢屋に入れられます。
万太郎が峰屋の当主と聞いて、警察は、結社の活動資金を出していたと疑います。危うく、酷い目に合わされそうになりますが、逸馬が、万太郎は仲間ではないとかばいます。
逸馬が彼を巻き込んだのだから、責任とるのは当たり前だけれど、それにしても漢です。
万太郎と逸馬がアイコンタクトして離れていく場面がピアノの哀調と重なって切ない。
逸馬に助けられた万太郎のやりきれない表情が印象的でした。体力なさそうだし、警察の激しい取り調べには耐えられないでしょう。たぶん、自分のふがいなさと、理想の実践がいかに大変か、痛感していると思います。
この回、万太郎は、「世間知らず」とか「ぼんくら」とか散々な言われようです。
その頃、竹雄(志尊淳)は、走って走って、峰屋にたどりつきます。万太郎が捕まったと聞いてタキは竹雄と共に、高知に向かいます。いったいどれくらいの距離なのか。ググってみましたら現在の佐川町から高知市まで歩いて5時間32分(26.7キロ)でした。今と明治時代では舗装事情の違いがあれど、歩けない距離ではなさそうです。ただ、ご高齢のタキがこの距離を急いで歩くことはできるのかと心配になりますが、江戸生まれだし、足腰、丈夫なのかも。交通機関があまりなかった昔の人は今より歩く力がありそうですから。
タキは警察署長と昔馴染みで、話をつけようとします。これ、神木隆之介さんが主人公の声をやっていた『サマーウォーズ』の人脈すごかったおばあちゃんを思い出しました。
結局、人脈を活かす前に、逸馬のおかげで釈放されてしまったわけですが、警官にずけずけ物申せるのは、署長と知り合いという後ろ盾があるからこそ。
「許さんぞね」と高知弁で一刀両断するところはかっこよかった。
反政府運動、それが理不尽に弾圧される状況を描き、権力をかさにきて横暴なことを言う者にぴしゃり。なかなか痛快でありました。
「何かを選ぶことは何かを捨てることじゃ」
と中途半端に政治にかかわるなと万太郎を諭すタキですが、それがきっと孫の植物愛をいっそう強くすることになると思うと、なかなか皮肉ですね。
この回で印象的なのは、男女平等でない世の中は、女性は運動に賛成しても大目に見られる事実。喜江(島崎和歌子)はそれを悔しく思いながら、「なかのひとらはあてが支える」と差し入れするなどできる限りのことをするしかない。そこを省かず描いているところに誠実さを感じます。
(文:木俣冬)
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–{「らんまん」第5週のあらすじ}–
「らんまん」第5週「キツネノカミソリ」あらすじ
自分の行きたい道を進むと心に誓った万太郎(神木隆之介)と綾(佐久間由衣)は、佐川に帰る前に早川逸馬(宮野真守)の演説会に参加する。思いがけず登壇することになった万太郎は、突如乱入した警官隊に逮捕されてしまう。高知の警察署で厳しい取り調べを受ける万太郎と逸馬。竹雄(志尊淳)から顛末を聞いたタキ(松坂慶子)は自ら高知へ出向き万太郎を救出し、無事に佐川へと連れ戻す。峰屋に帰った万太郎は、植物学の道を進むため東京へ行かせてほしいと、タキにその熱い思いをぶつける。それから時は流れ、春。万太郎は峰屋の面々に見送られ東京へと旅立つのだった…。
–{「らんまん」作品情報}–
「らんまん」作品情報
放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始
作
長田育恵
音楽
阿部海太郎
主題歌
あいみょん「愛の花」
語り
宮﨑あおい
出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか
植物監修
田中伸幸
制作統括
松川博敬
プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか