奈緒が主演する木曜劇場「あなたがしてくれなくても」が、2023年4月13日にスタート。
ハルノ晴による同名コミック(双葉社刊)を原作とする本作は、セックスレスをテーマにした大人の恋愛ドラマ。奈緒と永山瑛太、岩田剛典と田中みな実が演じる2組の夫婦の関係が複雑にもつれていく様を描く。
CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
※話数は随時更新します。
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
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吉野みち(奈緒)はフタバ建設・営業推進部で働くOL。結婚して5年になる夫・陽一(永山瑛太)との仲は良いが、いつの間にか夫は自分に触れなくなった。セックスレスになって2年。みちは人知れず悩みを抱えていた。
自分に魅力がないのか…悶々と思いを巡らせていたある日、みちはつい、会社の後輩・北原華(武田玲奈)に「どこで下着を買ってるの?」と聞いてしまう。聞いてしまったことをごまかそうとしていると、そこに、営業一部の上司・新名誠(岩田剛典)が通りかかる。華は「奥様思い」と評判の新名にときめいている様子だ。
昼休みにみちがデパートの下着売り場にいると、突然華が派手な下着を差し出してきた。華は「そろそろ旦那さんにも刺激が必要」と無邪気に勧める。自分も派手な下着を手に取り、「いつかニーニャ(新名)様の時のために」と積極的な華に、みちは「不倫はダメ」と釘を刺す。新名には楓(田中みな実)という妻がいるからだ。
華に勧められるがままに、下着を買って帰宅したみちを、レスのことでここ数日ギクシャクしていた陽一は抱きしめて、「今日は遅いから別の日に」と約束する。
そして、約束の夜。みちは帰宅途中、会社にスマホを忘れたことに気づく。取りに戻ると、スマホには陽一から“少し遅くなる”と連絡が入っていた。またすれ違ってしまいそうな不安に一人駆られるみち。するとそこに新名が現れて…。
第1話のレビュー
“夫婦”の定義とは、一体何なのだろうか。
「この幸せ者が」
虫の交尾を見てぼそっとつぶやくみち(奈緒)。この一言と曇った表情からすべてを察することができる。一見幸せそうに見えるこの夫婦が、実はセックスレスということを。
愛する人と2年も交わっていなければ、虫に嫉妬してしまう気持ちもわからなくはない。
対する旦那・陽一(永山瑛太)。掴みどころのない雰囲気通り、何も考えていない……ということではなさそうだ。
みちのことは愛しているし、今の生活に満足している。セックスがなくても充分な暮らしを送れているし、これからもそうであり続けたいと彼だけが思い込んでいる。……みちの気持ちに気付いていながら。
「明日しよう」って言っておいて、AVは見る。
約束も平気で破るくせに、「そういうのって約束してするもんじゃないんじゃない?」と悪びれなく言う。
「そんなにしたかった?」「性欲強くない?」に至ってはもう最悪です、はい。
こんな生活を送っていたら、どこかで爆発してしまうのも無理はないーーそんなタイミングで手を差し伸べてくれるのが、みちの上司である誠(岩田剛典)だ。
なにかとみちのことを気にかける誠にも、とある秘密があった。そう、彼もまた、セックスレスというどこにもぶつけようのない悩みを抱えているのだ。
みちの悩みを知り「自分だけじゃないんだ」という安心感から、絶妙に急接近していく誠。
そんな彼からの悲壮感に溢れた抱擁を、振り払えるわけがないのだ。
誠の妻・楓(田中みな実)はというと、絵に書いたようなバリキャリ。プライベートを犠牲にして、仕事に没頭する日々を送っている。
やっと仕事から帰ってきたと思いきや、糸を引く暇もなく会社に舞い戻る。そんな彼女を見て、なんとも切ない表情を浮かべる誠。
「あぁ岩ちゃん、わたしだったらそんな思いさせないのに」……世の女性の大半が思ったことであろう。
奈緒・岩田剛典・永山瑛太・田中みな実という並び、「昼顔」スタッフの再集結、”セックスレス”という波乱と共感を生むテーマ……2023年春クールドラマの中でも郡を抜いて注目せざるを得ない本ドラマ、第1話にして軽々と期待を超えてきた。
「最高の離婚」然り「あなたのことはそれほど」然り「ホリデイラブ」然り、夫婦二組のいざこざを描いた作品はなぜこうも人の心を惹きつけるのか。
また、稲葉浩志による挿入歌「ダンスはうまく踊れない」もたまらない。
ひとつ意外だったのは、”謎の女”による陽一への侵略。完全に、奈緒×岩田剛典、田中みな実×瑛太の交わりになることを想定していたところ、彼女の登場はまさかだった。ただ、ここにさとうほなみをキャスティングすることがもう高レベルすぎて、脱帽です。
みちと誠のこれからはもちろんのこと、陽一と謎の女の関係性の変化、楓の心の矢印、みちの後輩・華(武田玲奈)の本性……気になることがありすぎて、あぁ、すでに木曜日が待ち遠しい。
個人的には、瑛太と田中みな実のあれこれも拝見したいところ。
世の中の夫婦やカップルの”誰にも言えない悩み”が赤裸々に描かれる「あなたがしてくれなくても」、今後毎週、あらゆる人々の心を淀ませていくことでしょう。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話ストーリー&レビュー}–
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
会社で行われたお花見会。吉野みち(奈緒)を心配して連れ出し、2人きりになった新名誠(岩田剛典)は、自分もまた、パートナーとセックスレスになっていることを告白する。みちは夫の陽一(永山瑛太)を、新名は妻の楓(田中みな実)を愛しているからこその苦しみを打ち明けあって、新名は思わず、泣いているみちを抱きしめてしまった。その日、帰宅したみちは、眠れない夜を過ごした。
翌日、出社したみちは、廊下で新名を見かけるが、なぜか避けられてしまい、不安を募らせる。
その夜もみちと陽一のすれ違いは続く。よそよそしい態度をとるみちに、陽一は「みちを大事に思っている」と言うが、みちに触れることはなかった。一方新名も、仕事を家に持ち込む楓に取り付く島がない。みちと新名は、パートナーのいないベッドでやるせない夜を過ごした。
次の日、新名がみちの部署に来て書類の不明点を北原華(武田玲奈)に聞く。2人の微妙な空気を察知した華はあえて仕事のやりとりをさせようとするが、みちと新名は直接話さず、お互いの目を見ようともしないのだった。
新名が母の幸恵(大塚寧々)を見舞って病院を出ると、楓が来た。楓は幸恵に渡すものがあると新名に託し、すぐに行ってしまう。それでも、忙しい仕事の合間を縫って楓が幸恵を気にかけてくれたことが新名には嬉しかった。
一方、陽一が店長を務めるカフェに、近くの工事現場で働いていた三島結衣花(さとうほなみ)がやってくる。もう少しで現場が終わるという三島は、陽一にある提案をして…。
第2話のレビュー
この一週間、みち(奈緒)と誠(岩田剛典)の”その後”に、どれだけ胸を高鳴らせていたことだろう。
第2話は、誠視点から物語がスタートする。
疲れた妻のためにカモミールティーを淹れたり、栄養バランスに細心の注意を払いながら料理を作ったり。ファッション雑誌の副編集長として働きに働く楓(田中みな実)をどこまでも献身的に支える、絵に書いたような優しい夫。
だが、そんな彼の優しさも、時には裏目に出てしまっているようだ。
極度の責任感とプレッシャーから、気持ち安らぐ人のもとではつい緩んでしまう気持ちはわかる。だが、それが強い衝動となって表れてしまっては、二人が一緒にいる意味を考えてしまうし、なによりも誠が不憫で仕方ない。
その反面、妻のことを思うがあまり、常に下手下手に出る誠の姿にイライラしてしまう楓の気持ちもわからなくはない。
これはもう、完全に夫婦のバランスが崩れてる。
吉野夫婦と新名夫婦の関係性は、”セックスレス”という共通点はあれど、似て非なるものだ。
なんでもない日に一緒に晩酌をしたり、暖かい季節にはピクニックに行ったりと、日常的なコミュニケーションは取れており、夜の関係を除けば充分に幸せそうな吉野夫婦。
対して、新名夫婦は一見誰もが羨む美男美女な理想の夫婦だが、コミュニケーションらしいコミュニケーションは取れていないように思える。会話は基本、LINEかホワイトボードで業務連絡のみ。結婚している意味は一体どこにあるのだろうと、心底疑問に思ってしまうほどだ。
せっかくの結婚記念日も、直前に仕事を理由にドタキャンしてしまう楓。
ただ、同性から見ても、彼女の気持ちも痛いほどにわかる。
人生において、結婚・出産・育児というハードルがある中、目指すべきキャリアを築いていくのは難しい。彼女も今がまさに正念場であり、誠もそのことを理解した上で生活を共にしている。
それでも、それでも。埋められない寂しさともどかしさが渋滞してしまうのは致し方ない。
きっと誠は、久しぶりに愛を確かめ合うことができると心から思っていたはずだ。
そんな中、「今日だけでも頑張ることはできない?」だなんて。頑張らないとできないセックスなんて、いらない。本人が一番わかってるはずなのに、ここまで言わせてしまう精神状態をひどく心配してしまう。
挙句の果てには「いいよ、それで誠が満足するなら」と服を脱ぎ捨てる楓。はい、ゲームオーバーです。
一方で、誠と楓の溝が深くなると同時に、みちと陽一(永山瑛太)のもとにもさらなる衝撃展開が訪れていた。
予想通り、さとうほなみ演じる謎の女・三島がやってくれました。
ガードマンを辞めて、陽一のお店で働きはじめた彼女。絶対コーヒー目当てじゃなくて陽一目当てでしょ、ねぇ。
カフェのオーナーである高坂(宇野祥平)が、奥さんにプレゼントする鞄がどちらがいいか聞いた際、若い彼女の場合と奥さんの場合の2パターンで回答した三島。この振る舞いを見た時、完全にやり手だと思った。「私、本命でも愛人でもどっちでも大丈夫です」という、意思表示に感じられた。
三島の掴みきれない魅力にするすると導き寄せられた陽一は、ある夜、彼女をバイクで送り届ける。バイクで二人乗りをすること自体にいやらしさなんて一切ないのに、夜景に包み込まれる二人の姿はほぼ前戯だったように思えたのは、私だけだろうか。
その後の展開は言うまでもない。
強いて言うなら、キスだけで留まった陽一を少しだけ褒めたい。
だが、のちにとった陽一の行動に、それはもうしっかりと呆れ果てた。
あの夜にタイトルをつけるなら、「罪滅ぼしの花とセックス」が最適だろう。
ミステリアスな雰囲気を醸し出してるにもかかわらず思考回路が単純すぎる陽一に、少し嫌気が差した。いや、かなり嫌気が差した。
それでいて、花もセックスも、受け取っては無邪気に喜んでいるみちのことが本当に本当に不憫だ。
そんなときに限って、誠はみちに助けを求める。
でも、みちは贖罪にまみれたベッドの中。
なんだかもう見ていられなくて、一度テレビの電源を消してしまった。この現実から、目を背けたくなった。
……ドラマなのに、感情移入しすぎていることは自覚しています。
さて、来週・第3話は、いよいよ陽一と楓にフィーチャーされる模様。
陽一は見えはじめてきているが、楓の本心が気になるところ。
愛にセックスは必要なのか、彼らそれぞれの思いや考えから紐解いていきたい。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話ストーリー&レビュー}–
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
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吉野みち(奈緒)は吉野陽一(永山瑛太)から花束をプレゼントされ、2年ぶりに陽一から求められたことに高揚感を感じていた。しかし、幸せの中に一抹の不安があった。
その頃、新名誠(岩田剛典)は、新名楓(田中みな実)と結婚記念日を過ごそうとしていた。新名は、セックスレスの戦友のみちに背中を押され、楓に思いを伝えようとしたが、楓は仕事で待ち合わせしたレストランには間に合わなかった。かなり遅れてホテルの部屋にはきたものの、仕事のことが頭から離れず、疲れも感じていた楓に、新名は結局、拒絶されてしまうのだった…。ショックを受けて呆然と街を歩く新名は、みちへ電話をかけるが、みちは電話に出なかった。
翌日、陽一とのことに不安が拭えないみちは、北原華(武田玲奈)に「男性が突然プレゼントをくれる時はどういう時か?」と尋ねると「見返りが欲しい、後ろめたい時」と返されて、陽一に後ろめたい事があるのか?とさらに不安になる。
帰宅途中、偶然、新名と一緒になったみちは、男性の突然のプレゼントのことを聞いてみると、「それは大切な人を喜ばせたいという愛情表現だ」と返される。新名の言葉に安心したみちは、セックスレスに進展があった事を報告する。微笑みながらお祝いする新名だが、みちはその表情にかげりがあることに気づいた。
一方、陽一が働くカフェは、三島の接客が評判になって繁盛しはじめていた。陽一の働きぶりを見ていた高坂仁(宇野祥平)は、陽一に「お前、なんか変わったよな」と話す。その陽一の視線は、2人の会話を聞いていた三島結衣花(さとうほなみ)と交わる。あの日、みちと最後まで出来なかったことが不安な陽一にも、みちに対する複雑な思いがあって…。
第3話のレビュー
純粋な愛と欲望以外の要素が入り混じったセックスは、さらなる罪悪感を生む。
結局、最後まで達することができなかったのだから尚更だ。
他の女性としてしまった後ろめたさと、意図せず高まってしまった性欲をみち(奈緒)にぶつけた陽一(永山瑛太)の、その後のみちへの態度はあまりにも解せない。
セックスレス解消に向けて一歩前進できたとご満悦なみちに対して、なるべく一緒にいる時間を少なくしようとする陽一。この態度の変化に、さすがのみちも気が付く。
まったく男というものはあまりにも単純でどうしようもなく、ため息しかでない。
一方で、いよいよ破綻の道への扉を開いてしまった誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)。
希望に満ち溢れるみちに対して打ち明けられるわけもなく、誠はより一層の行き場のないもどかしさを抱え込む。
この状況で、冷蔵庫に残るタッパーを見ることほどつらいことはない。せめてこの夜くらいは旦那が作ってくれた晩ごはん、食べようよ楓。
糸がぷつんと切れてしまった誠は、仕事をもほっぽり出して海辺で黄昏れる。仕事に対しても家庭に対してもどこまでも献身的な彼なのだから、一日くらいズル休みをしたって許されるはずだ。
そんな誠に寄り添うのは、楓ではなくみちだった。
ずっと抑えていた感情が、堰を切ったように流れ出す。これはもうただ寂しさを埋めているだけなのではなく、しっかりとみちに惹かれていることが見て取れる。
水族館で子供のように無邪気にはしゃぐみちと、そんな彼女に素直に気持ちを伝える誠。どんどん心の距離が近付く水族館で、そっと、確実に、一線を越えた。
その後の車中でのキスは、静かながらも情熱的で、二人のこれからが示されたように思えた。
同刻、陽一と三島(さとうほなみ)はさらなる深い関係に転じていた。この二人もあとは時間とタイミングの問題だと思っていたが、職場、しかも喫茶店での交わりはさすがに刺激が強い。
「一回目のキスが分岐点」ーー三島の言葉が深く深く胸に刺さる。
陽一と三島にとっても、そしておそらくみちと誠にとっても、”そちら側”になってしまったのだろう。
ここまできてしまうと、誠と楓の間にある溝は深くなるばかりだ。
誠の変化を察知して歩み寄る楓だが、時既に遅し。カーナビの履歴で疑惑が確信に変わる。
熱で苦しむみちは、陽一が仕事を休んで自宅に戻ってきていることにも、誠がお見舞いにかけつけようとしていることにも気付くすべがない。
このままじゃ二人が鉢合わせてしまう……!一体どうなっちゃうの……!という絶妙なところで、次回予告。
いやぁ、非常に感情に振り回された第3話であった。
セックスがなくても充分に幸せだと本気で思っている陽一と、仕事のことを考えるとセックスなんてしている場合ではないと思っている楓。
セックスレスという状況は非常に理解し難いが、楓の気持ちはまだわかる。実際、誠以外で性欲を発散しているわけでもないし、仕事に対して愚直に向き合いすぎていてそんな余裕は1ミリもないのだから。
ただ陽一の場合は、みちのことを愛していてセックスがなくてもいいと思っているにもかかわらず、他の女で性欲を発散する。結局、男は男なのだ。
と言いつつも、職場に三島みたいな魅力的な女性がいたら男もそりゃ燃えたぎってしまうのも致し方ないと、一応陽一の肩も持っておこう。
にしても、抱かれた翌日に奥さんの話を人づてで聞くことほどしんどいことはない。きっと三島は「あー、わたし別に奥さんとかいても気にしないので大丈夫です、ちゃんと割り切ってるので。」などと思っているタイプだと想像しているが、それにしてもこの現実を突きつけられるのはしんどい。
と同時に、陽一の感情の起伏が謎でしかないのだが、世の男性諸君、いかがでしょうか……。
第4話、いよいよみちと誠が禁断の関係に突入しそうな香り。ここまできてしまえばあとはもうジェットコースターのように堕ちていくことでしょう。
田中みな実演じる楓が、いつか「M 愛すべき人がいて」の礼香のように豹変するかもしれないーーそんな悪い楽しみ方も、本ドラマの醍醐味なのであります。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話ストーリー&レビュー}–
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
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2人で水族館に行った帰りに、想いが溢れてキスをした吉野みち(奈緒)と新名誠(岩田剛典)。一方、みちの夫、吉野陽一(永山瑛太)は三島結衣花(さとうほなみ)と衝動的に体を重ねていた。
翌日、熱を出して寝込んでしまったみち。心配しつつも職場のカフェへと向かった陽一だったが、昨夜のことの罪の意識もあり、看病のために引き返す。一方、みちが体調を崩したことを知った新名もまた、彼女の元へとタクシーを走らせていた。
自車のカーナビに「さざなみ水族館」という履歴を発見した新名楓(田中みな実)は、その夜、夫の新名に 水族館へ行ったのかと尋ねる。新名は、みちと一緒に行ったことを隠して「仕事が大変で、急にサボりたくなった」と答えるが、楓は、結婚記念日に自分が夫を拒んだことが原因なのではないかと思い、2人の間には重苦しい空気が流れる。
その日の夜遅く、少し体調を取り戻して目が覚めたみちは、日中、陽一が看病してくれた痕跡を眺めながら、それでも新名に心奪われている自分を自覚してしまう。
翌朝、病み上がりのみちを心配して駅までバイクで送っていくという陽一。しかし、みちは髪が崩れてしまうから…と断る。うまく断れたと安堵するみちに対して、陽一は、三島とのことが知られたらと不安をつのらせる。
出社したみちは、新名に会いたいと思うのに、まるで中学生のように、実際に会ったらうまく話せない。それは、新名も同じで、二人の心は、確実に接近していた。
仕事中、三島と2人きりになった陽一は、「先日のことはなかったことにして欲しい」と頼む。三島は自分もそのつもりだったとあっさり答え、陽一は驚く。
みちが帰宅すると、陽一が料理をして待っていたが、その優しさにみちは戸惑いを感じてしまう。そんなみちの目前には社員研修旅行が迫っていた。そこには、もちろん新名もいて…。
第4話のレビュー
罪悪感を覚えた男は、異様なまでに優しくなる。
急遽休みを取って看病をしたり、病み上がりを心配してうどんを作ったり、しつこいまでに迎えに行くと言い張ったり、普段取らない行動が目立つ陽一(永山瑛太)。
そんな陽一の変化に、みち(奈緒)も気付かないはずがない。
“浮気”というキーワードにやけに敏感になっている陽一は、一夜だけ肉体関係を持ってしまった三島(さとうほなみ)に対してわかりやすく距離を置く。
「この間のことなんだけど、なかったことにしてもらえないかな」
あの感じだと二人の関係は続くと思っていたが、どうやら陽一側は気の迷いだったようだ。
…三島はすっかり、陽一のことが気になって仕方がないみたいだが。
それにしても、みちが研修旅行で不在の日に「明日って休みだったよね?なんか予定ある?もしよかったらなんだけど…」と声をかける陽一、あまりにもズルすぎる。あの出来事とこの導入は誰でも期待するってば、ねぇ。
一方で、誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)の溝は深まり続ける。
楓に対する気持ちの変化とみちに対する気持ちの変化が浮き彫りになればなるほど、誠はもう後戻りはできない。
「誠はわかってくれると思ってたから」
相変わらずエゴな楓の思いが、今の誠にとっては痛い。
それぞれの思いが交錯する中、開催される研修旅行。
あの夜のキスを経て、触れそうで触れられない絶妙な距離感を保つみちと誠にとって、絶好な機会と言える。
宴会後の温泉上がり、偶然落ち合い、なんの違和感もなくみちの部屋で二人きりになる。
そんな状況でお互いの思いが溢れ出ないわけもなく、激しく抱き合うふたり。
「ずっとこうしたかった…」
思わず漏れ出た誠の本音、絶大なる破壊力。
ついに交わるかというタイミングで、突如としてみちの目から流れる涙。
それは、愛される喜びからきた涙かと思いきや、陽一への愛を再認識してしまった涙なのであった。
「もうあなたに、指一本触れない」
ここで流れ出す「Stray Hearts」、あまりにも120点。
「だから、今までみたいにそばにいてほしい」
「俺にはあなたが必要なんです」
セックスレスという悩みを抱えながらも、その解決策がセックスではないことに、愛の歪みを感じる。
大きな進展がありそうでなかった第4話だったが、みちと誠の絆が強まれば強まるほどに”残された側”の思いは比例するように大きくなっていく。
比較対象が発生してからようやくその人の大切さが身に染みるだなんて、人間というものはどこまでも愚かだ。
妻以外の人を抱いたことにより気付けた愛と、他の女の存在を察したことにより気付けた愛。もっとはやくに気付けていればーー
次週、みちと楓の直接対決の予感。怪演の女王・田中みな実演じる楓、ここでどう出るのか?ストーリーの展開と演技に期待高まる他ない。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話ストーリー&レビュー}–
第5話ストーリー&レビュー
第5話のストーリー
研修旅行の夜、吉野みち(奈緒)は新名誠(岩田剛典)と部屋で2人きりになる。金平糖で星座をつくって遊ぶ二人だったが、無邪気に笑うみちに愛おしさを覚えた新名は、みちを抱き寄せた。そのまま、みちも身を任せ、こうやって愛されることを望んでいた…と実感するが、ふと気づくと涙が流れていた。それに気づいた新名は体を離す。どんなに新名に惹かれていても、みちの心の中に夫・吉野陽一(永山瑛太)の存在が消えていなかった。翌日、帰りのバスを降りたみちだが、迎えに来るはずの陽一は来れなくなる。そんなみちを呼び出した新名は、オリオン座と似た形の砂時計をプレゼントし、もう指一本触れないから今までみたいにそばにいてほしいと話す。ダメだとわかっていながらも、新名の側にいると応えてしまうみち。
陽一は、三島結衣花(さとうほなみ)がコーヒーポットを倒して珈琲を台無しにしてしまったせいで、みちを迎えに行けなくなる。本当は、みちに流星群を見せに連れて行こうとしていたのにできなくなってしまって申し訳なく思う三島だが、「こんなことじゃみちは怒らない」と言う陽一は、カフェの片隅の桜のジクソーパズルを見て、昔を思い出す。出会った頃から変わらず、いつもみちが陽一に合わせてくれていた。だから、そんな2人のバランスはこれからも崩れることはないと思っていたのだが…。
新名が帰宅すると新名楓(田中みな実)が買ってきたオードブルを並べて待っていた。楓は昨日の朝、ちゃんと話せなかったことを謝り、新名を蔑ろにしているわけではないと言う。新名は楓の仕事への思いを理解していると返すが、料理には手をつけずに寝てしまう。楓は自分が新名に対してしていたことを返されたように感じるのだった。
次の日、みちが北原華(武田玲奈)とランチに出かけると、新名が通りかかる。すると、華が新名を誘って3人で食べることに。そこに、一人の女性が現れ…。
第5話のレビュー
みち(奈緒)と陽一(永山瑛太)、誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)、そして、陽一と三島(さとうほなみ)。それぞれの関係性が静かに、大きく変化しはじめた。
みちと陽一の出会いは、陽一が働く喫茶店だった。
お客として足繁く通っていたみちが、どうやら惹かれていたらしい。
今と変わらないアンニュイな雰囲気に、気だるい色気が増す金髪メッシュ。
加えて、お客に対してナチュラルにタメ口で接客するあの感じ、沼でしかない。
あの大人しそうな見た目で、若干オドオドしながらも、陽一に声をかけるみち。
「お仕事終わったあと、時間ありますか?」
「なんで?」
「連絡先とか、そういうの…」
「好きなの?俺のこと」
確信した。陽一は、生粋の人たらしなのだと。
人に興味がなさそうなのに、誰しもがいつのまにか彼のペースに巻き込まれていく。
オーナーの高坂(宇野祥平)や三島だってその一例なのである。
対して、誠は正反対だ。
いつだって自分の感情を押し殺して、楓に尽くしてきた。
仕事に対しても常に誠実、みちに対しても、無理やり一線を越えようとすることはない。
その反動が今、押し寄せてきている。まるで、子どもの反抗期のように。
誠の変化に気付き、これまでしてきたことを挽回しようと動く楓。
誠よりもはやく帰ってくることなんてほとんどなかった楓が、研修旅行帰りの誠を豪華な食事を用意して迎えたり、最低限の仕事を早々に終わらせてリモート勤務に切り替え家事を行ったり。
頭の中に全力で鈴木雅之の「違う、そうじゃない」が流れ出す。違う、そうじゃない。
誠から見ても「なんで今さら」と思うのも無理はない。
楓の好意で誠が忘れたお弁当を会社に届けるも、逆効果。
不倫相手であるみちと鉢合わせてしまったのだから、尚更だ。
妻・楓を目の当たりにしたみちは、これでもかというほどに落ち込む。
自身にパートナーがいても、相手にもパートナーがいるとわかっていても。事実上の本命が存在しているという事実とそれを直接目に入れるのとでは、まったく異なる。
そんなみちと楓の関係に気付いていた後輩の北原(武田玲奈)の観察眼と忠告には、ただただ脱帽した。
「真面目な二人がそっちいっちゃうんだもんなー」
「先輩も新名さんもラブラブ光線出まくりだし」
「気をつけてください。日の当たらない恋は覚悟が必要なんです」
「奥さんに会ったくらいで動揺するならやめたほうがいいですよ」
「私は、先輩に負けた。それだけです」
……あなた、本当に23歳?
学生時代に一体どんな恋愛をしてきたんだ、北原。
心強すぎて、男前すぎて、友だちになりたい。
一見大胆に見えるが実は繊細な三島にも、このくらいの気概を持ってもらったほうがいいのかもしれない。
たまにいる、奥さんのいる人しか好きになれないタイプーー三島もその一人なのだろう。
過去にも不倫を経験しており、相手都合で終止符を打たれた経験のある彼女は、今もなお癒えない傷を抱えているように見える。
陽一の心が離れていけば離れていくほど、どんどん好きになる。気持ちはわかる、非常に気持ちはわかるが、あぁ三島、あなたにも幸せになってほしいと心底思う。
そして、なんとも酷だが、三島との出来事をキッカケにみちに向き合いはじめた陽一。
姉・麻美(紺野まひる)の子どもらを預かり、みちともども戯れる姿は、まるで彼らの将来の姿を垣間見た気分にもなった。
「結婚してるからってあんまりあぐらかいてたら、痛い目に遭うよ」
離婚する予定の麻美の言葉は、陽一の胸に深く深く届いていたように思う。
そんな陽一の変化を受け取ったみちは、誠への思いに蓋をする。
砂時計の落ちていく真ん中ーー現在しか見ていないみちと誠の感情は一過性のものだと割り切り、過去と未来がある陽一と現在を乗り越えていくことを決意するみち。
……もう、誠の切なすぎる表情が脳裏に焼き付いて離れない。
ここにきて、今後、誠が暴走しないかどうかが若干不安だ。
誠実ではあるものの、あまりにもみちに執着しすぎているように見受けられる。一歩間違えたらストーカーと化してしまうのでは……まぁ、岩ちゃんにストーカーされるだなんてありがたいことなのだが……(公私混同)
そんなことはさておき、次週の”地獄の焼肉会”が今から楽しみでしょうがない。
みちと陽一と三島の3人で焼肉ーーみちと楓の鉢合わせ以上に最悪な組み合わせである。
「昼顔」よりもほのかに静かに進んでいく不倫物語、一体どうやって終止符が打たれるのだろうか。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話ストーリー&レビュー}–
第6話ストーリー&レビュー
第6話のストーリー
吉野みち(奈緒)は新名誠(岩田剛典)に元の同僚に戻ろうと別れを告げた。新名との関係は今しか見ていない関係で、吉野陽一(永山瑛太)とは過去も未来もあるから苦しい。でも、セックスのことも含めてみちと向き合うと言ってくれた陽一にちゃんと向き合わなくてはと思ったからだ。だが、陽一の心にはある不安が渦巻いていた。
一方、新名はみちからの突然の別れに戸惑う。新名にとってみちは、触れ合うことがなくてもそばにいてほしいと願うほど、必要な存在だからだ。しかし、妻・新名楓(田中みな実)は離れていこうとする新名を必死に繋ぎ止めようと努力し始めていた。
みちと新名の関係を知っていた北原華(武田玲奈)は、みちから新名と別れたと報告を受けるが、みちの微妙な表情を感じ取っていた。みちと華が会議の片づけをしていると新名が会議室に入って来た。次の会議の為に来たという新名だが、華は、新名はみちと話がしたいのだと察知して、二人を残して会議室を出ていってしまう。新名はもう一度話したいと言うのだが、みちは「夫と向き合うことに決めた。夫婦だから」と突き放す。どうしたらみちを忘れることが出来るのか、悩む新名に、ヘッドハンティングのメールが届いて…。
陽一のカフェでは、オーナーの高坂仁(宇野祥平)が三島結衣花(さとうほなみ)の歓迎会をやろうと提案する。夜を迎えるのが憂鬱な陽一は、珍しく参加するといい、みちに帰りが遅くなることを連絡しようとすると、そこにみちがやって来る。図らずも、みちと三島が会ってしまい、陽一は気が気でない。
さらに、高坂の誘いでみちも三島の歓迎会に行くことになってしまう。そんな緊張感漂う歓迎会で、3人の事情を知らない高坂は、シメに何を頼むかで浮気度がわかる心理テストがあると言い出して…。
第6話のレビュー
「あなたがしてくれなくても」第6話、はやくも折り返し地点。
あくまでもこれはドラマ、そして当事者ではないはずなのに、異常なまでにやるせない感情が掻き立てられる回となった。
突如としてみち(奈緒)に別れを告げられた誠(岩田剛典)は、もはやこの世の終わりかのような表情をして日々を過ごしている。
そんな彼に健気に尽くす楓(田中みな実)が愛しくもあり不憫だ。
一方で、一見”いい感じ”なみちと陽一(永山瑛太)。
お互いがお互いに相手に対して罪悪感を抱えながらも、必死に向き合おうとしていることが生活の中から見て取れる。
ここらで少しばかり、夫婦の呪縛について考えてしまった。
夫婦=永遠の定義は、果たして正しいのか。
夫婦とは言えども、一枚の紙切れで契約が結ばれた関係。一昔前は離婚に対してネガティブイメージが強かったかもしれないが、今の時代、バツがついていることくらいなんのその、と思う。
「ブラッシュアップライフ」のようにやり直せるのであればかまわないが、何十年と過ごす一度きりの貴重な一生、多少は自分の気持ちに正直に生きてもいいのではないか。というのが著者の意見だが、世の中のみなさん、いかがでしょうか。
さて、本題に戻ろう。
少しでも多くのコミュニケーションを取ろうと仕事帰りに喫茶店に立ち寄るみち、ついに三島(さとうほなみ)と初対面。
三島の心情、お察しします。
今夜は三島の歓迎会を開催予定とのことで、そのままみちも参加することに。
なるほど、これが”地獄の焼肉会”か……って、高坂さん(宇野祥平)いるんかーい!4人だと地獄感が薄れてしまいますよ、高坂さん。
と思いきや、高坂から飛び出る地獄のような質問。
「焼き肉の締めにはなにを食べる?」
なにを選ぶのかで浮気度がわかるという心理テストらしい。
従業員と一夜限りの肉体関係を持ってしまった男、精神的にいえば結果的に浮気をした女、なにかと浮気に縁がある女。
”浮気”というキーワードを耳にした瞬間の動揺、みなさん隠しきれておりませんが、大丈夫ですか???
なんとかこの話題は回避したものの、”嘘をつかれるか正直に言われるかどっち派論”に話は飛び火する。
「上手に嘘をつかれる方が楽。正直者には傷つけられるんで」と、三島。「本当のことを言ってほしい」と、みち。
この何気ない一言が、後に衝撃の展開を生むだなんて、誰が予想していただろうか……。
三島は過去の不倫関係を三年越しに訴えられ、楓の一方通行な思いと健気な努力に対して誠は無の感情、熱海旅行にウキウキしているみちを横目に陽一は夜のプレッシャーで気が気じゃないーー果てなく静かにカオスな状況は続いていく。
そして熱海旅行当日、事件は起きる。
「もしまたできなかったら」
このことばかりが頭によぎる陽一は、ついに限界に達する。
「みちだけできないなんて」
「一度だけみちのこと裏切った」
……陽一よ。なぜそこまで言う必要が……。
一度きりの過ち、賛否両論あれど黙っていればいいことを、彼は口にしてしまった。
「本当のことを言ってほしい」と、みちが言ったから?にしても、言って良いことと悪いことがある……言いさえしなければ、きっとこの二人は良好な関係に戻ることができたはずなのに。
あまりにもショックを受けたみちは、思わず家を飛び出す。
偶然にも前日に「最後に会いたい」と誠から連絡がきていたことだけが、彼女にとっての支えだった。
足元がおぼつきながらも走り、いつもの場所にたどり着くも、その瞬間に崩れ落ちるみち。
「困らせてごめんなさい。本当に同僚に戻ろう」
そうして誠が手にした花束は、みちのもとではなく楓に届いたのであった。
衝撃的なラスト、みちがあまりにも被害者ヅラをしすぎているという意見もチラホラ見かけたが、一線を越えていない彼女からすると、愛する陽一のその事実はあまりにもつらいのではないのだろうか。
なによりも、奈緒と永山瑛太の演技にリアリティがありすぎて、画面越しに嗚咽してしまったことはここだけの話である。
次週、「妻と妻の直接対決」「地獄の焼肉会」に続いて、「本気の修羅場」が勃発する予感。
みちの変化に誠は気付くのか?気付いた場合、誠はみちのもとに舞い戻るのか?二人の行く先にさらなる期待を込めながら、待ちぼうけようと思う。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話ストーリー&レビュー}–
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
久しぶりに夫婦で旅行に行こうとした日、吉野みち(奈緒)は吉野陽一(永山瑛太)から、みちとだけセックスが出来ない悩みだけでなく、一度だけ裏切ってしまったと告げられる。ショックを受けたみちは家を飛び出し、あてもなくさまよっているうちに、抑えていた気持ちが溢れて、「ずるいとわかっていても新名誠(岩田剛典)に会いたい」と思い、走りだしてしまう。
「明日10時に待っています。これで最後にします」と新名がLINEをくれていた約束の場所へと向かうと、そこに新名の姿はなく、代わりに「元の同僚に戻ろう」というLINEをみちは受け取る。新名は、妻の新名楓(田中みな実)とやり直そうとしていたのだ。
「明日10時に待っています。これで最後にします」と新名がLINEをくれていた約束の場所へと向かうと、そこに新名の姿はなく、代わりに「元の同僚に戻ろう」というLINEをみちは受け取る。新名は、妻の新名楓(田中みな実)とやり直そうとしていたのだ。
その頃、相談相手がいないみちは、新名との関係を知る北原華(武田玲奈)に付き合ってもらっていた。みちは、セックスレスだったこと、その為に自分は色々と諦めずにやってきたこと、自分がレスで悩んでいたことを知っていたのに、陽一は他の人とするなんて最大の裏切りだ!と華に愚痴る。すると、華は浮気がバレた陽一も罪だが、みちだけが被害者なのかと言って帰ってしまう…。
第7話のレビュー
世の中の男女の、”浮気”の定義が知りたい。
三島(さとうほなみ)と一夜限りの肉体関係を持った陽一(永山瑛太)と、精神的に助けを求め合い支え合ったみち(奈緒)と誠(岩田剛典)。
どちらのほうが罪が重いのか、なにをもって”被害者”というのか。
それは、その人がなにを大事にしているのかによって、大きく変わってくるものだ。
ただ、著者の場合は、”精神的依存”の方が罪が重いーーそう思えてならない。
だって、性欲はある程度であれば代替が効くが、精神的なつながりは”その人”以外考えられなくなってしまうのだから。
「自分の心に刺さってた杭抜いて、代わりに奥さんにそれ刺しただけでしょ?」
「奥さんに刺さったその杭、どうなるかわかります?」
「今度はそれ、不倫相手の女に突き刺すんですよ。」
禁断の告白をしたことを打ち明けられた三島のこの言葉たちが、深く深く胸に刺さる。
まったくもって正論すぎて、ぐうの音もでない。
そして、彼女と同じくらいすべてを達観している女性がもう一人。後輩の華(武田玲奈)だ。
メインディッシュのカラオケに、ミックスピザにポテチにハニートースト、山盛りポテトフライをトッピング。さぁ、話を聞く体制は充分に整った。
「先輩一人だけが被害者なんですかね?」
全視聴者が第6話ラストで思っていたことを代弁してくれた彼女。
「私とはしないで他の人とするなんて」
……肉体的な依存よりも、精神的な依存のほうがよっぽど重罪だ。
それにしても、突き放したフリをして温泉旅行のお土産を持たせたり、「え〜先輩、温泉旅行楽しかったですか〜?」とあざとい発言したり、「旦那さんってそんな悪いことしました?」と真意を突いたり。
はい、第5話ぶり2度目の、『あなた、本当に23歳?』。華ちゃん、あなたには本当に脱帽です。
最初は自分のことを被害者としか思えなかったみちも、過去の自分を振り返るにつれて、陽一も被害者だったのだと気付く。
悩む陽一、責めるみち。
そう、陽一は、みちから逃げたかったのだ。
それはきっと愛情とは別の感情であり、むしろ愛情があるからこそ逃げたくなってしまうのだろう。
「許さないでいいから、それでもここにいてほしい」
こんなこと言われたらもう戻るしかないよ、陽ちゃん。
さて、三島と華の凛とした強さが目立つ中、いよいよ楓(田中みな実)が本気を魅せてきた。
誠の掴めない雰囲気に若干の違和感を感じていた楓は、ふと”カーナビのとある履歴”のことを思い出す。そう、水族館だ。
「誠、浮気してるでしょ」
躊躇なく本人に突きつける楓。
そして、肉体的にではなく、精神的に”浮気”していることを打ち明ける誠。
「もし、体だけの関係なら許せたかもしれないのに」
……ほらやっぱり、精神的依存の高い浮気の方がよっぽど罪深い。
誠のスマホを盗み見る楓は、とあるものを見つけてしまう。
ガラス越しにみちが写る、水族館でのあの一枚。
……誠、なぜこれだけ消さなかったのだ……。
いよいよ会社に乗り込む楓。
みちを見つけるなり、それはもうまっすぐに「夫と浮気してますよね」の一言。あまりにも恐ろしい。
そしてなによりも、次回予告映像の悍ましさ。あんなにも怖い次回予告、見たことないです私。
もうおそらく、誠が楓のもとに戻ることはないだろう。
そんな中で楓はどのような行動に出るのか、気持ちに変化はあるのか。
はたまた、みちの気持ちは陽一、誠、どちらに傾くのか。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{第8話ストーリー&レビュー}–
第8話ストーリー&レビュー
第8話のストーリー
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吉野みち(奈緒)が昼休憩で会社を出てきたところに、新名楓(田中みな実)が近づいてくる。「夫・新名誠(岩田剛典)と浮気してますよね?」と詰め寄られ、二人で話をするためにカフェに向かうことに。長い沈黙が続いた後、楓は落ち着いた様子で浮気について問いただす。ただ謝ることしか出来ないみちにイラ立ちを覚えながらも楓は、新名との関係の経緯を聞いていく。みちは、夫の陽一(永山瑛太)とのことで悩んでいて新名に相談に乗ってもらった、と話すが、「みちさえいなければうちは何の問題もなくうまくいっていた」という楓の言葉に、おもわず自身の悩みは夫とセックスレスだと話してしまう。動揺した楓は「たかがレスごときで」と返すが…。
陽一のカフェでは三島結衣花(さとうほなみ)がかつての不倫相手の妻、岩井鞠子(佐藤めぐみ)と対峙していた。鞠子は、三島に慰謝料を請求する内容証明を送っていた。三島は、3年前の不倫を謝り、その後は一度も会っていないと言うが、鞠子の怒りと悲しみは想像を絶するものだった。この3年間、心から笑ったことも、怒ったことも、夫に触れたこともないという鞠子の言葉は、三島だけでなく、聞いていた陽一にも深く突き刺さる。
みちは陽一に新名との事を話せていない後ろめたさから、家に帰りたくなくて、残業を買って出たりしていた。北原華(武田玲奈)はそんなみちの気持ちを見透かし「本当のことを言っても旦那さんを傷つけるだけ。それが浮気した罰なのだから、隠したまま一生背負っていくんです」だと厳しい言葉をかける。
一方、みちとのことを楓に知られてしまった新名も、ある決意を固めていて…。
第8話のレビュー
ついに、妻VS妻。
冒頭から、定点カメラを起点に繰り広げられるそれは静かな地獄絵図。
このタイミングで登場する砂時計、控えめに言って粋である。
そんな中、楓(田中みな実)がみち(奈緒)に突きつけた一言。
「あなたさえいなければ、うちはなんの問題もなくうまくいってたのに」
ーーいや、それは違う。これだけは断言できる。
楓が順風満帆と思っていたそのとき、誠(岩田剛典)はどれほど悩んでいたのか。
傍から見ても自分本位にしか生きていなかった楓から飛び出したこの一言には、少し呆れてしまった。
拒否していた側と拒否されていた側。
禁断の二人が交わることで、まるで自分のこれまでの行動すべてを否定されているかのような気分に襲われる楓。だが、これは図星だからこそであり、自身の身勝手さを認めざるを得ない。
案の定、”セックスレス”という言葉を聞いたその瞬間、楓の表情が曇る。
その後の編集長(MEGUMI)からの一言が凄まじかったので、ここに記しておきたい、
「女ってさ、なんで浮気されると相手の女に怒り向けるのかね?旦那とやり直したいんだったらさ、女じゃなくて旦那と向き合えばいいじゃない?」
……おっしゃる通りすぎる。
一方その頃、陽一(永山瑛太)の喫茶店でも地獄絵図が繰り広げられていた。
三島(さとうほなみ)と元不倫相手の奥さんの直接対決。それを見守る元浮気相手。こんなことを言っては何だが、少しばかり滑稽である。
人の痛みを初めて知った三島は、賠償金を支払う覚悟を決め、陽一のもとからも離れることを決意する。
いい女だったな、三島。これからどんどん、幸せになってほしい。
そんな中、自身が浮気していたことに負い目を感じ続けるみち。
「浮気した罰は、一生背負っていくこと。」
華(武田玲奈)よ、毎度名言をありがとうございます。
一つ嘘をつくと、どんどん嘘が増えていく。まさに負の連鎖。
でもここで打ち明けてしまえば、あのときの陽一と同罪だ。背負えないのであれば、浮気なんてしてはならない。
陽一と向き合わなければと思えば思うほどに、心の何処かで誠への想いが募っているみち。
それは誠も同様で、必死に理性を保とうとしていることが見て取れる。
そんな状態で、急遽仕事で夜のオフィスに二人きり。
「これからも、お互いがんばろう?」
交わされる、プラトニックな握手。
この二人は本当に終わってしまったのか。そう思うと、なんだか悲しくなるのは私だけだろうか。
そんな二人の関係性を示唆するように、想い出の砂時計は儚く割れてしまう。
不倫ーー人が踏み行うべき道からはずれること。特に、配偶者でない者との男女関係。
世間一般で見るとよくないことのはずなのに、この二人はそれを歓迎されているような気がしてならない。だってすでに、心が惹かれ合ってしまっているのだから。
それでもお互いに精一杯、精神的に突き放して、それぞれのパートナーのもとへと帰る。
奇しくも同タイミングで、夫婦の歩み寄りを魅せる二組。
それぞれが官能な雰囲気で包まれる中、みちと誠は一つの事実に気づいてしまう。
……できない。陽一と、楓と、できない。
これまで拒否されていた側のみちと誠。そのつらさを嫌ほど知っているはずなのに、身体ではなく心が相手を拒絶していた。
対して陽一と楓は、拒絶されたことにひどくショックを受ける。みちが、誠が、自身のことを拒むはずないーーそう思い込んでいたから尚更だ。
もうこれは、いよいよ後戻りできない。
ただの気の迷い、身体だけの関係であればこんなことにはならなかったはず。
みちと誠、お互いに心を求めている。静かな海が、荒れ狂う前兆が見えた気がした。
最終回間近にして濃くなってくる「昼顔」のようなザワザワ感。
張り詰めた糸がプツンと切れるとき、あの二人が堕ちてしまうのも時間の問題だ。
心なしか、楓と「昼顔」の乃里子(伊藤歩)の影が重なって見えてくる。じわじわと旦那と不倫相手を追い詰めるあの感じ。
いよいよ次週は楓と陽一がエンカウント。この復讐劇、一体どうなってしまうのか。
怖い。この4人の未来を覗き見ることが怖い。
なのにどこかで、みちと誠の関係性を応援している自分がいることがさらに怖い。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第9話ストーリー&レビュー}–
第9話ストーリー&レビュー
第9話のストーリー
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吉野みち(奈緒)は夫の吉野陽一(永山瑛太)から、新名誠(岩田剛典)は妻の新名楓(田中みな実)から、それぞれセックスに誘われるが、流れに身を任せる中で、思わず拒んでしまう。どちらもセックスレスに悩み、体を重ねることを望んでいたはずだったのに、皮肉にも自分から拒んでしまったことにショックを受ける。陽一と楓もまた、今まで自分がしてきたことが返ってきて、相手の辛さを知ることとなる。
翌朝、新名が出勤すると、楓は荷物をまとめてマンションを出て行く。
陽一は、カフェの壁に飾られた思い出のパズルに欠けている1ピースを自作してはめ込むが、パズルの色は周囲に合わない。高坂仁(宇野祥平)は「他のもので適当に埋め合わせてもこうなるんだ」と言う。高坂は、妻に浮気がバレたと話し始める。前回バレた時は家を買って許してもらったという。家は一生の買い物、妻へのでっかいラブレターだと。
その夜、陽一はみちに、賃貸の契約を更新しないで、マンションを買わないかと言う。すでに内覧の予約も入れたと言う陽一が見せたマンションの間取りは1LDKだった。子供が産まれた時のことを考えていないことがわかる陽一の提案に、みちは不信感を抱く。
楓はマンションを出てホテルで生活することで、新名の気持ちを試そうと思っていた。新名に「しばらくホテルに泊まる」とLINEするが返信はない。「帰って来い」という返事を期待していた楓は悲しみに沈む。
内覧の日、陽一はみちの気持ちをくんで2LDKのマンションを見せてもらう。不動産屋の圧にも負けずにいろいろと尋ねる陽一を頼もしく思いつつ、みちは子供部屋へ。「もし陽一とセックスレスでなかったら、子供のいる家庭が出来ていたのかな…」。そう考えるみちに寂しさが込み上げて…。
第9話のレビュー
パートナーの身体を受け入れることができなかったみち(奈緒)と誠(岩田剛典)。
陽一(永山瑛太)と楓(田中みな実)もさぞショックを受けただろうが、みちと誠もショックだっただろう。
“拒否されていた側”のセックスレスで悩んでいた当事者が、いつの間にか”拒否する側”に回ってしまっていたのだから。
この仕打ちに対する反撃方法に、人となりが濃くにじみ出る。
まずは、陽一。
オーナーの高坂(宇野祥平)、2度目の浮気がバレた模様。前回は家を買うことで償ったらしい。
…いやいや、浮気の代償が家って、えぐいな。
高坂曰く、それは「高いラブレター」とのこと。なるほど。浮気された側に許す気があるのであれば、もしくは許さざるを得ないのであれば、されたこと以上の付加価値はあるのかもしれない。
この話を聞いた陽一は、マンションの更新をするタイミングということに乗っかって「家を買わないか」と提案する。
…いやいや、どう考えても安直すぎる。物を盾にして外堀から埋めて一体どうする?そんなことをしたって、夫婦関係はきっと変わらない。
三島(さとうほなみ)と寝た後もそうだったが、陽一の単細胞的思考にはただただ呆れる。
そして、楓。
セックスを拒否された翌日から、ホテルに泊まることを決意。
「しばらくホテルに泊まります。」と送ったLINEは既読がついたまま、誠からの返信はない。
構ってほしいとき、人は思っていることと逆の行動をとる。
だがしかし、相手の気持ちがこちら側に向いていない時にそのようなことをしても逆効果なだけだ。相手はほっとして、自身はまた傷つく。
さらには、探偵を雇い陽一の職場までも突き止める。怖い。怖いよ楓。
高坂からの絡みも華麗にスルーし、核心には触れずにじわじわと距離を詰め寄る楓。
だが、陽一のみちへの思いにただただ打ちひしがれるだけであった。
…余談だが、宇野祥平がリリー・フランキー的な立ち位置にいることが違和感なく、絶妙にハマり役である。
「物にも人にも思い出を添付しちゃ駄目ですよ。捨てづらくなるだけ。それ、愛着じゃなくて執着ですからね〜」
「自分の心を壊してまで一緒にいることに、何の意味があるのかな」
「ほどけそうになった紐は、ちゃんと結び直すの」
第三者視点の言葉が傷口に染み入る。
そう、「あなたがしてくれなくても」の登場人物は、みんな真面目すぎる。強いて言うならわがままなのは陽一くらいか。もっと自分本位に生きてもいいのに、全員。
「楓とセックスできなかったのは、男としての愛情が戻らなかったからなんだ」
「(子供は欲しくないって)言ったら俺から離れていくだろ。俺はみちと一緒にいたくて結婚したんだよ」
飛び出る、心が死ぬ言葉たち。
誠はまだしも、陽一は確信犯である。
最悪のタイミングで、ついに誠が退職。
心の拠り所がなくなりつつある今、”職場が同じ”という絶好のシチュエーションまでもが終焉を迎えてしまう。
そんな中、華(武田玲奈)の粋な計らいで、ラーメン屋で居合わせるみちと誠。
もう、どう見ても未練タラタラなんですよね、お互いに。
感情を押し殺して会話するも、ただただ苦しそうなだけ。
それでも、最後の最後に溢れ出してしまうのが性。
みちの手を取り、走り出す誠。
どこに向かって走っているのかは、本人たちもきっとわからない。
やっぱり真面目な二人は、駆け落ち行きのバスには乗車せずに事を終えた。
道理には反しなかったものの、ようやく自身の気持ちに整理がついたみちと誠は、“離婚”というキーワードを口に出す。
…もうこれは、単なる不倫物語じゃない。純粋な恋愛物語なのである。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{第10話ストーリー&レビュー}–
第10話ストーリー&レビュー
第10話のストーリー
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吉野みち(奈緒)は新名誠(岩田剛典)が転職のために会社を去る最後の夜、北原華(武田玲奈)の計らいで2人きりでラーメンを食べる。別れ際、思いが溢れた新名は、みちの手をとり、走った。バス停まで走ったところで、バスに乗ろうとするも、二人は「もうどこにも逃げたくない」と踏みとどまる。そして、お互いの家へ戻り、それぞれのパートナーと向き合うのだった。
帰宅した新名は、新名楓(田中みな実)に離婚を切り出した。あっさり応じる楓に新名は戸惑う。
一方、みちも吉野陽一(永山瑛太)に話したい事があると告げる。すると、陽一は「子供のことなら作っても良い」と言う。その言葉に再び心を傷つけられたみちは「これ以上自分をすり減らしたくない」と話し、陽一に「離婚してください」と告げた。陽一は誰か好きな人がいるのかと尋ねるが、みちは陽一を傷つけない為に新名のことは隠し通すと決め、「いない」と答える。まっすぐ陽一を見るみちに、陽一は「離婚はしない」と返すのだった。
上司から昇進試験を受けないかと打診されていたみちは、田中裕太(北川尚弥)に一緒に勉強しないかと誘われた。みちが誘われるままにフリースペースに行くと新名が現れる。田中が勉強を教えてもらおうと頼んでいたのだ。帰り道、2人きりになると新名は楓と離婚することになったとみちに伝える。みちはまだ話し合い中だと報告。お互いが離婚が成立した後のことに思いがいき、見つめ合う二人。そんな時、新名の携帯に、母の訃報を伝える電話があり、新名は言葉を失う…。
翌朝、みちは陽一のいるマンションへ戻る。上司のお母さんのお葬式に出る為、喪服を取りにきたというみちに、陽一は違和感を覚える。葬儀の案内状には“新名家”と書かれていて…。
第10話のレビュー
ついに”離婚”というワードを切り出したみち(奈緒)と誠(岩田剛典)。
「なんで急に」と『今更なにを?』と突っ込みたくなるような反応をする陽一(永山瑛太)と、「いいよ。離婚しよう」とすんなり受け入れた楓(田中みな実)。
この違いは、”依存度”にあるのではないだろうか。
楓には、仕事という揺るぎない味方がいる。常に仕事第一、生活も顧みず没頭してきた。ここ最近は、誠が離れていくことを察して奥さんらしい振る舞いをしようとしていたが、客観的に見ると全く持って楓らしくない。誠も言う通り「仕事を頑張る彼女」でこそ”楓”なのだ。
離婚という結果は、今の彼らにとっては必然だったのではないかと思う。
パートナー以外の女性を愛した夫と、改めて仕事に一念発起することにした妻。終わりが近づくにつれてようやく本音を吐き出せるようになった二人の関係性から見ても悪くない、最良の結果だと腑に落ちる。
対して陽一には、みち以外なにもない。まぁ、珈琲と高坂(宇野祥平)も貴重な味方ではあるが、陽一にとっての真の心の拠り所は、みちしかいないのだ。
どうしようもない自分だけど、みちがそばにいてくれるからーーそんな陽一からみちを奪ったら、一体なにが残るのだろうか。
「陽ちゃんは私のことが好きなんじゃないよ。自分のことが好きなんだよ」
「自分が困るから。自分が寂しいから。自分が好きだから。陽ちゃんの中に私がいないんだよ」
圧倒的真意。
この台詞を突きつけられたときの陽一、きっと逃げ出したかっただろうな。図星でもあり、やっぱりそうだったんだと認めざるを得ない事実。
これまで流されて生きてきたみちにとって、第二の人生を踏み出すことができた歴史的瞬間でもあった。
ただひとつ、喫茶店を舞台とした誠との対峙を経てもみちになにも言わなかったことは彼にとっての成長だったのかもしれない。
そんな状況の中、後輩の田中(北川尚弥)とともに昇進試験を受ける流れで、みちと誠は再会。
今まで流されっぱなしだった分、一人で生きていきたいーーそう決意したみちは、これまでになく仕事に打ち込む。
そんなみちのことを優しく見守る誠。
二人きりになる機会はいくらでもあるのに、離婚への第一歩は踏み出しているのに、理性を保とうとする彼らがもどかしい。
ラスト、健気な誠をどん底に陥れるような展開が訪れようとは、誰も思わなかっただろう。
みちの離婚を待って告白を切り出す誠、結果は惨敗。
“一人で生きていきたい”というみちの意志は、確固たるものだったようだが、思わず「嘘でしょ」と声が漏れ出たのは、私だけではないはずだ。
そりゃ誠とのつながりを持たなくとも、陽一と離婚する未来には変わりなかったかもしれない。だが、人生における選択のスピードを加速させた人とのお別れをする揺るぎない決心には驚いた。
泣き崩れる誠、一人ぼっちの陽一、そして、まさかの編集長就任を逃す楓。
みちだけが前を向いて歩みはじめている。
「あなたがしてくれなくても」序盤でも記したような気がするのだが、”夫婦”の定義を深掘ろうとすればするほど気が遠くなる。
たった一枚の紙切れに、必要な情報を埋めていき、朱いサインを添えるだけで、なぜこんなにも悲しくなるのだろうか。
誠の母(大塚寧々)のお葬式にて、父(山中敦史)が泣き崩れる姿を見て、私は今後、だれかと結婚してそのだれかと永遠の別れを迎える時、あんなにも悲しむことができるのだろうか、あんなにも人を愛せることができるのだろうかと、少し羨ましくなった。
今さらではあるが、みちにとっての陽一は、誠にとっての楓は、果たして。
次週、ついに最終回ということに驚きを隠せない。
男女二組ではなく、男女四人の結末を、しっかりと見届けたいと思う。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{最終話ストーリー&レビュー}–
最終話ストーリー&レビュー
最終話のストーリー
吉野みち(奈緒)は、夫の吉野陽一(永山瑛太)と、新名誠(岩田剛典)は、妻の新名楓(田中みな実)と離婚が成立した。「お互いのことが解決したら…」。そう伝えていた新名は、みちを水族館に誘う。新名の言おうとしていることがわかったみちは先に話そうとするが、新名は「今まで自分の気持ちは後回しにしてきたけど、あなたへの気持ちだけは大事にしたい」とそれを制して、「好きです。ずっと一緒にいてください」と捨て身の告白をする。新名の気持ちを正面から受け止めたみちは「気持ちには応えられない。誰にも頼らず1人で生きて行きたい」と正直な気持ちを返した。「ありがとう。ちゃんと振ってくれて」2人はセックスレスの戦友になれたことや、お互いを好きになったことを後悔していないと伝えあって別れた。
2ヶ月後、新名は陽一のカフェに呼ばれる。陽一は新名に、みちと別れたのかと聞く。口を濁す新名を見て、陽一は、みちと新名は付き合っておらず、新名は振られたことを知る。陽一がカフェに新名を呼び出したのは、ふと立ち寄ったカフェでみちと別の男がデートしている姿を見たからだった。「みちさんに限って」と否定する新名は、振られてから一度も会っていないと言う。そんな新名に、陽一は「みちは誰かがそばにいて見てやんなきゃダメじゃないの?」といら立つが、新名もまたいら立って「みちさんは1人で生きていますよ」と返す。
一方、みちは、1人で生きて行く決意はしているものの、実際に一人になってみて、不便さや寂しさを実感し始めていた。
そんな時、陽一の家に姉の麻美(紺野まひる)が来た。麻美は子供の音楽教室の発表会に行けないので、みちに代わりを頼んだと言う。自分も行こうとする陽一に、麻美は「あんたは来なくて良い」と告げるが…。
最終話のレビュー
「あなたがしてくれなくても」最終回、衝撃的展開すぎて、著者は今、心を落ち着かせながらこの記事を書いている。
みち(奈緒)と陽一(永山瑛太)、誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)、それぞれが別々の人生を歩みはじめた。
みちと誠は相変わらず、”戦友”として定期的に会っている模様。
あれから1年、別れたキッカケになった人となんの進展もないまま生活を送るだなんて、私にはできない。
そんな誠に対して解き放った楓の台詞、ど正論すぎた。
「なにと戦ってんの?いつまで心のセックスしてるつもり?寒気する!」
まるでスカッとジャパン。最高です、ありがとうございます。
「逃げるな、泥棒猫」
「あなたの顔見てると殴りたくなる」
「誠はむっつりなの。……今のは笑うとこ」
「大好きな相手でも、一緒に生活してたら億劫にもなるし、レスにもなる」
「結婚っていう鎧を着て、強くなったつもりでいたのかな」
楓から飛び出す台詞すべて、快感なうえに納得感がある。
彼女に関しては、離婚後の方が圧倒的にらしさが出ていて、最良の選択だったのではないかと思える。まさに開拓者だ。
GINGERの編集長としての姿を目に焼き付けたかったが、どんな場所にいても楓なら間違いなく輝けることだろう。
ただ残念なことに、『「ひとりで生きられそう」ってそれってねえ、褒めているの?』という幻想が、事実として浮き彫りになった感はある。
結局男は、みちのようなどこか危うげな女性から目を離すことはできないのだ。
とは言いつつも、みちと陽一のいつぶりかの戯れには見惚れてしまったのだが。
「離婚したのにキスしたダメな元夫婦の影」
まるで坂元裕二みたいな台詞を吐くのね、陽ちゃん。
あれだけ恋愛にアグレッシブだった華(武田玲奈)も早々に子供を授かり、まるでリリー・フランキーな高坂(宇野祥平)もセックスレスの妻と生涯を遂げる覚悟を決め、つまるところ、みんな落ち着く場所に落ち着くのだ。
仕事を相棒に生きていく楓。
みちに想いを寄せながらも彼女の幸せを願い生きていく誠。
そして、まるで誠とのことがなかったかのような元サヤ加減のみちと陽一。
ただこれは、離婚という過程を経たからこそ築き上げることができた”愛の形”なのではないかと思う。
離れてみて初めてわかることって、きっとある。
「あなたがしてくれなくても」に続く言葉は、「他に満たしてくれる人がいるから」ではなく、「それでもあなたと一緒にいたい」だったのだ。
……というように、自身を納得させることもできるのだが、著者はまぎれもなく”ドロドロ不倫劇”を期待していた側だった。
本ドラマは「昼顔」スタッフ再集結ということもあり、視聴者の大半がこちら側だったのではないかと推測する。
ただ、「昼顔」の放送から約10年、たとえいちコンテンツであっても世間からの目がどんどん厳しくなっている今、不倫を肯定する・養護するような内容にはできないという倫理観が生まれているのかもしれない。
それでも、ドラマだからこそ、人が取り乱す姿や道理から外れてしまう一瞬を垣間見たいと思うのが、視聴者の真の心情なのではないだろうか。
「綺麗事並べて自分たちに酔ってるみたいだから」
楓の台詞がフラッシュバックする。登場人物全員に対して、そうとしか思えない。
と、まぁ好き勝手言っておいてなんだが、結末としてはハッピーエンド。
もうひとつの衝撃ポイントとして、次週、特別編の放送があるそうだが、そこで空白の期間がどのように描かれるのか、気になるところである。
……最後に、まったくふさわしくないかもしれないが、これだけは言わせてほしい。
突然の野間口徹の贅沢遣い、ありがとうございました。
※この記事は「あなたがしてくれなくても」の各話を1つにまとめたものです。
–{「あなたがしてくれなくても」作品情報}–
「あなたがしてくれなくても」作品情報
放送日時
2023年4月13日(木)スタート。 毎週木曜22:00~
出演
奈緒/岩田剛典/田中みな実/さとうほなみ/武田玲奈/宇野祥平/MEGUMI/大塚寧々/永山瑛太
原作
ハルノ晴 『あなたがしてくれなくても』(双葉社)
脚本
市川貴幸 おかざきさとこ 黒田 狭
主題歌
稲葉浩志『Stray Hearts』(VERMILLION RECORDS)
挿入歌
稲葉浩志『ダンスはうまく踊れない』(VERMILLION RECORDS)
音楽
菅野祐悟
プロデュース
三竿玲子
演出
西谷 弘 髙野 舞 三橋利行 (FILM)