「らんまん」令和だったら炎上案件 なぜ女性は酒蔵に入れないのか<第4回>

続・朝ドライフ

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第4回を紐解いていく。

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どういて どういてじゃ

第3回で万太郎(子役:森優理斗)が蔵人たちの歌の話をしたことで、第4回でその歌がいっそう印象に残ります。「酛すり歌」というのですね。第1話からすでに歌われているのですが、繰り返されることで存在感が増します。

秋になって酒造りがはじまって、峰屋が活気づいています。

でもそこに問題がーー。

朝ドラあるある「女人禁制」です。

女性が入ってはいけないとされる酒蔵へ、万太郎を追いかけて姉の綾(子役:太田結乃)が中に入ったところ、ものすごく怒られてしまいます。

女性は汚れている、酒が腐る とさんざんな言われ方で、蔵人たちはお清めに必死になります。女性特有の体質を迷信めいた考えで忌み嫌う時代なのでしょう。

ここでは綾が主人公のようです。

いいにおいのする酒蔵が前から気になっていた綾は、いけないと知りながらも足を踏み入れる。一歩踏み出したときの好奇心と勇気と知らない世界に触れた喜び。でも、そのあと、責められる失望。これはもう「朝ドラ」ヒロインそのものです。

祖母・タキ(松坂慶子)も女は蔵に入ってはいけないという禁忌を守ってきました。

朝ドラ辞典 「ジェンダー」の項目を参照

「らんまん」では、綾は主人公ではなく、万太郎が主人公です。彼にとっての禁じられた行為は、めったに外に出てはいけないということです。

第3回で、タキからもしまた黙って万太郎が出ていったら「おまんの落ち度じゃき」と言われている竹雄(子役:井上涼太)に止められて遊ぶことができず、癇癪を起こして、竹雄を蹴ったり噛んだりします(なかなかやんちゃです)。

竹雄も主人(タキ)から奉公人としての重責を強いられています。

万太郎、綾、竹雄、3人3様で世間の理不尽なルールに縛られているのです。
でも世界には踏まれて強くなる植物もあるのです。

「どういて(どうして)どういてじゃ」
酒蔵の掟の意味をタキに問い詰める万太郎。

ヒサ(広末涼子)に聞いてもらおうとするも体調が悪化して会えません。

「どういて どういてじゃ」

「死」を意識する綾と万太郎。

朝ドラ辞典 「死」の項目を参照

「死」、それは人間にとってどうしようもない、もっとも理不尽なものーー

「死」に抗い、「花」を求めて万太郎は神社へ向かいます。神様に呼びかけますが、もう天狗(ディーン・フジオカ)もいません。

意を決して万太郎は神社の結界を超えます。

彼もまた、綾と同じく、世間の決めたルール(境界)を踏み越えることで、主人公の道を歩み出すのです。

【朝ドラ辞典2.0 疑問(ぎもん)】

主人公のモチベーションには「なぜ?」がある。なぜ、女性はやってはいけないことがあるのか? というように「なぜ」を突き詰めることが物語になる。
「らんまん」では「どういて どういてじゃ」と万太郎が問い続ける。

●今日の気になる

綾の落としたかんざしを拾って懐に入れた幸吉(子役:番家一路)の心情は…

万太郎と遊んでもらえなかった子どもたちのなかに、「舞いあがれ!」の一太の少年時代を演じた野原壱太さんがいました。2作連続出演です。

(文:木俣冬)

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–{「らんまん」第1週のあらすじ}–

「らんまん」第1週のあらすじ

春らんまんの明治の世を天真らんまんに駆け抜けた植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)の物語がはじまる―。土佐の酒蔵・峰屋の跡取りとして生まれた万太郎(森優理斗)は草花が大好きな男の子。生まれつき病弱ですぐに熱を出して倒れてしまう。「万太郎はいっそ生まれてこなければよかった」という親戚の心ない言葉に深く傷ついた万太郎は、病床の母ヒサ(広末涼子)の制止を振りきって家を飛び出してしまう。そして、行き着いた裏山の神社で自らを「天狗」と名乗る謎の武者との不思議な出会いを果たす。

–{「らんまん」作品情報}–

「らんまん」作品情報

放送予定
2023年4月3日(月)より放送開始


長田育恵

音楽
阿部海太郎

主題歌
あいみょん「愛の花」

語り
宮﨑あおい

出演
神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこう ほか

植物監修
田中伸幸

制作統括
松川博敬

プロデューサー
板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久

演出
渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか