『シン・仮面ライダー』が大いに盛り上がっている。賛否が極端に分かれている印象が強いが、作品を奥深く読み込んだ上での賞賛の意見もじわじわと増えてきており、それをもって「何か言いたくなる」作品のパワーを証明したとも言えるだろう。百聞は一見にしかず、まずは観てから評価をしてほしいと願うばかりだ。
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そして、ここでは座席の動きなど様々なアトラクション的な演出が楽しめる「4DX」上映を推したい。俳優陣の好演や怪人(オーグ)の造形などと同様に、「これは多くの方が賞賛するだろう」と確信する素晴らしい出来映えだったからだ。リピーターの方に、特におすすめしたい。
なお、4DXおよび「IMAX」は最速公開日の3月17日より開始されているが、「MX4D」は4月14日(金)よりスタートとなることにご注意を。さらに「ドルビーシネマ」は3月24日(金)からの上映となる。ぜひ、いろいろな上映形態で楽しんでほしい。
前置き:淡々としているからこそ、派手なバトルの演出を楽しめる4DXをおすすめしたい。
今回の『シン・仮面ライダー』で多くの人が特徴としてあげているのは「淡々としている」こと。初代「仮面ライダー」よりもさらに全体的なトーンは暗めで、キャラクターの多くは無機質かつ感情をあまり表に出さない印象が強く、己の主義主張をぶつけ合う会話シーンも多い。
だが、その淡々としていることが作品の魅力でもあるし、だからこそ「ここぞ」という時の派手なアクションの対比が良い意味でのギャップになる。バトルを4DXで「盛れ」ばこそ、そのギャップがさらに際立って面白く観られるだろう。しかも、アクションシーンそのものが多いため、バリエーション豊かな4DXの演出を楽しめるのだ。
また、本作はPG12指定納得の殺傷と出血の描写があり、それを持って暴力の恐ろしさも示していて、結果として良い意味で「悪を倒してスカッと爽やか」とはいかない作劇もされている。
そのダウナーな印象は遊園地のアトラクションのような4DXとかけ離れているようだが、実際は後述する「暗い場面に合わせた」「良い意味で悪趣味」な演出とマッチしていたように思う。その意外さも含めて楽しんでほしい。
また、4DX上映が実施されている劇場の一部では、「熱風」の演出もある。理由は後述するが、可能であれば熱風のある4DXの劇場を選ぶことをおすすめする。
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さて、ここからは具体的な4DXの演出について記していこう。サプライズ的な演出の明言は避けたつもりだが、一部のアクションの特徴についても記しているので、何も知らないまま本編および4DXを楽しみたい方は先に映画館に足を運んでほしい。
–{仮面ライダーと「縁」がある演出とは?}–
1:「ライド感」がすごい!
4DXで特に相性が良いのはやはり「乗り物」。劇中で仮面ライダーや敵キャラクターは言うまでもなくバイクに乗り、ハイスピードで疾走し、左右に勢いよくバイクを傾ける。さらにはウィリーをキメたり、時には乗ったままアクロバティックな格闘もする。
何しろ、4DXの演出のメインと言えるのは、座席の前後左右への激しい動き。バイクに乗った時の「ライド感」に加えて、そうした激しいチェイスやバトルとの相性の良さが抜群であることは言うまでもない。「座席から落ちてしまいそうなほど」のダイナミックな演出にも期待してほしい。
2:劇場全体に吹く風で「風圧」を表現
さらに、バイクに乗っている時の臨場感をマシマシにしてくれるのは、劇場全体に吹く「風」の演出だ。前述した動く座席による「ライド感」に加えて、疾走する時の「風圧」までをも感じさせてくれるのだから。
その激しく吹いている風の「音」もかなり大きく聞こえるのだが、それもまた劇中とシンクロしているのが面白い。
しかも、仮面ライダーは「ベルトに風を受けて変身する」、そもそもが「風」との「縁」があるヒーローなのだ。もちろん、劇中の変身シーンで4DXの演出は……ぜひ楽しみにしてほしい。
さらに、とあるシーンでリアルに吹く風が、臨場感を与えるだけでなく、物語の感動を増幅させてくれる。具体的にそれがどこで、どういうシーンであるかは、秘密にしておこう。
3:格闘での「エアー」「足のくすぐり」「背中への衝撃」の効果
4DXは肉体を駆使した格闘とも相性が良い。今回は「プシュッ」と吹き付ける「エアー」がバトルシーンで使われており、それは「ギリギリで攻撃を避ける」スリルにつながっている。
序盤の「クモオーグ」とのバトルでは、「足をくすぐる」演出も効果的。さらに、劇中で「床に叩きつけられる」時もまさに座席の背の部分が瞬間的に盛り上がることで「背中への衝撃」も表現しているのだ。
また、スクリーンの前で煙が上がる「スモーク」の演出もあり、これが特撮ヒーローものらしい「戦いの場」を盛り上げてくれる。目玉でもあるアクションを「体感」したい人も、4DXを選んでみてほしい。
4:暗い場面で活かされた「フラッシュ」
4DXには劇場の斜め上に備わったライトが光る、「フラッシュ」の演出もある。終盤にかなり暗い場所でのバトルシーンがあるのだが、ここでまさにフラッシュが劇中の「暗がりの中の瞬間的な光」とシンクロしているのだ。
このアクションシーンは暗すぎて見づらいという意見もあるが、個人的には劇中でもっともクールでスタイリッシュに感じたバトルだった。そこにフラッシュの演出も加われば、さらにアガるはずだ。
5:良い意味で悪趣味な、吹き付ける水に見立てた演出
劇中には鮮血が飛び散る暴力描写が序盤も序盤からあるのだが、そこで血の代わりに座席に向かって水を「プシュッ」と吹き付けるという、なんとも良い意味で悪趣味な演出がある。これは、他の過激さが売りのアクション映画でもよく用いられている演出だったりする。
それもまた暴力の恐ろしさを「体感」できる意義があるが、苦手な方は座席横のボタンで吹き付ける水の演出をオフにできるのでご安心を。
一部の劇場でのみの演出:「熱風」をそう使うか……!
そして、一部の劇場のみにある「熱風」の演出は、「なるほど、そこで使うか!」と納得&驚いて笑ってしまうほどに「ピッタリ」な場面にあった。これはサプライズとも言えるので、やはりここでは秘密にしておこう。
今回の4DXであえて不満を挙げるのあれば、「雨」「雪」「シャボン玉」の演出が使われていないことだろうか。とはいえ、これは本編の内容的に致し方がないことであるし、他の演出がバッチリハマっているので問題のないことでもある。
最後に、この『シン・仮面ライダー』は「冒頭からクライマックス」な勢いのあるアクションから始まるため、いきなり4DXの演出をわんさかと楽しめる贅沢さもあった、ということも明言しておこう。初めからフルスロットルで満足でき、その後もバラエティ豊かに楽しめる4DXに、御期待ください。
(文:ヒナタカ)
–{『シン・仮面ライダー』作品情報}–
『シン・仮面ライダー』作品情報
予告編
基本情報
出演:池松壮亮/浜辺美波/柄本佑/西野七瀬/塚本晋也/手塚とおる/松尾スズキ/森山未來 ほか
脚本・監督:庵野秀明
公開日:2023年3月17日(金)
製作国:日本