これを読めば“朝ドラあるある”がわかる!「朝ドラ辞典」

続・朝ドライフ

“朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説の各回を、ライター・木俣冬が紐解いていくCINEMAS+の連載、「続・朝ドライフ」。

本記事は、2022年秋~、同連載にて筆者が毎回朝ドラでよく見られる設定や“あるある”を解説してきた「朝ドラ辞典」を集約したものである。

2023年3月31日「舞いあがれ!」の完結をもって、「続・朝ドライフ」毎回の用語解説は一段落するが、「朝ドラ辞典」は、今後も随時追加予定。

“朝ドラあるある”が詰まった「朝ドラ辞典」。朝ドラの放送とともにぜひ楽しんでいただきたい。

[※本記事は広告リンクを含みます。]

「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら

「舞いあがれ!」をU-NEXTで見る

朝ドラ辞典・もくじ

朝ドラ辞典・あ行

【相手役 (あいてやく)】
「戯曲というものは、やっぱり恋愛がなくちゃいけないとあたしは思うわ……」というのはチェーホフ「かもめ」のセリフ。朝ドラにも恋愛が、主人公の相手役は必須。常に相手役は誰だろうという興味がある。朝ドラでは夫役、妻役として事前に紹介されることもあるが、誰が相手役になるかなかなか明かされないパターンもある。

【アヴァン (あばぁん)】
アバンタイトル。タイトルバック(主題歌とスタッフ・キャストのクレジットの入った映像部分)の前の短い場面のこと。これまでのあらすじ的なことが描かれたり、ちょっとしたコントのようなものが描かれたりする。掴み、導入部としてのセンスが問われる。

赤ちゃん (あかちゃん)
赤ん坊役は複数体制ながら、とてもかわいい赤ちゃんぞろい。

【赤津 (あかつ)】
「まんぷく」(2018年度後期)に出てきた塩軍団のひとり。ヒロインの母・鈴(松坂慶子)のお気に入りとなりなにかと「あかつー」と呼ばれていた。演じているのは永沼伊久也で、「舞いあがれ!」のなにわバードマンの一員・西浦役で出演しているが、赤津とは外観をまったく変えて現れ、朝ドラファンを驚かせた。

【朝ドラ (あさどら)】
すっかり定着している「朝ドラ」は愛称。正式シリーズ名は「連続テレビ小説」。NHK広報さんに原稿を確認する際、朝ドラと書くと「連続テレビ小説」と修正される。

【朝ドラ受け (あさどらうけ)】
朝ドラのあとに放送される「あさイチ」にて司会が今見た朝ドラの感想を述べること。「ゲゲゲの女房」(10年)からの伝統になっていて、司会が変わっても受け継がれている。いまでは朝ドラと朝ドラ受けをセットで見ることで朝ドラが完成するようにも考えられているところもある。朝ドラをツッコむ習慣を作り出した要因とも言える。

【朝ドラ送り (あさどらおくり)】
「あさイチ」の朝ドラ受けに対して、前の番組である「おはよう日本」で行うのが「朝ドラ送り」。番組の最後の数秒でこれからはじまる朝ドラに期待をもたせるための気の利いたコメントをいかに発するかアナウンサーの腕の見せ所となる。高瀬耕造アナが頻繁に行いはじめてからこの用語が定着した。 
※関連語:朝ドラ受け

【朝ドラファミリー(あさどらふぁみりー)】
朝ドラに2度以上出ると、朝ドラ常連、朝ドラファミリー、劇団朝ドラ劇団員のような認識となる。

【明日もこのつづきをどうぞ…… (あしたもこのつづきをどうぞ……)】
これは昔の朝ドラの各回の終わりについていた文言。2022年8月〜9月にかけて放送された夜ドラ「あなたのブツが、ここに」でも使用された。

【当て馬 (あてうま)】
恋愛ドラマに不可欠な存在。本命のふたりの間に障害があると、逆にふたりの恋の炎が燃えるという重要かつ残念な役目。ただし熱演すると視聴者からは支持されることもある。
俳優としてはステップアップになる。

【後出し (あとだし)】
ある出来事に関して、その瞬間には言及しないで、あとからその出来事に付随する情報を描くことがよくある。フックがついて、印象に残るのと、物語が物切れにならず、繋がって思える効果がある。

【あとを継ぐ(あとをつぐ)】
家族の物語なので、家業の継承問題もたびたび持ち上がる。

【兄 (あに)】
主人公にはたいていきょうだい(兄姉弟妹)がいる。ヒロインと弟(「ちゅらさん」「おちょやん」「カムカムエヴリバディ」のひなた編)、ヒロインが三姉妹(「とと姉ちゃん」「まんぷく」「エール」)、ヒロインと姉(「あさが来た」)、ヒロインと妹(「おかえりモネ」)など、様々な家族構成がある。「舞いあがれ!」「ちむどんどん」「カムカムエヴリバディ」と3作続いて、兄が家庭に波風を立てることが続いている。「舞いあがれ!」の悠人は頭はいいが反抗的、「ちむどんどん」の兄・賢秀は借金ばかりしていて、「カムカム」ではラジオの窃盗や店の運転資金を持ち逃げした。でも朝ドラではどんなことがあっても家族の絆は強い。   
※関連語:弟、姉、妹

【雨 (あめ)】
登場人物のどうしようもない感情を表現するのに雨が使用されることはよくある。朝ドラはスタジオで雨を降らすことが時々あるが、ロケで雨降らしをするよりは楽らしい。「半分、青い。」では雨のなかヒロインがプロポーズされてミュージカルのように踊っていた。

【意外性 (いがいせい)】
やな人と思っていたひとが、実はいい人だったというパターンは大衆に好まれる。キャラ変とは違う。

【一難去ってまた一難 (いちなんさってまたいちなん)】
放送期間の長い朝ドラにはつきもの

【一致団結 (いっちだんけつ)】
朝ドラに限ったことではないが、なにかあって、関係者が一致団結するのは感動ポイント

【いつものメンバー (いつものめんばー)】
朝ドラではほぼ、いつものメンバーで成り立っている。

【田舎から誰か来る (いなかからだれかくる)】
朝ドラでは主人公の地元からはじまって上京してセカンドステージとなる。ご当地ドラマの側面もあるので主人公がたまに地元に帰るエピソードが不可欠。あるいは、地元(田舎)から遠路はるばる親や幼馴染が上京してくるというエピソードも。「舞いあがれ!」では祥子が浩太の死をきっかけに上京してきて、めぐみや舞や悠人に重要な言葉を投げかけて帰って行った。

【犬 (いぬ)】
主人公の家で犬を飼っていたのは「ひまわり」で、犬・リキ(声:萩本欽一)はナレーションの役割も担った。
※関連語:猫

【いびり (いびり)】
かつては姑、小姑の嫁いびりが定番であったが、最近は視聴者のストレスになるようなしんどい描写は減っている。

【引退 (いんたい)】
高齢化社会になってドラマでも高齢者の描き方に変化が。「べっぴんさん」では使用人が老後に冒険の旅に出る展開があった。

【腕をつかむ (うでをつかむ)】
男性がヒロインの腕を掴んで何か言うシチュエーションが朝ドラにはよくある。これがスイーツものにおける壁ドン的なキュンポイント。

【海 (うみ)】
朝ドラに限らず、気持ちを整える場面では海が格好のロケ地。朝ドラでも、ここぞというとき、海が出てくる。遠くまで広がる海(貴司いわく「無限の青やで」)、高い空、風に吹かれる俳優たち。それだけで名場面の完成です。海が舞台の朝ドラも多数。沢口靖子主演で銚子が舞台の「澪つくし」、気仙沼が舞台の「おかえりモネ」、北三陸でロケした「あまちゃん」など。

☆浜辺あるある。腰を下ろすのにちょうどいい流木がさりげなく配置されている。「舞いあがれ!」第33回ではそれがなく、砂の上に直座りしていて、新鮮だった。

【江戸時代 (えどじだい)】
江戸時代からはじまったのは「あさが来た」がはじめて。「らんまん」が2作目となる。

【遠距離恋愛 (えんきょりれんあい)】
遠距離恋愛はなにかとドラマティック。『カムカムエヴリバディ』(21年後期)では安子が岡山、稔が大阪と離れた際は文通し思いを深めた。娘のるいは、愛する錠一郎がデビューの準備で東京に行き、滞在先のお嬢様の出現で不穏なムードになる。
『おかえりモネ」(21年前期)ではモネと菅沼がやたら入れ違いになって遠距離を続けた。
恋愛ではないが、夫が単身赴任先で浮気するのは『青春家族』(89年)。『おひさま』(11年)のヒロインの夫も一時期、自宅を離れて、ヒロインを心配させた。

【エンド5秒 (えんどごびょう)】
毎日の放送のあと、5秒間は視聴者参加のコーナー。毎シリーズ、テーマを決めて、視聴者の投稿を紹介する。作品のテーマに沿ったものが多い。「舞いあがれ!」では飛ぶがテーマになっている。

【オープニング (おーぷにんぐ)】
出演者やキャストが表示されるパート。朝ドラのオープニングは歌ものとインストゥルメンタルと2パターンある。朝ドラにはじめて主題歌がついたのは、第32作「ロマンス」(1984年前期)。
第48作「ひらり」(1992年後期)でDREMES COMES TRUEの「晴れたらいいね」が起用されて以降は、誰が主題歌を歌うかも朝ドラの注目ポイントになっている。紅白歌合戦でアーティストが主題歌を歌うこともあって、それも楽しみのひとつである。
※類語:主題歌、タイトルバック

【幼馴染 (おさななじみ)】
朝ドラの主人公には幼馴染が不可欠。子供時代から描くことが多いので、子供時代、一緒に過ごした友達が主人公の人格形成に大きな影響を与えていく。大人になってもその友情が続いていくことが多い。視聴者の共感ポイントのひとつ。幼馴染が男の子の場合、ヒロインの相手役になることもあればならないこともある。

【女友達 (おんなともだち)】
ヒロインにはたいてい女友達がいる。正反対の境遇で主人公を際立たてる役割。因縁のライバル的になるか、なにがあっても強い味方になるかはその時々。

→朝ドラ辞典・目次へ戻る

–{朝ドラ辞典・か行~}–

朝ドラ辞典・か行

【回想シーン (かいそうしーん)】
朝ドラには回想シーンもつきもの。実際の役を演じている俳優が過去を演じることもあれば、子役やもう少し若い俳優を起用することもある。
「舞いあがれ!」では祥子とめぐみを高畑淳子と永作博美が共に過去も演じた。
たいてい回想は少し無理が出るものだが、高畑淳子の場合、若い頃のほうが本人に合っているようにも見えた。つまり、老いた姿こそ少し負荷をかけて演じている
ということである。でもその老いた姿も不自然な、無理に老婆を演じているようでもなく、リアリティーがある。これぞ名演技。

【顔出ししないひと (かおだししないひと)】
話題にはなるが当人が一向に現れないキャラとして「おかえりモネ」の宇田川さん、「カムカムエヴリバディ」のおぐら荘住人・鈴木などがいる。いつか登場するか、最後まで登場しないか、ドラマを見る楽しみのひとつになっている。出てこないが妙にキャラが立っていて人気キャラになる。「舞いあがれ!」のむっちゃんは気を持たせた末終盤登場した。

【柏木公園 (かしわぎこうえん)】
「舞いあがれ!」の東大阪編の舞台のひとつの公園。正式名称ではないが、舞と柏木が別れた場所であったことから自然発生的にネットでそう呼ばれるようになった。「舞いあがれ!」の東大阪編の舞台のひとつの公園。正式名称ではないが、舞と柏木が別れた場所であったことから自然発生的にネットでそう呼ばれるようになった。
※参照:ネットスラング

【家政婦 (かせいふ)】
朝ドラヒロインが結婚したときの「家政婦」問題は視聴者の共感問題として時々描かれる。はっきり言及したのは「マッサン」で、西洋人のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)は、「私、女中?」と夫の態度に抗議した。

一方、仕事として家政婦や女中が登場することもある。「スカーレット」の貴美子(戸田恵梨香)は大阪で住み込みのお手伝いさんをやり、「おちょやん」の千代(杉咲花)も最初は女中奉公した。ヒロインの家の一員として女中キャラが描かれることもある。いずれも明治〜昭和初期までを舞台にした作品のなかである。

【家族 (かぞく)】
朝ドラのベースはホームドラマ。いろいろな家族の形、家族の問題、家族の幸せが描かれる。だから、舞台は家族の集まるお茶の間、居間が中心になっている。そこにはちゃぶ台やダイニングテーブルがあり、テレビやラジオがある。
※関連語:お茶の間、居間

【家族の確執 (かぞくのかくしつ)】
ホームドラマである朝ドラ、家族がいつもうまくいってるとは限らない。なんらかの原因でうまくいかない家族もある。それをどうやって解決するかがドラマになる。

【要冷蔵(かなめ・れいぞう)】
クレジットに「要冷蔵」とあると目を引く。「ようれいぞう」ではなく「かなめれいぞう」。大阪出身で、「カーネーション」「ごちそうさん」「あさが来た」「べっぴんさん」「わろてんか」「まんぷく」と主に大阪局制作の朝ドラに出演している。「ブギウギ」では愛助を診察する医者役で出演した。

【壁 (かべ)】
朝ドラに限ったことではなく、物語にはたいてい主人公の進路に壁が立ち塞がる。それを乗り越えることがドラマになるから。ただ、朝ドラではとてもわかりやすい書き割りのような壁が出てきがち。
※類語:挫折、ピンチ、向かい風

【神回 (かみかい)】
思いがけない展開に感動する回。ただしこの言葉を使いすぎると価値が下がる。

【髪を束ねる (かみをたばねる)】
労働にあたり長い髪は束ねるのが常識。マナーの点からいってもそうだし、単純にうつむいたとき顔にかぶる髪の毛が煩わしいからだ。ところがなぜか朝ドラでは主人公が束ねないときがあり、SNSでツッコミが入る。これはもうドラマと視聴者のコール&レスポンスという伝統なのだろう。

【河井克夫(かわいかつお)】
「らんまん」画工の岩下定春役は河井克夫さん。漫画家であり俳優でもある多才なかたです。「半分、青い。」では漫画家・秋風(豊川悦司)の非常勤アシスタント役で出演されていました。筆者がテレビブロスで、ヒロインと常勤アシスタント仲間役だった清野菜名さんのインタビューをしたとき、ブロスで連載されていた河井さんが立ち会ってお話を盛り上げてくださいました。画工役、ぴったりです。「あまちゃん」にもアイドルファン役で出演されています。

【川口春奈 (かわぐちはるな)】
「ちむどんどん」のヒロインの姉・良子でレギュラー出演。その後、「舞いあがれ!」で祥子の船・めぐみ号の後を継ぐ若葉役でゲスト出演。五島が地元らしいネイティブな雰囲気を出した。

【関東大震災(かんとうだいしんさい)】
大正時代を舞台にした作品では外せない出来事。主人公やとりまく人たちの大切な人が亡くなる悲しみが描かれることが多いが、喪失を乗り越えて立ち上がっていく転換点にもなる。
忠実な奉公人を失う「おしん」、夫が行方不明になる「あぐり」、妹にプロポーズした人物が亡くなる「花子とアン」、実家の安否を心配したり、恩師が亡くなったりする「ごちそうさん」、大阪から救援物資をもって行ったことをきっかけに主要キャラの生き別れの母との再会が展開する「わろてんか」など。
※関連語:喪失感 戦争 震災

【帰郷 (ききょう)】
ご当地ドラマ色の濃いドラマなので、主人公がいったん地元を出ても、なにかと帰郷し、故郷、実家の良さを味わうことが定番となっている。
※類語:地元

【起業 (きぎょう)】
ヒロインが起業することも朝ドラにはよくある。「あさが来た」は女性実業家の話で、「半分、青い。」も後半は会社を作って扇風機を作っていた。

【奇跡 (きせき)】
思いがけないことが起きること。クライマックスに準備されている。例えば、「あさが来た」の最終回。「カムカムエヴリバディ」の”岡山の奇跡”など。ご都合主義とはちょっと違う。

【記念写真 (きねんしゃしん)】
朝ドラでは家族で記念写真を撮る場面がよくある。その写真がのちに部屋に飾られて、思い出として残る。

【疑問 (ぎもん)】
主人公のモチベーションには「なぜ?」がある。なぜ、女性はやってはいけないことがあるのか? というように「なぜ」を突き詰めることが物語になる。
「らんまん」では「どういて どういてじゃ」と万太郎が問い続ける。

【脚本家交代 (きゃくほんか・こうたい)】
朝ドラの脚本家は基本ひとり。時々、複数制になることがある。「君の名は」「てっぱん」「エール」などが複数で担当している。

【キャラ変 (きゃらへん)】
長い物語のなかで、あれ、このひと、こういう言動するキャラだったっけ?と疑問に感じることがたまにある。とりわけ子役から大人へ俳優が変わったときに起こりがち。人は月日や環境で変わるものということもあるし、ちょっとした都合のときもあるのでそっとしておくこと。

【玉音放送(ぎょくおんほうそう)】
戦時中が舞台になる朝ドラでは必ず出てくる場面。1945年8月15日、日本が戦争に負けたことを天皇陛下がラジオで報告する声を主人公や周囲の人たちがどう聞くかで、ドラマのまなざしが感じられる。
泣く人、泣かない人、様々で。例えば「カーネーション」(11年度後期/脚本:渡辺あや)では、ヒロイン糸子(尾野真千子)が放送を聞いたあと「お昼にしようけ」と台所に立つ。その淡々となにげない言動が逆に印象的だった。「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」の部分がよく使用されるが、「カムカムエヴリバディ」(21年度後期/脚本:藤本有紀)では違う部分を使用している。「ブギウギ」では小夜(富田望生)が、言ってることがよくわからないという反応をする。当時、ラジオの音声がよく聞こえなかったことは事実のようだ。

【近未来 (きんみらい)】
現代ものの朝ドラでは近未来を描くことが時々ある。「ふたりっ子」「まんてん」「カムカムエヴリバディ」など。「ちむどんどん」では202X年だった。

【草刈正雄 (くさかりまさお)】
「なつぞら」(2019年)でヒロインなつ(広瀬すず)の祖父・泰樹を演じて、絶大な人気を博した。

【ゲストキャラ (げすと)】
朝ドラに限ったことではないが、レギュラー登場人物のほかにゲストとして限られた期間だけ出演する登場人物がいる。
一話完結の連ドラだと各回にゲストが出るのが当たり前だが、朝ドラはたまにゲストが主になる番外編的なターンがある。『舞いあがれ!』の第12週の森重母子はそのパターンであろう。

【結婚 (けっこん)】
ヒロインが嫁入りするとき「いままでお世話になりました」と三つ指をついて挨拶することが必須シーンと言われてきたとされるが、この儀礼表現は平成後半から令和にかけては減ってきている。

【交代 (こうたい)】
主人公の子供時代からはじまることが多いので、子供時代から成人の俳優に変わるときのタイミングが序盤の見どころのひとつ。自然かつ劇的に見せるのは演出の見せどころでもある。「舞いあがれ!」では飛行機が飛んだ空を境にして時間が経過した。
※類語:バトンタッチ

【紅白歌合戦 (こうはくうたがっせん)】
その年の朝ドラに出た俳優が紅白になんらかのゲストで出るのは恒例。司会や審査員や主題歌を歌ったアーティストの紹介をしたり。「あまちゃん」や「ひよっこ」などは出演者総出で大掛かりな寸劇を行った。

【ご機嫌よう(ごきげんよう)】
「花子とアン」(14年度前期)では語り(美輪明宏)が物語の終わりにあいさつで「ごきげんよう」と言っていた。上品な印象を受ける挨拶。
出会ったときも別れるときも使える。

【告白 (こくはく)】
最大の見せ場

【国防婦人会(こくぼうふじんかい)】
戦時中を舞台にした朝ドラに欠かせない存在。1932年、大阪で誕生し、戦場に行かない女性たちが銃後の守りとして、お国のために活動した。朝ドラではたいてい、ヒロインの自由な言動を批判し阻害する役割を担う。

【ご都合主義 (ごつごうしゅぎ)】
主人公の都合のいいようにものごとが進むこと。朝ドラではわりと多い。許容されるときとされないときの差は、主人公のふだんの言動による。日頃、謙虚で利他的であると大目に見られるが、日頃自己主張強めだと批判にさらされがち。これもまた視聴者の勝手な都合である。

【コネ (こね)】
人間関係がものをいうことがよくある 
※反対語:ネコ

【子役 (こやく)】
朝ドラは本役が登場する前にその子供時代が描かれることが多い。子供時代は重要で、そのときの体験を原点にしてヒロインは成長していく。たいてい子役時代は1、2週間で本役に切り替わるが、序盤、優秀な子役の熱演によって人気を得ることが多く、ドラマの後半、別の役で再登場してファンを喜ばせることもある。

【コロナ禍 (ころなか)】
コロナ禍は令和の日本に大きな影響を与えた。ドラマでも「おかえりモネ」「カムカムエヴリバディ」「舞いあがれ!」でコロナ禍の状況が描かれた。
「エール」では出演中だった志村けんさんがコロナ感染で亡くなるという哀しい出来事があったが、代役を立てず、すでに撮影したもので乗り切った。たまたま撮っていた表情を終盤使用した場面は話題になった。

【コロンコロンレコード (ころんころんれこーど)】
「ブギウギ」のヒロイン・福来スズ子(趣里)や茨田りつ子(菊地凛子)が契約しているレコード会社。カエルのキャラクターがシンボルマークになっている。モデルはコロムビアレコードではないかと思われる。
「虎に翼」にも登場。

→朝ドラ辞典・目次へ戻る

–{朝ドラ辞典・さ行~}–

朝ドラ辞典・さ行

【最終回 (さいしゅうかい)】
はじまりがあれば終わりがある。半年の長いドラマの完結に、視聴者が固唾を呑んで見守る日。主人公の晩年をしんみりのこともあれば、主人公が亡くなることもあれば、主人公がまだまだこれからがんばると走っていくなど、様々なエンディングがある。
※関連語:はじまり

【最終回かと思った (さいしゅうかいかとおもった)】
話がいい感じにまとまって、最終回のような回
※類語:大団円

【再登場 (さいとうじょう)】
朝ドラはいくつかのパートに分かれていて、そのパート限りの登場人物もいるが、たまに再登場することがあり、歓迎される。とりわけ最終回近くに前半の登場人物が出てくると盛り上がる。

【佐賀(さが)】
はなわやさや香にネタにされる佐賀。九州地方にあり、戦国時代には秀吉が「名護屋城」を作って唐入り(文禄・慶長の役)の拠点にしていた。
「虎に翼」では花岡の故郷が佐賀。朝ドラで最初に佐賀が登場したのは1969年の「信子とおばあちゃん」。ヒロイン信子の生まれ故郷が佐賀だった。朝ドラで佐賀を印象付けたのは1983年の「おしん」。ヒロインおしんの嫁ぎ先が佐賀で、そこでの嫁いびりが壮絶で、良くも悪くも忘れられない地名となった。2015年、「ひよっこ」ではヒロインみね子の初恋の相手の故郷が佐賀で、彼はみね子との交際を親に反対され、家業を継ぐため佐賀に帰ってしまう。朝ドラでは何かといい印象がない県で、花岡が一瞬いやなキャラに見えたので、またかと思ったが、いやなキャラは偽悪的なものだったことがわかり、佐賀の印象が悪くならずに済んだ。

【挫折 (ざせつ)】
人生につきもの。朝ドラ主人公には意外とそれがなく、周囲の人たちが体験することが多い。主人公に挫折がなさすぎることを指摘されることもときにある。
※類語:壁、ピンチ、向かい風

【サプライズ (さぷらいず)】
ドラマの展開に重要な要素。

【三角関係 (さんかくかんけい)】
朝ドラに限ったことではないが、恋愛エピソードに、ヒロインがふたりの男性の間で心を揺らす三角関係は王道中の王道。

【3代  (さんだい)】
「あまちゃん」「カムカムエヴリバディ」など、祖母、母、娘と3代が登場することが多く、それぞれの世代の代表として人生が描かれる。とりわけ「カムカム〜」は3部構成で3代がそれぞれヒロインとなる画期的構成だった。3人が集まって家の秘伝のあんこを煮る場面は名場面だった。「舞いあがれ!」116回でも家族3代が集まって祖母祥子のジャムを煮た。

【3人(さんにん)】
朝ドラでは主人公と対比するもうひとりの人物、ライバル、親友、きょうだいなどが登場する。ただ、ふたりは二項対立になってしまうので、「3人」でバランスをとる場合もある。幼馴染や親友など。同性3人は「おひさま」、男女3人は「ひよっこ」「半分、青い。」「スカーレット」などがある。この3人組が人気になることも少なくない。

【3人組(さんにんぐみ)】
主人公の友人は、唯一無二のひとりの親友がいるパターンと、3人組のパターンがある。友人3人組は「おひさま」「スカーレット」「エール」などがある。ふたりだと対立はしないものの、どうしても対称的な関係になりやすいが3人だとバランスが良い。
※関連語:3人きょうだい

【死 (し)】
たいてい途中で誰かが死に、それが主人公のターニングポイントになる。主人公の死で終わることもある。

【ジェンダー (じぇんだー)】
朝ドラでは女性主人公が多いため、男性社会のなかで、女性も社会進出していこうと考えて張り切る物語が多く書かれる。例えば「カーネーション」は祭りのだんじりを
女性が引けないことを悔しく思ったヒロインはミシンをだんじりに見立てて洋裁の仕事に励むようになる。「あさが来た」では夫がふらふらと遊んでいて、ヒロインのほうが事業に興味を持っているという逆転が描かれた。女性は結婚して夫を支え子供を生み育てることが当たり前と考えられていたなか、そうではない価値観を模索してきたのだ。「舞いあがれ!」では一步進んで、「女とか男とか関係ない」(刈谷)というセリフが登場した。

【時間経過 (じかんけいか)】
主人公の人生、半生を描く長いドラマなので途中、時間が一気に飛ぶときもある。

【仕事 (しごと)】
お仕事ドラマの側面もあり、主人公の仕事が何であるかが売りのひとつにもなっている。

【師匠 (ししょう)】
家族以外でヒロインを導く人物。ひとつの道を極めた人物でヒロインの人生に大きな影響を与えることになる。「半分、青い。」の秋風羽織(豊川悦司)、「スカーレット」のフカ先生(イッセー尾形)など。

【実際の出来事 (じっさいのできごと)】
朝ドラでは実際にあった出来事が描かれることも少なくない。戦争、震災、コロナ禍など。それらが視聴者とドラマを結ぶ共通体験となる。

【失恋 (しつれん)】
朝ドラのヒロインの初恋はたいてい実らない。

【自転車 (じてんしゃ)】
人物の躍動感を出すために有効な小道具であり、朝ドラでは女性の自立を表現する小道具でもある。「純情きらり」「あさが来た」「カムカムエヴリバディ」などでヒロインが自転車に乗っている。とりわけ「あさが来た」ではヒロインがまだ女性が自転車を乗りこなすことが珍しいとされていた時代に颯爽と乗りこなしていく。
「カムカム」では初代ヒロイン安子が初恋の相手と自転車を練習するシーンが印象的に描かれた。
「舞いあがれ!」ではロードバイクに進化。女性の自立を超えて、人類の進化の象徴のように見える。

【地元 (じもと)】
朝ドラの舞台は全国47都道府県から選ばれる。すでに全国は制覇していて、「舞いあがれ!」の舞台となった大阪を舞台とした朝ドラは多数。長崎は「てるてる家族」以来の2回め。五島列島は初。舞台になる地域は主人公の地元であることがほとんど。そこで育まれて旅立つか、地元に残るかのたいてい2択。いずれにしても、主人公の人格形成に大きな影響をもつ重要な場所となる。「舞いあがれ!」の場合は五島列島は母の地元で、主人公の舞は東大阪生まれ。母の地元に主人公が行って影響を受ける作品はほかに「あまちゃん」がある。
※関連語:方言、名産

【地元枠 (じもとわく)】
地域活性ドラマの役割もある朝ドラ。舞台となる地域出身の俳優が必ず出演し、地元をさらに盛り上げる。

【姑 (しゅうとめ)】
ヒロインに立ちはだかる強烈な人物。昭和の朝ドラは「いびり」が定番だったが、平成後半から令和にかけてコンプライアンスが厳しくなって「いびり」は天然記念物的存在になってきている。

【祝宴 (しゅくえん)】
これまでの出演者が一同に介してお祝いするエピソードが一回はある。たいていは結婚式。ひたすらに幸せな回。

【夙川アトム (しゅくがわ あとむ)】
元芸人で俳優。「べっぴんさん」で演じた小山は、メガネで神経質そうに「大急ですから」といちいちいやみな百貨店の社員。人気が出て、スピンオフ「恋する百貨店」にもなった。「スカーレット」では、ヒロインの陶芸の兄弟弟子役。「ブギウギ」では、笑い少なめ、ビジネスライクな梅丸社員・佐原を演じている。メガネのあるなしで、雰囲気が随分変わる。

【主題歌(しゅだいか)】
ドラマがはじまる前に、スタッフ、キャストのクレジットと共に流れるもの。当初はインストゥルメンタルだったが、はじめて歌詞入りのものになったのが「ロマンス」(84年)。以後、人気アーティストが歌うことで話題のひとつになっている。その年の紅白歌合戦で主題歌を引っさげて出場することも、少なくない。歌詞がドラマの内容を暗示しているように感じるものもあり、ドラマと切り離せない。
「オープニング」参照。

【出産 (しゅっさん)】
ヒロインが結婚して出産するエピソードは定番。出産に苦しむ場面、出産直後の倦怠感を果敢に演じる場合もあるが「舞いあがれ!」ではなかった。
※関連語:妊娠、子育て

【消息不明(しょうそくふめい)】
朝ドラでは、途中で出てこなくなる登場人物がいる。それまで濃密に主人公に関わっていたにもかかわらず、その後、まったく話題にのぼらなくなるので、視聴者があの人はどうしたのか、手紙のやりとりくらいしないものだろうかと、毎度やきもきする。しばらくすると、ふいに再登場し、実は手紙のやりとりはあったということが説明されたり、されなかったり。推測にすぎないが、あの人どうしているんだろう、と思い出してもらうために、あるいは、サプライズ的に再登場したときの喜びを大きくするため、あえて消息に触れないようにしているのではないか。
※関連語:後出し、再登場

【将来(しょうらい)】
朝ドラはたいてい主人公の幼少時からはじまり、ある段階で、将来、なにをするか進路を考える局面がある。進学か就職か、結婚か仕事か、仕事だったら何の仕事か、家を継ぐのか、継がないのか等々、様々な選択肢のなかから何かを選び取ることが、ドラマの題材になる。ドラマの冒頭は、主人公が夢を達成した将来の場面からはじまることもしばしば。
※関連語:仕事、進学 、やりたいこと、夢、未来

【常連 (じょうれん)】
朝ドラにちょいちょい脇役で出演するおなじみの俳優たちがいる。
「舞いあがれ!」の風間役いちえは、大阪出身の俳優。朝ドラでは「舞いあがれ!」「おちょやん」「まんぷく」「べっぴんさん」に出演している、BK朝ドラ常連俳優のひとり。
「舞いあがれ!」堂島役の鈴木康平は「あさが来た」「べっぴんさん」「わろてんか」「カムカムエヴリバディ」「舞いあがれ!」に出演している。
 BK 常連、最大の人気者は海原はるか・かなた

【食事 (しょくじ)】
朝ドラには食事シーンがよく出てくる。基本、ホームドラマなので食卓が主な舞台になる。また、食が題材になり、ヒロインが料理を作る物語もちょくちょくある。家族や仲間たちが食事をしながら語り合う場面では美味しそうな食事が出てくる。舞台になった地域ならではの食も見どころのひとつ。
朝ドラに出てくる食べ物は美味しいという評判だと聞く。だが俳優たちは食べながらセリフを話すのがなかなか至難の業。聞いた話だと食器を移動させるときなど音をさせないように気を使っているそうだ(少なくとも「おしん」の頃はそうだった)。これらができると芸達者。しかもワンテイクでOKではなく何度か同じ場面を演じるので何度も食べないといけない。ほのぼの見えて演じてるほうは気が抜けないのである。

【女性パイロット (じょせいぱいろっと)】
女性パイロットを主人公した朝ドラは1976年、朝ドラ第17作「雲のじゅうたん」がある。時代は大正、ヒロイン真琴(浅茅陽子)は利根飛行学校で学び、日本人初の女性飛行士になる。大正時代の複葉飛行機を復元し撮影したことが注目された。
ヒロイン真琴はオリジナルキャラクターで、実際、日本で活躍した特定の女性飛行士をモデルにしてはいないと言われている。

【進学 (しんがく)】
主人公が成長して大学に進学するか就職する。朝ドラでは高校を出て進学することが多い。戦中戦後が舞台になることが多く、当時は進学したいけれど家庭の事情で就職せざるを得ないことが描かれる。現代を描いた「半分、青い。」「おかえりモネ」「カムカムエヴリバディ」(ひなた編)のヒロイン、も高校を出て就職していた。「舞いあがれ!」は大学に進学する珍しいヒロイン。

【新キャラ (しんきゃら)】
朝ドラに限ったことではないが、話の途中で新キャラが出てくると、
新展開がはじまる予感がして、空気が変わる。大きな転換の場合、有名俳優がキャスティングされ、貫禄の登場となる。

【新婚生活 (しんこんせいかつ)】
ヒロインが波乱万丈のすえ、結婚するとしばらくは夫婦のほのぼのした生活が描かれる。このまま出産してホームドラマ化して終わってしまうと良作にはならず、なにかしら一波乱、必要。
※類語:平和な日常

【駿河太郎 (するがたろう)】
「カーネーション」で糸子(尾野真千子)の夫、「舞いあがれ!」では舞(福原遥)の所属する大学サークル・なにわバードマンの伝説のOB役を演じた。

【聖子ちゃんカット (せいこちゃんかっと)】
「舞いあがれ!」の回想シーンで永作博美がしている髪型。80年代特有の髪型である。松田聖子のトレードマークで、くるくるドライヤーで前髪とサイドを気合入れて巻いて固めたもの。セットがなかなか大変で、女子の気合の表れである。ほかに「あまちゃん」ではヤング春子役の有村架純がこの髪型にして登場した。あまりないが80年代を描く場合、登場人物がこの髪型にしがち。そして80年代が青春だった視聴者がSNS で話題にしがち。

【倉庫(そうこ)】
一部で使用されているネット用語で、登場人物が役割を終えて出てこなくなることを「倉庫に入った」という。
しばらくしてまた必要になると「倉庫から出す」という。都合よく出入りすることを
揶揄した用語。再び登板する人物はいいが、倉庫に入ったきりの人物も少なくない。

【創作 (そうさく)】
朝ドラの主人公は作家であることも多く、創作の苦しみを味わう。エピソード「エール」は作曲家、「なつぞら」はアニメーター、「スカーレット」は陶芸家、「おちょやん」は俳優となり、ときに苦しんだ。「半分、青い。」では漫画家を志したが挫折した。主人公の相手役が創作にいそしむこともある。「舞いあがれ!」の貴司は歌人としてスランプを味わった。

【喪失感 (そうしつかん)】
朝ドラは喪失感を乗り越える物語が多い。代表的な題材は戦争。そこに震災が加わってきた。
朝ドラの初期に、戦争中の物語が多かったからか、喪失感が物語には必要と思ったからか、順番はわからない。普遍的なテーマであることは確かである。

【祖父 (そふ)】
ホームドラマ、大家族ドラマが基本の朝ドラには、おばあちゃんと並んでおじいちゃんも必須。お父さんがだらしない存在であることが多いなか、よくできた人物が多く、
主人公にとって最初の導師的存在になることも少なくない。
※関連語:祖母

【祖母 (そぼ)】
基本はホームドラマである朝ドラには欠かせない存在。核家族以前の大家族で暮らす時代を踏襲し、朝ドラでは主人公が三世帯で暮らしていることが多い。主として祖母は主人公にやさしくあたたかく接する存在。名優がキャスティングされ、作品を引き締める。人気キャラになることもある(例:「あまちゃん」の夏ばっぱ(宮本信子)。「ちゅらさん」のおばぁ(平良とみ))。ときには途中で亡くなってナレーションとして見つめ続けることもある。(例:「ごちそうさん」「おかえりモネ」)「あまちゃん」の「ばっぱ」、「舞いあがれ!」の「ばんば」など独特の呼び方もある)
※関連語:祖父

→朝ドラ辞典・目次へ戻る

–{朝ドラ辞典・た行~}–

朝ドラ辞典・た行

【第一印象 (だいいちいんしょう)】
第一印象は最悪だけど後々、重要な存在になることはラブストーリーの定番。とはいえ、朝ドラではそのパターンは少なめで、直球・ときめきの出会いのほうが多い。「ごちそうさん」のヒロインと相手役は、出会いが最悪のパターンだった。

【大河ドラマ(たいがどらま)】
朝ドラはホームドラマで、主人公の周辺半径5メートルの世界を描くものという印象があるが、時々、偉業を成し遂げた歴史的偉人の、志高い、スケールの大きな物語もあって、「大河ドラマのようだ」という声があがることがある。

【タイトル (たいとる)】
朝ドラはタイトルが命。わくわくするすてきなタイトルが毎回ついている。
「ん」がつくとヒットする法則というものがあった。内容が想像できるもの、でも端的にひとつではなく、いろいろな想像が広がるものがいいタイトルな気がする。

【高瀬耕造アナウンサー(たかせこうぞうあなうんさー)】
NHK随一の朝ドラ好きアナウンサーとして知られる。朝ドラの昼の再放送終わりにはじまる午後1時のニュースで見せる表情に、朝ドラを見たあとの心情が現れていると話題になったことをきっかけに、「おはよう日本」では朝ドラ送りをまめに行い、名物化させた。朝ドラ好きなアナウンサーとして、番組の解釈や解説などもさすがの詳しさで、朝ドラの特番の司会なども担当した。大阪局に異動になり、大阪局制作の「ブキウギ」ではついに朝ドラの語りを担当することになった。
※関連語:ナレーション 語り

【高畑淳子 (たかはた・あつこ)】
俳優。劇団青年座所属。朝ドラ出演作は「つばさ」「なつぞら」「舞いあがれ!」がある。
「つばさ」で演じたヒロイン(多部未華子)の母は朝ドラには珍しい自由奔放な人物で、夫と子供を残して家を出ていたが戻って来て何かと主人公の家をかきまわすトラブルメーカー的存在だった。
「なつぞら」で演じたのは北海道帯広で菓子店を営む元気なおばあさん。開拓民で主人公の義理の祖父(草刈正雄)とは同志的存在。
「舞いあがれ!」は五島列島で夫亡きあと、ひとりで船に乗り生活している主人公の祖父役。
3作の役の共通点をあげるとすれば、バイタリティあふれる豪快な人物であるということだろう。

【立ち聞き (たちぎき)】
物語の進行に必要なもの。立ち聞きなくして物語は進まないと言っても過言ではない。誰かが誰かの話しをこっそり聞いたことで、明るみになる真実。動く感情。そこから転がる思いがけない展開。和室、ふすまの時代は立ち聞きも比較的自然だが現代劇でドアで塞がれた場での立ち聞きはなかなか難しい。

【旅立ち (たびだち)】
朝ドラではたいていヒロインが地元からどこかへ旅立つ場面がある。慣れ親しんだ地元、家族との別れがたさに涙なみだ。バスや小舟や列車に乗って去っていくヒロインと、それを見送る家族の場面は定番。とりわけ、途中、外を見ると、家族が思いがけないところから見送っていて、ますます望郷の念が沸くというのがテッパンの名場面になる。
「舞いあがれ!」の場合は、田舎に短期間滞在し、いい体験をして、元の生活に帰っていくという応用パターンとなった。

【旅人 (たびびと)】
「舞いあがれ!」前半の貴司のようにたまに登場する旅人キャラ。「とと姉ちゃん」の主人公のおじさん鉄郎(向井理)や「カムカムエヴリバディ」の兄・算太(濱田岳)など。俳優のスケジュールの事情であろうか。

【たまたま (たまたま)】
「舞いあがれ!」第86回で多用された言葉。作劇上起こる不自然なまでの偶然をメタ的に表現したようだ。
※類語:ご都合主義

【たまり場 (たまりば)】
家族以外の登場人物が一同に介する場として、たまり場が朝ドラには必要不可欠。
喫茶店率が高い。スナック、飲食店等、その都度手を替え品を替えしている。
※関連語:お茶の間、秘密基地

【違うドラマが始まったかと思った (ちがうどらまがはじまったかとおもった)】
朝ドラは長丁場なのでメリハリをつけるためと思うが、半年間のなかで◯◯編、◯◯編といくつかのパートに別れている。「舞いあがれ!」では幼少期の五島編、なにわバードマン編と来て、航空学校編となっている。編によって舞台や時代、登場人物などが変わるので自ずと雰囲気が変わるのだが、時々、それとは関係なく作品のムードが変わることがある。そんなとき「違うドラマがはじまったかと思った」と視聴者は思う、あるいはSNS でつぶやく。その言葉が歓迎をもって吐かれることは滅多にない。
※関連語:キャラ変

【父 (ちち)】
朝ドラにおける父親には2通りある。尊敬できる父と困った父。話題になるのは困った父のほうで、いわゆる家長としての役割を果たさず家族を経済的に困窮させることによって、ヒロインを自立へと促す役割を果たしている。そういう意味で、尊敬できる父は早くに亡くなってしまうことが少なくない。女性主人公の率が高く、女性が男性と対等に自立して生きていくというテーマを内包しているため、どうしても男性社会が問題点になるように描かれがち。フカヨミすれば、敗戦後の日本の象徴でもある。つまり失った自信を取り戻そうともがいている存在である。

女性主人公の率が高く、女性が男性と対等に自立して生きていくというテーマを内包しているため、どうしても男性社会が問題点になるように描かれがち。フカヨミすれば、敗戦後の日本の象徴でもある。つまり失った自信を取り戻そうともがいている存在である。

【塚地武雅(つかじ・むが)】
朝ドラ出演歴:「まれ」(2015年度前期)ではヒロインの同級生の父で郵便局員、「おちょやん」(2021年度後期)では漫才師で、ヒロインをラジオドラマの相手役にと声をかける。「虎に翼」(2024年度前期)ではヒロインが大学を出て最初に務めた弁護士事務所の所長で人権派の弁護士。「虎に翼」第111回で亡くなったがその後放送された「あさイチ」にゲスト出演、」「天国からお届けしております」と挨拶した。

【ツッコミ(つっこみ)】
見てる側があれ?と思ったり、ツッコんだり、議論できる隙間を作ることで、視聴者の能動性を刺激する手法はSNS時代に増加した。ツッコミ箇所が多すぎると視聴者のストレスになり、逆につっこまれそうな部分を徹底的につぶしていくというやり方もあるが、これまたやりすぎると理屈ぽく堅苦しく、あるいは思考停止を生むため、なにごとも適度な塩梅が肝要である。

【罪 (つみ)】
登場人物が罪を犯すことが時々ある。窃盗、詐欺等。冤罪のときもある。捕まったのは
「ひまわり」の主人公の弟(冤罪)、「まんぷく」の主人公の夫(3回も捕まった)、「おちょやん」の主人公の父(獄中死)など。見逃されたのは、「カムカムエヴリバディ」の主人公の兄、「ちむどんどん」の主人公の兄や息子(物議を醸した)。

【ツンデレ (つんでれ)】
恋愛ドラマには欠かせない属性。クールでとりつくしまのない人物がふいにデレるギャップの魅力は絶大である。若手俳優はこの手の役がいかにうまくできるかでブレイクが決まると言っても過言ではない。

【停滞期 (ていたいき)】
朝ドラを書くことはマラソンのようなものと語る作家は少なくない。朝ドラはダイエットとも同じ? 長丁場なのでときには停滞期もある。そこを抜けるとぐっと面白くなる……という保障はない。視聴者はただただ見守るしかないのである。

【ディーン・フジオカ (でぃーん・ふじおか)】
「あさが来た」(15年度後期) 五代友厚役「らんまん」(23年度前期) 坂本龍馬役 「あさが来た」の五代役でブレイク。大河ドラマ「青天を衝け」(21年)でも再び五代を演じて話題になった。

【展開早い (てんかいはやい)】
朝ドラは半年という長い放送期間があり登場人物の半生や人生をたっぷり描けるところがいいところとはいえ、何十年もの人生をなぞるには短い。そこでどこかをはしょる必要がある。そのため、なにか事件が起こっても、次の回では即解決ということが少なくない。問題を引っ張り過ぎると視聴者にストレスがかかることへの配慮からだろうか。この展開の早さは作り手の腕の見せどころで、鮮やかに解決して気分よく見ることができる場合、心配したのになにこの展開……とがっかりする場合がある。マニュアル的にこの展開を行うと後者になり、視聴者は「展開早っ」と思うのである。

【転職 (てんしょく)】
朝ドラのヒロインが職業を変わることはよくあることなので気にしてはいけない。

【電話 (でんわ)】
ヒロインが地元から都会に出ると、地元とのコミュニケーションは電話か手紙になり、電話は大活躍。固定電話と手紙の時代は相手との間に距離があり風情を感じる小道具だったが、ケータイ時代になるといつでもどこでも気軽につながることができるので情緒は失せる。朝ドラでは現代ものが少ないのでケータイが登場する機会も多くはない。「舞いあがれ!」はケータイが大活躍中。

【トイレ(といれ)】
滅多にないが、ごくたまに登場する生活にはなくてならないもの。呼び方は、お便所、お手洗い、厠など、その都度違う。「梅ちゃん先生」(12年度前期)ではヒロイン梅子(堀北真希)はたびたび、トイレに行きたくなる描写があった。第7回では、梅子がたくさん食べすぎてお腹が痛くなって、お便所に立つ。第8回では、田舎に買い出しに行く列車のなかでトイレに行きたくなるという連続描写。第73回では、お父さん(高橋克実)がトイレにこもり、梅子が「お手洗いに入りたい」と困る。

「おひさま」(11年度前期)第8回では、ヒロイン陽子(井上真央)と育子(満島ひかり)、真知子(マイコ)が、英語教師オクトパス(近藤芳正)がなにかにつけて「女のくせに」と言うことへの抗議を込めて白紙の答案を出したことで、罰としてお便所掃除をさせられる。それを機に3人は永遠の友情を誓い、「お便所同盟」(白紙同盟)を結んだ。その時の記念として便所の取っ手が大切にされる。

「ブギウギ」ではスズ子が空襲警報中に便意を催し厠にこもり、愛助を心配させた。

類語:お便所、厠(かわや)、お手洗い

【蟷螂襲 (とうろうしゅう)】
BK朝ドラの常連俳優。「だんだん」「てっぱん」「カーネーション」「純と愛」「ごちそうさん」「マッサン」「べっぴんさん」「まんぷく」「おちょやん」「舞いあがれ!」で10作め。

【ときめき (ときめき)】
朝ドラに限らず、ドラマには「ときめき」が必要。
※類語:キュン

【ドジっ子 (どじっこ)】
舞はコーヒーのお盆をひっくり返したり、勉強に夢中になって遅刻しそうになってケータイを忘れたり、時々ドジっ子になる。 ドジっ子キャラが愛される場合もあるし、嫌われる場合もあり、さじ加減が大事。

【努力 (どりょく)】
朝ドラでは努力の過程が省かれると不満に感じる視聴者層が一定数存在しているため、適度に努力を描写する必要がある。
※類語:壁

→朝ドラ辞典・目次へ戻る

–{朝ドラ辞典・な行~}–

朝ドラ辞典・な行

【なかなか動けない人 (なかなかうごけないひと)】
令和の朝ドラに頻出する属性。心身のなんらかの状態によって長い時期、冬眠する動物や土のなかで芽が出るのを待つ植物のようにじっと家にこもっている人物。ヒロインや主人公はどんどん目標を叶えていく行動的な人物が多いため、そうでなくてもいいという配慮がされているようだ。

「舞いあがれ!」の佳晴(松尾諭)、貴司(赤楚衛二)、「ちむどんどん」の歌子(上白石萌歌)、「カムカムエヴリバディ」の錠一郎(オダギリジョー)。「おかえりモネ」の宇田川など。
※関連語:引きこもり

【ナポリタン (なぽりたん)】

喫茶店の定番。「あまちゃん」(13年)のナポリタンを「あばずれの食い物だよ」というのは名セリフ。昔のドラマや映画の不良はナポリタンを食べると春子(小泉今日子)が言う。

【ナレーション (なれーしょん)】
朝ドラの正式名称は「連続テレビ小説」。新聞小説のように毎日続くドラマで小説のようなムードを担うのがナレーション。俯瞰した視線で物語の背景や状況や登場人物の心理を解説する重要な役割である。

例えば、「スカーレット」では、ナレーション(中條誠子アナウンサー)は「みつけた焼き物のかけらを喜美子は旅のお供にしました」「あき子さんもあき子さんのお父さんも散歩のコースを変えたのでしょう。犬のゴンももう荒木荘の前を通りません」など。「おしん」ではナレーション(奈良岡朋子)が「祖母の一生を哀れと思うだけに怒りにも似た激しいものがおしんの胸の中にふつふつとたぎっていた」などいかにも小説風だった。

キャラクターとしてナレーションする場合も多く、「舞いあがれ!」ではさだまさしが五島名物”ばらもん凧”としてナレーションをつとめる。

「ひまわり」では萩本欽一が犬、「まれ」では戸田恵子が魔女姫人形、「ごちそうさん」では吉行和子がぬか床に転生した祖母、「おかえりモネ」では竹下景子が牡蠣に転生した祖母とユニークなキャラとして親しみを振りまいた。

あとあと出てくる人物であることもあり、「カムカムエヴリバディ」では城田優がヒロインひなたの初恋の相手、「なつぞら」では内村光良が亡くなったなつのお父さんで物語に絡んできて盛り上げることもある。

【ナレ死(なれし)】
登場人物が亡くなるとき、死の瞬間を描かず、ナレーションで「亡くなりました」と紹介すること。はじまりは定かではないが、大河ドラマ「真田丸」のとき、SNSで「ナレ死」と盛り上がって以降、定着したワード。亡くなるときに、涙の別れの芝居場があったほうが感動はするが、あっさり「ナレ死」も逆に印象に残るようになった。

【二宮星 (にのみやあかり)】
「カーネーション」(2011年度後期)でヒロイン糸子の子供時代を演じた俳優。成人糸子役の尾野真千子と共演しているタイトルバックも印象的で、視聴者に愛され、のちに糸子の次女役も演じた。2002年、大阪生まれ。11年経って二十歳になり、「舞いあがれ!」で朝ドラに再び出演した。

【妊娠 (にんしん)】
ヒロインが結婚したら妊娠して出産して子育てのターンになる。妊娠の兆候や出産中の苦しみの表現などがヒロイン役俳優の演技の見せ所にもなる。
つわりで、う。と口に手を当てるのは紋切り型の表現とされる。

【猫 (ねこ)】
ドラの主人公の家の周辺では猫の声がすることがよくある。姿を見せることは希でそのときは全国の猫好きが喜ぶ。レギュラー的に猫が出ていたのは「スカーレット」の大阪編など。「舞いあがれ!」では第56回、みじょかカフェの前に黒猫が登場した。
※類語:犬

【ネットスラング (ねっとすらんぐ)】
SNSで受け手から発生する言葉がある。#俺たちの菅沼 #反省会 #柏木公園 など

【年末年始 (ねんまつねんし)】
年間、毎日、月から金まで(土曜日は総集編)を放送している朝ドラだが、年末年始だけ少し一週間ほど休みになる。 通常、週5ないし6回単位で物語が構成されているが、年末だけは回数が減ることがある。「本日も晴天なり」(81 年)のアンコール放送(22年BSプレミアム)ではその週単位感を守り、あえて75回までで一旦休止し、翌週76回を放送するという当時の放送に準拠した区切りで放送した。75回と76回の間に時代が飛ぶからというのもあるだろう。 

【登る(のぼる)】
朝ドラヒロインは序盤、木や屋根に登ることがよくある。これは人物が規格外であることの表現のひとつと思われる。
※類語:水に落ちる

【呪い (のろい)】
呪いという言葉がドラマで流行ったのは朝ドラきっかけではない。「逃げるは恥だが役に立つ」(16年)がきっかけ。いまや、自分を縛ることをなにかと「呪い」というすっかり紋切り型の表現となった。

朝ドラ辞典・は行

【場当たり的 (ばあたりてき)
後先のことを考えず、物事を進めてしまう人物は視聴者の格好のツッコミ対象である。
※類語:ご都合主義

【はじまり (はじまり)】
初回に主人公の未来の姿が出てくることが時折ある。子役からはじまるので本役の姿をお披露目しておくためと、未来の姿を先に見せておくことで物語の行く先を安心かつ楽しみに見ることができる。例:「おしん」、「あさが来た」
※関連語:最終回

【橋本じゅん(はしもと・じゅん)】
劇団☆新感線で、古田新太と並ぶ看板俳優。92年、朝ドラ「ひらり」の気のいい医師役で全国区の人気に。が、その後、しばらく俳優業を休んで渡英。帰国後は、再び舞台を中心に活動する。映像でも活躍し、朝ドラでは「なつぞら」「エール」に出演している。熱く人情味ある役に定評がある。「エール」ではスピンオフの閻魔様役と演出家役と2役演じ、話題になった。

 劇団☆新感線で、古田新太と並ぶ看板俳優。92年、朝ドラ「ひらり」の気のいい医師役で全国区の人気に。が、その後、しばらく俳優業を休んで渡英。帰国後は、再び舞台を中心に活動する。映像でも活躍し、朝ドラでは「なつぞら」「エール」に出演している。熱く人情味ある役に定評がある。「エール」ではスピンオフの閻魔様役と演出家役と2役演じ、話題になった。

【8時15分 (はちじじゅうごふん)】
2010年「ゲゲゲの女房」で8時はじまりになるまでは8時15分開始だった。8時開始になってから低迷していた朝ドラ人気が復活したと言われている。「舞いあがれ!」第24回はミサイルのニュースによって本放送が休止になり、翌日、第24と第25回が連続で放送された。第25回は過去のように8時15分はじまりとなった。
※関連語:8時

【初恋 (はつこい)】
初恋は甘酸っぱい経験。朝ドラでは初恋は実らないことが多い。一度失恋して、そのあとであった人と結ばれる。初恋は人生の過渡期。「舞いあがれ!」では舞はまだ初恋を知らないが、五島の一太(若林元太)が舞に初恋して、でもその思いは実らないところを担っているように見える。

【母 (はは)】
主人公を産み育てる、朝ドラには欠かせない存在。父は早逝したりだめな人だったりすることが多いことに対して、母は強く頼れる存在であることが少なくない。主人公をあたたかく見守る理解者だが、「つばさ」の母のように主人公を置いて出ていってしまうような人物もいる。また「おひさま」のように母が早逝するパターンもある。たいていはどんなことがあっても主人公の味方である。やがて主人公自身が「母」になり、「母」の心を知るのである。

【反省会 (はんせいかい)】
朝ドラファンがネットで作品批評を行うときに使う用語。かつてはこっそり裏の活動として行われていたが2022年、ネットニュースになるほど広く認知された。

【BK(びーけー)】
NHK大阪放送局の略称。日本の放送局所の呼出符号のNHK大阪放送局がJOBKだから。東京放送局はAK。朝ドラは、AKとBKが半年ずつ交代で作っている。AKが前期、BKが後期。東京と大阪では作風が違うと言われそれぞれの朝ドラのファンもいるらしい。
BKの朝ドラの場合、ヒロインほかメインの出演者は大阪に引っ越して撮影を行うことが伝統になっている。
※関連語:AK

【ヒーローもの俳優(ひーろーものはいゆう)】
朝ドラは国民的番組。ウルトラマンシリーズや戦隊シリーズも国民的番組。というつながりなのか、ウルトラ俳優や戦隊俳優が出演するとSNSが沸く。それだけ知名度があるということで、
ネットニュースのネタになりやすいのがメリットであろう。
年代的に、戦隊出身俳優は若手、ウルトラ俳優はシニア層の役でキャスティングされている。

【病院 (びょういん)】
朝ドラに限ったことではないが、ドラマでは病院、病室がよく出てくる。以前、筆者が訊いた話しだと、病室のセットはシンプルで作りやすいため、ドラマの後半、スケジュールがなくなってくると病室シーンを作りがちなのだとか。入院患者が寝ていて、見舞い客がその前に立つという画もだいたい決まっているから、撮りやすそうではある。

【病気 (びょうき)】
朝ドラに限ったことではないが、主人公が突如、倒れることは往々にしてある。病気がドラマの主題に関わる場合と、単にメリハリをつける場合とがある。前者はあざとくないように、後者は肩透かしにならないように気を配る必要がある。
※関連語:病院

【ヒロイン (ひろいん)】
主人公ですが、朝ドラの場合「ヒロイン」と呼ばれる。ヒロインはあれもこれもいろいろなことをパワフルに、やりすぎなほどやっていくことが多い。

【ピンチ (ぴんち)】
ピンチはチャンス。ピンチはドラマを盛り上げる。朝ドラではピンチになってもすぐに解決することが少なくない。たいてい翌日解決。
※類語:壁、挫折、向かい風

【夫婦 (ふうふ)】
ヒロインが結婚して夫婦のシーンが増えるのが常。食卓の会話、寝室の会話が定番。
※類語:結婚

【伏線 (ふくせん)】
重要な展開に関わることをあらかじめほのめかしてあるもの。そうとは気づかれないべきところ、近年、バレバレなものが視聴者には好まれる。フラグと混同されている節がある。本来の意味と誤解されがちな用語にはほかに「アドリブ」がある。
類語:フラグ
関連語:アドリブ

【仏壇 (ぶつだん)】
主人公の家の必須アイテム。亡くなった人と繋がる大事なもの。

【冬子 (ふゆこ)】
冬子という名前のヒロインが過去にいた。「てるてる家族」で石原さとみが演じていた。冬子の姉妹は、春子、夏子、秋子と四季の名前で統一されていた。父親が春男。朝ドラの登場人物は四季の名前がつくことがよくあって、「あまちゃん」ではヒロインはアキ。母が春子、祖母が夏。「おちょやん」ではヒロイン千代の姪が春子。「花子とアン」では嘉納伝助の娘が冬子。「あさが来た」では女中(清原果耶)がお冬。「本日も晴天なり」にも冬彦という名前が登場する。

【古舘寛治 (ふるたちかんじ)】
大阪府出身の俳優。演出も行う。一時期、ニューヨークで演技の勉強をしていた。 朝ドラでは「ごちそうさん」(2013年後期)で結婚詐欺師の役でインパクトを残す。「ちむどんどん」(2022年前期)でリニューアルオープンした沖縄料理店・ちむどんどんの客を演じた。「舞いあがれ!」(2022年後期)では舞の実家が営む町工場のベテラン職人・笠巻役。(たちは土口)

【プレミアムトーク (ぷれみあむとーく)】
「あさイチ」のコーナー。朝ドラ終わりに出演者がゲストで登場し裏話を語ることが恒例になっている。
※関連語:土スタ(土曜スタジオパーク)

【プロポーズ (ぷろぽーず)】
人生で大事な転機。たいていは男性のほうから言い出すが、「ごちそうさん」(13年度後期)ではヒロインから言った。「あなたを一生食べさせます。だからわたしを食べさせてください」(第24回)

【分解(ぶんかい)】
子供の探究心を表現するために、大切なものを分解してしまうというエピソード。「べっぴんさん」では主人公が靴を、その孫がカメラを分解。「らんまん」では万太郎が懐中時計を分解した。

【偏屈な人 (へんくつなひと)】
「梅ちゃん先生」の松岡(高橋光臣)、「ごちそうさん」の悠太郎(東出昌大)、「なつぞら」の坂場(中川大志)など。見た目はシュッとして頭もいいが、頭が良すぎてちょっと偏屈で、最初はヒロインとなにかとぶつかる。が、やがてかけがえのない存在になっていく。悠太郎や坂場はパートナーになるが、松岡はそこまでに至らなかった。

【奉公(ほうこう)】
戦前を舞台にした朝ドラでは、奉公に出る登場人物がよく登場する。家が貧しく、家計を助けるために働きに出て、その先で苦労する。代表的なものは「おしん」(83年)。ヒロインおしんが雪がつもった真冬の川を船で奉公先に運ばれていく別れの場面は名場面とされている。奉公先では理不尽な目にあい、逃げ出したりもする。近年では「おちょやん」(20年度後期)。では、ヒロイン・千代が父に売られた先は、幸い、いい人達で充実の日々を過ごすも、年季明けに父がまた彼女を売ろうとして逃亡することに……。「あさが来た」では、ヒロインの嫁ぎ先に奉公に来ている女中が、ヒロインの夫の妾になるならないでひと悶着あった。「スカーレット」は時代が戦後で、出稼ぎ。日本の歴史を知るうえで、奉公、出稼ぎという働き方の制度は避けて通れない。
※関連語:出稼ぎ

【放送休止 (ほうそうきゅうし)】
朝ドラこと連続テレビ小説は1961年から続いているご長寿シリーズ。放送時間帯(8時15分が2010年から8時に)や放送期間(月から土が2020年から月から金、土は総集編に)が変更になることはあるが休みなく続き、休むのは年末年始のみ。それが時折、休止になるのは大きな出来事が起こったときだ。

「舞いあがれ!」は第2回の放送が北朝鮮からのミサイル発射のニュースによってBS放送も本放送も休止となった(昼放送はされた)。
ミサイル発射によって休止になったのは「ひよっこ」(17年)以来。「エール」(20年)はコロナ禍の緊急事態宣言により撮影が中断したため2ヶ月半休止となった。ほかに「てっぱん」(11年)が東日本大震災で1週間休止している。

61年もの長きにわたり朝ドラが毎日規則正しく放送され続けることは平和の証に思える。
※関連語:L字放送 

【本歌取り (ほんかどり)】
過去の朝ドラのオマージュした表現が時々ある。本歌取りと言っていい。いずれにしても、対象の作品に敬意をもったうえで、新たに作り変えることである。パクリや盗作とは別次元の創作である。
※類語:引用

→朝ドラ辞典・目次へ戻る

–{朝ドラ辞典・ま行・や行・ら行・わ行}–

朝ドラ辞典・ま行

【 毎朝新聞 (まいあさしんぶん)】
朝ドラで出てくる新聞名はたいてい「毎朝新聞」

【マ―な一族 (まーないちぞく)】
デラシネで大樹(中須翔真)と陽菜(徳網まゆ)が買っていった「マ―な一族」は「カムカムエヴリバディ」でひなたの本棚にあった漫画。放送当時、某名作漫画のオマージュであろうと話題になった。
このように番組間を小道具が縦断することが時々、朝ドラにはある。
※関連語:使いまわし

【毎朝新聞(まいあさしんぶん)】
朝ドラで出てくる新聞名はたいてい「毎朝新聞」

【松坂慶子 (まつざかけいこ)】
「まんぷく」(18年度後期)でヒロインの母を演じた。「私は武士の娘です」が口癖の、武士の出であることにプライドをもっているしっかり者のお母さんで、生前葬を行う斬新な感覚ももって、最後まで愛された。
「らんまん」では主人公の祖母役。商家ながら名字帯刀を許された由緒ある家系。武士の娘ではないが、武士と並ぶ待遇の豪商の娘となった。
大河ドラマ「篤姫」では篤姫付の老女・幾島など、貫禄と愛嬌を兼ね備えた役柄が似合う俳優である。
※関連語:「わたしは武士の娘です」

【見えんでもおる (みえんでもおる)】
朝ドラでよく使われる概念。亡くなったかたは見えなくても共にいると思って生きること。妖怪の漫画を描く水木しげるの妻をモデルにした「ゲゲゲの女房」ではこれが全編を貫いていた。

【水に落ちる (みずにおちる)】
「朝ドラあるある」にヒロインが水に落ちるというものがある。ヒロインの規格外のパワーを表現するためか、物語の初期に、川や海に落ちるのだ。例:「あまちゃん」の海、「ごちそうさん」の川など。「舞いあがれ!」では舞が琵琶湖に落ちた。一回落ちて、ずぶ濡れになりながら、這い上がっていく暗喩でもあるだろう。水に落ちたらヒットするジンクスも?

【向かい風(むかいかぜ)】
「舞いあがれ!」では主人公がぶちあたる壁や困難をこの言葉で表現した。飛行機や凧は向かい風があってこそ飛べるもので、人もまた向かい風があってこそ高く飛べるという思いがこもっている。
類語:壁、挫折、ピンチ

【妾(めかけ)】
明治、大正時代を舞台にした朝ドラに登場する属性。「澪つくし」のヒロイン(沢口靖子)は妾の子設定で、父や本妻との独特の関わりが描かれた。が、最近は妾を持つことにネガティブな印象があるため描写を避け、「あさが来た」では、ヒロイン(波瑠)の夫(玉木宏)のモデルには妾がいたが、ドラマでは強い意思で持たないことを選択する流れになった。「らんまん」の寿恵子(浜辺美波)の母(牧瀬里穂)も彦根藩の家臣の妾設定で、寿恵子にもお金持ちの家の妾になる話が持ち込まれるエピソードがあった

明治、大正時代を舞台にした朝ドラに登場する属性。「澪つくし」のヒロイン(沢口靖子)は妾の子設定で、父や本妻との独特の関わりが描かれた。が、最近は妾を持つことにネガティブな印象があるため描写を避け、「あさが来た」では、ヒロイン(波瑠)の夫(玉木宏)のモデルには妾がいたが、ドラマでは強い意思で持たないことを選択する流れになった。「らんまん」の寿恵子(浜辺美波)の母(牧瀬里穂)も彦根藩の家臣の妾設定で、寿恵子にもお金持ちの家の妾になる話が持ち込まれるエピソードがあった。

【モデル (もでる)】
朝ドラには功績を残した実在の人物をモデルにすることが多く、オリジナル主人公よりもモデルがいたほうが人気が出るジンクスもある。

朝ドラ辞典・や行

【野球 (やきゅう)】
「舞いあがれ!」第31回で、貴司の父・勝(山口智充)が近鉄バッファローズ55年の歩みを綴った新聞の特集記事を見ている。2005年3月に近鉄バッファローズは解散、ファンの勝はユニフォームを店内に飾っていることもあり、解散はショックなことであろう。
野球は庶民男性の娯楽の最大公約数的アイテム。朝ドラでは男性の生活描写に野球が欠かせない。

朝ドラで描かれる時代は昭和が多く、サッカー人気にはまだ早く、庶民(主として男性)の娯楽が野球だった時代である。例えば、「カムカムエヴリバディ」ではラジオから「早慶戦」の漫才が流れていた。「エール」では主人公が甲子園の歌「栄冠は君に輝く」、阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」を作った。元阪神タイガース選手の掛布雅之は「エール」と「ふたりっ子」にゲスト出演し話題になっている。「ふたりっ子」の主人公の父は阪神ファン。「ごちそうさん」では菅田将暉演じる主人公の息子が野球少年だった。

多様性を模索する新時代、今後、野球が登場することも減っていくかもしれない。「舞いあがれ!」の佳晴(松尾諭)は野球でなくラグビー選手である。

【やりたいこと (やりたいこと)】
女性が主人公のことが多い朝ドラ。女性が抑圧されていた時代、女性たちがやりたいことを自由にできることが物語のテーマになっている。

【幽霊(ゆうれい)】
朝ドラでは死んだ人物が幽霊になって出てくることがよくある。
※関連語:幻

【夜の女(よるのおんな)】
明治〜昭和の戦後を舞台にした朝ドラでは、生活苦から、夜の女に身を落とす登場人物が描かれる。
たいていは、ヒロインの前に、親しかった人物が変わり果てた姿になって現れ、ヒロインが胸を痛める展開に。「おしん」では親友・加代があやしい店で客をとっていて、病気になり死亡、残された子供をおしんが引き取る。「カーネーション」ではパンパンになった親友・奈津に糸子が手を差し伸べる。「べっぴんさん」ではお嬢様だった悦子様が戦争で没落し、子供を養うために水商売をしていたが、大急百貨店の小山と再婚し再起する。
ヒロインは恵まれている分、世の中の不幸な人たちにも目を向け、できるかぎりのことをするという
道徳的な展開になっている。
※類語:パンパン、街娼、夜の蝶、水商売

朝ドラ辞典・ら行

【ライバル (らいばる)】
朝ドラに限らずドラマに不可欠なライバルの存在。ライバルがいてこそ主人公は輝く。

【ラジオ (らじお)】
「舞いあがれ!」では祥子が夫の形見として大事に持っていた。「カムカムエヴリバディ」ではラジオ放送開始と同じ年にヒロイン・安子(上白石萌音)が生まれ、ラジオと共にドラマが描かれた。「本日も晴天なり」のヒロイン元子(原日出子)は女性としてははじめてラジオのアナウンサーになったひとりで、タイトルもマイクテスト用の言葉をもじっている。「花子とアン」の花子(吉高由里子)はラジオのおばさんをやっていた。なにかにつけラジオが朝ドラには登場してくる。

 【ロングパス(ろんぐぱす)】
ネット用語で、伏線を回収するまでに、長い期間をかけること。
最終回の頃に、初期(子供時代など)のすっかり忘れていた出来事が出てきて物語に重要な役割を果たすと大いに盛り上がる。

朝ドラ辞典・わ行

【ワープ(わーぷ)】
時間や空間の概念を理屈を超えてすっ飛ばすこと。
※反対語:リアリティー

【「わたしは武士の娘です」(わたしはぶしのむすめです)】
「まんぷく」(18年度後期)のヒロインの母の口癖。

→朝ドラ辞典・目次へ戻る