2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育み、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。
CINEMAS+ではライター・木俣冬による連載「続・朝ドライフ」で毎回感想を記しているが、本記事では、舞が新たな事業を起こしていく22週目~最終週までの記事を集約。1記事で感想を読むことができる。
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もくじ
第102回のレビュー
第22週「冒険のはじまり」(演出:小谷高義)ではオープンファクトリーは成功したものの、参加したくてもできない工場もあることに舞(福原遥)は目を向けます。
誰一人取りこぼさない。舞の人助け精神が発揮されていきます。
うめづでひとり荒れている、金網を作っている小堺(三谷昌登)はこれまでのドラマだったらただのいやな人に描かれそうなところ、悔しい気持ちをどこにぶつけていいのかわからないのではないかと御園(山口紗弥加)は思いをいたします。自分の父もそうだったのかもしれないと。
明るい人でもこっそり悩んでいるかもしれない、不機嫌を撒き散らす人は何か悩んでいるのかもしれない、額面通りの人なんてあまりいない。表の顔に隠された想いに、日陰にひっそり咲いてる花に目をやるドラマなのです。
舞は金網を使った新商品を作らないかと小堺に声をかけます。でも、なにもしないまま潰れるのを待つしかない小堺。ほんとうはそんなのいやだけれど、いままでやったことないことに手を出す気力も体力もない。そこに舞は手を差し伸べるのです。
何かできないか、舞が相談した大洋製鋼の堤を演じたのはモンスターエンジンの西森洋一さん。東大阪が地元で実家が鉄工所で「町工場芸人」と呼ばれています。つまり、この方なりのやり方で町工場を盛り上げている人ですから存在に説得力がありました。
小堺役の三谷さんは京都出身の俳優さんなので、言葉がすこしやわらかく聞こえます。
「スカーレット」のヒロインのきょうだい弟子の二番さん役や「カムカムエヴリバディ」の助監督役など、人の好さそうな役が多かったので、場を乱す険しい役をやってもどこかやさしさが滲んでいるように見えます。
三谷さんは脚本家でもあって「スカーレット」の脚本も書いています。以前、インタビューしているので参考にどうぞ。
朝ドラ「スカーレット」に出演&脚本の快挙。三谷昌登に聞いた朝ドラ裏話
その頃、貴司(赤楚衛二)は旅をしながら子供に短歌を教える連載企画をリュー北條(川島潤哉)に持ちかけられます。
「家に帰れますか?」と質問するところが微笑ましいです。新婚ですからね。
「芭蕉だったら150日は帰れないところだよ」と笑う北條。芭蕉と比べるのがさすがですが貴司は芭蕉のような孤高の作家の道は選ばなかったようです。そういえば八木(又吉直樹)ってどうしているんでしょうか。彼は孤高の道を行ってるんでしょうか。
家のことだけでなく、デラシネのことも心配するのが貴司らしいです。背後に大樹(中須翔真)の気配を感じながら。デラシネを締めたら居場所のない子がいることを心配するのです。以前の貴司はデラシネがなくなって心が壊れてしまったのですから。
【朝ドラ辞典 朝ドラ(あさどら)】すっかり定着している「朝ドラ」は愛称。正式シリーズ名は「連続テレビ小説」。NHK広報さんに原稿を確認する際、朝ドラと書くと「連続テレビ小説」と修正される。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第103回のレビュー}–
第103回のレビュー
自暴自棄な小堺(三谷昌登)を励まそうと舞(福原遥)は金網を作った商品を作ろうと提案し、ハンモックを試作します。
これは小堺ひとりの問題ではなく、町工場全体の問題で、どこの町工場も小堺のように悩んでいるから、みんなで協力して、町工場全体を盛り上げようとします。
金網を使った風鈴とかハンモックとか、いまひとつぴんと来ないのですが、
何もしないよりはまし。こうやって試行錯誤することが大切です。ここから何かが生まれてくるかも。ひとりで動かずじっとしているだけだと何も変わらないですが一歩踏み出すと、人とアイデアが連鎖していきます。
ハンモックはやっぱりいまひとつでしたが、金網を新しくつくる建物にとりつける仕事が入ってきて、小堺の会社がすこしだけ息を吹き返しました。
コンセプトが町工場のものづくりを応援するというものだからか(いつの間に? 最初はパイロットを目指すドラマでしたよね)、御園(山口紗弥加)は舞たち町工場の人たちのがんばりを見て自分の生き方に疑問を感じ始めます。
「私は誰かががんばっているのをのぞきにいってるだけかも」
「がんばっている側にまわりたい気持ちもあるんだよね」
ここでの「がんばってる」は製造業という意味合いで使われています。御園の実家も町工場で製造業をやっていたから、その仕事に愛着があるんですね。
だったら「がんばってる」みたいなふわっとしたイメージの言葉ではなく、ここでははっきり「製造業」と言ったほうがよかった気がします。
と思うのは、新聞記者もがんばってると思うから。
舞がものごとを伝える大事な仕事とフォローしますが、このドラマ、多様性の時代に配慮して、ネガティブなものを作らないように、なにかとフォローが入るのですが、フォローしておけばなんとかなる的な感じも否めません。やなことを言ったあと「なんちゃって」と言えば毒が薄らぐような感じ。
製造業応援企画だとわかったうえであえて書きます。なぜなら製造業じゃない側の人間として心が痛かったから。
新聞記者だってがんばってます。出来事を右から左に伝えるだけじゃないんです。そのための言葉をがんばって考えているし、話を聞くためにどうしたらいいかを考えているし、決められた時間で記事を書くこともがんばっています。製造業ではないだけです。が、新聞の紙面づくりだってがんばって考えています。新聞という形ができるまでにどれだけがんばって、ああいう大きさや形、レイアウトが生まれたか。これだってものづくりだと思うんですよね。記者の仕事ではないですが。ひとつの記事が印刷されるまでの物語は、人力飛行機が飛んだりネジを作ったり金網を編んだりする物語の美しさとなんら変わりません。でもそれはまた別の話。
御園さんはもともと記者の仕事に興味がないのかもしれません。確かにわりと雑な取材の仕方をしているようにも見えました(なんといってもあの口の利き方)。だから営業に回されたのかな。それに、ほんとうに記者の仕事を愛していたらフリーになってもいいわけですしね。あのセリフは彼女なりの記者職を外された悔しさなのだと思いたい。小堺が悔しくて荒れたように。
【朝ドラ辞典 仕事(しごと)】お仕事ドラマの側面もあり、主人公の仕事が何であるかが売りのひとつにもなっている。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第104回のレビュー}–
第104回のレビュー
「どういうこと?」
「なんで舞が?」
「うちの仕事の延長なんてレベルやないなあ」
「反対してるのとちゃうで。ただ舞のカラダはひとつしかあらへんからなあ」
舞(福原遥)が東大阪の町工場を結びつけるために商品開発をはじめ、それを聞いためぐみ(永作博美)は上記のような言葉で心配します。
めぐみの心配をよそに町工場の人たちは盛り上がっています。希望を失いしょぼくれていた人たちが舞のおかげで元気になっていくのです。
舞は遅い時間までインテリア・デザインをしています。なぜかそのときは1階。2階だと貴司(赤楚衛二)を起こさない気遣いでしょうか。1階のめぐみは起きてきてしまいます。そのときの永作博美さんの起き抜けの顔がとってもリアルでした。
子供の頃は飛行機の絵をたくさん描いていた舞。いまやインテリア・デザインをするようになりました。絵を描いたり、機構を考えたりするのが得意であることは確かのようです。
うめづの鉄板の上でもノートを広げていると、御園(山口紗弥加)が起業を勧めます。しかもぐいぐいと「私も一緒にやりたい」と言い出します。舞を騙す悪魔のささやきのような言い方でこわい。営業に異動させられて先に期待できないし進退考えているから乗っかったれ〜と思っているようにしか見えないのはなぜなんでしょう。
それを聞いた雪乃(くわばたりえ)が「舞ちゃん、起業するの!」と大声を出し、帰り、店の前で、大きな声で騒いでごめん〜と謝っていると、めぐみが通りがかって「起業?」と聞きつけるという流れ。なかなか豪腕です。
と、ここで思い出したのは、先日、見た三谷幸喜さんの舞台「笑の大学」です。日中戦争の時代、喜劇作家(瀬戸康史)が、検閲官(内野聖陽)に喜劇は時勢に合わないとあれこれ要望を出されたりチェックを受けたりしながら、その無理難題をすべて受け止め台本を書き直していきます。いろいろな制約によって無理くりな展開になってしまうこともありますがそこをなんとかおもしろく見せようとする作家の矜持は、実際、三谷さんがテレビドラマを描いていて、プロデューサーから様々な直しをリクエストされた体験に基づいているそうです。
「舞いあがれ!」を見ていると、作家が突きつけられる様々な制約や要求が透けて見えるように感じます。
第103回で山田(大浦千佳)が舞を「お嬢さん」と呼んだことがSNSで話題になっていました。最初は舞を社長の娘がお気楽に会社に首を突っ込んでいると思って軽視していた山田が、舞の本気を認めて関係性がよくなっていたはずが、いまだに「お嬢さん」と呼んでいるのです。山田の心境はいかに?
親しみやもしかしたら大阪の伝統なのかもしれませんが、2015年の近代的な会社で、キャリアも積んだ舞を「お嬢さん」呼びすることに、舞の仕事のスタンスに対する批判めいたものをうっすら感じるのです。書いてる側も、舞のやっていることにうっすら疑問を感じているのではないかと。御園の言動にどこか利己的なムードが漂うのも、書き手の腹に落ちてないのではないかと感じてしまうのです。いや、作家はそんなこと微塵も思っていなくて、単に筆者の穿った見方かもしれませんが。
どんなに無理難題を課せられても、それをしぶしぶ、あるいは、なんとかかんとか対応するとその無理がうっすら出てしまう。無理を無理に感じさせずに華麗に乗り越えることができる作家は限られていて、それこそが才能です。桑原亮子さんは新鋭なので、朝ドラという大仕事を乗り越えて、大作家として舞いあがってほしいと願います。
【朝ドラ辞典 ヒロイン(ひろいん)】主人公ですが、朝ドラの場合「ヒロイン」と呼ばれる。ヒロインはあれもこれもいろいろなことをパワフルに、やりすぎなほどやっていくことが多い。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第105回のレビュー}–
第105回のレビュー
舞「御園さんが提案してくれはってん」
貴司「御園さんが?」
舞「私が起業するんやったら御園さんも一緒にやりたいって」
めぐみ「(しばし考えて)どんな仕事するの?」
この会話を見てると、御園(山口紗弥加)に舞(福原遥)が食い物にされそうで、家族が心配しているようにしか思えません。作り手側にはそういう話にする意図はまったくないと思うのですが、なんでそう思えてしまうのか。
めぐみ(永作博美)は社長としては舞にIWAKURAを続けてほしいと言い、母親としては好きなことをしてほしいと言います。「社長」「母親」のほかに、”めぐみ”としてはどう思っているのか。一番大事な”めぐみ”の気持ちを言葉にしてほしい。
口当たりのいい言葉とは別の、めぐみの気持ちが気になる第105回では、言葉とは何か問いかけます。
中学生になって交友関係が変わりデラシネに来なくなった陽菜(徳網まゆ)が、久しぶりにデラシネに現れます。
辞書を開いて「言葉ってこんなにいっぱい要らんくない?」と貴司に問いかけます。
中学では「やばい」「かわいい」「きもい」という言葉だけ言っていれば済むと言う陽菜に貴司はこう語りかけます。
言葉がいっぱいあんのはな 自分の気持ちにぴったり来る言葉を見つけるためやで
(貴司)
さすが、気持ちにフィットする言葉を短歌にしている貴司です。陽菜が中学で大樹(中須翔真)を排除する側に回ってしまっていることに罪悪感を覚えていることを貴司は見抜き、彼女のほんとうの気持ちに気づかせようとします。
自分の気持ちを掘り続けている貴司は、他者の気持ちの奥にあるものにも気付けるようです。だからこそ短歌教室をして、自分の気持ちが明確に自覚できない子供たちに手を差し伸べようとしているのでしょう。感情はただのエネルギーで、そこに名前をつけることで、その感情の出しどころがみつかるのです。
貴司の旅短歌の企画は着々と進んでいます。
公式Twitterに企画書の全貌が紹介されていました。
こちらは北條さんがデラシネに置いていった企画書です。北條さん気合い入ってますね。もう第3回までの案が考えてあります?
タイトルは「にっぽん一周、短歌おしえます」。
貴司くん、そのうち我が街にも来てくれないかなぁ…#朝ドラ #舞いあがれ #舞いあがれ美術図鑑 #らんまん pic.twitter.com/GOy7H7kyy5
— 朝ドラ「舞いあがれ!」 (@asadora_bk_nhk) March 1, 2023
これを見ると、旅の最初は五島で、2回目は、牧野富太郎ゆかりの高知です。次作の「らんまん」にかけた遊び心ですが、本編ではそこは見えませんでした。
さて、めぐみは、舞のことを心配して、悠人(横山裕)に相談します。当人の状況も心配されると「俺やで」と答えます。この「俺やで」というセリフは悠人の屈折した性格をよく表していますね。彼はいろいろあって変わったこともあるだろうけれど変わってないところもあってホッとします。
【朝ドラ辞典 起業(きぎょう)】ヒロインが起業することも朝ドラにはよくある。「あさが来た」は女性実業家の話で、「半分、青い。」も後半は会社を作って扇風機を作っていた。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第106回のレビュー}–
第106回のレビュー
舞(福原遥)は新規事業の事業計画を悠人(横山裕)に見せます。すると厳しい応えが帰ってきました。でも舞は退きません。東大阪の町工場はみんなつながっているので、ひとつが潰れたら連鎖していく。みんなを守るためにつなげる事業を起こしたいと譲りません。
悠人は舞のその強い決意を聞いて、ひとつの策を授けます。
新会社をIWAKURA の子会社にすること。
こうして舞は、IWAKURAの営業を辞めることになりました
IWAKURAの営業を辞めます と仏壇に挨拶する場面を見て、舞はいろいろ辞めているなあと思いました。
飛行機づくりを辞めて、人力飛行機を辞めて、パイロットを辞めて、営業辞めてーー
新しいことを始めるには何かを捨てたり辞めたりしないといけないので、舞は思い切りがいい人なのだなと思います。
不幸や挫折があって、いかんともしがたい局面から仕方なく何かをはじめることになる展開ではなく、自ら、辞めて、新たなことを始めるのです。
舞のほかに営業職のひと、全然増えていないように見えたけれど、大丈夫なのかな。
御園(山口紗弥加)も新聞社を辞めます。「よろしくねー」と舞の起業に頼りきって厚かましく感じるのですが、こういうひとがナチュラルにドラマに存在しているということは、こういうキャラを自然に受け入れられる人たちもいるってことですよね。多様性。
最近の若い世代は、一度勤めた会社で我慢することなく、さっさと見切りをつけて、転職してステージをあげていくそうですので、新世代の感覚を生かしたシナリオなのではないかと感じます。
ただし、舞の場合は、今回、東大阪の町工場の人たちを決して見放さないために新規事業をはじめるのです。
会社の名前は「こんねくと」に決まりました。つなげるのコネクトだとしゅっとしすぎているので、五島の言葉をプラスして、親しみやすいものにしました。
事務所は、あの柏木公園の前のビルです。このビル、オープンファクトリーの会場にも使っていましたね。
いつも「テナント募集中」の文字が目立って気になっていました。第106回では悠人と久留美(山下美月)のちょっといいシーンでも文字が写り込んでいて、最初からここで新規事業する予定になっていたーーつまり伏線だったのかと感じたのですが、ヤフーニュース個人で取材したチーフ・プロデューサーのコメントによると、東大阪の町工場の一帯が不景気でビルも空いてしまっている状況を表しているらしいのです。セットばかりで町全体の様子がさっぱりわからないですが(舞の子供の頃、お父ちゃんと高いところから町の全景を眺めた場面があったくらいですよね)、美術の工夫で寂れた町を表現していたんですね。
【朝ドラ辞典 伏線(ふくせん)】物語のなかで事前にほのめしておいたことが、後々、重要になってくること。気づかれないことが良さだったが、近年、誰もが気づかれるようにあからさまに用意されたものとなってしまった。類語:フラグ
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第107回のレビュー}–
第107回のレビュー
「舞ちゃんたちの新会社がいよいよ離陸しました」(ナレーション:さだまさし)
「おはよう日本 関東版」でも「パイロットになる話じゃないんですか?」と話題になっていました。最近の「おはよう日本」は「朝ドラ送り」というより、「朝ドラ」に関する雑談ふうで、でもそれが自然な感じでいいです。「朝ドラ」送り論はさておき、「パイロットになる話ではないのか?」という疑問は多くの視聴者の代弁になっています。
でも、あながちおかしくもないのです。第107回の冒頭に出てきた「離陸」という言葉には経済発展に関する意味があることをご存知でしょうか。
おそらくシニア層の方ならピンと来ていると思うのですが、ロストウというアメリカの経済学者が、経済の発展には5段階あると説いていて、「伝統的社会」「離陸のための先行条件期」「離陸」「成熟への前進期」「高度大衆消費時代」としているのです。
「離陸(テイクオフ)」とは経済がぐっと成長発展していく時期を指すのです。ロストウは日本の離陸は明治時代と言っています。
60年代の説だからいまならなんというかわかりませんが。はたして日本は明治以来の経済的発展を迎えるときは来るのでしょうか。
「舞いあがれ!」の舞いあがれ!はおそらく、経済的にも舞いあがれ!という願いがこもっているのでしょう。だから舞が起業していても話がずれてはいないのです。
ということで、第23週「飛躍のチャンス」(脚本:佃良太 演出:小河久司)では舞(福原遥)と御園(山口紗弥加)は資本金を出し合い、銀行から融資ももらって起業をします。
御園は退職金か貯金を資本金につぎ込んだようです。舞にただ乗りしたわけではなくてホッとしました。
事務所はまわりに助けてもらって引っ越し、家具等もまわりからもらったもので、節約しているようです。
最初の企画は、パンチングメタルを使った商品開発です。舞はランプを作ろうと考えます。「日常に特別な時間を灯す」をキャッチコピーにしました。
舞はやる気はあるけどややおとなしい分、御園のぐいぐい押しの強さで、いいコンビになっているようにも思います。
さて。経済面を担当している悠人(横山裕)は久留美(山下美月)と時々会って、投資の話などをしているようです。佳晴(松尾諭)とも仲良くなっているとかで、ほんとうの父とはうまくいかないままお別れしてしまったけれど、疑似父のようになっているのかもしれません。
【朝ドラ辞典 タイトル(たいとる)】朝ドラはタイトルが命。わくわくするすてきなタイトルが毎回ついている。「ん」がつくとヒットする法則というものがあった。内容が想像できるもの、でも端的にひとつではなく、いろいろな想像が広がるものがいいタイトルな気がする。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第108回のレビュー}–
第108回のレビュー
舞(福原遥)はパンチングメタルを使ってランプを作ろうと思いつき、試作してくれる業者に当たります。紹介されたのは、我妻花江(久保田磨希)で、職人出身の女社長です。
服装や態度など、いかにも大阪のおばちゃんという最大公約数的雰囲気を醸す我妻は最初はけんもほろろで、「ええご身分やな あないな大きな工場となると娘に会社つくって遊ばせとる余裕があんねんなあ」とばっさり。いや〜痛快ですね。
ところが、懸命に食い下がる舞に、一回だけつきあうと人情を見せます。舞が意外と現場のことを知っているのもよかったようです。
山田(大浦千佳)といい我妻といい、最初は厳しいけれど、人情はあるという
人たちに舞は囲まれています。「中途半端に投げ出したら二度と仕事せえへんで。一辺だけつきおうたげる」というのは「逃げんなよ」という小堺(三谷昌登)の態度にも似ています。職人の世界、とにかく信用が第一なのでしょう。
こうしてできたライトは側面は五島の風景のようで、海と灯台、天井には空と飛行機が照らし出されます。
「あさイチ」で博多華丸大吉さんは売れるか?と心配していましたが、かわいいと思うんですけどね。値段にもよるけど買ってしまいそう。でも何回か点けたらすぐに飽きて仕舞ってしまいそうですが。
その頃、久留美(山下美月)は長崎に行ってドクターヘリに乗ろうと考えていました。
「救命救急の看護を極めたい」と言う久留美。
その話にうめづの雪乃(くわばたりえ)が食いつきます。
勝(山口智充)「知らんやろ」
雪乃「知ってんねん」
という会話には、雪乃はきっとドラマ「コード・ブルー −ドクターヘリ緊急救命−」(フジテレビ系)を見ているに違いないと感じました。「コード・ブルー」は2008年にはじまって2010年にパート2が放送された人気ドラマです。これによってドクターヘリの存在が広く認知されました。
17年にパート3もできますが、「舞いあがれ!」はいま2015年頃なので、雪乃たちはそれを知りません。
久留美は看護師のキャリアアップしようと考えていますが、気がかりなのは父・佳晴(松尾諭)のこと。いまだ、安定していない父を置いて行くことが
できないと悩みます。
佳晴は悪いことは全然しないけれど、このまま安定しないでいると娘の足を引っ張ってしまいます。なんとかしてほしい。まあドラマなので都合よくノーサイドの津田(たくませいこ)が久留美に代わって支えることになりそうな雰囲気があからさまに漂っていますが。
【朝ドラ辞典 女友達(おんなともだち)】ヒロインにはたいてい女友達がいる。正反対の境遇で主人公を際立たてる役割。因縁のライバル的になるか、なにがあっても強い味方になるかはその時々。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第109回のレビュー}–
第109回のレビュー
離れたら離れるだけ強くなる心も絆も
(悠人)
唐突の悠人(横山裕)の名セリフ、来ました。
なぜ、このセリフ……といえば、久留美(山下美月)が長崎でドクターヘリに乗りたいと思いながら、佳晴(松尾諭)が心配で思いきれないから。
久留美の背中を悠人が押すのです。
悠人がこんなことを言うのは、自分が家族と離れているからでしょう。
そして、離れていても、家族が自分を気遣ってくれていたことを実感しているからでしょう。さらに言えば、そうであってほしいと願ってきたのでしょう。
その話をするのは、台風、停電で久留美の家に足止めをくらったから。
舞(福原遥)の試作したランプの前では少し話すことも変わりそうです。
久留美と悠人はなんだかいい感じになって来ているように見えますが、久留美が長崎に行ったら、ふたりも離れ離れ。それでいいのでしょうか。いま、久留美はお父ちゃんのことばかり心配していますが。
今後、津田(たくませいこ)が世話係になると想像しますが、悠人が世話係だったりして。すでにかなりお世話している(話し相手?)になっているようですし。男ふたりで、長崎の久留美に思いを馳せるのも一興です。
佳晴は居酒屋で働きはじめ経済面は安定してきたようです。ようやくラグビーができなくなった悲しみを断ち切ったんですね。人はいつだって再生できるのです。
台風の晩、舞と貴司(赤楚衛二)はデラシネにいます。貴司が執筆作業のためデラシネに籠もっているところ、めぐみ(永作博美)が出張で帰れないこともあって、舞もデラシネに残ります。とそこへ停電。ふたりは、毛布をかぶり、カタツムリのランプを灯して語り合います。
いつも、作業テーブルに向かい合って、語り合ってるふたりがカラダをくっつけあって親密感が増します。まあ、ご夫婦ですから親密なんですが、夫婦らしい雰囲気があまりなく友達のままな感じだったので、こういうシチュエーションがあってよかったですね。
もし子供ができたら……なんて話しもします。
とはいえ、いま、何月なのだろう、季節感がいまひとつわかりにくい。朝ドラって長い期間を描くものなので、何度も季節がめぐるから、年や季節感がわからなくなっていきます。
【朝ドラ辞典 夫婦(ふうふ)】ヒロインが結婚して夫婦のシーンが増えるのが常。食卓の会話、寝室の会話が定番。類語:結婚【朝ドラ辞典 結婚(けっこん)】ヒロインが嫁入りするとき「いままでお世話になりました」と三つ指をついて挨拶することが必須シーンと言われてきたとされるが、この儀礼表現は平成後半から令和にかけては減ってきている。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第110回のレビュー}–
第110回のレビュー
ようやくできたパンチングメタルを使ったランプを、大手のインテリアメーカーが目をつけて海外の工場を使って大量生産したいと言ってきました。
パンチングメタルの会社・仙波(森下じんせい)はすっかりノリ気です。
信用第一の職人の世界と思ったら、意外と薄情で……。
御園(山口紗弥加)は認められないと立腹しますが、舞(福原遥)はそもそも
町工場を盛り上げるためにはじめた事業なので自分たちの利益よりも町工場の魅力が広がるほうを選択します。
ただし、御園がアイデア提供と試作開発費をしっかり請求することにして、丸く収めます。御園がしっかり者でよかった。こういうときは彼女のように相手に気を使わない現実的な人が大事です。
結局、舞はあまりお金に困ってないんですね。「お嬢様の道楽」と言われるわけもよくわかる一件でした。
せっかく助けてくれた我妻(久保田磨希)をこんねくとに呼びつけて、企画が頓挫したことを伝える非常識。これはドラマあるあるで、撮影場所の都合で、
先方に出向くことができないのでしょう。でもこういうところにもやもやします。
我妻さんの工場を見せてもらったというセリフもあって。仕事するに当たって、挨拶がてら、舞たちがまず出向くべきでは? と思ってしまいますが、ドラマだから、ということと同時に、IWAKURAがいかに大きな会社で、東大阪の町工場のなかで顔役的な存在であることを表現しているとも考えられます。
当初、我妻はIWAKURAさんだから話を聞きに来たと言っていました。つまり、我妻はひじょうに尊大な態度をとってはいますが、出入り業者として、IWAKURA の傘下のこんねくとに御用伺いに来たようなものなのです。
何の実績のない新興のこんねくとですが、IWAKURAの威光という下駄を履かせてもらっています。かつて浩太(高橋克典)がせっせと汗水たらし自ら各所に出向いていた下請け時代とは違うのです。そう思うとめぐみ(永作博美)ってすごい! ここまでにIWAKURA をしたんですねえ。
めぐみは貫禄十分に、信用は簡単に手にはいらないものだと、舞を鼓舞します。
それにしても最初の仕事でこんなぐだぐだなことをして、我妻は怒らせたらこわい存在だったようなのに、仙波もどういう神経なのか。しょせん人間、私利私欲。ビジネスの世界、これが当たり前なのでしょうか。だからこそ、最初に契約を取り決めておいたほうがいいと視聴者にもいい学びになりました。
もうひとつのもやもやは、佳晴(松尾諭)のプロポーズ。津田(たくませいこ)とようやく長い春を終えようとしますが、もちかけ方がまるで「家政婦」
が必要みたいな感じで津田の機嫌を損ねてしまいました。
もやもや回でしたが、たぶん、明日の金曜日にはこのもやもやが晴れるにちがいありません。それがドラマです。
【朝ドラ辞典 家政婦(かせいふ)】朝ドラヒロインが結婚したときの「家政婦」問題は視聴者の共感問題として時々描かれる。はっきり言及したのは「マッサン」で、西洋人のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)は、「私、女中?」と夫の態度に抗議した。一方、仕事として家政婦や女中が登場することもある。「スカーレット」の貴美子(戸田恵梨香)は大阪で住み込みのお手伝いさんをやり、「おちょやん」の千代(杉咲花)も最初は女中奉公した。ヒロインの家の一員として女中キャラが描かれることもある。いずれも明治〜昭和初期までを舞台にした作品のなかである。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第111回のレビュー}–
第111回のレビュー
【朝ドラ辞典 妊娠(にんしん)】ヒロインが結婚したら妊娠して出産して子育てのターンになる。妊娠の兆候や出産中の苦しみの表現などがヒロイン役俳優の演技の見せ所にもなる。つわりで、う。と口に手を当てるのは紋切り型の表現とされる。
パンチングメタルのライトはこんねくとの商品になりませんでしたが、舞(福原遥)は前向きに新たな挑戦をします。
今度はチタン製の指輪です。佳晴(松尾諭)は津田(たくませいこ)に冗談交じりにプロポーズして玉砕したものの諦めきれず、指輪を贈ろうと考え、舞に依頼します。
金属アレルギーでアクセサリーができない津田のためにいいアイデアがないかということから、町工場の技術が生かされることになりました。
俺はまだ本気出してないだけ、という作品がありましたが、佳晴はついに本気を出し、走りはじめました。気のせいか、松尾諭さんも「舞いあがれ!」の初期よりも体重が落ちているように感じます。
ドーベルマン望月の復活です
(佳晴)
そんな手紙を用意して、久留美(山下美月)に読まれてしまいますが、ラグビーのユニフォームをよれよれながら着て、指輪を持って、ノーサイドに向かいます。
またしても舞台はノーサイド。舞と久留美に見守られながら再度プロポーズする佳晴。久留美と八神家の顔合わせを、ここなら自信をもってできると考えていた場所を、やっぱり勝負の場所に選んだのです。あのときは失敗しましたが、今回はーー
この日は津田の誕生日でした。誕生日にひとり、店の片付けをしていて、誰にも祝ってもらうこともないときに、チタンの指輪を特注してプレゼントされれば、どんなにユニフォーム姿がよれよれでも津田には輝いて見えたかもしれません。
八神母に体当たりして大不評だった佳晴が、今度は津田を抱えあげました。
恋が人を変える。佳晴は津田のために(?)仕事をはじめ、走ってカラダを鍛え、一度振られても諦めずすてきなアイデアで幸せを掴みました。
個人的には、やりがいある仕事に出会って、それで自信回復したうえで再婚も考えてーーのほうが好みですが、誰かのために頑張るという物語も悪くはありません。
20年以上、冴えない日々を過ごしていた人を松尾諭さんが、ふてくされたようなしょんぼりしたような表情も見せながら、惨めになりすぎず憎めない愛嬌のある雰囲気で好演されました。
こんねくとも順調なある日、舞の身体に異変がーー
大好きなお好み焼きを見て、ん〜という顔をした福原遥さんの表情がなかなかよかったです。口に手を当てなかったところが。
仕事が正念場のときに子供もーーと相変わらず舞はパワフルです。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第112回のレビュー}–
第112回のレビュー
【朝ドラ辞典 出産(しゅっさん)】ヒロインが結婚して出産するエピソードは定番。出産に苦しむ場面、出産直後の倦怠感を果敢に演じる場合もあるが「舞いあがれ!」ではなかった。関連語:妊娠、子育て【朝ドラ辞典 赤ちゃん(あかちゃん)】赤ん坊役は複数体制ながら、とてもかわいい赤ちゃんぞろい。
第24週「ばんばの歩み」(脚本:桑原亮子 演出:野田雄介)のはじまりは舞(福原遥)の出産。
貴司(赤楚衛二)が動揺している表情が珍しかった。また、あとから出てくる赤ちゃんのあやし方などが優しそうでした。
「何があっても 負けんと 前に進んでほしい」
(舞)
子供に名付けるとき、舞が子供に願ったことはこれ。おっとりして見えて、けっこう勝ち気です。
舞は個室です。世の中では個室と同室とどちらが多いのかーーネットで検索してみると、個室は贅沢という声もあれば、やっぱり個室が安心という声もありますね。梅津夫妻(山口智充、くわばたりえ)もやってきてしみじみしていました。このふたりは人が好さそうなので、揉めてないけれど、舞は梅津家の嫁という感じがまったくなくて、歩も下手したら岩倉家の孫という雰囲気になりそうだけれど、そんなことは関係なく、両家円満なのがいいですね。でもよくよく考えると隣同士で親戚になってしまって世界が狭いなあということ。
そして、さらに世界は狭くなっていきます。
悠人(横山裕)と久留美(山下美月)もつきあうことにーー。
久留美がいよいよフライトナースを目指し長崎に行くことになり、幼馴染3人でささやかにお別れ会をしていると、悠人がずかずか入ってきて、仏頂面で「俺とつきあわへんか」と言い出して……。
悠人「もうたまたま会われへんのやろ じゃあ計画的に会うしかないやん」
久留美「会いたいの?」
悠人の屈折した性格を久留美はよくわかっていて、「つきあおうか」と返します。
久留美は、佳晴(松尾諭)という屈折した人と長年暮らしているから、素直じゃない人の気持ちに寄り添えるのでしょう。
仏頂面が一瞬、笑顔になる。横山裕さんの表情の作り方が巧みでした。
悠人「にやにやすんなよ」
舞「してないし」
この兄妹の会話が良かった。
それにしても、「舞いあがれ!」は舞と貴司以外、いつも誰かが見てるところで告白しますね。皆さん、てらいがないのでしょうか。世界は狭いしプライバシーはないし、独特の関係性だなと感じます。
ところで、悠人の歩への出産祝いが気になります。
「この子が大人になる頃にはちょっとした財産になってるはずや」という置物。宇宙人じゃないと言いますが、今度はどんなデザインでしょうか。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第113回のレビュー}–
第113回のレビュー
祥子(高畑淳子)が脳梗塞で倒れ、めぐみ(永作博美)と舞(福原遥)が五島に向かいます。
幸い、症状はかなり軽く命に別状はなかったものの、左手と足の痺れがとれません。
これではもう船には乗れません。
祥子にとって生きがいである船。亡くなった夫のようなものですし、名前は娘の名前「めぐみ丸」です。そんな思いのこもった船に乗れなくなったら心の支えがなくなってしまううえ、生計も立てられなくなってしまうし、たとえ蓄えがあったとしても、手足が痺れて動きにくいといろいろ大変でしょう。
ひとり暮らしも無理そうです。ちょうど、愛用していたラジオも壊れてしまいました。夫の形見のラジオ。何度も修理してきたものがついに……。ラジオと祥子が重なり、切なさが募ります。
めぐみは決意して、祥子に東大阪で暮らそうともちかけますが……
「ひとりじゃなか、みんながおる」
(祥子)
これは「舞いあがれ!」でずっと描かれていることです。舞の「こんねくと」もそうですし、ひとりではできないことをみんなとつながって実現していくのです。
祥子もこれまでも五島の住人と手を携えて生きてきました。これからもそうできると考えています。
「まあドローンとや家族ぐるみのつきあいやねえ」とドローンを使った仕事をはじめた一太(若林元太)が言っていました。「家族ぐるみ」。これが大事なのです。
とはいえ、めぐみは心配でなりません。どんなにみんなが協力的でもほんとうの家族のようにはなりません。それぞれに家族があるわけで、毎日、ずっと面倒を見られるわけではないですから。
東大阪に引き取るより、めぐみが五島に戻る選択をするほうが得策のような気がしますが……。
「家族ぐるみ」といえば、舞とめぐみが五島に行くと、梅津夫妻が歩の面倒を見てくれます。もともと貴司(赤楚衛二)は岩倉に婿入りしたわけではなく、本来、歩は梅津の家の孫です。岩倉のリビングにわざわざ来なくても、貴司と歩が梅津家に行けばいいのに、とも思いますし、そもそも、隣なのだし、行き来したほうがいいように思いますが、そのためにわざわざ梅津の店以外の部屋のセットを建てるわけにもいかないのでしょう。岩倉家に遊びに来た体(てい)になります。
なにもかも舞に都合のいいように進んでいて、舞は他人の心配はするものの、他人に合わせることはなく、自分のやりたいことに他人がついてくるように流れを作り、私の幸せがあなたの幸せ、みたいなんだよなあ……というもやもやした感じは、勝(山口智充)の「はいチーズ、梅津、パファローズ」で払拭されました。笑いって大事ですね。
【朝ドラ辞典 家族(かぞく)】朝ドラのベースはホームドラマ。いろいろな家族の形、家族の問題、家族の幸せが描かれる。だから、舞台は家族の集まるお茶の間、居間が中心になっている。そこにはちゃぶ台やダイニングテーブルがあり、テレビやラジオがある。関連語:お茶の間、居間
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第114回のレビュー}–
第114回のレビュー
軽い脳梗塞で倒れた祥子(高畑淳子)を見舞って東大阪に帰ってきためぐみ(永作博美)と舞(福原遥)。
玄関に入るとき、隣のうめづで雪乃(くわばたりえ)が「おおきにありがとう」と客を見送る声が聞こえます。ちゃんと挨拶してから帰宅したほうがいいのに……、本来なら、梅津が舞の家にいまはなっているはずなのに……。
みんながつながって、助け合って……というわりに薄情。というお約束のドラマ小姑ツッコミをしておきます。
その後、勝(山口智充)と雪乃を呼び、五島の料理でお礼しつつ、祥子を東大阪に呼ぶ相談をします。
勝のボケに「ちゃうで」とツッコむ貴司(赤楚衛二)のやりとりにほっこりしつつ、なんで相談? 世話を手伝ってもらおうということ?
基本、賛成で、手伝う梅津夫妻ですが、勝が懸念事項を挙げます。子育てはだんだん楽になるが、介護は逆であると言うのです。確かに。育って手が離れる子供と、衰えていくばかりの親……。「なんかきつい言い方してもうてたらごめん」と勝はちゃんと謝ることも忘れません。こういうとこばかり気遣ってますけど。そもそも、祥子をいきなり慣れない東大阪に呼ぶことを第一に考えることが違和感です。彼女の希望・五島で暮らしたいを叶えることができないだろうかと、もっと議論すべきではないのでしょうか。ーーと思ったら、
そこはちゃんと、ゆくゆくは章(葵楊)に譲ろうと考えていました。
舞にはあくまでもやりたいことをやってほしい。それがめぐみの思いです。
ドラマだとめぐみと舞が五島に行く可能性から議論すると当たり前過ぎて退屈になってしまうから、視聴者の、ん? という違和感で感情を動かさないといけないものなのでしょうか。こういうところこそ、丁寧にデリケートにやさしさのあまり逡巡し葛藤する様を書いてほしい(「なんかきつい言い方してもうてたらごめん」)。
めぐみと舞が帰宅して、貴司がカレーを作って待っていて、みんなで食べようと家族団らんを強調したあと、祥子が病院でひとりで食事している対比が、家族一緒がいいよねを強調していて、しんどかった。
舞は舞で、夢が広がっていきます。2025年の万博に東大阪も参加しようとか、空と東大阪をつなげることとかを考え始めます。「空だったら舞ちゃんの得意分野じゃない」と御園(山口紗弥加)に持ち上げられて。
御園がなんでうるさく感じるのかとずっと考えていたのですが、山口紗弥加さんが近年、やばい系の役を怪演していたので、強引な印象が強くなっているのではないかと気づきました。「家族狩り」(14年)の「私、産むから」と強引に迫る役、凄まじかったので……。
ドラマがとりとめないから本日はレビューもとりとめなく終わります。今週、メインライター桑原さんの担当でしたよね。ちょっと意外。気持ちはもう最終週なんでしょうか(「なんかきつい言い方してもうてたらごめん」)。
【朝ドラ辞典 あとを継ぐ(あとをつぐ)】家族の物語なので、家業の継承問題もたびたび持ち上がる。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第115回のレビュー}–
第115回のレビュー
【朝ドラ辞典 川口春奈(かわぐちはるな)】「ちむどんどん」のヒロインの姉・良子でレギュラー出演。その後、「舞いあがれ!」で祥子の船・めぐみ号の後を継ぐ若葉役でゲスト出演。五島が地元らしいネイティブな雰囲気を出した。
「舞いあがれ!」がはじまったとき、五島出身の俳優として川口春奈は出演しないだろうかという声が視聴者からはあがっていました。朝ドラはその地域の出演俳優が出ることが常だからです。ただ、川口さんは前作「ちむどんどん」にレギュラー出演していたので、連続でレギュラーはなさそうでした。
終盤に来て、ようやく登場で、なんだかすっきりしました。五島の視聴者も嬉しかったのではないでしょうか。
祥子(高畑淳子)の体調が心配で、めぐみ(永作博美)はIWAKURAを章(葵楊)に譲り、ゆくゆくは五島に戻ろうと覚悟を決めます。が、すぐにはやめられないので、いったん、祥子を東大阪に引き取ろうと考えていました。
めぐみの思いを聞いて、祥子は涙します。最初は五島を離れたくないと言っていた祥子ですが、東大阪に行く決意を固めます。
カラダが動かない不自由さを知った祥子。これまでひとりでなんでもやってきた分、よけいに絶望が募ります。じょじょに不自由になっていくならまだしも、急に来たからよけいにつらいでしょう。これからできないことばかり増えていくと肩を落とす祥子に、舞(福原遥)は「できんなら、できることば探せばよかとぞ」と過去、祥子に教わったことを語ります。
うまく動けないうえ、五島の自然に囲まれていた人が、いきなりごみごみした街・東大阪に行くなんて考えられない気もしますが、祥子とめぐみの家族問題はあっさり(その前に長い長い確執期がありましたが)。こんなふうにあっさりと同居を説得できてしまうのは、現実ではなかなかない気がします。どうしても家を離れたくないと頑なになってしまうものです(経験談)。ただ、祥子はずっとめぐみと一緒にいたいのに意地を張っていたから、体調をきっかけにめぐみと暮らせることが嬉しくて、大きな決意ができたのかもしれません。まさに「できんなら、できることば探せばよかとぞ」です。自活できなくなったけど、とうとう娘と暮らすことができるのです。
こうして祥子が五島を離れることになり送別会が行われます。いつものメンバーに、さくら(長濱ねる)の謎の夫・むっちゃん・椿山修(前原瑞樹)が登場しました。以前メニューに描いてあった似顔絵にそっくりの人でした。前原瑞樹さんも長崎出身です。独特の語り口で、祥子さんは「カササギ」と
ロマンチックなことを語ります。
一太(若林元太)と百花(尾本祐菜)は無事結婚して仲良さそうです。百花は五島に移住を決意したってことでしょうね。百花は五島へ、祥子は東大阪へーー。それぞれ人生の転換点があるものです。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第116回のレビュー}–
第116回のレビュー
【朝ドラ辞典 家族3代(かぞくさんだい)】「あまちゃん」「カムカムエヴリバディ」など、祖母、母、娘と3代が登場することが多く、それぞれの世代の代表として人生が描かれる。とりわけ「カムカム〜」は3部構成で3代がそれぞれヒロインとなる画期的構成だった。3人が集まって家の秘伝のあんこを煮る場面は名場面だった。「舞いあがれ!」116回でも家族3代が集まって祖母祥子のジャムを煮た。
祥子(高畑淳子)が東大阪にやって来ました。
玄関の表札には「梅津」「岩倉」のほかに「才津」が加わりました。
祥子は、仏壇のあるめぐみの部屋に、ベッドを置いて、そこで生活します。狭そう……。
こうなると2階の舞たちだけ広々暮らしていてバランス悪いですよね。1階も祥子用にリフォームしてあげてー。呼ぶのはいいけど、快適な環境にしてあげてほしい。狭くても不便でも家族が一緒に暮らせればいいってことじゃない気がするんですが、いかがでしょうか。筆者が老人だったらこんなの絶対にやだ。長く自分なりの哲学(暮らし)があった者がこんなに簡単に違う環境に入れないと思います。
広大な五島と違って、祥子は小さくなって見えます。すきやきもお好み焼きも美味しそうではありますがぽそぽそゆっくり食べています。
うめづの雪乃(くわばたりえ)がお好み焼きが口にあうか気にかけていて、「およ」と大騒ぎ。笠巻(古舘寛治:たちは土口)まで「およ」と言い出します。どうやら俳優たちのアドリブのようです。
笠巻もまた、老人のひとり。やることのない所在なさを、祥子と笠巻が背負っています。古舘さんはまだ五十代、高畑さんも素顔は華やかな女優さん、にもかかわらず老いをみごとに表現しています。
みんな、祥子に気遣い、祥子ができることーージャム作りをはじめます。その前に、貴司(赤楚衛二)にデラシネにつれていってもらって、沢村貞子の「私の台所」を読み始めます。
沢村貞子さんは昭和の名女優にして、朝ドラ「おていちゃん」(78年)の原作者でもあります。
「私の台所」(今出版されているのは「わたしの台所」)には「ドラマのなかの姑」という項目があり、いじわるな姑をやると視聴者に敬遠されるが、姑には姑の言い分があることを慮って綴っています。
古い女と書いて姑と本にもありますが、ドラマでは古くなった女の辛さを高畑さんがしんみり演じるなか、新しいことも着々と動いています。
刈谷先輩(高杉真宙)が空飛ぶクルマを開発しているのです。
「あの倉庫の片隅にうずくまっとうのは未来の空を夢みる翼とよ」(刈谷)
こういうセリフ、なにわバードマンのときは時々出てきて、心震わされました。あの頃のワクワクが戻ってきそう。舞も再び空に気持ちを持っていかれそうで
す。
【朝ドラ辞典 ラジオ(らじお)】「舞いあがれ!」では祥子が夫の形見として大事に持っていた。「カムカムエヴリバディ」ではラジオ放送開始と同じ年にヒロイン・安子(上白石萌音)が生まれ、ラジオと共にドラマが描かれた。「本日も晴天なり」のヒロイン元子(原日出子)は女性としてははじめてラジオのアナウンサーになったひとりで、タイトルもマイクテスト用の言葉をもじっている。「花子とアン」の花子(吉高由里子)はラジオのおばさんをやっていた。なにかにつけラジオが朝ドラには登場してくる。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第117回のレビュー}–
第117回のレビュー
第25週「未来を信じて」(脚本:佃良太 演出:大野陽平)
「舞いあがれ!」もあと2週。ラス前をセカンドライターが描くというのも珍しいかも。よっぽど最終週に力を入れているのでしょうか。でも第25週もなかなか力が入っていると感じます。なにしろ、なにわバードマンのOB・刈谷(高杉真宙)と玉本(細川岳)が現れ活躍しそうなんです。
唐突に舞(福原遥)に電話してきた刈谷。倉庫を探してくれと言い出します。「空飛ぶクルマ」の試作開発を行っているのです。
「空飛ぶクルマ」ーー最近、この単語、ネットニュースで目にしませんか。大阪万博で実用化を目指して各社が開発に勤しんでいるようです。
クレジットにあった「空飛ぶクルマ開発部分・原案」の福澤知浩さんと中井佑さんは実際に空飛ぶクルマを開発している方々です。この方たちに取材して、リアリティを高めているようです。刈谷たちの開発物語は、この原案とされた方々の物語を知ることで補完されるでしょう。「プロジェクトX」的な感じですね。ここをもっと長い時間見たかった気がしますが、あと2週間です。
クルマの形をしたものが空を飛ぶの? と思いきや、舞が斡旋した作業場にあったのはドローン。ドローンが大きくなって人を乗せる? ホワイトボードに貼ってあったのは小型飛行機のようなデザインでした。
そして、ホバークラフトみたいな物体ができあがります。こういう場面は、朝ドラには珍しく男の子も楽しいのではないでしょうか。大きな男の子も小さな男の子も。
「誰でも気軽にふだんづかいできる乗り物」ということで、
「これからは人もものも自由に空を飛び交うねん」と舞はこの楽しい話を家族に語ります。
「昔とった杵柄」という言葉があります。体験は時を経ても身体が覚えているというようなことです。カーボンですねと素材にピンと来る舞。スワン号を思い出し、青春時代、大学時代に戻ったかのようにキラキラした表情になっています。やっぱり舞は飛行機が好きなんですね。
ずーっと飛行機の夢を求め続けている刈谷と再会して、舞の昔とった杵柄が動き出しはじめたようです。こういうことってある程度の年齢を経た人には体験があるでしょう。昔の仲間に会うと、昔に戻ってしまうというような。
夜、歩を寝かせつけながら、なにわバードマン時代を思い出す舞の表情。何もかもが殴り捨てて飛行機を飛ばすことにだけ集中していた、あの輝かしい時間。いまは、いつの間にか、飛行機から遠ざかり、でも別の幸せーー結婚、子供、事業とそれなりに充実しているけれど、それはあくまでも地に足のついた生活であり、あのときの夢いっぱいの体験は別格だったのだなあと思い出す。
年をとった者がどこかに置いてきた大事なことに思いを馳せる、その表情を福原遥さんが魅力的に演じています。
世界中の、ちょっと大人になってしまった人たちの心に寄り添ってくれました。
【朝ドラ辞典 オープニング(おーぷにんぐ)】出演者やキャストが表示されるパート。朝ドラのオープニングは歌ものとインストゥルメンタルと2パターンある。朝ドラにはじめて主題歌がついたのは、第32作「ロマンス」(1984年前期)。第48作「ひらり」(1992年後期)でDREMES COMES TRUEの「晴れたらいいね」が起用されて以降は、誰が主題歌を歌うかも朝ドラの注目ポイントになっている。紅白歌合戦でアーティストが主題歌を歌うこともあって、それも楽しみのひとつである。類語:主題歌、タイトルバック
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第118回のレビュー}–
第118回のレビュー
すっかり空飛ぶクルマに夢中な舞(福原遥)。こんねくとでも何か協力できないかと考えはじめ、御園(山口紗弥加)も作業場を見にいきます。
舞は飛ぶもの好きだからのめり込みますが、御園には未知のジャンルなので、最初は、ん?と思う気持ちはわかります。実際見ると、わ!となりますが、あくまで冷静で、町工場を巻き込めるなら参加する意味があると舞に釘を刺します。家庭もあるしとさらにひと刺し。御園の役割がこれまでいまひとつ明確ではなかったですが、こういう役割は必要です。
舞は自分の夢(空を飛ぶこと)に夢中な一方で、貴司(赤楚衛二)は短歌に行き詰まっています。でも自分のことは脇において、常に舞の話の聞き役にまわる、いい人です。
貴司を見ていると、朝ドラで好まれるヒロインの相手役は、ヒロインを自由に羽ばたかせてくれる理解者であることを再認識できます。
近年、最高の相手役は「あさが来た」の新次郎(玉木宏)でしょう。彼の場合、年齢もちょっと上で、あさ(波留)をリードしてくれて、自分のことは自分で解決し、どんなにあさが前進しても余裕で見つめているキャラで、だから安定感がありました。
貴司の場合は舞と同い年で自分の夢もあるため、どうしても舞の強さに押され気味になってしまいます。そして、うんうんと彼女の話を聞いて肯定し応援する役割になってしまいます。女性側としては
都合いい存在ですが、男性側にまわると、これでいいのかな?という気もします。
「舞いあがれ!」はなんとか貴司をヒロインのためだけにいる相手役にしないようにもがいているように見えます。短歌という、作家が実際やっていて思い入れのある創作を彼に託しているからです。だから、最終回が近くなってまとめに入っているにもかかわらず、貴司は自分の創作に悩んでいるのでしょう。彼が自分の物語から降りないように踏ん張って見えます。
さらに、当初、舞の恋の相手になるんじゃないか?と予想もあった刈谷先輩(高杉真宙)。結局、このひとは恋にまったく疎く、ただただ飛行機に夢中のキャラでした。時を経て、いまだに飛行機に夢中です。この人もまた、やりたいことに全力を注いでいて、とても存在感があります。
短歌と飛行機づくり、実体験や取材をもとに描いた、やりたいことをやる人物にはしっかりした骨格が備わります。
もうひとり、笠巻(古舘寛治 たては土口)。「舞いあがれ!」は浩太(高橋克典)が亡くなってから渋い男性の年上枠が少なくなりました。町工場のおっちゃんたちはいるにはいますがその他大勢な感じにどうしてもなってしまう。笠巻だけがどっしり構えています。引退したあとも時々出てきてくれてほっとします。このひとの重みや厚みは俳優・古舘さんが作り上げているものでしょう。
「やりたいことはやったらよか。わたしもめぐみもそうしてきたけん」
祥子(高畑淳子)
家族3代、女性がやりたいことを選択して生きていくことを描いています。老いてやりたいことがやれなくなった祥子は東大阪で暮らすようになりましたが、めぐみや舞の負担になっていないところがポイントです。実際の親の介護、親との同居ってこんなものじゃない気がしますが、ここで祥子が重度の介護が必要な存在になったら、舞のやりたいことができなくなります。いい感じにやりたいことができる物語なのです。
【朝ドラ辞典 やりたいこと(やりたいこと)】女性が主人公のことが多い朝ドラ。女性が抑圧されていた時代、女性たちがやりたいことを自由にできることが物語のテーマになっている。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第119回のレビュー}–
第119回のレビュー
祥子(高畑淳子)はすっかり読書に夢中。新たな趣味を獲得です。
貴司(赤楚衛二)の歌集「デラシネの日々」も読み、好きな短歌を読み上げます。
”海水の砂に手差して冷たさに痺れた指を水でぬくめる”(貴司の短歌)
「ぬくめる」がひらがなで良いと評価する祥子。たぶん、この歌は貴司が五島にいたときに作ったものではないでしょうか。きっと祥子も海水で指をぬくめた体験があるように感じます。
でももうそういう歌は作れないと悩む貴司。孤独な旅のなかでつくっていましたが、いまは孤独じゃないからでしょう。妻も子もいる、おだやかな毎日に、歌が出てこなくて苦しんでいるようです。
2階に水回りあるのに1階のキッチンに水を入れに行く貴司。2階の水回りは飲料水ではなくあくまで手を洗う用だけなのですね。お茶もいちいち1階に行かず気軽に飲めるようにしているのかと思いましたら違うようです。
ひたすら暗い貴司と違って、舞はうっきうき。
空飛ぶクルマに夢中です。ついには悠人(横山裕)を呼び出し投資家探しを頼みます。
悠人「ほんま飛行機好きやなあ」
舞「ふつうの飛行機ちゃうよ 空飛ぶクルマやでえ」
こんなふうに言ってますが舞が淡々としていて、夢中な感じがあんまりしません。なにわバードマンのときの実際に体(足)を動かしていたときだけ本物の熱がありました。「舞いあがれ!」の残念なところは熱っぽい言葉と丁寧な取材に依りすぎてそれを身体に置き換え可視化できなかったことでしょう。
その点、松尾諭さんは何かしら動きを入れてきます。タックルとか担ぎ上げるとか。今日は客のハンバーグを切ってあげていました。こういうことで体温がちょっとあがる気がします。
悠人はまだ存在しないものに投資するのは難しく、トップのカリスマ性が必要だと説きます。舞は刈谷先輩ならそれがあると信じています。トップのカリスマ性の内面はあっても見た目がちょっとーー素材はいいけど髪の毛がぼっさぼさとか服のセンスが……とかで刈谷をカリスマに改造するとか、何かそういう動きのある場面が見たかったです。まあもう刈谷に時間をこれ以上かけられないのはわかりますが。
なにせあと7回しかありません。
それにしても、存在しないものに人はピンと来ないという話はひじょうに共感します。歴史ものや、実在した人物の物語が人気であることはそういうことです。
たぶん、今日はWBC決勝をみんな見ていると思います。
その頃、めぐみは、章(葵揚)に社長を譲ることになります。いよいよ、めぐみが五島に行く、人生の転換点になりそうです。章は誠実で、能力もあり、たぶん、カリスマ性も発揮することでしょう。
【朝ドラ辞典 BK(びーけー)】NHK大阪放送局の略称。日本の放送局所の呼出符号のNHK大阪放送局がJOBKだから。東京放送局はAK。朝ドラは、AKとBKが半年ずつ交代で作っている。AKが前期、BKが後期。東京と大阪では作風が違うと言われそれぞれの朝ドラのファンもいるらしい。BKの朝ドラの場合、ヒロインほかメインの出演者は大阪に引っ越して撮影を行うことが伝統になっている。関連語:AK
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第120回のレビュー}–
第120回のレビュー
投資を得るにはカリスマ性が必要。刈谷先輩(高杉真宙)は3人の投資家の前で堂々と理念を語りました。とくにがんばって盛らなくてもカリスマ性あったー。
やたらと調子のいいことを言うタイプよりも、刈谷みたいに”実”のある人物は信用できます。
空飛ぶクルマの試作品も無事に宙に浮き、無事に投資を獲得することになりました。
長崎の久留美(山下美月)ももうすぐドクターヘリで飛べるそうで、東大阪に久しぶりに帰ってきて、悠人(横山裕)は将来のことを考えていると言います。交際も順調です。
悠人が久留美に将来の話をするのは、柏木公園です。こんねくとの前の、あの公園。言葉悪いですがかなりしょぼい公園なのに、重要なことがしょっちゅう行われる謎のパワースポット。
いい大人が公園に座って語り合うのもなかなか珍しいですよ。せめて見晴らしのいい公園であれば……。セットの課題です。でもいま、大河ドラマではCG背景になってきたので、朝ドラでもCG背景を取り入れる未来が来るかもしれません。
【朝ドラ辞典 柏木公園(かしわぎこうえん)】「舞いあがれ!」の東大阪編の舞台のひとつの公園。正式名称ではないが、舞と柏木が別れた場所であったことから自然発生的にネットでそう呼ばれるようになった。参照:ネットスラング
舞いあがれないのは貴司。3冊目の歌集を期待されていますが一向に書けず、1年間経過、2019年12月になってしまいました。
2019年12月の街並みに黄昏感。これは刻々と近づいている、あの疫病を物語っているのでしょうか。この頃、中国ではもうはじまっていましたよね確か。
それにしても貴司。そんなに書けないなんて心配です。そういえば、旅して子供に短歌を教える企画はどうなったのでしょうか。歩が生まれたからやめちゃった? それともとっくに終わってそれはそれで満足して次のことが思いつかない? 旅して子供たちに短歌を教えるという意義深い仕事なら、いつまでも続けていけそうだし、自分が書かなくても教えるならなんとかなると思うのですが……。
最近の朝ドラは、動けない時間があってもいいということを伝えた過ぎて、必ずそういう人物をひとり、入れてくる印象があります。
「舞いあがれ!」では佳晴(松尾諭)が怪我でラグビーを辞めてから定職につかず覇気のない日々を送っていましたが、ようやく再婚しノーサイドで働いていています(最初からノーサイドで働けばよかったと思うけれど)。それと入れ替わりに貴司が動けなくなっています。「ちむどんどん」では次女の歌子(上白石萌歌)が長いこと病弱で何もできないことをくよくよしていました。「カムカムエヴリバディ」では錠一郎(オダギリジョー)。「おかえりモネ」では引きこもっている宇田川さん(最後まで顔出しせず、声のみ)。
なかなか動けない人にとっては、それでも大丈夫と言ってもらえているようでホッとするのかもしれません。
【朝ドラ辞典 なかなか動けない人(なかなかうごけないひと)】令和の朝ドラに頻出する属性。心身のなんらかの状態によって長い時期、冬眠する動物や土のなかで芽が出るのを待つ植物のようにじっと家にこもっている人物。ヒロインや主人公はどんどん目標を叶えていく行動的な人物が多いため、そうでなくてもいいという配慮がされているようだ。「舞いあがれ!」の佳晴(松尾諭)、貴司(赤楚衛二)、「ちむどんどん」の歌子(上白石萌歌)、「カムカムエヴリバディ」の錠一郎(オダギリジョー)。「おかえりモネ」の宇田川など。関連語:引きこもり
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第121回のレビュー}–
第121回のレビュー
舞(福原遥)の波が順調な分、貴司(赤楚衛二)の波が下がっています。
すっかり短歌が作れなくなり、長らく黙っていたけれど、ついに舞に、短歌をやめようと思っていると打ち明けます。
貴司の苦しみを祥子(高畑淳子)は気づいていましたが、舞は気づいてませんでした。貴司はやさしいから自分の悩みを見せないようにしていたと祥子は慮りますが、いや、でもさすがに、けっこう仲良いふたりなのに、気づけないってことがあるのでしょうか……。
勝手な想像ですけど、貴司の落ち込みの一部に、舞があるような気がします。舞を応援するために短歌を作っていたけれど、自分がいなくても生きていけそうだから落ち込んじゃうのでは……。
もちろんそれだけでなく、根本には孤独が貴司の原動力で、結婚し子供もできて家族生活が中心にデンっと置かれたとき、モチベーションを見失ってしまったわけですが。
そこへ恩師・八木(又吉直樹)からはがきがきて、いまはパリにいるそうで。貴司は梅津、岩倉の家族会議を行い、大好きなおっちゃんに会いにパリに行くことにします。
おっちゃんに会いたい とうずくまる貴司は少年に戻ったように見えました。
2、3日の観光ではなく永い旅に行くようで、それだけの財力はあるようです、さすが。デラシネは祥子に任せます。以前、旅仕事をするとき、バイト募集をしてましたが、結局、バイトは見つからなかったのでしょうか。旅仕事の話がすっぽり抜け落ちている気がするのは気のせいでしょうか。
いずれにしても、貴司からいま見えるのは、幸せ過ぎる悩みなのです。なかなか贅沢です。なんとなくセットが地味なのでうっかりしてしまいますが、岩倉家はひじょうに裕福で、貴司も優雅に古書店をやりながら短歌をつくる売れっ子作家のようです。順調に生きている者がこのままでいいのかとふと、立ち止まるような話です。これに共感する視聴者ってどの層なのでしょうか。パワーカップルと呼ばれるような層でしょうか。
さて。舞のほうは、貴司を送り出し(玄関先で送り出し、空港まで行かないんですよ、あっさりしています。いまどきのパワーカップル←しつこい ってこんな感じなの? 撮影の都合があるから仕方ないと理解しますが)、空飛ぶクルマづくりに邁進しています。
なにわバードマンOBの渥美(松尾鯉太郎)、西浦(永沼伊久也)、日下部(森田大鼓)も集まってきました。倉庫がかつてのなにわバードマンの部室のような雰囲気がすこしあって、皆、それぞれ大人になりつつも、時代が戻ったような感じがします。
こっちには風間(いちえ)と堂島(鈴木康平)という若い世代が手伝いに来ています。デラシネにもそういう人がいたらいいのに。
それにしても八木って何者? 資産家?
【朝ドラ辞典 常連(じょうれん)】朝ドラにちょいちょい脇役で出演するおなじみの俳優たちがいる。「舞いあがれ!」の風間役いちえは、大阪出身の俳優。朝ドラでは「舞いあがれ!」「おちょやん」「まんぷく」「べっぴんさん」に出演している、BK朝ドラ常連俳優のひとり。「舞いあがれ!」堂島役の鈴木康平は「あさが来た」「べっぴんさん」「わろてんか」「カムカムエヴリバディ」「舞いあがれ!」に出演している。BK 常連、最大の人気者は海原はるか・かなた参照:蟷螂襲
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第122回のレビュー}–
第122回のレビュー
最終週「私たちの翼」(演出:田中正)入った「舞いあがれ!」。
2020年1月、貴司(赤楚衛二)をパリに送った舞(福原遥)は空飛ぶクルマにますますのめり込んでいきます。こんねくとはABIKILUと正式に業務提携しました。
試作品・アビキュラ2号を作りはじめた刈谷(高杉真宙)の、数字に強い人がほしいという希望に、舞は、五島で知り合った朝陽(渡邉蒼)を呼びます。目下、大阪の大学生で、惑星探査ドローンの勉強をしていて好都合。
成長した朝陽はいまもなお、星柄の服を着ています。好きなものは変わってない様子。伏し目がちで人と目を合わせず、ぶつぶつ独り言のようなことをしゃべり、一点に集中する朝陽を、刈谷たちも異様な目で見ず、すんなり受け入れます。こういうところにホッとします。まあでも朝陽が優秀そうだからでしょうけれど。たとえなんにもできなくてもこうでありたい。
その頃、貴司はパリは八木(又吉直樹)のアパルトマンに到着、恩師に悩みを吐露します。
自分では不本意なものが多くの人から褒められることや、幸せだと創作できないんじゃないかと迷う貴司。つまり、幸せから生まれた短歌が自分らしくないと思っているのでしょう。
八木は自身の体験も交え助言します。彼もまたかつて、孤独を埋めてくれた人のために詩を書くようになった変化を体験していました。
八木は亡くなった恋人の面影を探しながら詩を作っていたのです。
実際、そういう恋人がいたのかもしれませんし、八木の絶対に変わらない本質の象徴かもしれません。
呼ばれたから行くわ
(八木)
八木はデラシネを去ったときと同じ言葉を残し、部屋を貴司に明け渡します。
八木のパートはファンタジー。貴司の幻影のような存在です。メーテル的な(嘘)。
誰の声が聞こえる?
(八木)
そう問いかけて去った八木。貴司に聞こえる声は、舞の声なのでしょう。
舞を励ますために作った短歌はいい短歌でした。
自分がいなくても舞はばりばりやっていて、彼女を短歌で励ます必要がなくなったから自信が持てなくなったということと理解するのが最もわかりやすい気がします。愛だな〜。
八木のカップは欠けていて、清貧生活を送っていたようですが、このひとは他者の評価に揺らがず、自分の心に忠実に生きている。こうありたいものです。
恒例、小姑トークとしては、パリのアパルトマンにしては玄関ドアの高さが低くないか? ということです。それだけ天井を低く作った安いアパートという意味合いなのかもしれませんが。
【朝ドラ辞典 再登場(さいとうじょう)】終盤になると、これまで登場した人が再登場するサプライズがある。【朝ドラ辞典 サプライズ(さぷらいず)】ドラマの展開に重要な要素
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第123回のレビュー}–
第123回のレビュー
悠人(横山裕)と久留美(山下美月)が結婚を決めました。
遠距離交際中でしたが、お互い忙しくなかなか会えず、休暇で久留美が東大阪に戻ってきたとき、例の柏木公園で悠人がプロポーズします。
最初はなかなか会えないことに「人間なんかはひとりで生まれて ひとりで死んでくねん」といつもの調子の悠人でしたが、「そやけど長い人生50年くらいふたりで生きるのも悪くないかもな」と切り出します。
驚いた久留美が立ち上がった拍子に落とした手袋を拾って手渡す流れで、指輪を出して
指にはめる。この流れがスマート。
「こんなときだけ直球って」
「はいっていうしかないやんか」
久留美のほうがすこしひねくれた言い方になりました。悠人と久留美、素直とひねくれのバランスがうまくとれています。
悠人が屈折していて、久留美が健気。好感度の高いふたりなので、心から祝福したいのですが、どうしても気になるのが、その記念すべき場所が背景に「こんねくと」の看板のある、いつもの公園であることです。
悠人が雨のなか倒れて佳晴(松尾諭)に助けられた場所であり、久留美との運命が動き出した場所とも言えますが、背景に「こんねくと」があり、もし御園(山口紗弥加)が残業していたら……と思うと、他人事ながら落ち着きません。
舞(福原遥)はたぶん、残業してないでしょう。空飛ぶクルマに夢中ですから。型式証明をとるために荒金(鶴見辰吾)まで巻き込みます。すごいネットワークです。
まあでも、富裕層の悠人や、ばりばり働いている久留美が、派手でおしゃれな場所ではなく、大事なことはいつも地元の思い出の公園で、というのは良いことでもあります。
とはいえやっぱりここは東大阪推しのドラマでもあることですから、どこかいい場所を見繕うことはできなかったのか……。ロケだとアイドルファンが押しかけちゃうからでしょうか。
背景に「こんねくと」があるのも舞が、よかったね、とふふと笑って見守っているイメージが沸いて、微笑ましいとも言えます。
久留美が舞と貴司が結婚したときちょっとさみしいと言っていましたが、これで、舞、貴司(赤楚衛二)、久留美は幼馴染からファミリーになりました。めでたしめでたし。
そんななか、貴司だけがまだパリで苦悩しています。コロナ禍も拡大してきて、パリはロックダウン。コーヒーを買いに出たら外に出たらだめと押し戻されてしまいます。言葉も話せず、八木(又吉直樹)の助けもなく……、食べ物に困ってしまうのでは……。
でもこういうピンチが、貴司の本能ーー歌ごころに火をつけるのかもしれません。
ノーサイド、うめづ、公園……とドラマ全体の行動エリアがかなり閉鎖的なのことも、あえて登場人物を閉じ込めているとも考えられます。
閉じた場所から、空を見上げて、いつか飛ぶ―― 最終回まであと3回!
【朝ドラ辞典 実際の出来事(じっさいのできごと)】朝ドラでは実際にあった出来事が描かれることも少なくない。戦争、震災、コロナ禍など。それらが視聴者とドラマを結ぶ共通体験となる。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第124回のレビュー}–
第124回のレビュー
【朝ドラ辞典 コロナ禍(ころなか)】コロナ禍は令和の日本に大きな影響を与えた。ドラマでも「おかえりモネ」「カムカムエヴリバディ」「舞いあがれ!」でコロナ禍の状況が描かれた。「エール」では出演中だった志村けんさんがコロナ感染で亡くなるという哀しい出来事があったが、代役を立てず、すでに撮影したもので乗り切った。たまたま撮っていた表情を終盤使用した場面は話題になった。
今日、3月29日は志村けんさんの命日。2020年、年明けからじょじょに不安な様相を呈しはじめていたなか、有名人が亡くなったことで一気に状況が深刻になったことを思い出します。
個人的に記憶しているのは2月、とある打ち上げで出たコロナビールで乾杯しながら「コロナに負けるな」とか言って笑っていたこと。そのときはまだその後、3年苦しむとは誰も思っていなかったのです。その後、4月に緊急事態宣言が出ました。
「舞いあがれ!」のコロナエピソードはちょうど日程的にも当時を思い出させるようです。朝ドラでは終戦記念日などそのときのことを思い出させるようなエピソードを当日放送することも時々あります。
順調だった舞(福原遥)も、緊急事態宣言により業務が停滞をはじめます。
空飛ぶクルマ作業も止まってしまいます。刈谷(高杉真宙)は戦後7年、飛行機の開発をアメリカに止められたため日本の航空機産業は遅れをとった。そのことを肝に銘じてなんとしてでも作業を進めたいと焦ります。が、仲間たちの意見も様々。感染を心配し、いまは作業を止めたほうがいいと考える者もいます。3年前、世の中、こんな感じでしたね。
その頃、パリはもっと深刻な状況ですが、貴司(赤楚衛二)は思いがけず閉じ込められて帰国もできない状況に鬱々としているうちに、舞への思慕が募ります。「誰の声が聞こえる?」(by八木)と思ったら、舞の声でした。
いつだって舞が優しく傍らで、「貴司くん」「貴司くん」と呼びかけてくれていたことを思い出します。
貴司が舞を短歌で励ましていたような印象が強かったですが、他者とコミュニケーションがとりにくい貴司に、舞がいつも寄り添ってくれていたからこそ、彼はやってこれたのです。
パリのアパルトマンの窓から、夜間飛行する飛行機を見上げた貴司は、舞こそ自分の北極星だと気づいたかのように、瞳が爛々と見開かれました。
貴司、別人のようになりました。変身!という感じです。
舞の他者への思いやりは抜群。貴司を決してせっつくことなく、適度に放置していました。これ大事です。じゃんじゃん電話やメールされたらいやになりますから。そういえばじゃんじゃん派のリュー北條はどうしているでしょうか。
その代わりというわけではないですが、舞は刈谷に「空飛ぶクルマと未来で待ち合わせしているんですよね」と昔、刈谷が言っていたロマンチックなセリフ「未来と待ち合わせ」を引きながら、励まします。
舞の家には老人と子供がいて感染させたらいけないと仲間に言われた刈谷は「家に帰っても誰もいない」からとひとりで作業をしていました。刈谷はひたすら飛行機にすべてを賭けているのです。貴司、久留美……と孤独な視聴者が心を寄せるキャラがどんどん孤独ではなくなっているなか、刈谷がいてくれてありがとうと言いたい。
舞と貴司が離れていたことや、祥子(高畑淳子)が五島に帰りたいと思っていることから、舞は、離れている者たちがひとっ飛びで会いにいけるものへのアイデアを思いつきます。
すべての苦しみは、このためにあったーー。あと2回!
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第125回のレビュー}–
第125回のレビュー
舞(福原遥)が歩と飛行機を飛ばしていると、貴司(赤楚衛二)が帰ってきていかにもな劇伴が流れます。この曲が、コントとかで使われるようないかにもなもので、この場面をどういうテンションで見ていいのか迷いました。
そしてタイトルバック。なつかしい名前が連なります。町工場の人たちのなかに、藤沢紗江(大浦千佳)、藤沢哲(榎田貴斗)とあります。山田、藤沢と結婚したのですね。ネットニュースで山田は岩倉の親戚設定だったことを読みました。とすると、藤沢も親戚になったということです。岩倉、梅津、望月、山田、藤沢が親戚に。大ファミリーですね。
町工場、なにわバードマン、五島と来て、
10歳の歩が舞の子役だった浅田芭路さん。浦進役に一太の子役だった野原壱太さんとあり、なつかしさも極まれりです。
タイトルバック明けは、舞たちは2020年7月。コロナ禍のなか、空飛ぶクルマをアピールする映像を撮影しています。荒金(鶴見辰吾)もすっかり参加しています。
うめづで町工場の人たちが見ていて、IWAKURAは本格的に飛行機部品に参入することになったようです。
舞はABIKILUの執行役員になっています。
家族は拡大し、事業も拡大し、めぐみ(永作博美)も舞も商売の才能があったのですね。人とお金をどんどん増やしていく才能ってすごいです。
空飛ぶクルマの名前は「かささぎ」。さくら(長濱ねる)の夫・むっちゃんが言ってた祥子(高畑淳子)さんは「おれたちのかささぎ」と言っていたワードがここに生かされています。これもひとつの「伏線」でしょうか。
祥子=かささぎ つまり、五島で飛ぶかかさぎは、祥子の象徴なのだと思います。でも祥子は、2026年になると車椅子生活を余儀なくされるようになっていました。
あっという間に2026年に年が飛んでいます。大阪万博どうなった?
めぐみもようやく、引き継ぎを終えて、五島に祥子と移住することになります。コロナ禍があったから、ものごとが進まなかったのでしょうか。そこは描きません。20〜23年の苦労は視聴者の想像にお任せ。これをいま、再現しても、しんどいばかりなので、ワープして、この先はいいことが待っているとしたほうが得策です。
これらのことは、貴司の本「とびうおの記」に書かれた体(てい)になっています。
2027年、五島に祥子とめぐみが戻ってきて、歩と進が出会います。はじめに戻ったみたいです。
さあ、あとは、舞が飛ぶだけ!
【朝ドラ辞典 近未来(きんみらい)】現代ものの朝ドラでは近未来を描くことが時々ある。「ふたりっ子」「まんてん」「カムカムエヴリバディ」など。「ちむどんどん」では202X年だった。
【朝ドラ辞典 伏線(ふくせん)】重要な展開に関わることをあらかじめほのめかしてあるもの。そうとは気づかれないべきところ、近年、バレバレなものが視聴者には好まれる。フラグと混同されている節がある。本来の意味と誤解されがちな用語にはほかに「アドリブ」がある。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
「舞いあがれ!」をU-NEXTで視聴する
–{最終回のレビュー}–
最終回のレビュー
2027年、コロナ禍もすっかり終わっているようで、みんなマスクをしていません。
大阪万博も終わって、関西経済は活況から円熟を迎えているのでしょうか。
ABIKILUの開発した空飛ぶクルマも順調に使用されているようで、五島でも運行がはじまります。舞(福原遥)は「かささぎ」と名付けられたマシーンの初飛行の操縦を任されます。
初めての乗客は祥子(高畑淳子)。長らく五島を離れ東大阪に移住していた祥子がついに地元に戻るのです。6年のうちに車椅子生活になっていて、移動が困難そうですが、車椅子ごと乗車できて、島と島の間を快適な空の旅ができました。かささぎ祥子がかささぎに乗ったのです。
なぜ6年も、めぐみ(永作博美)が会社の引き継ぎを終えず、なかなか五島に行けなかったのか謎ですが、会社を丁寧に引き継ぎたい、めぐみも実は東大阪に未練があった、コロナ禍でいろいろ大変だった等々慮ることは可能です。
謎といえば、東大阪のノーサイドに、舞ゆかりの人々が集まって、舞の飛行の中継を見ていたことです。空先輩(新名基浩)は宮崎に帰っていたはずで、五島のほうが近いし、悠人(横山裕)と久留美(山下美月)も長崎から大阪に引っ越したのだろうかという疑問。
由良先輩(吉谷彩子)も外国から大阪に戻ってきたのだろうか。なによりも航空学校の仲間たちは、あちこち飛び回っているだろうから、五島に直行したほうがよさそう。財力もあるし。
彼らは、舞のいない東大阪にはなんの縁もありません。なのになぜ……。空さんは大学のOB会気分で来たと考えることは可能です。
ただ、ゆかりの人たちがたくさん集まって感動的ではありました。
舞がもう会えないと惜しがっていた柏木(目黒蓮)が舞のフライトを応援に現れたことも長年の胸のつかえがおりたようで良かったです。「柏木大丈夫かな」と迷子にならないか心配されているのも微笑ましかった。
柏木が五島に行って、若葉(川口春奈)と出会う、あるいはすれちがうシーンがあったらなおよかったかも。
皆がみつめるなか、舞は堂々とかささぎ号を操縦します。
思い出の灯台のうえを飛んで、島へーー。
「まもなく最初の目的地に到着します」という舞のセリフは、舞はこれまで回り道してきた末、ついに目標を叶えたのだということのようです。いろいろ挫折しながらもそこそこうまくいって見えましたが、パイロットになりたかったのだと思います。
それと、浩太(高橋克典)の夢も叶えたかったのだと。
「親父、夢かなったな」と悠人も感慨深げ。
なにわバードマン時代、人力飛行機を飛ばしたとき
「今日のためにここまで生きてきたんだと思えた」と刈谷(高杉真宙)が言ったセリフが回想で出てきましたが、最終回の舞はまさにそうだったのでしょう。
今日のためにここまで生きてきたんだ、と思うものに出会いたい、熱く胸焦がしたい。
ぐっと顔をあげて空を仰ぐ。そんな気分にさせてくれるドラマでした。
【朝ドラ辞典 最終回(さいしゅうかい)】はじまりがあれば終わりがある。半年の長いドラマの完結に、視聴者が固唾を呑んで見守る日。主人公の晩年をしんみりのこともあれば、主人公が亡くなることもあれば、主人公がまだまだこれからがんばると走っていくなど、様々なエンディングがある。
関連語:はじまり
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{「舞いあがれ!」作品情報}–
「舞いあがれ!」作品情報
放送予定
2022年10月3日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)
翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)
※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月 、目黒蓮、高杉真宙、長濱ねる、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、鈴木浩介、哀川翔/吉川晃司、高畑淳子 ほか
作
桑原亮子 、嶋田うれ葉、佃 良太
音楽
富貴晴美
語り
さだまさし
主題歌
back number「アイラブユー」
制作統括
熊野律時、管原 浩
プロデューサー
上杉忠嗣 三鬼一希 結城崇史ほか
演出
田中 正、野田雄介、小谷高義、松木健祐 ほか