『タイタニック』満席続出が大納得の理由、そして「今」映画館で観る意義とは

映画コラム

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2023年2月10日(金)より公開されている『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』が週末興行収入ランキングで5位にランクインし、連日満席の大盛況となり、特に首都圏ではチケットの争奪戦が繰り広げられている。

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なぜ満席が相次ぐのか?

なぜ満席が相次ぐのか?その大きな理由は上映回数そのものが少ないこと。他にも注目の新作映画がたくさん公開されているためなのだろうが、どの映画館でも1日1〜2回のみの上映に限られており、「編成ミス」という厳しい言葉もあがっている。

上映開始から1週間が過ぎた2月17日からも同じく1日1回〜2回上映で、3回に増えている劇場がいくつかあるという程度なので、観たい方はすぐに予約したほうがいいだろう。劇場の数そのものも全国258館と、やや少なめである。

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さらには、本作は2週間限定公開でもある。2月23日(木・祝)の上映終了日まであとわずかで、「今しかない」極めて限られた機会が設けられたことも、ただでさえ少ない上映回に観客が殺到するきっかけになったのだろう。今では公式にも「満席続出」の文言を挙げており、それがさらなる宣伝効果となり、終了日までやはり満席かそれに近い状態が続くことが予想される。



何より『タイタニック』が「誰もが知る名作」であり、公開から25周年が経ち劇場で観たことがない世代が多いことも、今回の満席続出につながっているのだろう。事実、筆者が観た回でも、平日の昼間にも関わらずもちろん満席で、周りを見渡すと、1997年の公開当時に『タイタニック』を劇場で観ていたであろう年齢層や、ご年配の方はごくわずかで、20代の男女が9割5分を占めていた印象だった。

また『タイタニック』は2021年5月に金曜ロードショーで2週にわたってテレビ放送がされており、前編が10.3%、後編が12.0%の高視聴率を獲得。関連ワードもTwitterのトレンドに数多く上がっていた。テレビで初めて観た若い世代にも「映画館で観たい」と思わせる力が『タイタニック』にはあったのだろう。2020年10月公開の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』で、映画館という場所の素晴らしさを初めて知った人も多いことも、理由にあるのかもしれない。

そして、実際に映画館で観た人からは絶賛の嵐。この『ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』版はFilrmaksで4.7点、映画.comでも4.7点という、全ての映画作品の中でもトップクラスのハイスコアとなっている。もちろん、すでに『タイタニック』のファンの方がレビューをしているバイアスもあるだろうが、そうではない「初めて映画館で観る」方からも感動の声が続々と届いているのも事実だ。

余談だが、イオンシネマ岡崎の公式Twitterがタイトルを「炊いた肉」と誤変換したことも話題に。こちらも良い宣伝になったに違いない。



※以降は『タイタニック』本編の内容の一部に触れています。未見の方はご注意ください。

–{ドルビーシネマでこその「夜」の美しさ}–

ドルビーシネマでこその「夜」の美しさ

そして、せっかく劇場で観るのであれば、筆者はぜひドルビーシネマ版をおすすめしたい。ドルビーシネマは「色の明暗がよりくっきりとわかる」映像が特徴。特に「黒を基調とした映像がよりバキバキにキマって見える」ので、暗いシーンや夜の場面が多い映画でこそおすすめしたい上映形式だ。

そして『タイタニック』のクライマックスは、まさに夜。船の明かりと、暗い海とのコントラストはより鮮明になり、スペクタクルシーンの迫力がマシマシ。しかも、夜空に輝く星の美しさも相まってか、より冷たく広い海上に取り残された時の恐怖も感じられるようになっていたのだ。

しかも、ドルビーシネマは「音声オブジェクト」と「天井スピーカー」を導入した音響システム「ドルビーアトモス」も導入されており、より立体感のある音の演出を楽しむことができる。今回の『タイタニック』ではその演出はもちろん、船が沈むときの轟音(空気の振動)により座席までがブルブルと震えることにも驚いた。「4D」上映に近い体験もできるというのは、なんというお得感だろうか。

そして、改めて申し上げておくが、このドルビーシネマ版『タイタニック』が観られるのも、2月23日(木・祝)までなのだ。ファンはもちろん、観たことがないという方も、優先的にドルビーシネマ版を選ぶことをおすすめする。

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映画館で観る「体験」を示唆するセリフ

映画の序盤に年老いたローズが、タイタニック号が沈むまでの過程のCG映像を、モニターで見るシーンがある。そこで彼女は、わかりやすい説明がされたことを感謝をしつつ「私が体験したのは、こんなものでは……」と呟き、そして自身の17歳の頃の物語を語り始める。

そこからスクリーンに映されるのは「そこに本当にある」としか思えない、巨大かつ豪華で「夢の船」と呼ばれるほどのタイタニック号の姿。乗り込んだジャックが「世界は俺のものだ!」叫ぶほどのスケールを、まさに「体験」できるのだ。

しかも、それはまだ序盤も序盤。メインは言うまでもなく、終盤のタイタニック号が沈んでいく、スペクタクルシーンだ。船内に水が溢れ、船が傾いていき、人々が垂直になった船の「後ろ」へと落下していく。やはり「そこに本当にいる」としか思えないほどの迫力とリアリティ、恐怖や悲劇が入り混じる複雑な人間模様、それはやはりスクリーンで観てこその体験であり、小さなモニターで映されたCG映像とは全く違うのだと、ローズのセリフを振り返って思うことができる。

また、タイタニックの調査員のブロックが「3年間、俺の頭の中はタイタニックのことでいっぱいだった。でも何もわかっていなかった」と言う一幕もある。これは、どれだけ資料や文献、はたまた海に沈んだタイタニック号を見たとしても、ローズが語る「物語」は知り得なかったということだ。加えて、この映画を観た観客は、その物語を「映画」で体験できる。

その体験は大きなスクリーンで、しかも「そこに来た観客と共に観る」一体感があってこそ、よりかけがえのないものになるだろう。

–{現代の若者にこそ届いてほしいメッセージ}–

現代の若者にこそ届いてほしいメッセージ

改めて『タイタニック』を観て思ったことは、本作で描かれた価値観は、25年の時を経ても全く古びていないということだった。それは生まれ持った環境だけでは何も決まらない、その人の自由意志こそが生き方を決めるということだ。

それはジャックがポーカーで勝ってタイタニック号に乗り込めた経験を、「人生は贈り物」「次にどんなカードが配られても、今を大切にしたい」と表現したことでも示されている。「親ガチャ」という言葉が流行っているような、生まれ育った環境を自虐的に表す若い世代こそ、この価値観は「ささる」のではないか。

「生きた証」を観ることができる

皮肉にも、ジャックはそのポーカーで勝ったからこそ死んでしまったのだが、彼の言葉と行動は間違いなくローズの人生を救った。そのジャックの生涯、またローズとの交流が短かったとしても、ローズにとってずっと大切な思い出、いや彼が「生きた証」になる。

その「生きた証」は実際にタイタニック号で悲劇に見舞われた、亡くなった方々にもある。例えば、生存者を捜すため救命艇に戻るように告げた“不沈のモリー・ブラウン”は実在する人物であるし、“最後まで演奏を続けた音楽隊”も実話に基づいている。

現代でも、大規模な事故や災害で亡くなる方は多い。その悲劇に見舞われる、または生前の姿を映画で観られることも「生きた証」そのものであり、その「鎮魂歌」にもなると思うのだ。だからこそ、『タイタニック』はやはり「今」観られるべき、普遍性と時代を超えた意義を持ち続ける名作なのだろう。

(文:ヒナタカ)

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–{『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』作品情報}–

『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』作品情報

ストーリー
1912年、処女航海に出た豪華客船タイタニック号。新天地アメリカを目指す画家志望の青年ジャックと上流階級の娘ローズは船上で運命的な出会いを果たす。身分違いの恋を乗り越え強い絆で結ばれていく2人。しかし不沈を誇っていた豪華客船は皮肉な運命に見舞われる……。

予告編

基本情報
出演:レオナルド・ディカプリオ/ケイト・ウィンスレット/キャシー・ベイツ/ビリー・ゼーン/ビル・パクストン ほか

監督:ジェームズ・キャメロン

公開日:2023年2月10日(金)

製作国:アメリカ