<罠の戦争>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

草彅剛主演の“月10”ドラマ「罠の戦争」が2023年1月16日放送スタート。本作は、草彅剛演じる議員秘書の鷲津亨が、愛する息子を傷つけられた復讐に燃えるリベンジエンターテイメント。共演は井川遥、杉野遥亮ら。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・第10話ストーリー&レビュー

・最終話ストーリー&レビュー

・「罠の戦争」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

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衆議院議員・犬飼孝介(本田博太郎)の第一秘書を務める鷲津亨(草彅剛)は、20年前、路頭に迷っていた自分に手を差し伸べてくれた犬飼に恩義を感じ、以来、命がけで犬飼に尽くしてきた。

その犬飼は、付き合いの良さと得意の土下座、亨の献身的なサポートにより、与党・民政党の議員として内閣府特命担当大臣にまで上り詰めた男。しかし、女性を軽視した発言で世論の強い反発を招き、幹事長の鶴巻憲一(岸部一徳)や厚生労働大臣の鴨井ゆう子(片平なぎさ)、そして内閣総理大臣の竜崎始(高橋克典)からも、どこか冷ややかな目で見られている。さらに、亨の友人で二世議員の鷹野聡史(小澤征悦)によると、犬飼が大臣秘書官に任命した息子の俊介(玉城裕規)は、地元の建設会社から不正な金を受け取っているらしい。

そんななか、大臣就任後初の政治資金パーティーが行われ、会場には鶴巻や竜崎も姿を現す。さらに、不穏な動きを見せる青年・蛯沢眞人(杉野遥亮)も、招待客に紛れ込み、犬飼の様子をうかがっていて・・・。

亨が、政策秘書の虻川勝次(田口浩正)、私設秘書の蛍原梨恵(小野花梨)らと招待客の対応に追われていると、妻の可南子(井川遥)から、中学生の息子・泰生(白鳥晴都)がけがをして、意識不明の重体だと知らせが入る。何者かによって歩道橋から突き落とされたらしい。ショックでうろたえる可南子を安心させる亨だったが、大臣の失言が炎上して仕事に戻らざるを得なかった。

翌日、何らかの事件に巻き込まれた心配をする亨に、捜査を担当する刑事から事故の可能性を告げられる。さらには犬飼大臣から思いもよらない要求をつきつけられ・・・。

第1話のレビュー

思わず「倍返しだ!」が頭に浮かぶ。月曜22:00から新たに始まった「罠の戦争」は、まさに新たな復讐劇。

セクハラやパワハラなど、世の中を生きていると遭遇するさまざまなハラスメントに対し、声を上げられず悔しい思いをしている方も多いかもしれない。このドラマは、そんな“泣き寝入りするしかない私たち”の心を、スカッと晴れさせてくれそうだ。

鷲津亨(草彅剛)は、誰もが認める敏腕大臣秘書。犬飼大臣(本田博太郎)の第一秘書として立ち働く、まさに右腕と言っていい存在だ。

会食の席で出会った相手の情報はつぶさに覚え、そっと大臣に伝える。失言で謝罪会見を開くときも、読み上げる原稿を作るのは鷲津。果たして、犬飼大臣の存在意義とは? と首を傾げてしまうほど、彼は鷲津がいなければ何もできない。

鷲津は、なぜこうまでして、犬飼大臣に尽くすのか。彼は、犬飼大臣に相当な恩があった。極限まで困り果て、まさに「途方に暮れ、動けなくなってしまった」過去、手を差し伸べてくれたのは犬飼大臣だけだったという。それが、20年もの間、尽くし続けてきた理由だ。

しかし、犬飼大臣は、信じられないやり方で鷲津の忠誠心をズタズタに踏み抜いた。

鷲津は、妻・可南子(井川遥)、そして息子の泰生(白鳥晴都)の3人家族で暮らしていた。仕事で忙しくしているさなか、泰生がいきなり事故に遭う。蓋を開けてみたら、学校帰りに歩道橋から落ちたと見られており、どうやら事故ではなく事件である可能性が高い。

そして鷲津は、果物と見舞金を持って病院にやってきた犬飼大臣から、驚くことを聞かされる。

「事件ではなく、事故だ」

「そういうことにしてくれ」

どうやら犬飼大臣は、何者かから依頼を受け、泰生が歩道橋から突き落とされた事実を揉み消そうとしているのだ。突き落とした真犯人からの打診か、それとも他の関係者か。現時点では定かではないが、少なくとも、鷲津を陥れようと企む人間がいるのは間違いない。

犬飼大臣は、何とか鷲津にこの件を飲み込ませようと必死だが、もちろん、鷲津や可南子にとっては承服できる問題ではない。いったんは受け入れたフリをしつつも、夫婦ともに復讐に乗り出す誓いを立てるシーンは、圧巻だった。

ここから、新たな復讐劇がスタートする。

鷲津と同じく、犬飼事務所に所属する秘書・蛍原(小野花梨)や、新入りの蛯沢(杉野遥亮)とも手を組む。蛍原は、上司である虻川政策秘書(田口浩正)からのハラスメントに悩んでいた。蛯沢も、どうやら犬飼大臣に対して私的な恨みがあるようだ。

すぐさま“復讐チーム”が出来上がるくらいには、この議員事務所には、元から問題が山積していたと考えてもおかしくない。

よくよく振り返ってみると、この犬飼大臣はジェンダー問題で失言を重ね謝罪会見を開くなど、かねてより対外的にも難アリの人物である。裏で細やかに動く鷲津が手のひらを返せば、ものの数秒で失脚してしまうだろう。

犬飼大臣が座から引き摺り下ろされるのも、時間の問題かもしれない。そうなると、俄然、真犯人は誰なのか? が気になってくる。

鷲津の本当の敵は、犬飼大臣ではないかもしれない。

※この記事は「罠の戦争」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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泰生(白鳥晴都)が歩道橋から突き落とされた事件をもみ消そうとする犬飼(本田博太郎)に、激しい怒りの炎を燃やす亨(草彅剛)は、息子の命を軽んじた犬飼を失脚させようと決意。私設秘書の梨恵(小野花梨)、新人秘書の眞人(杉野遥亮)の協力を得て、まずは大臣の懐刀である、政策秘書の虻川(田口浩正)を排除する作戦に打って出る。

女性秘書に対するパワハラ、釈明会見での原稿ミスと、犬飼のイメージを失墜させるミスを立て続けに起こした虻川だったが、それでも地位は盤石。亨によれば、虻川は事務所の金庫番で、犬飼も知らない金の流れをすべて把握しているため、うかつにクビにはできないという。亨は、虻川の生命線ともいえる裏帳簿を何とかして手に入れようと画策。その思惑に気づかれないよう、眞人には虻川の動きを見張ってほしいと頼む。

翌日、眞人は仕事を教わる名目で、朝から虻川と一緒に犬飼の地元へ。亨に言われた通り、犬飼失脚のため、虻川の行動に目を光らせるが、そこには、今は亡き大切な家族への思いが秘められていた――。

一方の虻川は、亨が自分を陥れようとしていることをすでに察知していた。そして、亨が雑誌記者の熊谷由貴(宮澤エマ)と手を組み、犬飼の息子・俊介(玉城裕規)の不正を暴こうとしていることを知った虻川は…。

第2話のレビュー

息子・泰生(白鳥晴都)を突き落とし、意識不明にさせた真犯人を探し出すべく、行動を開始した鷲津(草彅剛)。そのためには、犬飼大臣(本田博太郎)の失脚が余儀なくされる。鷲津が最初に定めたターゲットは、犬飼事務所の政策秘書を務める虻川(田口浩正)だ。

彼が、セクハラ・パワハラ当たり前&言動に難ありまくりの問題児であることは、1話の時点で周知のとおり。多くの視聴者が「なぜクビにならず事務所に留まっているのか?」と思っているに違いないが、虻川が持つ最終兵器のために、大臣はなかなか彼を切れない。

それは、裏帳簿である。

犬飼でさえ把握していない金銭の流れを、アナログで記録した茶表紙の手帳。それがあるかぎり、虻川自身も「そう簡単に俺のクビは切れない」とたかを括っているのだ。これまで彼がやりたい放題だった理由は、これだったのかもしれない。

「大臣を潰すために、まずは虻川を排除する」

暗い目でそう宣言する鷲津を見て、蛯沢(杉野遥亮)は鼓舞されつつも、少し恐怖を抱いたようだ。

しかし、蛯沢も犬飼に対して強い恨みを持つ側である。彼には兄がいた。潰れかけた会社をなんとかしてもらおうと、犬飼に対し陳情したにも関わらず、「善処します」の一言で流されてしまった兄が。最終的に、兄は過労の末、亡くなってしまう。こっそり会食に紛れ込み、生卵をぶつけるくらいでは晴れない恨みのはず。

蛍原(小野花梨)も、強い味方だ。2話では活躍シーンが控えめだが、大臣に対し激昂しそうになる蛯沢をスマートになだめたり、虻川に対し「救いようがないよなあ、自覚のないクズって」と煽ったりしてみせる。彼女の立ち振る舞いは、油断するとドロドロしすぎてしまう復讐劇を、良い塩梅に中和して見せている。

鷲津は、虻川を陥れるため、あらゆる罠を仕掛ける。会見用の原稿をすり替える、「虻川が、犬飼大臣失脚のネタを週刊誌に売ろうとしている」と噂を流す、挙げ句の果てには暴行事件をきっかけに警察に連行までさせた。なかなか容赦がない。

すべては、泰生を歩道橋から突き落とした真犯人を、虻川の口から明らかにさせるためだった。しかし、鷲津が与えた「最後のチャンス」に対し、虻川は「知ってても言わねえ」の一辺倒。

最終的には、最後の切り札・裏帳簿が見つかってしまい、大臣の手によってクビにされてしまった。鷲津の計画が、すべて上手い具合に運んだのである。

しかし、裏帳簿を見つけたのも、暴行事件を起こすために友人を生贄にしたのも、蛯沢だ。鷲津と蛯沢、このタッグはなかなかに悪どい。

晴れて虻川を破滅させられたのは良いものの、真犯人が誰かはわからずじまいだ。

しかし、視聴者にはヒントが与えられた。事件当日、泰生はバスのなかで、とある男性から目をつけられた可能性が浮上。満員のなかに立つ高齢女性を気遣い、優先席に座る男性に「席を譲ってあげたらどうか」と提案したのが火種だった。

バスを降りる泰生、そのあとを追う男性。両者を目撃した証言も出てきたことから、泰生が恨みを買ってしまった線は濃厚である。この男性=犬飼大臣の息子・犬飼俊介(玉城裕規)だと仮定すると、今回の一件に綺麗な筋が通る。

手強かった虻川はいなくなった。次なる障害は、いったい誰か?

どうか、強い立場にいる者が権力を振りかざして終わるのではなく、弱い立場にいる者が気持ちよく勝つ姿を見せてほしい。

※この記事は「罠の戦争」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

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鷹野(小澤征悦)の調べによると、泰生(白鳥晴都)の一件は当初、事件として捜査されていたが、何者かの圧力により事故扱いになったという。そのうえ、バスの中で老女に席を譲るよう泰生に促された男が、泰生を追うようにしてバスを降りたことが分かる。

永田町では、亨(草彅剛)が虻川(田口浩正)に変わって政策秘書へと昇進し、一方で、民政党幹事長の鶴巻(岸部一徳)が、幹部たちを集めて次の総選挙が早まりそうだと通達していた。鷹野からその話を聞いた亨は、犬飼からすべてを奪うチャンスがきたと奮い立ち、犬飼の政治生命を絶つために必要な材料を集めようと、虻川の裏帳簿のコピーを調べ始める。すると、事務所資金が俊介(玉城裕規)のために私的流用されていることが判明。お坊ちゃん気質なうえに気が短い俊介は、逆上してあちこちで暴力沙汰を起こし、そのたびに示談金を支払って解決していたのだ。

俊介が逆恨みで暴力を振るったことを知った亨は、すぐさま泰生の事件を思い出し、その脳裏には、ある疑惑が。そこで、毎日犬飼と行動をともにし、ときに犬飼と俊介の親子げんかに巻き込まれて閉口している運転手の牛尾(矢柴俊博)に目をつけ、事件当日の犬飼親子の様子を聞き出そうとするが…。

第3話のレビュー

なんと、3話にして犬飼大臣(本田博太郎)が失脚! 鷲津(草彅剛)のファインプレーにより、過去の収賄疑惑が暴露された犬飼は、とうとうその座を追われることになった。

心筋梗塞で病院送りになった彼が「こんなことでは終わらない」「突き落とした犯人を知りたいか? 俺も知らないんだよ、バーカ」と捨て台詞を残したのは気になる(+腹が立つ)が、確かに、これで鷲津の復讐が終わったわけではないだろう。

犬飼大臣、おまけに彼の息子・俊介(玉城裕規)を破滅させるのが目的だった鷲津。その両方が叶ったわけだが(俊介も暴行事件が明るみに出て警察に連行された)、当の泰生(白鳥晴都)を歩道橋から突き落とした真犯人は、わからずじまいだ。

真犯人を割り出すヒントは、ひとつ。犬飼の運転手・牛尾(矢柴俊博)から得られた。彼はかつて、犬飼が電話で話しているのを聞いていたのだ。「面倒な話だが、これで大きな貸しが作れる」と。

SNS上でも考察が飛び交ったポイントである。犬飼が「大きな貸しが作れる」と喜ぶ相手は、限られてくるだろう。竜崎総理大臣(高橋克典)か、鶴巻幹事長(岸部一徳)か。ただ、ここで大きな貸し借りができたにしては、あまりにも二人からの犬飼に対する評価が低い&扱いが軽いのが気になるところだが……。

総理か幹事長の関係者が、泰生を突き落とした(あるいは誰かに突き落とさせた?)。それを隠蔽するため、鷲津の面倒を20年みている犬飼に白羽の矢が立った。今のところ、違和感のない流れではある。

問題はここからだ。犬飼、息子の俊介はもう破滅したも同然。「二人を徹底的に暴く」という鷲津の目論見は達成したことになるが、真犯人を見つけ出す道は、半ば閉ざされたことになる。鷹野(小澤征悦)の計らいにより、次の総選挙に出馬することになりそうな鷲津が、次に打てる一手とは?

それにしても、平常時は淡々としつつ、感情が揺れる場面ではしっかりと全力で表現し切る、草彅剛の演技が映えるドラマである。「権力に立ち向かうためには、力を持つべき」とする流れに、彼が演じる鷲津はどのように乗っていくのだろうか。

爽快な復讐劇も見ていてスカッとするが、ここにきてミステリとしての面白さも感じられるようになってきた。泰生を突き落とした真犯人とは、いったい? SNS上で毎週のように考察合戦が繰り広げられるさまも、楽しんで見守りたいところだ。

※この記事は「罠の戦争」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

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「権力をふりかざす奴と闘いたいなら、お前も力を持て」――。鷹野(小澤征悦)から、次の総選挙で犬飼(本田博太郎)の地盤を継いで出馬するよう打診された鷲津(草彅剛)。鶴巻(岸部一徳)からも党の公認を約束されるが、肝心の選挙資金が足りない。鶴巻と鷹野は、地元の有力者で後援会長の鰐淵益男(六平直政)を味方につけるよう助言するが、当の鰐淵は犬飼との関係が深く、地盤を継ぐのは犬飼の息子・俊介(玉城裕規)だと考えていた。さらに、個人的にも犬飼に何やら借りがあるようで…。

鷲津家では、可南子(井川遥)が鷲津の出馬に反対していた。鷲津自身も降って湧いたような話に戸惑い、眞人(杉野遥亮)と梨恵(小野花梨)に議員になりたいわけではないと伝える。一方で、泰生(白鳥晴都)の一件で犬飼をホテルに呼び出したという人物に心当たりがあることから、選挙を口実に、その人物に近づこうと考える。

後日、鷲津は早速、鰐淵の元を訪ねるが、案の定、恩知らずとののしられて取り付く島もない。実は、地盤を奪われることに危機感を覚えた俊介が、鷲津を陥れるために悪いうわさを吹き込んでいたのだ。一筋縄ではいかないことを悟った鷲津は、相手の弱みを探すべく、梨恵に鰐淵に関する資料を集めてほしい依頼。後日、敵の懐に入り込むべく、可南子が鰐淵家を訪ねることになるが、呼び鈴を鳴らすと、中から突然、女性の悲鳴が聞こえて…。

第4話のレビュー

大きな権力に打ち勝つためには、相当の力が要る。

後援会長・鰐淵(六平直政)が新たな“隠蔽の張本人”として浮上。鷲津(草彅剛)は彼に近づくために選挙へ出馬することに。政治界へ進出すれば「大きな権力に抗えるだけの力」を手に入れられると考えたのだ。

しかし、事態はそう簡単には進まない。

犬飼元大臣(本田博太郎)ならびに息子の俊介(玉城裕規)は、確かに能力があるとは言えない。実際のところ、「鷲津が邪魔しなければ、自分が父親の後を継げる(大臣になれる)」と思い込んでいる俊介に対し、SNS上では疑問の声が挙がっていた。

けれど、少なくとも鰐淵は犬飼を買っている。俊介がせっせと流している“鷲津の悪い噂”も効いているのか、鷲津への風当たりは優しくはない。収賄や失言で座を下ろされたとしても、大臣として築いた“人脈”まで失われるわけではないことを、痛感させられる。これが、永田町なのか。

鷲津にとって向かい風のなか、流れを変えたのは鷲津の妻・可南子(井川遥)だ。

鷲津の出馬に対しては消極的だが、息子・泰生(白鳥晴都)を突き落とした犯人に繋がるかもしれない、と知った可南子は、鰐淵の妻へ会いに行く。すると、鰐淵の母親が認知症であることが判明。その介護に疲れ果てた妻から、鰐淵にまつわる情報を得ることができた。

目的があったにせよ、鰐淵の妻や母に惜しみなく手を差し伸べる鷲津や可南子を見ていると、弱い立場にいる人たちは放っておけない性質なのだな、と感じられる。軽んじられ、踏みつけられ、そのために苦しんでいる側の気持ちがわかるからこそ、支えずにはいられないのかもしれない。

放浪してしまった鰐淵の母を助けたことから、無事に鰐淵とは和解。出馬するにはそれなりの費用が必要であることがネックだったが、鰐淵の人脈から工面してもらえる手筈が整いそうだ。次回、本格的に「鷲津、出馬」となる。

それと同時に、泰生にまつわる事件の隠蔽を図ったとされる鰐淵への疑惑は、晴れた。そうすると、歩道橋付近の監視カメラに映っていたという「帽子を被った」「国会議員の男」は、別にいるということになる。

果たして、犬飼に隠蔽を頼んだのは誰なのか。次回予告からすると、総理大臣(高橋克典)が浮かび上がってきているようだが……。

加えて、気になる事実も明らかになってしまった。犬飼事務所の見習いである蛯沢(杉野遥亮)の“本当の仇”は、犬飼ではなく、鷲津だったのである。

自身が経営する工場を立て直そうとした蛯沢の兄は、事務所に支援を求めた。「善処します」と曖昧な言葉で流し、犬飼に報告しなかったのは鷲津だった。それを、私設秘書の蛍原(小野花梨)が記録から割り出したのである。

次回は、本格的に出馬を決めた鷲津、そして真実を知った蛯沢の動向が主になるだろう。

それにしても、事態がおどろおどろしくなってきた。唯一ホッとできるのは、蛯沢が植物の知識を披露し、蛍原がそれを受け流すシーンくらいだろうか。

※この記事は「罠の戦争」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

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泰生(白鳥晴都)を突き落とした犯人を明らかにするため、正式に出馬を決めた鷲津(草彅剛)だったが、その矢先、対立候補として人気フリージャーナリストの有馬保奈美が出馬すると聞かされる。保奈美は記者として前内閣を解散に追い込んだ、いわば現竜崎内閣誕生の立役者であり、総理の竜崎(高橋克典)とも親しい間柄。無所属で出馬するというが、背後に竜崎がいることは明白だった。鶴巻(岸部一徳)は、突如現れた刺客にいまいましそうな表情を浮かべ、鶴巻派の議員の頭数を減らそうとする竜崎の差し金だと眉をひそめるが、鷲津は、竜崎が何らかの理由で自分を永田町から排除しようとしているのではないかと考えをめぐらせる。

選挙ポスターの撮影に選挙事務所の設営と、公示を前に本格的な準備が始まると、可南子(井川遥)も事務所に顔を出すように。梨恵(小野花梨)と眞人(杉野遥亮)、そして貝沼(坂口涼太郎)も、これから始まる選挙戦に向けてせわしなく動き回るが、そんななか、早速、有馬陣営から嫌がらせともいえる仕打ちが。さらに、竜崎によって頼みの応援演説の日程も次々と変えられてしまい、鷲津陣営は苦しいスタートを切ることになり…。

第5話のレビュー

このドラマの癒しポイント、蛯沢(杉野遥亮)が蛍原(小野花梨)に得意の植物トークを繰り出すシーンも、今回はなんだか切なく映る。

蛍原は知ってしまった。蛯沢が犬飼大臣(本田博太郎)に恨みを持つきっかけに、鷲津(草彅剛)が絡んでいたことを。鷲津が犬飼への報告を怠ったために、蛯沢の兄が出した陳述が正しく受け取られなかったことが原因だったのだ。

その事実を、蛯沢は知らないのか、それとも、知っているのか。

千葉15区に出馬を決めた鷲津が着々と選挙準備を進めるなかで、スパイ疑惑が立つ。身内しか知らないような情報が外部に漏れ、嫌がらせのネタにされているのだ。

対立候補として、竜崎総理(高橋克典)の息がかかっていると思われる有馬保奈美がいる。有馬側から、スパイが送られているのではないか。

竜崎総理側はほかにも、鷲津側が用意したウグイス嬢を引き抜くなどの嫌がらせを重ねてきた。厳密には、竜崎総理がやった明確な証拠はないにせよ、鷲津が当選するのを避けたがっている様子は伝わってくる。

いったい、誰がスパイなのか? 疑心暗鬼になるなかで、蛯沢に疑いがかかってしまう。気の知れた友人に牛丼を奢り、話の流れで「選挙に行ってくれ」と声をかけてしまったらしい。

選挙期間は何かと制約があるし、物のやりとりにも慎重にならなければいけない。プライベートでご飯を奢るのもダメなのか……と少々驚いてしまうが、こういった場合の線引きは、ゆるいよりも厳しいほうが、罰する基準が明確になるため楽なのかもしれない。

蛯沢が例の事実を知っており、鷲津に復讐する機会をうかがっているのでは、と心配する蛍原。しかし、その心配は杞憂だった……と思いたい。友人に奢った牛丼代を返してもらい、息も絶え絶えに「これで大丈夫ですよね、違反になりませんよね」と口にする蛯沢。どうか最後まで白であってくれ、と願ってしまう。

あらゆる妨害に屈しそうになるも、どうにか選挙期間最終日、鴨居大臣(片平なぎさ)を迎えての演説に間に合った鷲津。まさに“魂”が込められた、圧倒される演説シーンだった。

鷲津が選挙に立候補したのは、あくまで息子のためであり、息子を突き落とした(=事件を隠蔽しようとした)真犯人を突き止めるため。言ってしまえば、身内のために私利私欲で代議士を目指したと糾弾されても、おかしくない状況である。

そんな鷲津が、演説で高らかに「地域活性」や「経済復興」を約束したとしても、耳を傾けてくれる人はいるのだろうか。言葉が届くのだろうか。そう思っていたが、鷲津は静かに「ズルくて、弱くて、カッコ悪い大人」と、自分の言葉で話し始めた。

弱い立場では何もできない、強い権力に立ち向かうための力を授けてほしいと、彼自身の言葉で語ったのだ。その温度のある気持ちが通じたのか、鷲津は見事に当選を果たした。

彼は、力を手にした。状況としては一歩進んだように思えるが……。5話の終盤にして、黒幕が総理ではなく、鶴巻幹事長(岸部一徳)である可能性が浮上。こうなってくると、鶴巻がやけに鷲津の応援に力を貸していたことと、矛盾するようにも思える。

力を得た鷲津は、真犯人に辿り着けるのだろうか。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー


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激しい選挙戦を制し、晴れて代議士となった鷲津(草彅剛)は、泰生(白鳥晴都)の事件の隠ぺいを指示した人物が鶴巻(岸部一徳)だと知り、がく然とする。それでも、強敵相手にひるむどころか何とかして本人から真実を聞き出したい鷲津は、鶴巻のある秘密を突き止めるため、梨恵(小野花梨)と眞人(杉野遥亮)に協力をあおぐ。実は永田町では、鶴巻に関するあるうわさが、まことしやかにささやかれていたのだ――。

毎月第2・第4月曜、この2日間だけは何があっても予定を入れない鶴巻は、必ず5時ちょうどに党本部を出て行くという。どこで誰と何をしているのか――。鷲津は鶴巻の弱みを握るべく、行き先を突き止めようと動き出す。鶴巻に近い鷹野(小澤征悦)からも、それとなく情報を聞き出そうとするが、反対に「幹事長には手を出すな」と猛反対されてしまう。

その頃、犬飼(本多博太郎)が失脚したことで亡き兄の復讐(ふくしゅう)を果たしたはずの眞人は、鷲津から秘書を辞めて植物の研究に戻りたいなら相談に乗ると言われ、心が揺れる。眞人の迷いを知り、彼が自分と同じように鷲津に恩義を感じていることを悟った梨恵は、鷲津こそが兄の陳情をほごにした張本人であると知ったら、眞人はどうするのだろうと不安を募らせる。そして、人知れず抱えてしまった秘密について、あることを決意して…。

第6話のレビュー

鶴巻幹事長(岸部一徳)に黒幕フラグが立ち、さっそく彼の弱みを握るため動き出す鷲津(草彅剛)たち。会食好きな鶴巻が、唯一、月2回だけ予定を入れない週末がある。その真相を探るため、蛍原(小野花梨)や蛯沢(杉野遥亮)の力を借りながら鶴巻を尾行するが……勘の良い鶴巻に翻弄され終わってしまった。

鉄壁とも思える鶴巻を崩したのは、なんと熊谷記者(宮澤エマ)。

彼女は、鷲津の息子が巻き込まれた一連の事件になんの関係もない人物だが、「面白い記事のため」にはフットワーク軽く動く現金な人物だ。これまでも、ここぞというときに上手く立ち回ってくれていたが、今回はとくにファインプレー。尾行中に足止めを食らった鷲津の代わりに、鶴巻の居場所を突き止めることに成功する。

鶴巻は「仕事の大変さを忘れるために月に2回、仲間とチェスを打っている」と口にしたが、その真相は……。

熊谷記者を演じる宮澤エマといえば、話題になった大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、小池栄子演じる北条政子の妹・実衣を演じていたのが記憶に新しい。少々コミカルな役回りで、凄惨な展開に陥りがちな本作のなかでもホッと一息つける間を与えてくれていた。その存在感は、この「罠の戦争」でも十分に発揮され、もはや無視はできない。

キーパーソンとしてはもう一人、鴨居大臣(片平なぎさ)がいる。

女性を保護するNPOを支援しており、鷲津の妻・可南子(井川遥)とも親交がある人物。振り返れば、蛍原がパワハラで苦しんでいた時期も力になってくれた。視聴者に対し「頼れる、信頼できる人物」であるように映っていたが……。

竜崎総理から、とある情報を得た鷲津。例の事件が起こった日の夜、犬飼元大臣(本田博太郎)の派手なパーティを抜け出した鶴巻は、朝まで幹事長室にこもっていたという。該当時間の防犯カメラをあたったところ、なんと、ともにいたのは鴨居大臣だった。

さまざまな疑問がわく。本当に鴨居大臣が、鶴巻に隠蔽を頼んだ真犯人なのか? 息子を突き落とした人物は別にいるとして、それは誰なのか?

そもそも、鶴巻はなぜ自ら支援をしてまで鷲津を代議士にしたのだろう。鷲津が刃向かってくるのを予想できなかったとは思えない。手を貸さず、むしろ落選するように動いたほうが彼にとってメリットがあったはずだが。

そして、竜崎総理が鷲津に情報を与えたのも気になる。彼は本当に鶴巻に対して「少々力を持ちすぎだ」と思っており、お灸を据える意味でタレ込んだのだろうか。

ひとつ明らかになれば、また新たな謎が倍々ゲームのように増えていく。今回は蛯沢の植物マシンガントークが聞けなかっただけに、余計に不穏な空気が強く感じられた。鴨居大臣にまつわる真相も含め、再び私たちはこのモヤモヤを来週に持ち越さざるを得ないようである

※この記事は「罠の戦争」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー


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鶴巻(岸部一徳)を厄介払いしたい竜崎(高橋克典)の計らいで、幹事長室付近の監視カメラの映像を見ることに成功した鷲津(草彅剛)。そこには、泰生(白鳥晴都)が転落した日の夜遅く、幹事長室に駆け込む鴨井(片平なぎさ)の姿が映っていた。

険しい表情で鴨井の執務室を訪れた鷲津は、泰生を突き落とした犯人が誰なのか、鴨井を問い詰める。そして、鷲津のある言葉に一瞬顔色を変えるも、何とかその場を取り繕おうとする鴨井の姿に、鷲津は犯人が誰なのか確信する。しかし、弱者の支援に力を入れる鴨井を心から尊敬している可南子(井川遥)には、本当のことを言い出せない。

眞人(杉野遥亮)に対しても、兄の陳情をないがしろにしたのは他でもない自分だと打ち明けられずにいる鷲津は、どこか罪滅ぼしの気持ちもあり、今のうちに国会議員の立場を最大限利用して、できるだけ多くの困っている人たちを助けようと考えていた。そうとは知らない眞人は、すべての陳情に対応しようと身を粉にして働く鷲津の姿を見て、研究の道へ戻るより、秘書として鷲津を支えていく道を選ぶ。そして、梨恵(小野花梨)とともに、ある人物の家を訪ねて…。

第7話のレビュー

7話にして、ついに鷲津(草彅剛)の息子・泰生(白鳥晴都)を突き落とした真犯人が明らかになった。浮上したのは、あの鴨井大臣(片平なぎさ)の息子・文哉(味方良介)である。

件のパーティの夜、鶴巻幹事長(岸部一徳)の部屋に一晩中こもっていた鴨井大臣の姿が、監視カメラに残されていた。鷲津が彼女に詰問するうちは、勘違いかもしれないと思いたい自分もいたが……。

鴨井大臣は、泰生の意識がまだ戻らないことを知り「腕の良い脳外科医を紹介する」と言ってくれた人だ。鷲津の妻・可南子(井川遥)が女性支援のNPOで働きたい希望を伝えたときも、懇意にしている先を案内してくれた。女性の立場に寄り添える、誰よりも女性の苦しみをわかってくれる人だと思っていた。

文哉は完全に黒。バイト先での評判も上々で「無口だけど穏やかで良い人」と言われている。しかし、高校卒業時に暴力沙汰を起こしていた過去があり、当時も鶴巻幹事長の力で事件を隠蔽していたことがわかった。

なぜ文哉は同級生を追いかけてまでカッターで切りつけたのか? その理由が詳述されないということは、泰生を歩道橋の上から突き落とした件も含め、自分の気に入らないことがあると瞬間沸騰する性質なのだろう。

自分の思い通りにならないと気が済まない……それは、母である鴨井大臣も一緒なのかもしれない。

前回も今回も、息子のためを思っての事件隠蔽というよりは、女性総理に一番近いとされている自身のポジションを死守するため、といった意味合いが強く感じられる。

文哉のパーソナリティについては深く描かれていない。しかし、狭いアパートに閉じ込められているような暮らしぶり、表情も感情も押し殺したような佇まいなどから察するに、仕事中心の母親から“十分な愛情を受けていなかった”のではないだろうか。

監視カメラの映像のみで息子の文哉に辿り着いたのは、鷲津一派とも言える蛯沢(杉野遥亮)、蛍原(小野花梨)、熊谷記者(宮澤エマ)たちのチームワークによるもの。鴨井大臣を罠にかけ、文哉について自白させるところまでは上手くいった。しかし……。

文哉に揺さぶりをかけるため、おとりとしての記事を出そうとしたところ、またもや鶴巻幹事長にねじ伏せられてしまう。次は、鷲津と比較的親交のある鷹野(小澤征悦)まで敵側に。次回以降の最終章で対峙することになる。

7話まで怒涛のように展開された物語を振り返ってみると、あらためてキャスト一人ひとりの妙が感じられる。若手ながら実力は十分の杉野遥亮と小野花梨、物語の手綱を握る岸部一徳、片平なぎさ、宮澤エマらはもちろんのこと、主演・草彅剛の“柔と硬のコントラスト”も光る。

蛯沢への過去の罪滅ぼしのためか、上がってくる陳情にはすべて目を通すと断言する鷲津。仲間に対しては破格の信頼+愛情で応える傍ら、敵と見做した鴨井大臣には情け容赦なし。優しさと冷たさ、同じ人間に宿る二面性を絶妙に表現しきれる役者は、そう多くはないと感じさせられる。

「“息子”のため」を行動原理としている鷲津と鴨井大臣も、見方によっては紙一重、表裏一体なのかもしれない。最終章、果たして“罠”にかけられるのはどちらなのか。

※この記事は「罠の戦争」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー


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泰生(白鳥晴都)の事件の真相を書いた由貴(宮澤エマ)の記事は、鶴巻(岸部一徳)によって握りつぶされた。鴨井(片平なぎさ)の地位をおびやかす鷲津(草彅剛)の行動をこれ以上見過ごせないと判断した鶴巻は、鷲津を永田町から排除するよう鷹野(小澤征悦)に命じる。

一方の鷲津もまた、鶴巻が本気で自分をつぶしにくると覚悟を決めていた。そうなる前に、何とかして鶴巻の権力を奪うだけのネタを手にしたい――そう考えていると、鶴巻が国内最大手のIT企業と特別な関係にあることをにおわせる一通のメールが届く。しかし、その差出人の名前を盗み見た眞人(杉野遥亮)はみるみる表情を曇らせて…。

その頃、政権交代をもくろむ鶴巻が、自らの息がかかった鴨井を日本初の女性総理にしようと暗躍していた。そのことに気分を害した竜崎(高橋克典)は、鶴巻をけん制するため、泰生の事件を表沙汰にしようとする鷲津をバックアップするある動きを見せる。すると、事件は瞬く間に世間の注目の的となり、可南子(井川遥)の元にも多くのマスコミが押し寄せる。すると、ある人物がその様子を離れた場所から見つめていて…。

第8話のレビュー

鷲津(草彅剛)の息子、泰生(白鳥晴都)が目を覚ました。寝たきり状態が続いたため、しっかりリハビリをする必要はあるが、麻痺も残らず命に別状はない。「お父さん、うざ」と口にする様子はいつもの泰生の姿で、なんとも涙をそそられる。可南子(井川遥)ともども喜びを分かち合うとともに、さらにやる気を増す鷲津。

泰生を突き落とした張本人は、鴨井大臣(片平なぎさ)の息子・文哉(味方良介)ではあるが、鴨井が口を割り、文哉自ら泰生の病室へ謝罪に来た以上、このふたりに追い討ちをかける意味はあまりない。

そうなると、“潰す先”は鶴巻幹事長(岸部一徳)である。

これまで難攻不落としかいえない鉄壁ぶりを見せていた鶴巻。彼を落とすネタを拾おうと、鷲津は蛍原(小野花梨)、蛯沢(杉野遥亮)、鷹野(小澤征悦)らと協力する。粘り強い調査の末、「デジタルアンツ」という会社から鶴巻の次男が経営する会社へ、数ヶ月に渡って多額の入金があることが判明。

格好のネタを掴んだと思いきや、それさえも鶴巻が用意した罠だった。

罠にかけ、上手くいったと思えば反対に、こちらが罠にかけられている。まさに「罠の戦争」が行われている様を目の当たりにすると同時に、どちらが勝ってもおかしくない状況にヒヤヒヤしてしまう。

すんでのところで、鷲津は鶴巻の体調不良(頻繁に医者にかからなければならないところをみると……)の証拠を提示。なんとか鶴巻を崩そうとするが……。このタイミングで、まさかの人物が緊急会見を開き、議員を辞職することを宣言する。

そう、鴨井大臣だ。

初の女性総理になるため、自分が背負って立つポジションを守るために、息子を切り捨て非情に振る舞っているように見えた鴨井。しかし、当の息子から、泰生に直接謝罪しに行ったこと、母親を守るために自首できなかったことなどを告げられ、気が折れたのだろう。もしくは最初から、地位と息子を天秤にかけるまでもなかったのかもしれない。

鴨井は緊急会見の場で、トップシークレットだった「鷲津の息子を突き通した真犯人」を暴露してしまった。このことが鶴巻を、ひいては永田町全体をどのように揺るがすのか。鷲津の復讐劇が、最終段階へ入ろうとしている。

※この記事は「罠の戦争」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー


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鴨井(片平なぎさ)が、泰生(白鳥晴都)を転落させたのは息子の文哉(味方良介)だと公表し、議員を辞職。名前こそ出さなかったものの、鶴巻(岸部一徳)が警察に圧力をかけたことをにおわせたため、永田町には激震が走り、対応に追われる鶴巻派は大混乱。鷲津(草彅剛)を追い詰めた矢先、鴨井に足元をすくわれる形となった鶴巻は、思わぬ事態に苦々しい表情を浮かべる。

幹事長をつぶすなら今しかない――。鶴巻が事件の隠ぺいに関与していたことを裏づけ、追いうちをかけたい鷲津は、鶴巻が口封じに更迭させたと思われる事件の管轄署の元署長・辰吉から証言をとるべく、その行方を追う。一方、世論の反発が高まったことを受け、クリーンな政治を印象づけたい竜崎(高橋克典)は、一連の疑惑を徹底的に調査すると報道陣の前で明言。事実上、総理が味方になったといっても過言ではない状況に、追い風を受けた鷲津は…。

第9話のレビュー

正義の反対は悪ではない。また別の正義だ……という言葉を、一度は聞いたことがあるかもしれない。どんなに悪側に見えても、立場や状況が違えば変わってくるものだ。愛する息子を傷つけられ、強い権力に立ち向かうために議員にまでなった鷲津(草彅剛)にとっても、例外ではない。

果たして、彼は“正義”なのだろうか。

鴨井大臣(片平なぎさ)の辞職、鶴巻幹事長(岸部一徳)の隠蔽工作への関与が仄めかされ、鷲津と可南子(井川遥)が企ててきた復讐計画にも大手がかかった状況である。あとは、蛍原(小野花梨)や蛯沢(杉野遥亮)、鷹野(小澤征悦)や熊谷記者(宮澤エマ)など、いつもの面々の力を借りて鶴巻の弱みを暴くだけ。

なかなか一筋縄ではいかない鶴巻だが、口封じのため警察を辞めさせられた前署長から情報を入手、事件の関与を決定づける記事を世に出すことに成功した鷲津たち。「弱い側の立場として、俺の議員としての力を使いたい」……復讐のために議員にまでなった男・鷲津の悲願が叶おうとしている。

どんな攻撃にも屈しない盤石な鶴巻も、もっともバラされたくない特大の秘密をリークされ、体調も悪化して救急搬送までされた。敵の首をとるのも目前、といった状況まで迫っている。

しかし、ここにきて、鷲津側にとって唯一の懸念材料だった裏金問題が流出。政治資金規正法違反に触る、例の問題がついに明るみに出てしまった。もちろん、鶴巻の仕業である。

嫌がらせの怪文書まで出回っており、万事休すの状態。鶴巻は言った。怪文書は自分のせいではない、誰かに恨まれているんじゃないか、と……。

弱い立場、自身の正義のために動いてきた鷲津が、ここで急きょ“復讐される側”に引っ張り出された。彼を破滅させようとしているのは、一体誰なのか。

次回予告から予想できるのは、たまに鷲津らが使う議員室に出入りしている業者の存在(空気階段の水川かたまりが演じている)である。今話の冒頭、調子の悪いタブレットを修理するためにパスワードを探す描写があった。

仮に、彼が何らかの理由で鷲津を恨んでいるとしたら? 蛯沢の兄がそうだったように、陳述を無視された過去がないとも限らない。しかし、明らかに制作側によって仕組まれたミスリードのような気もする。

こうなってくると、どうしたって拭えない黒幕臭を醸している竜崎総理が怪しく見えてくる。善良そうに振る舞ってはいるが、彼が鷲津を内閣総理大臣補佐官に任命したのにも、何か裏があるのではないか。面倒な人間が腹心として抱えてしまったほうが、後々のことを考えたら楽ではある。

最終章に向け、謎が謎を呼ぶ展開だ。悪側に染まりつつある鷲津は、最後まで“自身の正義”を保つことができるのだろうか。

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–{第10話ストーリー&レビュー}–

第10話ストーリー&レビュー

第10話のストーリー


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内閣総理大臣補佐官に抜てきされた鷲津(草彅剛)は、総理のお墨付き議員として躍進するが、ある日、週刊誌に政治資金規正法違反の疑いを取りざたされ、流れは一変。政界内には怪文書が出回り、立場が危うくなる。鷲津は、幹事長を退いた鶴巻(岸部一徳)の仕業だとにらみ、虻川(田口浩正)が鶴巻の私設秘書として永田町に戻ってきたことにも一抹の不安を覚える。しかし、竜崎(高橋克典)のある一言で、いつの間にか芽生えた政治家としての野心に火がつき、今度こそ鶴巻を完全に排除すると竜崎に宣言する。

後日、由貴(宮澤エマ)が鷲津の留守中に事務所へやって来て、鷲津に頼まれたあるものを置いて帰る。権力を使って記事をつぶされて以来、由貴は鷲津への信頼を失っていたが、ある思いから協力する気になったらしい。しかしそれは、ある人物の差し金だった――!

鶴巻の不正を暴くことに躍起になる鷲津は、次第に代議士としての本来の職務をおろそかにするようになり、貝沼(坂口涼太郎)は愚痴をこぼす。梨恵(小野花梨)や眞人(杉野遥亮)もまた、怪文書の一件で、誰が事務所の内情をもらしたのか疑心暗鬼になっていた。そして可南子(井川遥)も、多忙を理由に家庭を顧みず、人が変わったかのような夫に複雑な思いを抱いていて…。

第10話のレビュー

罠にかけ、かけられ、殺伐としたシーンも多いこのドラマにおける唯一の癒し。蛯沢(杉野遥亮)と蛍原(小野花梨)による“植物トーク”シーンは今回なかったが、まさか、一見重要そうには見えないこのシーンが“長い長い伏線”だったなんて。

怪文書の犯人を探し続けていた鷲津(草彅剛)。鶴巻幹事長(岸部一徳)を出し抜くための“とっておきのネタ”をやっと掴むも、ギリギリのところで鶴巻自ら名誉の引退、出世を交換条件に出した竜崎総理(高橋克典)にも裏切られてしまい、打つ手がなく途方に暮れてしまった。

しまいには、ただ仕事の話を聞いてもらいたかっただけの可南子(井川遥)を無下に扱い、嫉妬心から怪文書を回したに違いない、と鷹野(小澤征悦)にまで疑いを向ける鷲津。「最終章に向けて鷲津が闇堕ち化している」とSNS上などではもっぱら話題だが、草彅剛の目の座った演技を見ていると、まさに“あちら側に堕ちてしまった”ように見えてしまう。

まさかのまさか、議員室に出入りしていた業者・小鹿(水川かたまり)が怪文書の犯人か……? と深みにハマりすぎた考察をしてしまいそうになったが、最後の最後で真実が明かされた。

実の兄にまつわる、例の陳述の件を知ってしまった蛯沢の仕業だったのだ。

真実が明かされる直前、蛯沢と鷲津は「竹の花」について話をしていた。滅多に花を咲かせない竹。竹の花は咲くこと自体がめずらしく、なかなか開かせることはない。「もっとデカい花を咲かせてみせる」と野心を隠さない鷲津のことを、蛯沢はどう見ていたのか。

竹の花は、咲いたあとに、どうなるのか。

竹林を丸ごと巻き込み、枯らしてしまうのだそうだ。

蛯沢には、力に魅せられ、権力を履き違えてしまった鷲津自身が、懸命に“竹の花”を咲かせるため躍起になっているようにしか見えなかったのだろう。一度は「この人のために頑張ろう」と気持ちをシフトし直したが、「弱い立場の人を救うため、力をつけたい」と言う鷲津の言葉を信じられなくなってしまった。

だからこそ、彼は怪文書を流したのだ。鷲津を許さないでいるために。

権力の意味を履き違えた鷲津は、あれほど鷲津のことを思い、手伝ってくれていた蛯沢に裏切られてしまった。可南子、鷹野、蛍原にも不信感を向けられている今、彼が手にするべきは権力ではなく信頼である。最終回、鷲津はその原点に戻れるだろうか。

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–{最終話ストーリー&レビュー}–

最終話ストーリー&レビュー

最終回のストーリー


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鷲津(草彅剛)を陥れるために怪文書をばらまいた犯人は眞人(杉野遥亮)だった。その動機が、亡くなった兄の陳情を鷲津が取り合わなかったことだと察した梨恵(小野花梨)は、眞人に当時の状況を説明。しかし眞人は、納得するどころか、秘書として尊敬できる先輩であり、ひそかに思いを寄せる梨恵が、真実を知りながら鷲津をかばっていたことにショックを受け、もう誰も信じられないと、ある場所へ向かう。

一方、副大臣のポストを逃したことで鷹野(小澤征悦)と決裂した鷲津は、総理官邸に呼び出される。竜崎(高橋克典)によると、すっかり欲深くなった鷹野が、現在のポストに飽き足らず、さらなる権力を手にしようと竜崎の周辺をかぎまわっているという。竜崎から、鷹野を黙らせるだけのスキャンダルをつかめと命じられた鷲津は、今後のためにもなんとか総理に恩を売ろうと、早速、梨恵に鷹野の身辺を探るよう指示。すると梨恵は、やりきれない表情で、ある人物に相談を持ちかける。

息子・泰生(白鳥晴都)の事件をきっかけに、永田町にはびこる悪しき秩序を排除すべく国会議員にまで上り詰めた鷲津。しかし、次第に権力という名の魔物に取りつかれ、さらなる力を欲するようになると、代議士・鷲津亨を支えてきた秘書や、志を同じくして闘ってきた鷹野や由貴(宮澤エマ)、そして可南子(井川遥)との関係にも異変が!? 権力にとらわれた鷲津に待ち受ける未来とは――!?

最終回のレビュー

鷲津(草彅剛)の闇落ちが止まらない。怪文書の犯人が蛯沢(杉野遥亮)とわかるや否や彼を解雇、ついていけなくなった蛍原(小野花梨)にも「退職届、書いといて」と言い渡し、ついには可南子(井川遥)との関係も破綻してしまう。

熊谷記者(宮澤エマ)にはとっくに愛想を尽かされ、どんなときも話を聞き、力になってくれた鷹野(小澤征悦)とも決裂してしまった。竜崎総理(高橋克典)側についた時点で、鷲津は破滅への道を歩み始めてしまったのかもしれない。

権力の味を覚え、どんどん悪の方向へと舵を切る鷲津。彼の目を覚まさせてくれたのは、可南子から離婚届を突き出された瞬間、そして、自分の教えを守りイジメられっ子を助けた息子・泰生(白鳥晴都)の存在だろう。

鷲津は本来、泰生の事故をきっかけに「弱い者のために権力に立ち向かう力をつけたい」と思ったからこそ、議員を志したのだ。それがいつしか、鶴巻幹事長(岸部一徳)が言ったように「人を救うことに気持ちよさを覚える」ようになってしまった。

家族のために立ち上がったはずの鷲津が、いつの間にか、自分自身が家族を傷つける立場になっている。引き返すには、もう遅いかもしれない。味方が誰一人残っていない状態だ。

ここで思い出されるのは、鷲津が蛯沢から聞いた、滅多に咲かない真竹の花の話。

彼が花が咲いたあとの竹の行く末を調べたのは、いつ、どのタイミングだったのだろうか。

竹の花が枯れたあとは、古い竹藪はなくなり、まっさらな土地に日光がさす。そして、また新たな竹が生え始める。古いものは淘汰され、新しいものが芽吹く。

自分がすべきこと、本来やろうとしていたことを思い出した鷲津は、すべてを公にするために記者会見の生中継を決行。

「中継が切れる前に本当のことを伝えておきたい!」

「私は罪を犯しました!」

当然、総理側の妨害に遭ってしまうが、場所を議員室に移しネット配信に切り替え、これまで掴んできたさまざまな不正を暴露した。鷲津を演じる草彅剛の真骨頂、進化し続ける表現力が垣間見えたシーンである。

「不正を隠蔽しなければ守れない? そんな政治、壊れちまえばいいんだよ!」

壊れたっていい。必死に守ろうとして、足掻かなくたっていい。だって、壊れてもまた再生できるから。すべてを無に帰して、ゼロからやり直したほうが、上手くいくこともあるから。

可南子、泰生、鷹野、蛯沢、蛍原、熊谷……これまで支えてきてくれた仲間を裏切り、信頼を失った鷲津だからこそ、自らゼロになることを選べたのかもしれない。

すべてを告白した鷲津は、蛯沢にこれまでのことを詫び、警察へ出頭。女性支援のために政界に打って出た可南子は見事当選を果たし、なんと、その秘書として鷲津がおさまった。

なんとも綺麗な幕引きで、大団円という言葉がピッタリ当てはまる。犬飼元大臣(本田博太郎)が1シーンだけ登場し、あの独特な「鷲津っ!」を聞かせてくれたのも、嬉しい展開だった。

しかし最後の最後で、ちゃっかり総理になった蛭谷(小野了)と鶴巻(岸部一徳)の姿が……。エンドクレジットで「また、どこかで」と出ていたあたり、もしや劇場版が期待できるのでは? と嬉しい勘ぐりをしてしまう。

「銭の戦争」「嘘の戦争」に続く戦争シリーズ「罠の戦争」が完結。またどこかで、彼らに会えるのを楽しみに待ちたい。

※この記事は「罠の戦争」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「罠の戦争」作品情報}–

「罠の戦争」作品情報

放送日時
2023年1月16日(月)スタート。毎週(月)夜22:00〜 ※初回15分拡大

出演
草彅剛/井川遥/杉野遥亮/小野花梨/坂口涼太郎/白鳥晴都/小澤征悦/宮澤エマ/飯田基祐/本田博太郎/田口浩正/玉城裕規/高橋克典/片平なぎさ/岸部一徳

脚本
後藤法子

演出
宝来忠昭

音楽
菅野祐悟

プロデューサー
河西秀幸

演出・プロデューサー
三宅喜重

制作著作
カンテレ