吉高由里子主演、北村匠海が共演するドラマ「星降る夜に」が2023年1月17日スタート。
本作は、恋愛ドラマの名手・大石静が紡ぐ大人のピュア・ラブストーリー。人に本音を吐けない孤独な産婦人科医・鈴(吉高)と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士・一星(北村)。10歳差の2人が既成概念をひっくり返し、新たな価値観を見せる物語から目が離せない。
CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
のどかな海街にある「マロニエ産婦人科医院」で働く35歳の産婦人科医・雪宮鈴(吉高由里子)。ある医療裁判がきっかけで、大病院を追われた彼女は、命の始まりと終わりが、繰り返される毎日や、窮屈で息苦しい社会の中で心がすり減り、誰にも本音を語らず、孤独な毎日を過ごしていた――。
そんなある日、鈴は息抜きのためソロキャンプへ。一人で酒をあおり、燦然と輝く星空を見上げたその時、彼女の前に1人の美しい青年・柊一星(北村匠海)が現れる。
どこから来たのか、何者なのか、彼は何も語らない。息が白くなる冬の星空の下で、何枚も何枚も、鈴に向けてシャッターを切る一星。しかも、鈴の酒を勝手に飲み始めたかと思えば、寒さに震える彼女に自分のマフラーを甲斐甲斐しく巻いてくる。やけに図々しくて、でも慈しむように優しくて…。不思議な青年に戸惑いつつも、酒の力もあいまって、そのまま鈴と一星は、キスをして…!?
翌朝。微妙に記憶のない頭を抱えて目覚めた鈴は、一星が何か手でサインを伝えたまま、去ってゆく背中を見送る。あれは夢だったのだろうか…非日常な思い出を片手に現実に戻った彼女は、やがて、一星から送られたサインの意味に気づく。
「お前のゲロ、全部片付けた、バ~カ」
―そう、彼は、手話で悪態をついていたのだ。
2人はまだ知らない、この数日後、また出逢う運命にあることを。
人は恋で生まれ変わる。教えてくれたのは、10歳下のあなたでした―。
これは、命の《はじまり》と《終わり》をつかさどる2人が、
世間の決めた”概念“を超えて、愛を知ってゆく物語。
果たして、鈴と一星の運命は…?
第1話のレビュー
タイトルや「大人のピュア・ラブストーリー」という言葉、画像などの前情報から、個人的にもっと大人で静かな感じのストーリーかと思っていたが、いろいろと思ってたのと違った。でもそれはいい意味で、笑いあり涙ありクセありの先が読めない物語、今後の展開が読めなくて楽しみだ。
まず序盤の展開が早くて「おお!!?」となった。主人公・鈴(吉高由里子)がソロキャンプに出かけたかと思ったら一星(北村匠海)と出会い、写真を撮られ、お酒を飲まれ、マフラーをまかれ、キスされる……。いや、情報量多いし北村匠海だからまだ許されるものの、結構怖いって。さらに何を聞いても一星はしゃべらない。視聴者は前情報で一星の耳が聞こえないのを知っているが、知らなかった鈴はさぞや困惑したことだろう。
翌朝目覚めた鈴が、一星が自分に向けた手話を思い出すと「お前のゲロ、全部片付けた、バ~カ」。
なかなかの悪態にも驚くが、そんなことよりその状態で見た手話を覚えている鈴にびっくりした。
そして今度は鈴の母の訃報。亡くなってから連絡が来るし、しばらく会っていなかったようだし、鈴も冷静に見え、はじめは疎遠だったのかと思ったが、徐々に明かされていくお母さんとの思い出を観ると、相当仲のいい母娘だったようだ。一人娘に迷惑かけたくないと生前整理し、余命よりも早く亡くなった母。これも娘への愛の形なのだろうが、親しかったなら生きているうちに知らせてほしかった……と少しだけ思ってしまった。
母が頼んだ遺品整理士として登場したのが一星。思わぬ再会に驚く鈴。一人さみしく逝ったんですねという鈴に、さみしかったと決めつけるのは違うのでは、という一星。彼が持ってきた箱に入っていた母のカレンダーは、習い事や友達との食事、旅行など、楽しい予定で埋めつくされていた。そして、鈴に似ていると言っていた熊のぬいぐるみ。鈴は人目もはばらかず号泣する。誰にも本音を話せない鈴が、一星の前では素直に泣けたのだ。
遺品が入った箱が、星がちらばったおもちゃ箱のようなデザインなのも印象的だった。一番大切な思い出を、ここに入れているのだろうか。鈴の母以外の遺品整理のシーンで、「金目の物あった?」と言っていた男性が、父が自分の初仕事に関するものを大事にしていたのを知って感動するシーンも記憶に残る。一星が美しい男性すぎず、下ネタも結構言うところが逆にリアルでいいなと思った。AVが好きらしい。
ほかに印象的だったのは、出産シーンだ。妊婦(近藤春菜)が「お母さん!」と叫んでおり、夫にお母さんと通話を繋げられないか聞くが、数年前に亡くなっているという。もう亡くなっていてもこんな大変なときには呼びたくなってしまうのか……と切なくなる。が、鈴の提案で「おかあさ~ん!」とみんなで叫ぶことになり、かなりシュールな気持ちでツッコミを入れたくなる。なのに、「どうして娘が大変なときにいないんだよ~!」という鈴のセリフや、鈴が医療裁判を起こされてしまって震える声で電話したとき、毅然と励ましてくれた母の回想には涙が出た。
まさか同じ「お母さん」で笑ったり泣いたりするとは。このジェットコースターのような感情の揺れ動きは、この作品の醍醐味のひとつかもしれない。同じく大石静脚本・テレ朝制作の「あのときキスしておけば」も切なさと面白さ、重さと軽さのバランスが絶妙だったので、今後も楽しみだ。
自分が酔って嘔吐したことですごいにおいになってしまったマフラーを洗い、一星に届けに行った鈴。写真を撮っていた一星は、ファインダーに入ってくる鈴に避けろと手でシッシッとやるが、鈴はどかない。「ありがとう、あなたに母の遺品を整理してもらえてよかったです」とお礼を言い、一瞬じーんとしたかと思えば、「お前のキス、大したことなかったけどな!」と手話で悪態をつく鈴が最高だった。
周りの人たちもなかなかクセが強い。深夜(ディーン・フジオカ)は写真から、かっこいい役かと思っていたが、見た目だけがかっこいいドジっ子で、転んでおしっこをかぶってしまう。おディーン様がおしっこをかぶるのが見られるドラマ、すごい。
一星の会社の社長の北斗(水野美紀)はトイレで立派な大が出たから写真に撮ったらしいし、鈴の働く病院の院長(光石研)はでっかい自分の顔の看板を病院の上につけてるし……。光石研といえばいい人なときと悪人のときのギャップがすごい記憶があるが、今回はいい人なようだ。女性スタッフたちを尊重し、おいしい宅配を頼んでくれたり、一緒に踊ったりとお茶目な一面も。ただ、最近の作品だといい人の場合早めに死んでしまう傾向にあるので、今回は最終回まで生きていてほしい。
一星の同僚で、手話ができる春(千葉雄大)も気になる。ユニークなこの人たちの物語も楽しみだ。
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話ストーリー&レビュー}–
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
▶︎「星降る夜に」画像をすべて見る
星降る夜に出逢った、音のない世界で生きる遺品整理士・柊一星(北村匠海)――ちょっと図々しいけれど、慈しむような優しさにあふれる彼と“運命の再会”を果たした産婦人科医・雪宮鈴(吉高由里子)。亡き母の遺品整理を通し、まっすぐで温かい一星に心を救われた鈴は、あの日返し忘れていたマフラーを手に、海で写真を撮る彼に会いにゆく。覚えたての手話で感謝を伝える鈴、すると一星はきらめくような笑顔を見せ、そのまま突然「ありがとうって言うなら、お礼して」と切り出し、強引に鈴を映画館へ引っ張っていく。
流されるままに、一星と共に映画を楽しみ、ハンバーガーを食べる鈴。2人の年齢が“10歳差”だと知っても、「たった10コだろ」と気にも留めないわりに、ソースを口元にくっつけたり、むくれたり、何かと子どもっぽくて無邪気な一星。かと思えば、仕事終わりの鈴をグイグイと居酒屋に誘い、親友の佐藤春(千葉雄大)を巻き込んで、遺品整理現場で見つけた伝説のAVの話や、彼が旅してきた世界の友達の話に花を咲かせるなど、鈴を非日常へと引き込んでゆく。そんな、うらやましいほど自由な彼と接するうち、窮屈に生きがちだった鈴の心は徐々にほぐれていき…。
一方、鈴の勤務先である「マロニエ産婦人科医院」では、出産を終えたある妊婦(清水くるみ)が「子どもなんていらない」と言い放ち、その場は騒然。中でも45歳の新人産婦人科医・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)はひときわ沈みこんでしまう――。無事この世に生を受けたのに、祝福されない命があることに納得いかない深夜。そんな彼に、自らが抱える医療裁判について鈴は語り出し…?
そんな中、匿名妊婦が我が子を置き去りにして、病院から逃亡!? 鈴からその話を聞き、いてもたってもいられず、逃げた母親を探そうと立ち上がる一星。だが、鈴はそんな一星を引き留めて…。
恋は出会いから、加速へ――。
10歳差ピュアラブ、本格始動。
雪が舞い散る踏切で、一星が鈴に伝えたかった想いとは――?
第2話のレビュー
第2話は、鈴(吉高由里子)や一星(北村匠海)をはじめとした、登場人物たちの過去や想いが垣間見える回だった。恋愛ドラマでありつつ、命や人間や人生にフォーカスするストーリーに、さらに惹かれた。
一星に「ありがとう、あなたに母の遺品を整理してもらえてよかったです」とお礼を言った(後に「お前のキス、大したことなかったけどな!」と手話で悪態をついた)鈴。強引に鈴のスマホに自分の連絡先を入れ、「お礼して」と(トークアプリで)言った一星に、映画と食事に付き合わされるが、それなりに楽しそう。年齢の話になり「10コも下なの?」と驚く鈴だが、一星は「たった10コだろ」と意に介さない様子。
急患が出て、病院に向かわねばならなくなった鈴。出産直前まで病院に行かなかったという女性(清水くるみ)の出産を担当する。男の子が生まれたが、女性は赤ちゃんの顔を見ようとせず、「いらない」と言う。名前も明かさず、頑なな女性。深夜(ディーン・フジオカ)は、赤ちゃんに話しかけ写真を撮り、鈴に入れ込みすぎだと言われる。鈴は自分が訴えられたときの話をする。救急で妊婦を受け入れ、赤ちゃんは助かったが母親は死亡。病院や鈴の対処に落ち度はないとされたが、いまだにそのときの出血を思い出すという。
深夜は、自分の過去を思い出していた。まだ周囲の人間には明かされていないが、深夜が30代後半になってから医学部に進み、45歳で新米医師となったのは、彼自身が出産時に妻と赤ちゃんを同時に亡くしていたからだった。公式サイトのプロフィール欄に“秘められた悲しい秘密”とあって気になっていたのだが、そういうことだった。
男の子を産んだ女性は「赤ちゃんを抱いてみませんか」という深夜に押し付けるなと突っぱね、ドライにまだ退院できないことと、赤ちゃんに対する対応が必要と伝える鈴の言葉も拒絶。疲れた鈴の帰宅中、一星から連絡が。指定された酒場に行くと、一星と春(千葉雄大)がいた。一星は遺品整理で”伝説のAV”を発見して観たかったのだが、社長の北斗(水野美紀)に没収されてふてくされていた。
手話と通話アプリで話す一星、通訳もしつつ発話と手話を使い分ける春、基本音声だが、わかったり習ったりした手話を使ってみる鈴の会話は、ごちゃまぜだけどにぎやかで楽しそうだった。伝説のAVに興味を示す鈴と、「日本のAVには情緒がある」と熱く力説する一星。いい感じに下ネタは通訳しなかったり、「(鈴と)やったの?」と手話で聞く春が、ちょっと嫌だけどリアルだった(笑)。
このほかにも、春の手話の使い分けというか、伝えるものと伝えないものの分け方が興味深い。一星の言葉を通訳するけれど、例えば伝説のAVが北斗に見つかったときは、一緒に興味を持っていたのに「俺もやめろって言ってたんです」と嘘をついたり、一星の主張を伝えなかったり。鈴と食事したときは、唇を読めないように隠しながら「(一星は)尊敬する先輩です」と言ったり(※年齢は一星のほうが下だが、仕事では先輩)。ちょっとずるいと思うときもあるが、一星と親しいからこそできることでもあり、自然な友達のやり取りという感じがする。一星の口癖だという「いいね」という意味の「よきよき」も覚えた。
飲み会からの帰り、2人に教えてもらった手話での名前を繰り返す鈴。「雪宮鈴」の「雪」は雪が降っている様子、鈴は鈴を鳴らす様子を手で表していて、「柊一星」の「星」は星が降り注ぐような表現で美しかった。春が教えてくれた名字の手話談義も面白かった! そしてドラマタイトル「星降る夜に」の「星降る」はこの部分だったのか、と思った。「夜に」は深夜なのだろうか。
先ほどの赤ちゃんを産んだ女性は、とうとう置き去りにして出て行ってしまった。その話を聞いた一星は「(女性を)探そう」「俺は高校の時に両親を事故で亡くした、何で俺だけと思って毎日泣くぐらいつらかった」「生まれたときから親がいないなんてかわいそうすぎる」と、女性を探しに行こうとする。でもここで、鈴はずっと感じていた疑問を口にする。深夜も看護師たちも一星も「赤ちゃんがかわいそう」と言った。確かにこれからあの子の人生にはいろいろなことがあるかもしれないが、生まれて2日なのに「かわいそう」と決めつけられなければならないのか。そう聞いて、一星は両親の葬式のとき、人々から口々に「かわいそうに」と言われたことを(正確には「かわいそう」と言っている複数の人の口元を)思い出していた。
「俺はかわいそう?」と聞く一星に、鈴は全く思い当たらない、という顔をする。
「一星がかわいそうなの?」「それは耳が聞こえないことやご両親を亡くしてることを言ってるの?」と聞く鈴に「普通と違うから」と言う一星。
鈴は「確かに変わってるかもしれないけど……」
「自由で自信満々でポラリス(遺品整理の会社)のエースで、頼んでもない遺品届けてくれるくらいお節介で、うらやましいくらい魅力的な人生だと思うけど、かわいそうなの?」と言う。一星はうれしそうに手話で赤ちゃんの幸せを願い「俺を見習えって言っとけ」と言う。
1話だと、鈴が一星に出会って価値観が変わる物語だと思っていたが、逆もありそうだ。
一星が猫6匹を保健所に連れて行かずに俺が引き取り手を探す! と豪語して北斗に怒られるが、「社長に似たんじゃないですか」と言われ「1匹くらいうちで飼うよ~」と言っちゃう北斗のお人よしっぷりが伝わってきた。それにしてもここで出てきた猫ちゃんたち、かわいかった……。あと、ちょいちょい挟まれる麻呂川院長(光石研)の顔の看板に笑ってしまう。
ラスト、雪の降る踏切で向かい合う雪と一星。手話で「雪宮鈴」と言ったかと思えば「雪宮鈴、好きだ」と告白した一星。なんて静かで美しい告白シーンなのだろうか。
深夜と北斗が知り合いだったことも発覚。深夜の亡くなった奥さんと北斗が友達だったのだろうか。深夜が「俺って変な顔?」「変じゃないよ、綺麗な顔だよ」というやりとりに笑いつつ、何をもって変な顔と言われているのかが気になった。予告では早くも三角関係の予感もしていて、今後も目が離せない。
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話ストーリー&レビュー}–
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
「雪宮鈴、好きだ」――。
雪降る夜に、真っすぐな瞳で、踏切越しにあふれる思いを伝える一星(北村匠海)。不意の告白に驚き、立ち尽くす鈴(吉高由里子)に走り寄り、2人は見つめ合い、キスを…するのかと思いきや。
「待て。まてまてまて」――あまりの展開の速さ、そして一星が10歳下であることへの戸惑いが入り混じり、鈴は一星のキスを寸前で制止。「なんで?」と子犬のように不満を訴える一星に、鈴は言い放つ、「とりあえずステイ」。しかし、その胸は密かに恋の予感に躍っていて――。
翌日、おもむろに手話教室への申し込むボタンをぽちりと押す鈴。そこで、遺品整理のポラリスの社長・北斗千明(水野美紀)と遭遇し、2人は居酒屋で意気投合!遺品整理士の仕事について聞いてゆくうちに、一星が遺品整理を目指した理由が、7年前、彼の両親が亡くなったことがきっかけだと知る。お節介なほどに遺族に寄り添おうとする一星が抱えた思いを、はからずも知ることになった鈴は…?
一方、鈴の勤務先であるマロニエ産婦人科医院では、たまにはみんなで息抜きに釣りに行こう、と院長・麻呂川三平(光石研)が奮起!しかし当日やってきたのは、麻呂川と45歳の新人産婦人科医・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)のみ! しかも、結婚記念日だったことをうっかり忘れていた麻呂川がまさかの途中離脱…。釣れた魚を託されたものの、料理なんてほぼできないし…と困り果てた鈴は、深夜の家で彼の手料理を振る舞われることに。
魚をさばく深夜に、ふと「どうして医者になったの?」と問いかける鈴。すると深夜から、思わぬ“悲しい過去”を知らされることに。更に、彼がマロニエ産婦人科にやってきた理由、そして「雪宮先生みたいな医者になりたい」と語る理由は、10年前、2人は既に出逢っていたからだ――という真実も明らかに…。
衝撃の事実に胸をしめつけられ、思わず涙する鈴。そんな鈴の涙に、思わず触れようと手を伸ばす深夜。そんな2人の姿を、運命のいたずらか、一星が目撃してしまい…?
明かされる一星と深夜の過去。
近づいたはずの、2人の距離は、波のように揺れ動く――。
深夜が伝えたかった“もう1つの想い”とは――?
第3話のレビュー
「雪宮鈴、好きだ」
雪が降る中の告白シーンは素敵だったが、2人を隔てていた踏切があがって鈴(吉高由里子)のところにやってきた一星(北村匠海)は、そのままキスしようとする。ムードとは。鈴に押さえられ「展開が早い。ステイ!」と言われて不満そう。
第3話では、一星と深夜(ディーン・フジオカ)の過去が、より深く掘り下げられた。
手話教室に通いはじめた雪は、一星が働く会社の社長である北斗(水野美紀)と再会。終わった後食事をしながら、一星の両親が亡くなった際、遺品整理を担当したのが北斗だったという話を聞く。はじめは遺品を整理されたくなくて暴れていた一星だが、北斗が気持ちに寄り添って遺品について「あなたのお食い初めのときの写真です」「お父さまのカメラ、あなたとお母さまの写真ばっかり」と話しかけられるにつれ、自分が両親に愛されていたのを目の当たりにし、翌日に自分もここで働かせてください、と言いにきたという。以前から言われていたが、一星の遺族に寄り添うスタイルは、北斗を見習ったものだったのだと改めてわかった。
手話教室は大人数・手話以外禁止・お互い自己紹介してくださいというワーク中に「空書きしてください」と何度も指摘されるなど、結構初心者にはハードルが高そう。
一方、雪の務める病院では院長(光石研)の提案により、みんなで釣りに行くことに。といっても来ると言っていたナースたちは来ず、院長と雪と深夜の3人に。院長も結婚記念日を忘れていたことが発覚し、釣れた魚を押し付けられ、深夜の家で調理することに。物が少ない深夜の部屋で、彼がどうして病院に来たのかという話に。
妊娠していた奥さんとお腹にいた赤ちゃんを同時に亡くしていたことは前回わかっていたが、今回10年前のことで、その場に研修医として居合わせていたのが雪だったとわかった。突然昨日まで元気だった妻(安達祐実)と生まれてくるはずだった子どもを亡くし、呆然としていた深夜は、医師たちの中でひとりボロボロ泣いていた雪に救われ、医師を目指したのだという。その話を聞いて、涙ぐむ雪。これまでは、訴訟を起こされて以降ドライになったのかなと思っていたが、本来は情のある人なのだろう。
病死した人の遺品整理の現場で、指輪と手紙を見つけた一星。卒業アルバムを開き、手紙を送ろうとしていた相手らしき人の写真を撮る。春(千葉雄大)に見つかるが、頑としてやめない様子。今までの行動からしてそうだろうなという展開ではあるが……。探してまわり、やっと相手の女性の居場所を突き止め、手紙と指輪を渡すが、「迷惑です」と突き返された。手紙に「3年たってこんな手紙を送っている」的なことが書いてあったが「昔の不倫相手の手紙を渡されても困る」と言い、ついには一星を突き飛ばし、突き飛ばされた一星は水をかぶってしまう。
さらに鈴が深夜と肩を組んでいるところを見てしまい(実際は魚を食べた後に鈴を送った深夜が道で派手に転び、肩を貸していただけなのだが……ドジっ子がすぎる)、ショックを受けて風邪をひいてしまう。
翌日、手話教室で一星が病欠したと聞いた雪は、北斗のお節介もありゼリーを届けに家まで行く。はじめはふてくされていた一星だが、鈴は結局枕もとで寝落ちてしまう。翌朝鈴を家まで送る途中、例の手紙と指輪の件を話す一星。これまでは感謝される例ばかりだったのだが、遺品を届けられても今回のように迷惑がられ、怒られることもあるのか。ビンタされたりコーヒーをぶっかけられたこともあるという。
「でもいいんだ、俺はずっと続けるから」と言う一星。
雪は、自分が裁判を起こされたときのことを思い出した。何とか助けたい一心で受け入れたのに、上司である医師からは「すべて君の判断ミス」と言われ(医師一人に責任を押し付ける病院、ひどすぎない?)、裁判では「人殺し」と言われた。鈴の様子を察して、手を取って一緒に踊る一星。
「子どもかと思ってたけど、私なんかよりずっと優しくてまっすぐで強いんだね」
とつぶやく雪。手話で言ってと言われるが、「まだここまでの手話できない」と笑うのだった。
観ているほうも毎回ハッとさせられるような気付きがあって、素敵だ。
今回も、春との手話シーンが自然でよかった。「恋はさざ波なんだから」は名言だ。春が既婚者だということも判明。次回、彼も話に大きく絡んできそうで、展開が気になる。
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話ストーリー&レビュー}–
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
まっすぐで、強くて、どこまでも優しい――音のない世界で自由に飛び回る柊一星(北村匠海)の本質に心惹かれ、10コの歳の差を超えて、彼のおでこにそっとキスをした雪宮鈴(吉高由里子)。「ステイ」状態解除により、また一歩距離を縮めた2人は、胸躍る新たな日常の扉を開くことに。
仕事の休み時間に、一星にリモートで手話を教わったり、一星のバックパック世界旅行時代の友人が経営するギリシャ料理店でデートをしたり…。鈴は一星を介し、これまで知らなかった世界へどんどん足を踏み入れるようになり、徐々に明るく、いきいきと生きるように変わり始める―。
そんなある日、鈴が勤める「マロニエ産婦人科医院」に食品会社に勤めるキャリアウーマン・佐藤うた(若月佑美)が来院。担当医の佐々木深夜(ディーン・フジオカ)が妊娠6週目だと伝えるも、うたは“喜び”とはかけ離れた表情を浮かべる。新たな命が芽生えたことを心から祝福する深夜は、彼女の意外な反応に戸惑い、どんな事情があるのだろうか…と心配するが、看護師の蜂須賀(長井短)から「気持ちが分かる。自分も別に子供好きじゃないんで」と正反対の意見を述べられ、「ぜいたくな悩みだ」と本音をぶつけてしまう―。
一方その夜、一星の親友・佐藤春(千葉雄大)は妻・うたから妊娠を告げられる。そう…あの妊婦は、ほかでもない春の妻だったのだ! その後、春はひとりでマロニエ産婦人科に現れ、「いつまでなら中絶できるんでしょうか?」と衝撃な問いかけをぶつけてくることにー。
父親になることを受け入れられず、自らの過去も相まって、うたの存在にも息苦しさを感じるようになってしまう春。春は何に悩んでいるのか、彼にとっての“しあわせ”とは何なのか…。どんなに考えても答えは分からないけれど、それでもなんとか春の力になりたいと考え、前向きな言葉をかける一星。しかし、彼の思いやりは逆に春を追い詰め、2人は大喧嘩をしてしまうことに…!
明かされる春の過去。
君のために、ぼくができることはなんだろう―?
親友が抱えた、目には見えない“心の傷”とは…?
第4話のレビュー
「子どもかと思ってたけど、私なんかよりずっと優しくてまっすぐで強いんだね」
一星(北村匠海)の魅力に、鈴(吉高由里子)も視聴者もあらためて気づいた前回のラスト。
もっと一星と話したい鈴は、より一層手話の勉強に熱が入る。
2人のデートシーンが大変よかった。まず、白いワンピとコート姿で走ってくる鈴が可愛すぎる!
撮りたくなる気持ちもわかる。
雑貨屋さんを見て、一星がバックパックをしていたときに知り合ったギリシャ人がやっているレストランでお腹いっぱいになって……ひたすら楽しそうな時間だった。途中、食券がうまく買えなくて困っているおじいさんを見つけて助け、ハイタッチする一星。微笑ましいおせっかいだ。
わからない手話があるとその場で調べる鈴の前で、レストランの曇ったガラスに文字を書き始める一星。
「ス」で始まったので「スキ」って書くの? と思いきや、書かれた文字は「ステイ」。
「手話頑張りすぎ」「ゆっくりゆっくり」「俺と話したいと思ってくれるのがうれしいから、頑張りすぎないで?」と気遣いを見せた。優しすぎてたまらん。しかも、鈴に告白した後にキスしようとして言われた「ステイ」をここで応用してくる粋さがいい。
「ゆっくりゆっくり」という手話、観ながら思わず真似してやってしまった。
「よきよき」といい、人の名前といい、使ってみたくなる手話がたくさん出てくるドラマだ。
そして今回焦点が当たったのは、一星の同僚で親友の春(千葉雄大)の物語。妻のうた(若月佑美)は
深夜(ディーン・フジオカ)に妊娠を告げられたが、にこりともしなかった。
うた自身は内心うれしかったのだが、春は「わからない」「責任があることはわかっている」と言う。「そう言うと思った」と言ったうたは、春の気持ちが一番大事だから、と言う。
春は一人でマロニエ産婦人科医院を訪れ、いつまでなら中絶できるか尋ね、自分の気持ちを打ち明けた。
春とうたは、同じ会社の同僚だった。激務だけど楽しい仕事の中で意気投合した2人はすぐに結婚。
うたがどんどん評価を上げて仕事を任されていく一方で、春は怒られることが多かった。
毎日くたくたな2人は、会話も減っていった。ある日仕事に行けなくなった春は、休職ののちに辞めることになったが、家を出られない日が続いた。うたはそんな中でも全く文句を言わず「家のことをしてくれてありがとう」と言ってくれていたが、春はかえって生きてて申し訳ないという気持ちを募らせてしまった。
「新しい会社にも行けるようになったけど、今はまだ底なんです」と、親になる自信がないことを告げた。
客観的に見ると、仕事の向き不向きの問題で、春には向いてない仕事だったのでは……という気もするが、実際に自分が挫折を味わった側だったら、自信を喪失してしまう気持ちもわかる。
春が悪いわけではないし、産婦人科医である以上このようなケースに対応するのは仕方ないのだが、望んでいた赤ちゃんと、妻までも喪った深夜は複雑な気持ちだったろう。看護師の蜂須賀が「さっきの旦那さんの言ってること、わかる気がする」「お産は感動するけど関われば関わるほど、産めないなって思う」とこぼす。
鈴も「私たちは無力、それでも何かしてあげたいとは思うけど……」と言う。難しい……。
春の様子を気にしていた一星は、鈴に「黙って見守る優しさもあるよ」と言われていたが「そういうの俺苦手」と答えた。鈴は「知ってる」と言ったし、観ているこちらも「でしょうね!」と思った。
優しくてお節介な一星は、やはり放っておけず話しかけてしまう。
「子ども、うたに似るといいね」「名前考えてやるよ」と話しかけたが、タイミングが悪かった……。
春は怒りをあらわにして「黙っててくれよ。俺はそんなに強くないんだよ。お前みたいに耳が聞こえなかったら、お前みたいに自信満々に笑って生きられない。もし生まれてくる子の耳が聞こえなかったら、そんなの俺は無理だよ。抱えきれないよ」と言って部屋から出ていってしまう。
部屋の外で聞いてしまった北斗(水野美紀)の娘・桜(吉柳咲良)、「悪気はないよ」「一星は悪くないよ」と瞬時にどちらのこともフォローしていて、いい子だ。「俺が悪いんだ」と悲しそうに微笑む一星。優しい奴だ。
北斗は桜のことを「私の子、かわいいうえに頭もいい!」とほめていたが、実は北斗の元夫の連れ子で血のつながりはないことが判明して驚いた。人生いろいろだ。
元気のない一星を見て、鈴とケンカをしたのかと勘違いした祖母・カネ(五十嵐由美子)は、「今日は私の誕生日です」「好物はシャンパンとビザ」と嘘をついて鈴を呼び出す。おばあちゃん、キュートで機転がきいて最高!
デートのときに鈴が見ていた、星が降っているように見えるネックレスをこっそり買っていた一星。
プレゼントしてつけてあげて、バックハグ、「鈴が好き」「鈴が大好き」と、バックハグの体制のまま、鈴の顎のところで手話をするの、めちゃくちゃよかった。その後のキスシーンもよかった。
そんな中、帰宅したうたが玄関でお腹が痛いと倒れてしまい、SNSに「雪宮鈴は人殺し」と書き込まれる……。ま、まだ逆恨みしてる人がいるの……? 次週はつらい展開になりそうだ。
出産の素晴らしいシーンと、生まれたのに子を置き去りにする母親や妊娠を喜べない親、無事に生まれないケース。
産婦人科医の割り切りと、それでもなんとかしたい気持ち。
一星のおせっかいで救われる人と、怒り出す人。
これまで明るく楽しそうな様子が印象的だった春の苦悩。
さまざまなものごとや人の相反する面に焦点を当てるこの物語が、とても好きだ。
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話ストーリー&レビュー}–
第5話ストーリー&レビュー
第5話のストーリー
「鈴が大好き」「私も一星が好き」――ついに想いが通じ合い、2度目のキスを交わした雪宮鈴(吉高由里子)と柊一星(北村匠海)。その矢先、マロニエ産婦人科医院の同僚・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)から鈴に、緊急連絡が入る。一星の親友・佐藤春(千葉雄大)が、突然激しい腹痛に襲われた妊娠中の妻・佐藤うた(若月佑美)を連れて、病院に飛び込んできたのだ! 慌てて病院に駆けつけ、処置に取り掛かる鈴。妻の身を心配し、パニックに陥る春。そんな春を懸命に支える深夜。騒然とする院内の中、音のない世界で生きる一星はひとり、目の前の状況を理解することができずに立ち尽くす。愛する人を、親友を、助けたい―だけど自分はなにもできない。一度感じてしまった無力感は、抗おうとすればするほど、無情にも増していき…。
一方、妻の妊娠をきっかけに、親友である一星と気まずい関係になってしまった春。父親になることへの答えも出ないまま思い悩む春は、ふと一星との出逢いを思い出す。会社を辞め家に籠っていた数年前、隣の家に現れた遺品整理士が一星だった―。
そんな中、マロニエ産婦人科医院の公式SNSに「雪宮鈴は人殺し」という中傷コメントが突如殺到する。“人殺し”というワードを見て思わず凍りつく鈴。彼女の脳裏には、かつて大学病院を追われる原因となった“5年前の事件”が甦る。何も知らない病院スタッフたちの手前、気丈に振る舞おうとする鈴だが、異変を察知した深夜はただひとり、そっと鈴の手をひき屋上に連れ出す。「大丈夫じゃない時は、大丈夫じゃないって言ってください」――そう語りかけ、黙ってそばに寄り添う深夜。その優しさに、思わず鈴の目からは涙が零れ…。
一方、その日を境になにかに怯えるようになった鈴を目の当たりにした一星もまた、彼女を懸命に守ろうとする。「鈴は俺が守るよ」――愛する一星に強く抱きしめられ、束の間の安心感を覚える鈴。しかし、心配して追いかけてきた深夜と一星が、なんと鉢合わせ!一星がライバル心むき出して、深夜に喧嘩をふっかけはじめ…!?
呼び起こされる、鈴の過去。
本当につらいとき、傍にいてくれるひとは誰ですか―?
それぞれのやり方で、鈴を守ろうとする一星と深夜。ところが…ついに、鈴の心を決定的に追い詰める“事件”が発生!
忍び寄る恐ろしい影は、鈴と一星、そして深夜の関係をも深い闇へと引きずり込み…。
第5話のレビュー
妻のうた(若月佑美)が妊娠したが、「自分なんかが父親になっていいのだろうか」といつまでなら中絶できるか深夜(ディーン・フジオカ)から聞いた春(千葉雄大)。うたが腹痛を訴えて緊急搬送され、彼女の身に何かあったらと取り乱す。うたの腹痛は盲腸だった。安堵する深夜だが、うたは「あの人(春)は、私が流産すればよかったと思ってると思います」と言う。妊婦がこんな風に言わねばならない状況はつらい。
一星、自信喪失
呼び出された鈴(吉高由里子)と一緒に病院を訪れ、その様子を見ていた一星(北村匠海)は、自分の無力さを感じて自信をなくす。医療従事者ではないので何もできないのは当たり前なのだが、言い合いになった春に「お前みたいに耳が聞こえなかったら、お前みたいに自信満々に笑って生きられない。もし生まれてくる子の耳が聞こえなかったら、そんなの俺は無理だよ。抱えきれないよ」と言われたことも少なからず関係しているようだ。
仕事中も明らかに落ち込んでおり、北斗(水野美紀)たちに「春がいないと一星も静かね」「(声を出さないから)いつも静かなんだけどうるさいもんね」と言われていたのはちょっと笑ってしまう。一星だってもちろん人間なのでこんなときもあるのだろうが、初っ端から自信満々な一星を観てきた視聴者はちょっと戸惑ったのではないだろうか。
考え直す春
春が復帰してきた日、2人とも気まずそうだが、飲みに行くことに。ひどいことを言ったと気にしていた春が謝ろうとすると、先に一星が謝ってくる。春も前の仕事を辞めて引きこもっていたときに隣の部屋の遺品整理にきた一星たちを見て一緒に働きたいと思ったこと、普段言えない言葉も手話なら言えたこと、一星を尊敬していることを伝えた。序盤で一星にはわからないように鈴にだけ伝えた「尊敬する先輩です」を直接伝える展開が熱い。お互いに思い合う素晴らしい友情だ。
耳が聞こえるのに手話をマスターしている春、一星のために覚えたのかなと思っていたけれど(もちろんそれも理由の一つだとは思うが)、春自身が手話を使うことに救われていたとは。春は自分に価値がない、というようなことをたびたび言うが、ずっと手話を第一言語としてきた一星とあそこまで話せるのはすごいことなのに。
あらためて一星に悩みを打ち明けた春。「俺がうただったら今一番一緒にいてほしいのは春だけどな」と一星に言われてハッとする。うたの退院の日、勇気を出して話す。「うたは俺といて幸せ?」と聞くと「ケンカ売ってんの?」と返される。妊娠や出産への不安を伝えたうえで、産みたいという意思を示したうた。「春とお休みの日に昼から熱燗飲んで暴れたい」「すごいじいさんばあさんだね」という会話がいい。息子と言ううたに「息子なの?」「なんとなく。知らんけど」「春に似たかわいい顔した息子」「うたにも似るといいな」と続くのも微笑ましい。産みたいという意思を聞いて泣きそうになって喜ぶ深夜、本当にいい人。
鈴に忍び寄る魔の手、三角関係が激化
一方、鈴の身には大変なことが起きていた。前回ラスト、SNSに「雪宮鈴は人殺し」と書き込まれたのを発端に、家にも「人殺し」と書かれた多数の貼り紙をされ、盗撮した写真(一星や深夜も写っているし、家もわかる)をネットにアップされ、果ては家にレンガを投げ込まれる。これはさすがに嫌がらせを通り越して犯罪ではないか。
犯人は鈴を相手に裁判を起こした、危険な状態で運ばれてきて死亡した妊婦(子供は助かった)の父親なのだろうか。当時の回想シーンも出てきた。元同期に「他の病院には受け入れてもらえず、断られてしまった」と頼み込まれて引き受けたが、実際に運ばれてきた妊婦は聞いていた以上に危険な状態だった。元同期、大事な部分を伏せて押し付けるなんてひどくないか。また、鈴の当時の上司がひどいのは以前のシーンからも明らかだが、鈴の元職場はもともと30分に5人以上の診察を詰め込むなど、いいやり方をしてない状態だったようだ。にもかかわらず、「そんな面倒な妊婦を受け入れた君の責任」だなんて、ひどい……。
患者さんを助けたい一心で引き受け、できる限りの対処をした結果、こんなことになってしまうなんて。
やるせない気持ちになる。
訴えた患者も患者で、逆に言えば鈴のところに運ばれてきたから子供は助かったのかもしれないのに、逆恨みをするなんて。でも、誰かを恨まないとやっていけないような精神状態なのだろうか。もちろんどんな理由があっても、こんな行動は許されないが……。
そしてここで一星と深夜の三角関係(?)が激化。ひたすら鈴を心配して行動する深夜。一星に友好的に手話で挨拶するが、一星は敵意むき出しで「鈴と付き合っている、お前には渡さない」とめちゃくちゃ早い手話を返すが深夜には伝わらない。むしろ一星を鈴の弟だと勘違いした深夜は、ハグしてきて、一方的な敵意である。深夜、めちゃくちゃズレてるけど面白い。
ちゃんと”キュン補充”できるシーンもある。
キスしてきて「何急に」「かわいいから」というやりとりや「鈴、好きだ」「知ってる」というやりとりがかわいい。情熱的でまっすぐなのが一星のいいところ。
でもレンガを投げ入れられたとき、先に部屋に入っていた深夜を見た一星は、おびえている鈴に「俺が耳が聞こえなくて頼りないからこいつに助けを求めたのか」と詰め寄る。気持ちはわかるけど、この状態の鈴にそんな言い方をするのはやめてほしい。深夜、勝手にきただけだし、そのおかげでレンガの直撃を受けずに済んだし。でもだからこそ余計、一星はつらかったのだ。
院長かっこいい……!
嫌がらせに驚く看護師たちの前に、「菜の花摘んできた~♡」とルンルンで表れる院長(光石研)、かわいすぎて最高である。しかも、裁判のことなどすべて知ったうえで彼女を雇ったことを告げ(それはわかるだろうけど)、動揺して「鈴宮先生にはしばらく休んでもらったほうがいいんじゃ」という看護師に「僕たちはいつも通り、何も変わらない。そうでしょ?」と言うの、かっこよすぎる。
確かに、やましいことがないのに休む必要なんてない。
照れ隠しなのか大騒ぎして去っていくところまで含めていい。鈴もこの人に救われたのだろうなぁ。
北斗の娘・桜(吉柳咲良)はひそかに一星のことを好きで、彼が鈴に会いに行くと知ってわざと車に乗せてもらい、鈴に見えるようにキスをした(そう見えただけで違うかもしれない)。
次回、三角関係(四角関係?)と鈴への嫌がらせはどうなる……?
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話ストーリー&レビュー}–
第6話ストーリー&レビュー
第6話のストーリー
大学病院で働いていた5年前、ある妊婦の命を救えなかったことが原因で訴えられた雪宮鈴(吉高由里子)。時を超えたいま、SNSに「人殺し」という誹謗中傷コメントや盗撮画像をばら撒かれ、自宅まで襲撃された鈴は、姿を現さない“その男”の存在に怯え震える。
一方、愛する鈴を守るため自宅へ駆けつけた一星(北村匠海)だが、自分より先に来て、傷だらけで鈴を守っていた深夜(ディーン・フジオカ)の姿を見て思わず激昂。親友・春(千葉雄大)のことも救えない自分の無力感も相まって、非のない鈴に八つ当たりして飛び出してしまう。
翌日、頭を冷やした一星は、鈴にちゃんと謝ろうと、彼女を星空デートに誘う。しかし、待ち合わせ場所で鈴が目撃したのは、車の中で桜(吉柳咲良)にキスされる一星の姿だった―。
そんな中、「遺品整理のポラリス」の社長・北斗千明(水野美紀)のもとに一通の手紙が届く。差出人は、桜を産んだ母親――そう、北斗と桜は実は血が繋がっていない。桜は北斗の元夫の連れ子だったのだ! 海外に完全移住するため、最後に自分が産んだ娘に一目会いたいと訴えるその手紙を、葛藤にさいなまれながらも桜に手渡す北斗。実の母親に会うべきか、会わないべきか…答えが出ない桜は、突然、鈴に会いに「マロニエ産婦人科医院」に訪れる。
更には、ピンク頭のチャーリー(駒木根葵汰)と、元レディースの看護師長・犬山(猫背椿)の知られざる過去も明かされて…?
一方、出逢った日のように無数の星が輝く空の下、「一緒に暮らそう。鈴は俺が守るから」とまっすぐ想いを伝える一星。ガラスも割られ、帰る家も失ってしまった鈴は、そのまま一星にすべてを委ね、共に暮らすことになる。
そんな最中、一星と深夜が、居酒屋でまさかの鉢合わせ…!? ライバル心をむき出しにしまくる一星だが…。
一瞬の星のように唐突に、2人はお互いの存在を確かめ合う。
しかし、ついに鈴の前に、“あの男”が姿を現す―。
第6話のレビュー
バレンタイン、一星(北村匠海)の車に乗せてもらい、降り際にキスした桜(吉柳咲良)。鈴(吉高由里子)はそれを目撃していた――衝撃の前回ラスト、どうなることかと思ったが、鈴は笑顔。「桜ちゃんに告白されてたでしょ?」と言う。「俺が好きなのは鈴だ」「わかってるよ」と2人の関係は無風だった。つよい。
深まる一星と鈴の絆。一星が気持ちをまっすぐに伝える理由
鈴の家に先に深夜(ディーン・フジオカ)がたどり着いていたことにいら立ち、まくし立ててしまったことを謝る一星。悪いと思ったらすぐに謝れるのが一星のいいところ。「鈴は俺が守るから、一緒に暮らそう」と一星の家へ。「もうステイしない」と一夜を共にするのだった(厳密に言うと夜自体は何度か共にしているのだが)。2人の電気消す消さないの攻防がおもしろい。「電気消して」という鈴と、「手話ができないし見えないとわからない、全部見たい」と主張する一星。確かに。
2人で物件を見に行くのだが、不動産屋さんが磯村勇斗だった。こんな贅沢な磯村勇斗の使い方ある?
一瞬すぎて、似ている違う人なのかと思ってしまった。
「鈴はカッコいい、尊敬してる」「でも一緒にいると10歳年上になんて見えなくて子どもみたいでかわいいとも思う」「だから俺の前では気を抜いてありのままでいいよ」という一星。いいところ全部言って全肯定してくれたうえにそんなことまで伝えてくれる彼氏、最高では?? (めちゃくちゃ早い手話で「どうせ最初にゲロ吐いたところ見てるし」と続けたけど)
「星って、生と死の境い目みたい」というちょっとロマンチックで深い言葉もいい。
「明日死んでも悔いがないように 俺は伝え続けるよ」「鈴、好きだ」
一星がどストレートなのに納得するとともにキュンとするシーンだった。
そのまっすぐさがまぶしい。
桜が語る、北斗への想い
桜の本当の母親から届いた、会いたいという手紙。動揺しながらも、朝のルーティーンのひとつとしてさらっと(?)渡す北斗。会いたくないと突っぱねる桜だが……。
結局本当の母に会うことにした桜。一緒についてきてほしいと頼んだ相手は、なんと鈴だった。
先生のこと知りたいから、だと言う。
失恋し、髪を突然フォーエバーピンク(濃いピンク)に染めてきて周りをびっくりさせるけれど、無邪気に笑う子供のような一面もあって、くるくる変わる表情がかわいい。
実の母も父も自分を捨て、「北斗千明だけが私を捨てなかった」「神様みたいな人だと思う」と話す桜。
北斗は内心、桜が本当のお母さんのところに行って戻ってこないのではと心配で泥酔するのだが、桜は北斗が思っている以上に北斗のことを愛しているのだ。血がつながっていなくてもこんなに素敵な関係もあるんだ。
一星にキスしたあと「(一星が鈴を好きなのは)わかってるけど、私も言いたかった。ずっと好きだったって」と伝えた強いところ、北斗によく似ている。桜は「私も鈴先生のこと好き」と一星にメッセージを送るのだった。
イェイイェイウォウウォウ大活躍
今回、チャーリー(駒木根葵汰)が大活躍だった。桜が一人木の下で落ち込んでいるとき、「イェイイェイウォウウォウ、イェイイェイウォウウォウ」と一人で掛け声をかけながら走っているチャーリーに遭遇。髪色を聞かれて「フォーエバーピンク、愛されモテカラーだよ♡」と教えてくれた。本人が現れる前に「イェイイェイウォウウォウ」でわかるのうける。最後、マロニエ医院でも彼の声が聞こえて院長(光石研)が「来る!!」と叫んだのにも爆笑した。
様子はおかしいし、夜は添い寝のアルバイトしてるし、あやしげなチャーリーだけど、「今日は俺の誕生日だからケーキ買ってきた。誕生日は母に感謝する日ってお客さんに聞いたから」と、母である看護師・鶴子( 猫背椿)のために豪華なケーキを買ってきたところにジーンときた。鶴子がレディース総長だったときの写真をプリントしたケーキなのは笑うけど。
結局髪色を戻した桜に「その色似合うよ」と言われ、「俺、ピンク大好きだからさ」と答えたチャーリー。鶴子が仕切っていたチームの名前は「ピンクエンペラー」。つまり、この奇抜な髪色はお母さんへの想いからだったし、ピンク大好き=お母さん大好きということなのだ。いいやつだな、チャーリー。
チャーリーだけではなく、登場人物たちの温かさが伝わってくる回だった。鶴子はレンガを投げ込まれた鈴の家の周りをピンクエンペラーのメンバーにパトロールさせるし、「ご迷惑おかけしてすみません」と言った鈴に「たまには迷惑くらいかけてよ」と笑う院長。問題は解決していないが、この医院の人たちの優しさは救いだと思う。
一星vs深夜……?
一星を鈴の弟と勘違いしていた深夜。家でふと一星の様子を思い出し、「あれは……弟じゃないな」と気づく。い、今か~~~!! 桜が実の母に会いに行く日、深夜はやけ酒につきあう。「なるようにしかならないじゃん」と言って北斗に怒られ、「だって大丈夫って言って大丈夫じゃなかったら千明ちゃん俺のこと殴るじゃん」「そりゃ殴るよ」めちゃくちゃジャイアンである。
そこに一星と春(千葉雄大)が合流。相変わらず敵意むき出しの一星。かなり失礼な発言を訳して伝えろと春に言い、申し訳なさそうにしながらも顔の表情と言い方込みで伝える春もおもしろい。だがなにせちょっと天然入った深夜なので、「率直なところが素敵です」と素直にほめ、「ナメとんのか」と言われるのであった。
ちなみにアジフライ、しょうゆ派(深夜)、ソース派(一星)、塩派(北斗、春)に分かれた。塩は初耳だったので今度試したい。
泥酔した北斗を抱えて送っていくと、ちょうど鈴と桜が戻ってきたところ。帰ってきてくれたことに泣く北斗。かわいい。
一星、鈴、深夜、3人の帰り道。相変わらず敵意むき出しの一星だが、深夜は一星に星を見に行かないかと誘う。スーパーマイペースで最高。そして、「一星」という名は、生まれる前に亡くなってしまった息子に着ける予定の名前だったという。それを聞いた一星は、「一星でいい。俺も深夜って呼ぶ」と返すのだった。この2人、意外といいコンビかも。そして一星の優しさが沁みる。
2人でやりあう鈴と一星の横で、夜空をおだやかに見上げる深夜が印象的だった。
ついに現れたあの男・ムロツヨシ
突然医院にやってきた男。院長と約束していると言って看護師に院長を呼びに行かせ、鈴のいる診察室に侵入する。怖すぎるだろ……「お久しぶりです、ここでも人を殺してませんか?」と迫ってきた謎の男は、ムロツヨシだった。恐怖に震えてうまく言葉が出ない鈴。もうこれいろいろと犯罪だと思うんだけど、この男は一体何をしたいんだろう。誰か気づいて、鈴を助けて~!!!
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話ストーリー&レビュー}–
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
▶︎「星降る夜に」の画像をすべて見る
ついに現れた、雪宮鈴(吉高由里子)の過去に恨みを持つ男――。SNSで執拗に鈴のことを「人殺し」と誹謗中傷し、ついには自宅まで襲撃するという暴挙に出た“謎の人物”が、「マロニエ産婦人科医院」でひとり外来診療の準備をする鈴の前に姿を現した! 男の正体は伴宗一郎(ムロツヨシ)。5年前に鈴が命を救えなかった妊婦の夫で、医療裁判を起こすも敗訴した人物だった――。薄ら笑いを浮かべながら、鈴に罵詈雑言を投げかけ、にじり寄る伴。その恐ろしさに声も出せずに涙する鈴のもとへ、鈴の同僚・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)が現れる。異様な空気を察した深夜が鈴を庇うと、伴は「また来ま~す」と不穏な宣告をして去っていく…。
その夜、鈴が仕事を終えて病院を出ると、なぜかスーツ姿でキメた柊一星(北村匠海)が現れる。鈴を迎えに来たという彼は「行きますか、姫」と手を差し伸べ、そのまま鈴をドレスアップさせ、高級レストランへと連れてゆく。どこか背伸びをしながらも、一生懸命自分を守ってくれようとする彼を前に、鈴は、法廷で「人殺し」と叫ぶ伴の声が今も耳から離れない…と苦しい胸中をさらけ出す。すると一星は、とっさに鈴の耳をふさぎ、手話で語りかける――「そんな言葉、聞かなくていい」。
一方、深夜が鈴に恋愛感情を抱いているのではないか…と感じていたマロニエの院長・麻呂川三平(光石研)や、一星が勤める「遺品整理のポラリス」の社長・北斗千明(水野美紀)は、深夜の本心を確かめようとする。
そんな中、マロニエの看護師・伊達麻里奈(中村里帆)が妊娠していることが発覚。だが、伊達は“ある事情“から、彼氏に妊娠したとは伝えられないと思い悩んでおり…!?
しかし、不穏な出来事はさらに続く。なんと伴がふたたびマロニエに乱入。鈴の事を人殺しだとわめき、俺は被害者なんだと絶叫。止めようとした深夜や看護師たちも突き飛ばし、院内で大暴れしはじめて…!?
どれだけ過去が君を苦しめても
掴んだ手はもう離さない――。
美しい花火の中で、鈴の心に灯ったものとは…?
第8話のレビュー
すごくいいシーンが多い一方で、ツッコミどころも多かった7話。
病院で大暴れするムロツヨシがヤバい。でもなぜ警察を呼ばないのか
まず、鈴(吉高由里子)に嫌がらせをし続けていた男・伴(ムロツヨシ)が、ついに職場のマロニエ医院に襲来。いきなり病室に入ってくるのは怖すぎる。深夜(ディーン・フジオカ)が気づいて鈴をかばうが、伴はまた来ると宣言。
伴は5年前、鈴の病院に運び込まれた妻が亡くなったことで逆恨みし、裁判を起こした人物。鈴が仕事を得て、2人の男性に囲まれているのが許せないようだ。妻は亡くなったがお腹にいた娘は助かった伴は、子育てと仕事を両立できず、会社をクビになってしまったらしい。そのこともまた、鈴への逆恨みに拍車をかけた。
伴に起こったことは本当に気の毒だが、できうる限りの対処した鈴を逆恨みするのはお門違いだ。妻が亡くなった直後、裁判のとき、そして今回も「人殺し」と言い続ける伴。第三者でも結構精神的にきつい言葉だし、言われ続けた鈴の心境ははかり知れない。
伴と深夜が対峙したことで、この2人、よく似た境遇だけどその後の行動が全然違うなとあらためて気づいた。しかも深夜は伴と違って子供まで喪っている。こんな風にしかなれなかった伴は、ある意味かわいそうだ。どうしたら、彼の心は救われるのだろう。
後日再度医院に襲来した伴は、待合室の患者たちに「雪村鈴は人殺し」「先生を変えたほうがいいですよ」と言い出す。話しかけられた春とうた(千葉雄大・若月佑美)夫妻は、伴と距離を取って「僕らは鈴先生を信じてます」と返す。
やがて出てきた院長・深夜・看護師たちも、みんな鈴の味方をするのが気に入らない伴はエスカレート。「俺は被害者なんだよ!!」と叫び、暴れ、取り押さえようとする人たちに危害を加える。
もちろん悪いのは伴なのだが、なぜ警察を呼ばないのか。すでに誹謗中傷の書き込み、家に嫌がらせ、盗撮&その写真をアップロード、家にレンガを投げ込むなど、犯罪では?と思う行動をたくさん取っている。さらに医院に侵入し暴力沙汰だ。
最初に来た時点で深夜以外の人に言わなかったのも疑問だし、二度目の襲来の際、鈴が通報しようとした院長(光石研)を「これは私と彼の問題なんです」と止めていたが、もうその域を超えていると思う。あそこで呼ばなかったことでいろんな人がケガをしたり、患者さんが危険にさらされたのでは……?
「行きますか、姫」王子様な一星とドレスをまとう鈴、めちゃくちゃいい
はじめに伴が来た後、深夜は一星(北村匠海)に、迎えに行くように連絡。一星はスーツでキメて登場。さらに鈴を服屋に連れて行く。
鈴がいろんなドレスに着替えてみせ、一星が反応するシーンがめちゃくちゃかわいい。吉高由里子のよさが最高に活かされている。どのドレスも素敵だし、カーテンでドレスを隠しながら登場するところ、最高。最終的に水色のドレスを着た鈴と食事しているシーンがとてもいい。
ここでの一星の言葉がよかった。
「人殺し」という言葉が残って離れないという鈴に、「聞こえるのも大変だな」とねぎらう。
さらに次のように伝えたのだ。
「俺はいい言葉も聞こえないけど、嫌なことも聞こえない。だいたい『耳が聞こえないからかわいそう』とか『医者だから金持ちで幸せだ』とか、みんな決めつけすぎなんだよ。それに俺が聞こえないのはちょっと見てればすぐわかる」
「目で見てわからないものを抱えて生きてる人のほうが、俺よりずっと大変だ」
一星の言葉は鈴だけでなく、観ているこちらにも気づきをくれる。確かにそうだ。
現実世界での認識もそうだし、これまで耳の聞こえない人が登場するドラマはその苦しみや聞こえる人との恋愛で生じる問題に焦点を当てているものが多かった。そういったテーマも響いてきたが、こんな風に気づきをくれるこの作品は新しくて素晴らしい(一方で警察を呼ばないことへの謎が深まってしまうけど)。
深夜の鈴への気持ちは……
いろんな人に鈴のことを好きなのではと言われる深夜。素直な深夜は「好きです、(院長に問われて)抱きしめたくなることもあります。でもそういうの(恋愛)じゃないんです」と答える。
北斗(水野美紀)も「みんな男女の関係に名前をつけたがるもんね」と納得するが、確かに男女が親しかったり大切に思っていたりして、それが必ずしも恋愛でなくてもいいんだよな。
鈴に一星と深夜がいてよかった
二度目の伴の襲撃のあと、3人でキャンプに行くことに。2人でパエリアを作るから何もしなくていいと言われる鈴。一人ブランコに乗りつつ伴のことを思い出す。花火をしながら、感極まって声をあげて泣き出す鈴。
2人は声をかけたり慰めたりせず、ただそばにいて花火を楽しむ。花火からでる火花が綺麗だ。不思議な光景だけど、鈴のそばにどちらか1人ではなく、この2人がいてくれて本当によかった、と思った。こんな3人の関係もあっていい。
一方で、娘と2人で夜空を見上げる伴の姿も印象的だった。
伊達の妊娠 ポラリスは特殊清掃に
毎回エピソードが多すぎるこのドラマ。マロニエ医院では看護師・伊達(中村里帆)の妊娠が発覚。相手はヒモで、弁護士を目指していたが今はラノベ作家を目指しており、妊娠が知れたら捨てられる、と言う。
話を聞いて怒った面々は、伊達の家へ乗り込む。サングラスをかけて歩いていくシーン、ふざけているけど本当にいい職場だなと思った。結局伊達の彼氏は「夢を追いかけているので自分は働けない」と言いつつ、妊娠を知ると大喜び。
めちゃくちゃいい話的な感じにまとまっていたが、金銭的な問題は解決していないような気がする。また、蜂須賀(長井短)が推しについて熱く語り、その推しにどこで会えるか聞いた鈴に「にわかはこなくていいです」と言うところは最高だった。
ポラリスでは特殊清掃(殺人現場の掃除)が発生。春も一星もめちゃくちゃびびっている。生々しい血のあとが残った部屋、確かに怖すぎるけど、実際には掃除する方がいるんだよな……と思った。しかし、ご褒美と言って血を連想させる真っ赤な料理をごちそうする北斗っていい性格してる(笑)。
次回も楽しみだ。
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
–{第8話ストーリー&レビュー}–
第8話ストーリー&レビュー
第8話のストーリー
▶︎「星降る夜に」の画像をすべて見る
5年前、妻の命を救えなかった雪宮鈴(吉高由里子)を深く逆恨みし、彼女への攻撃を激化させる伴宗一郎(ムロツヨシ)。追い詰められ、周りを傷つけられ、ただ謝ることしかできず俯く鈴を、柊一星(北村匠海)と佐々木深夜(ディーン・フジオカ)はキャンプに連れ出す。
舞い散る美しい花火に誘われるように、声にならない叫びを吐き出し、号泣する鈴。それに気づかないふりをして花火を続ける2人。まっすぐな愛を注ぎながら全力で守ってくれる恋人・一星と、ポンコツだけど優しく寄り添ってくれる同僚・深夜の優しさに救われながら、鈴はふと思う。
―あの人もここにいたらよかったのかな。
一方、同じ星空を見上げている伴。マロニエ産婦人科医院に乱入し暴れるも、妻の忘れ形見である我が娘・静空(戸簾愛)の声をきっかけに、病院を後にした彼の胸には、あまりにも苦い5年間の記憶がよみがえる。「なんでお前がしあわせなんだ」――鈴に対する伴の怒りは増大する一方で…。
時を同じくして、深夜にも異変が表れる。妻・彩子(安達祐実)とお腹の中の子を同時に亡くしたという、つらい過去を持ちながらも、それを感じさせないほど朗らかだった彼が、どういうわけか誰の目から見ても元気がないのだ。折しも深夜の友人・北斗千明(水野美紀)から、実は彼が彩子の死から立ち直れずにいて、10年経った今も2人で暮らしていた家をそのままにしていることを知った鈴は、深夜の心に思いを馳せる。鈴から事情を聴いた一星は「俺に任せろ」と、頼もしく宣言するが…。
そんな中、伴が深夜の前に出現する! 深夜が鈴に二股をかけられていると恣意的に告げ、扇動しようとする伴。ところが、深夜は「あなたの気持ち、少しだけ分かります」と言い、妻の死後に医師を目指した“本当の理由”を告白。その“あまりにも意外な理由”に、伴も思わず言葉を失い…!?
さらに“事件”はまだまだ続く。一星と親友・佐藤春(千葉雄大)が、ひとりで歩いている静空を目撃。声を掛けると、静空は「お父さんが私を捨てたの」と答え…!? しかもその矢先、両親を亡くした一星とずっと一緒に暮らしてきた祖母・カネ(五十嵐由美子)がスーパーで倒れる。偶然その場に居合わせた深夜は、あわてて一星に連絡。一星は春と静空をその場に残し、搬送先の病院へ急行するが…!?
僕のそばには君がいて
君のそばには誰かいますかー?
傷を負った全ての人に、幸せの星が降りますように。
第8話のレビュー
一星(北村匠海)と深夜(ディーン・フジオカ)と3人でキャンプに行き、星空を見上げながら「あの人もここにいたらよかったのかな」となぜか思う鈴(吉高由里子)。「あの人」とは、5年前に自分の妻を救えなかった鈴を逆恨みし、嫌がらせを続ける伴(ムロツヨシ)だ。
花火のあたたかい光の中で一星と深夜に囲まれた鈴とは対照的に、伴は真っ暗で寒そうな中、娘につられて星空を見上げる。その顔が、なんともさみしげだった。
伴の表情が気になる
鈴と北斗(水野美紀)が2人でいるところにも現れた伴。例のごとくこの女は人殺しで二股かけてる最低な女なんですよ、という内容をわめく伴に、北斗は怒って言い返した。
「逆恨みしてんじゃないよ!」「同じような境遇でも頑張ってる人もいるんだ」「そんなんだから、いつまでも幸せになれないんだよ!」
伴から離れ、すぐに言い過ぎたと反省する北斗だったが、視聴者としてはよくぞ言ってくれましたという気持ち。ただ危険な目に遭ってほしくはないので、ヒヤヒヤはした。
今度は深夜の家の近くで待ち伏せた伴。深夜が自分と似た境遇で、同じように妻を失い、子も助からなかったと知る。「あんたは医者だろ、一緒にするな」と憤る伴だったが、さらに深夜が妻子を失った後に医者になったことも聞かされる。気持ちがわかる気がするという深夜に怒る伴だが、深夜の話を聞いたときはショックを受けたような顔をしていた。
伴を気遣う鈴
伴のことを「あの人、私のことを殺そうとか傷つけようというのとは違う気がする」と慮る鈴。彼の中にも葛藤があるのではと感じている。
あれだけのことをされたら恐怖心や怒りが先行してしまいそうなので、なんてすごい人なんだ。
鈴の話を聞いて「俺が鈴もあの男のことも抱きしめてやる」と言う一星も、器が広すぎる。
「来い」と鈴に腕を広げるのがたまらん。
2人とも優しすぎるというか、自分に攻撃してくる人に対してそこまで考えてあげられるなんて。
深夜の”復讐”とは
鈴は深夜のことも心配していた。伴が現れてから、彼もちょっと変だという。
妻・彩子(安達祐実)とお腹の子を亡くしてから泣けていない深夜。彼女と住んでいた東京の家は、赤ちゃんを迎える準備をした状態のままになっていた。以前から食べ物を多めに買ってきてしまうのは、彩子のぶんを買ってしまうからだった。
「あの人(伴)は僕なんです。僕が暴れなくてすんだのは、鈴先生がいてくれたから」という深夜に「暴れてもいいのに」と言う鈴。深夜は驚いた様子だった。
伴に、医者になったのは復讐のためだと言った深夜。”復讐”とは、どういう意味だろうか。
少なくとも、伴のしているようなことではなさそうだ。
院長(光石研)が深夜に話しかけたシーンも印象的だった。マロニエが、スタッフにとっても帰る家であってほしいというあたたかさ。家に帰りたくない日は病院に泊まったっていいし、院長の家にきてもいいんだよ? と言う。院長の一人称が院長なの、かわいい。
一星の涙、伴の涙
一星の祖母・カネ(五十嵐由美子)がスーパーで倒れる。たまたま居合わせた深夜が救急車に付き添い、一命をとりとめた。深夜から連絡がきて駆け付けた一星。カネの派手な髪色はウィッグで、病室で眠るカネは黒髪だった。両親の葬式の際の祖母の後ろ姿を思い出す一星。
その後駆け付けた鈴に抱き着き、泣く一星。一星が座り、鈴が立っている状態のため、鈴が聖母のように見えた。その様子を病室の外から見つめる深夜。彼が泣ける日はくるのだろうか。
春(千葉雄大)から「伴の子供が一人でいるが、夕方になっても伴が迎えに来ない」という連絡を受け、向かおうとする鈴と深夜。途中で伴と会うが「今まで申し訳ありませんでした」と謝り、歩いていく。一度は別れたものの、伴の様子がおかしいとあせる鈴。もしかしたら彼が死のうとしているのではと思った2人は、伴を追うのだった。
今回も出てきた伴の回想。裁判中疲れ切った伴は、声を出して遊ぶ娘に「静かにしろ」と怒鳴り、娘は泣き出した。弁護士から電話がかかってきて「裁判で勝つのは難しい」と言っている。そのうち伴は、弁護士に返事をしなくなってしまった。奥さんのとおぼしきお墓の前で、持ってきた花束を地面に叩きつけて泣くシーンもあった。
ある夜歩いていた伴は、一星と2人でいる鈴を見かける。「なんでお前が幸せなんだよ」と怒り、嫌がらせにおよんだのだった。鈴だって決していいことばかりだったわけではないが、すべてが見えるわけではないものだしなぁ。でも、鈴の家にレンガを投げ込んだ伴は、泣いていた。泣きながら娘に「お父さん、大丈夫?」と言われて娘を抱きしめていたのだ。
伴のしたことはもちろんいけないことだが、彼もつらかったのだなと思う。誰かを憎むことでしか、自分を保てなかったのだろう。
伴は鈴の心配通り、海に向かっていた。鈴や深夜の制止も聞かず、おそらく飛び降りるつもりだ。
「あなたがいい人じゃ困るんです。嫌な人でいてください」
という鈴へのセリフが印象的だった。
もう止められないのか……と思ったとき、「お父さん!」と呼ぶ声が聞こえた。
春と一星が、娘を連れてきたのだ。
その瞬間、伴は「あああああ」と、声を上げて泣きはじめた。
一星は伴のもとに駆け寄って抱きしめ、伴は一星の腕の中で泣き続けた。
伴はずっと、誰かに抱きしめられて泣いたり、つらいね、悲しいねと声をかけてほしかっただけなのかもしれない。
誰か一人でも気持ちに寄り添ってくれる人がいたら違ったのかもしれない。
しかし、一星はすごいな。彼だけでなく、散々嫌なことをした伴に、こんなあたたかい気持ちを寄せられる他のみんなも優しい。
そして、ムロツヨシのさまざまな心の揺れを表現する演技がすさまじかった。
次回は最終回。残るは深夜の問題だろうか。
一人ひとりにとって、幸せな結末になってほしい。
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
–{最終話ストーリー&レビュー}–
最終話ストーリー&レビュー
最終話のストーリー
妻の命を救えなかった雪宮鈴(吉高由里子)を5年にわたり逆恨みしてきた伴宗一郎(ムロツヨシ)。しかし、そんな自分にも降り注ぐ鈴の優しさや、同じ境遇に苦しむ深夜(ディーン・フジオカ)の共感に苛まれ、自らの命を絶とうと海へ向かう。しかし、すんでのところで鈴の恋人・一星(北村匠海)に全力で抱きしめられた伴は、まるで子供のように、すべての思いを吐き出すかのように、涙を流すのだった―。
そんな伴の姿は、妻・彩子(安達祐実)とお腹の中の子を同時に亡くしてから10年――涙を流せないまま、医者になること選んだ深夜の心の時計の針を、優しく進めてゆく。
ある日、妻の親友でもあった北斗(水野美紀)が営む「遺品整理のポラリス」に、突然訪れる深夜。「10年間、お願いできなくて…ごめんね」と、妻と暮らした家を整理する決心を告げるのだった。
そして迎えた遺品整理当日。鈴も見守る中、チーフの一星率いるポラリス従業員も総出で、次々と遺品が片付けられていく…。
そんな中、深夜の口から「僕が医者になったのは、復讐が理由でした―」という言葉が零れだす。隣に寄り添い、その言葉に静かに耳を傾ける鈴。これまで深夜が“胸の奥に押し込んでいた複雑な本音”が溢れ出す。
物語はついに完結へ―。
託された最後の遺品整理。
孤独な星々はやがて、繋がり大きな愛を知る。
感情を忘れて孤独に生きてきた産婦人科医・鈴と、そんな彼女に笑顔をもたらした“音のない世界”で自由に生きる10歳下の遺品整理士・一星との運命の出逢い。
君と初めて出逢ったのは、星降る夜のことだった――。
命の《はじまり》と《終わり》をつかさどる2人が迎える結末は―?
最終話のレビュー
大声で泣く伴(ムロツヨシ)を抱きしめた一星(北村匠海)。駆け寄った深夜(ディーン・フジオカ)は、くしゃみを複数回伴の顔面にぶっかけてしまう。このタイミングでドジっ子すぎる~!!
シュールな銭湯シーンにほっこり
その後、春(千葉雄大)と鈴(吉高由里子)、伴の娘・静空(戸簾愛)もふくめて銭湯へ。
男湯に4人が並ぶ図はこれまでの出来事を考えるとシュールだ。恐縮していた伴が一星の下ネタの一部を理解してしまったり、一星と春が水の掛け合いを始めて伴にかかったり、一星が「『ビーチボーイ』みたい」と懐かしのドラマ名を彷彿とさせる発言をして、伴に「『ビーチボーイズ』ですね」と訂正される。年齢からしたら当然なのだが、春の「タイトルを聞いたことはあるけど観たことはないです」というセリフにちょっとだけ衝撃を受けた。
女湯から静空が呼びかける声も聞こえ、伴もやわらかい表情に。銭湯の外で、あらためて謝罪しつつ帰っていく伴に「またね」と声をかける鈴と一星。
伴のような状況ではなくても、ワンオペで子どもを育てていて周りと交流がない人って結構な数いるのかもしれない。面倒もあるかもしれないけど、こういう”ちょっとしたつながり”で人は救われるのかもしれないなと思った。
深夜の決断、そして……
伴の出来事がひと段落し、深夜はある決意をする。10年間そのままにしてきた東京の自宅の遺品を整理してもらおうというものだ。しかも、依頼は「全処分」。10年整理できなかったのに極端だな、大丈夫なのだろうか? という気もするが、前に進むには必要なことかもしれない。
北斗(水野美紀)により友達サービスで、ポラリスの全メンバー総出で遺品整理を行うことに。鈴も同席を希望し立ち合う。
思い出の詰まった家の整理と一緒に出てくる回想は、その後どうなったか知っている状態で観るのはつらかった。
仕事中、子どもができたことをLINEで告げられ、うれしそうに「赤ちゃん」とつぶやく深夜。亡くなった妻の彩子(安達祐実)がどれだけ魅力的な人だったのか、2人がどれだけ仲のいい夫婦だったのかが痛いほど伝わってきてもらい泣きせずにはいられなかった。特に臨月になった彩子と一緒にいて「一星」という名前を思いつき、この子をいつも一番に見つけたいから、と深夜が言うシーン。あとちょっとで手に入るはずだった幸せがあんな結果になってしまったこと、見ているほうも「何で……」という気持ちでいっぱいになる。
彩子とも親友だった北斗にとっても、この家の整理はつらかった。よく3人で飲んだ家。みんなで天体観測したこともあった。星を観るのが好きだったのは、彩子だったのだ。
家の外で鈴と一緒に待つ間、彩子と赤ちゃんが亡くなったときに鈴が泣いてくれたことに救われたが、実は他の医師や病院に対する不信感は消せなかったという深夜。医者になれば、2人が亡くなった原因がわかるのではという思いがあったのだという。前回言っていた”復讐”とはそういう意味だったらしい。
だが、医者になって痛感したのは、自分の妻子が亡くなったのも、伴の妻が亡くなったのも「誰も悪くなかった」ということだったという。そして、お産が成功するたびにうれしい気持ちと妬ましい気持ちがあって、心からおめでとうと言えなかったとも。鈴が言っていた「変な顔」というのは、そういうことだったのか。
確かに、自分は妻子を亡くしているのに無事に生まれる赤ちゃんを見続けるのは、自分で決めたこととはいえある意味つらいことなのかもしれない。
そして遺品整理が完了した。からっぽの家の中で、一人ひとりのスタッフが頭を下げる。一星が「全処分とのことでしたがこれだけ……」と、初回に鈴に渡したのと同じ柄の箱に入れて渡したのは、彩子からのプレゼント。出産予定日の翌日が結婚記念日だったため、彩子がサプライズで用意していたのだ。
入っていたのは直筆の手紙と、深夜と彩子と生まれてくるはずだった一星、3人おそろいのスニーカー。これを履いていろんなところに行こうね、という叶わなかったメッセージ。
スニーカーを抱えて、深夜は初めて号泣する。この泣きの演技が叫びにも近く、ディーン・フジオカの印象からは想像していなかったものですごかった。「どうして……もっと一緒にいたかった。どうして……」「赤ちゃんを抱いて、この靴を履いて出かけたかった」
つらいけれど、深夜がやっと泣けたのはよかった。
鈴と一星と深夜は「太陽と月と地球」
北斗が話した、鈴と一星と深夜は「太陽と月と地球」だという、3人の関係性が興味深い。一列に並んだり影になったり欠けたり満ち足りしながら回り続けている、愛とか恋とか名前を付けられない、大切な存在。
ここにきてこんな言葉を残す大石静脚本、とてもいいなと感じた。こんな解釈の仕方も、この作品が伝えたかった「既成概念をひっくり返し、新たな価値観を見せる物語」のひとつなんだろうなと思う。きっと北斗と深夜と彩子にも、そんなところがあったのではなかろうか。
遺品整理を終えた深夜は、ある決断をする。マロニエを辞めて、他の病院に行きたいというのだ。鈴先生を尊敬しているから、離れないといけないという。さみしいけれど、そういうときはあるのかもしれない。
「雪宮鈴、愛してる」
一星と深夜は2人で飲んでいる。会話で2人が20も齢が離れていると出てきて、数字としては知っていたはずなのにびっくりした。お互い「好きだよ」と言い合う年の離れた男友達、すごくいい。
その後、一星と鈴は別々に空を見上げて、2人が出会った星降る夜を思い出す。LINEで会話しながら、会いたいと言い合う2人。そしていつぞや「雪宮鈴、好きだ」と言われた踏切を隔てて向かい合う。電車が通り過ぎた後に一星が告げたのは「雪宮鈴、愛してる」。
鈴に好きだと伝え続けた一星が、さまざまな出来事を経て「愛してる」という気持ちになったのは、すごく自然だが予想していなくて、胸に響く。踏切の前でキスする2人、素敵だった。
そして1年後、それぞれが手に入れた”幸せ”
そしては1年後へ。後日談がとても長いが、そこが最高だった。
深夜は青森の病院に行き、たくさんの患者さんに頼りにされている。だがドジなところは変わらず、つまずいて転ぶのだった(笑)。でも、出産時に心からのおめでとうと言えるようになったように見える。
鈴と一星は一緒に住み、小さなケンカをしながらも仲はよさそう。一星のおばあちゃん・カネ(五十嵐由美子)も元気だし、春とうた(若月佑美)の子どもも生まれた。院長は相変わらず楽しそう。伊達(中村里帆)も出産し、なんとヒモだった夫の”添い寝師が異世界転生する”という小説が大ヒット、メディアミックス展開もしてうれしい悲鳴だという(そんなことある?)。蜂須賀(長井短)は変わらず推し活にまい進していた。
ポラリスは業績好調で事業を拡大。そしてなんと桜(吉柳桜良)が彼氏を連れてきた。着物を着たその男は……ピンク髪をやめ、噺家になったチャーリー(駒木根葵汰)。そんな気はしていたが、職業変更のほうが唐突で処理しきれない。
デートをする鈴と一星は、以前観に行った映画の続編を観に行く。ここで後ろの席に座っていたのが、同枠の次クール「unknown」主演の高畑充希だ(こちらの作品も楽しみだ)。映画を観て号泣しながら手話で「私犯人分かっちゃった、言っていい?」と言ってくる鈴。一星も嫌がっていたけど、途中で犯人言われるの、絶対に嫌だ。だが鈴は言ってしまう(間違っていたようだが)。
2人で夕食の買い物をしていると、なんと野菜売り場で働いていたのは伴だった。先月から働いているという。そこへランドセルを背負った静空がやってくる。あまり表情豊かではないイメージだったが、ものすごくいい笑顔をする子になっていた。やはり小さい子は、親の心境に大きく影響されるものなのだろうか。伴が新たな一歩を踏み出せて、よかった。
以前の罪滅ぼしか、鈴たちが買おうとしていた野菜に半額シールをこっそりつけてくれた伴。恐縮する鈴と、これもとネギを差し出してシールをつけるよう催促する一星が2人とも相変わらずで微笑ましい。
そしてラスト、2人で口喧嘩(手話喧嘩?)しながら準備をし、一星は自転車、鈴はバス停へ急いで向かっていった……と思ったら、また戻ってきて砂浜をバックに抱き合ってキス。「バス来ちゃうってあせっていたのに、絶対に乗れないんじゃ……!?」とツッコみたい気持ちはあるが、2人が幸せそうで何よりだ。
不穏な空気を感じつつ、最後にみんな幸せなハッピーエンドを迎えてくれて、本当によかった。
人とのつながりを大事にしながら前に進んでいきたい、そんな気持ちにさせてくれる大切な物語だった。
※この記事は「星降る夜に」の各話を1つにまとめたものです。
–{「星降る夜に」作品情報}–
「星降る夜に」作品情報
キャスト
雪宮鈴(35)/ 吉高由里子
柊一星(25)/ 北村匠海
佐藤春(30)/ 千葉雄大
犬山鶴子(50)/ 猫背椿
蜂須賀志信(30)/ 長井短
伊達麻里奈(25)/ 中村里帆
北斗桜(17)/ 吉柳咲良
チャーリー<犬山正憲>(23)/ 駒木根葵汰
桃野拓郎(22)/ 若林拓也
服部洋美(45)/ 宮澤美保
岩田源吾(50)/ ドロンズ石本
柊カネ(70)/ 五十嵐由美子
橋本英雄(33)/ 寺澤英弥
麻呂川三平(63)/ 光石研
北斗千明(45)/ 水野美紀
佐々木深夜(45)/ ディーン・フジオカ
スタッフ
脚本
大石 静
音楽
得田 真裕
ゼネラルプロデューサー
服部 宣之(テレビ朝日)
プロデューサー
貴島 彩理(テレビ朝日)
本郷 達也(MMJ)
監督
深川 栄洋
山本 大輔
制作
テレビ朝日 MMJ