2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第84回を紐解いていく。
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私の大事なお父ちゃん
面倒な親のせいで破談になるケースは物語において珍しくありません。が、破談が親のせいではないとするケースは珍しいのではないでしょうか。
いや、まあ、一方の親(八神圭子〈羽野晶紀〉)のせいなのですが……、彼女が責めた定職につかない片親・佳晴(松尾諭)は悪くないと娘・久留美(山下美月)は考え、改めてやり直そうとする八神蓮太郎(中川大輔)に結婚はなかったことにしてほしいと頼みます。
蓮太郎が「お父さんさえちゃんとしてくれたら」とか「いまのままやったら不幸」「僕が助けてあげたい」と言うことに久留美は反発します。
私の大事なお父ちゃんやねん
20年近く定職につかず、久留美は経済的に苦労してきたにもかかわらず、(いまも貯金が1年で5万円だとか)「いまでも十分幸せやで」という久留美。蓮太郎が、母を説得するため、佳晴にいい就職先を紹介したにもかかわらず、そこに就職しなくてもいいとまで言うのです。
どちらかというと、久留美のほうが朝ドラヒロイン的かもしれません。少なくとも昭和の朝ドラヒロインはこんな感じではないでしょうか。苦労して苦労してでも運命を受け入れて……みたいな。
いやでも昭和のヒロインは、苦労して、お金もちで人の好さそうな人と結婚したら、姑がきつい人でいびられるということがよくあるので、もし蓮太郎と結婚したら、あのお母さんに苦労させられるに決まっているので、お断りしてよかったといえるでしょう。
もしかしたら、あのお母さんがやばいと判断してお断りしたのかもしれません。久留美は、苦労してきた分、これ以上の不幸を避ける選択眼をもっているのかも……。
などと心の整理をつけようとしましたが、4年もつきあっていて、親の話を全然してないふたりが謎であります。八神家なんて、あの母だったら、まず、久留美を紹介しないといけない気がしますし、あの母だから、蓮太郎が紹介したくない気持ちもわからないではありません。問題を先送りしたすえ、こんなことになったとも考えられます。そこも踏まえると、やっぱり蓮太郎との結婚はあまり良いことにならないから、結婚する前に気づいてよかったということになります。
「僕が助けてあげたい」と言いながら、なぜ、プロポーズがノーサイドだったのだろう。ちょっと高級なお店で喜ばせてあげたいと思わなかったのか、ノーサイドが久留美の好きな場所だと思っていたら、父のせいで不幸になっているとは思わないのではないか。八神に一貫性がないことにもやもやします。セットの都合という事務的な理由があったとしたらそれに説得力をもたせてほしいのです。
子供の気持ち、勝手に決めつけたらあかんで
自身を久留美にとって「呪い」と言う佳晴を窘めた、うめづの勝(山口智充)の言葉のように、決めつけずにもっと考えてみましょう。
どこか不幸そうな子が好みというひとはいます。出会いの頃、食べ物をやたら差し入れていたのも、同情だったのでしょうか。ノーサイドを選んだのも、自身の広い心ではなく、久留美に合わせてあげている自分の優しさに満足していたのかもしれません。
ただ、久留美も久留美で、いまのお父さんでもいい、このお父さんを大事にしたいと思っていたとしても、結婚相手の希望も聞いて、お父さんの就職先を紹介してもらうくらいはいい気がしますよね。だってお父さんはこれまでも定職につかず、何をしたいかわからないのだから、一回、いい会社に入ってみるのも経験でしょう。
久留美にとっての幸せな結婚相手とは、いまのお父ちゃん込みで受け入れてくれる人なのでしょう。はたしてそういう人は現れるでしょうか。
佳晴 という名前だから望月家も晴れてほしいものです。
【朝ドラ辞典 呪い(のろい)】呪いという言葉がドラマで流行ったのは朝ドラきっかけではない。「逃げるは恥だが役に立つ」(16年)がきっかけ。いまや、自分を縛ることをなにかと「呪い」というすっかり紋切り型の表現となった。
(文:木俣冬)
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–{「舞いあがれ!」第18週目のあらすじ}–
「舞いあがれ!」第18週目のあらすじ
菱崎重工の荒金(鶴見辰吾)から依頼された航空機用ボルトの試作品の品質試験に挑む舞(福原遥)。
試験結果を待つ一方、うめづでは貴司(赤楚衛二)が短歌賞を受賞したことを祝う会が開かれる。貴司は勝(山口智充)、雪乃(くわばたりえ)に対し感謝の言葉を述べる。
さらに、久留美(山下美月)が婚約したことを報告し、うめづのお祝いムードはさらに高まる。そんな中、めぐみ(永作博美)は店に居合わせた悠人(横山裕)の様子が気になる。
–{「舞いあがれ!」作品情報}–
「舞いあがれ!」作品情報
放送予定
2022年10月3日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)
翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)
※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月 、目黒蓮、高杉真宙、長濱ねる、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、鈴木浩介、哀川翔/吉川晃司、高畑淳子 ほか
作
桑原亮子 、嶋田うれ葉、佃 良太
音楽
富貴晴美
語り
さだまさし
主題歌
back number「アイラブユー」
制作統括
熊野律時、管原 浩
プロデューサー
上杉忠嗣 三鬼一希 結城崇史ほか
演出
田中 正、野田雄介、小谷高義、松木健祐 ほか