あなたも気づいたら「ヨネダ2000」の虜。一度でやみつきになる魔術的魅力

お笑い

あなたは「ヨネダ2000」を知っているだろうか?

筆者がヨネダ2000の存在を知ったのは、神保町にある吉本漫才劇場で行われたネタライブだった。いつものルーティンで買ったチケットと座った席、そして始まったネタ。月2〜3ほどの頻度でお笑いライブに通うライトなお笑いファンの筆者が、気づいたら、すっかりヨネダ2000の虜になっていた。

「な、なんだったんだ、今のは……」と100人いたら100人が思うだろう。初めてヨネダ2000のネタを見た人たちは、全員同じ顔をしていると思う。何が起こったか、何を見せられたのかわからないのに、なぜか面白い。リズムやメロディ、そして二人の姿が、頭から離れない。

少々大げさかもしれないが、ヨネダ2000を見ていると「お笑いってこんなにも自由なんだ」と思える。そして、「明日も頑張ろう」と気力につながっていくのだ、不思議と。

そんなヨネダ2000が、人生を変えたい女芸人が集まる「THE W」2022で、クッキリと爪痕を残した。また年末恒例「M-1」の決勝戦にも、しっかり進出している。正式な結成からわずか2年。もうすでにヨネダ2000は、同じ芸人仲間やお笑いファンの間では一定の認知を得ており、どのコンビも代替し得ないポジションを勝ち取っていた。

突如あらわれた、令和の時代を擬人化したような「シュール」な彼女たち。ヨネダ2000は何者なのか?

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ヨネダ2000とは

吉本興業所属、女性2人組のお笑いコンビ「ヨネダ2000」。向かって左のボケ担当・誠(まこと)と、向かって右のツッコミ担当・愛による。誠は身長155cmと小柄だが、愛は身長168cmに体重116kg。その体格差も特徴である。

もともと、誠は「ケンケンズ」、愛は「いちごとごはん」といった名で、それぞれ違うコンビを組み活動していた。2018年2月に誠と愛でコンビ「ギンヤンマ」を結成したあと、男芸人を含めたトリオ「マンモス南口店」となるが、早々に解散。現在のヨネダ2000となったのは、2020年4月のことである。

結成後、わずか1〜2年の間に「THE W」準優勝、「M-1」準決勝進出を果たしている。まさにマンモス級の快進撃を見せるコンビと言えるだろう。

ちなみに、誠の芸名はもともと、本名でもある「清水 亜真音(しみず・あまね)」だった。『ダウンタウンDX』に出演した際、本人の希望により改名したい旨を明かすと、複数の候補からダウンタウン・浜ちゃんが「男の子っぽいから誠で」と言われ、決定した経緯がある。

改名以前の動画では、旧芸名で出演している誠が見られる。

ヨネダ2000ネタの特徴

2人で掛け合いをする漫才、コントもやるが、基本的にヨネダ2000は「独特な世界観のなかで進むシュールなネタ」が多い。2021年のTHE W決勝ネタ「どすこい」や、2022年のM-1(3回戦)で披露したネタなどがわかりやすい。

誠が「○○しておいてくれる?」と提示し、愛が同じ動きやセリフを繰り返す。そのあいだ、誠は一人何役にもなり、リズミカルで複雑なやりとりをこなす。「どすこい」を見てもらえれば自明だが、ワンテンポでもズレると成立しないネタなのだ。その緻密な構成を見ていると、裏で相当な稽古を積んだのだろうと想像できる。

そして、なんといっても世界観や場面設定がシュールなのだ。初めてヨネダ2000を見た段階では、誠の唐突な発言に面食らうだろう。

しかし、半ば観客を置いてきぼりにするリズミカルでテンポの早いネタに、気づいたら魅力を感じている。序盤は常識的な立場からツッコむも、いつの間にか“あちら側”に行ってしまっている愛の姿も、癖になる。
–{ヨネダ2000に注目が集まったきっかけ}–

ヨネダ2000に注目が集まったきっかけ

正式にヨネダ2000を結成後、わずか1〜2年で賞レースの常連になっているヨネダ2000。2020年のTHE W準決勝進出、2021年のM-1準決勝進出(敗者復活戦10位)ならびにTHE W決勝進出といった流れで、じわじわと認知度を高めてきた。

前述したネタ「どすこい」を披露した2021年THE Wでは、惜しくもコンビ「紅しょうが」に敗れてしまったヨネダ2000。しかし、このジャッジでヨネダ2000に票を入れたアンガールズ田中は「謎の空間が面白い」「感覚に響く笑い」と絶賛している。ちなみに田中は、2022年のTHE Wにおいては、ヨネダ2000と争った相手側「TEAM BANANA」に票を入れている。ヨネダ2000については「出番が早すぎた。でもこの戦いで勝ったのは大きい」と述べていた。

芸人界隈での評価も高い。かまいたち濱家は「間違いなく、いま日本で一番面白いです」とコメント。YouTubeでコラボした鬼越トマホークは「実は去年くらいから動画を見ていた」「ずっと見ちゃうんだよね」とヨネダ2000の不思議な魅力に触れている。

ヨネダ2000が2022年THE Wで残した爪痕

2022年THE Wでのヨネダ2000は、いろいろな意味で際立っていた。このとき勝敗を争ったTEAM BANANAの芸風と比べると、その違いは歴然としている。なにせ、愛が全身を茶色タイツに包み、トイレに排泄されるところから始まるコントなのだ。

独自にTHE Wを採点した、ナイツ塙の動画においても「うちの子どもは大爆笑だった」と言っている。このコントの衝撃度は、どちらかと言うと子ども向きとも言えるのかも知れない。

最終決戦で見せた、大きすぎるモヒカンが特徴的なコントも、どちらかと言うとインパクト重視。2021年THE Wの決勝ネタ「どすこい」や、「海になった郷ひろみ」が出てくるネタと比べると、勢いで見る人の心を掴む側面が大きいネタだった。ヨネダ2000ファンのなかには、どちらのテイストが好きかで派閥が分かれるかもしれない。

しかし、これまでヨネダ2000を知らなかった観客に向けて、爪痕を残すといった意味では大成功だったのではないだろうか。このネタでヨネダ2000を知り、彼女たちがさらに違うテイストのネタや、コントもやっているとわかれば……。

そのときにはもう、沼にハマっているに違いない。

ヨネダ2000が2022年M-1決勝戦で見せたネタは?

結成2年目にして、2022年M-1決勝戦に進んだヨネダ2000。惜しくも優勝決定戦には進めなかったが、松本人志をはじめとする審査員たちには、彼女たち独特の世界観が刺さって(驚いて?)いたようだ。

披露したネタは、ヨネダ2000らしさが詰まった、リズム感たっぷりの餅つきをベースにしたネタ。「ぺったんこ〜ぺったんこ〜ぺったんこ〜ぺったんこ〜」のメロディは、一度聞いたら最後、頭から離れない。リズムと勢いで会場の空気を一気に変えた。

ナイツ塙をはじめ、審査員たちのヨネダ2000に対する評価は高かった。彼女たちのような、いわゆる正統派漫才ではないシュール寄りのネタに対しては、たびたび「これを漫才と呼べるのか?」的な批評がされがちである。しかし、ヨネダ2000に対しては「その前提をひっくり返すほどの独特さ、不思議さがある」「よくわからないのに面白い」といったコメントが聞かれた。

優勝決定戦には食い込めなかったが、「まだ結成2年め、これからに期待」が審査員、そして視聴者たちの総意だろう。

すでに新世代のホープとして認知度を高めているヨネダ2000。すでに来年、再来年あたりのM-1が楽しみである。

(文・北村有)

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