大人にこそ観てほしい!「沁みる」最新ディズニー映画5選

映画コラム

ディズニー映画には「子どもから大人まで魅了する面白さや魅力がある」ということは、言うまでもないだろう。さらに、この数年では大人こそがハッと気づけることのある、もしくはメッセージやテーマが大人向けでもある作品が多く生まれている。

もちろん子どもが楽しめることを前提としつつ人生の酸いも甘いも噛み分ける大人の心にこそ「沁みる」、5つの映画を紹介していこう。このうち1、2、3つ目の作品は「親の子どもへの向き合い方」も描かれているので、ティーンエイジャー(かもう少し下の世代の)子どもを持つ親御さんにもおすすめしたい。

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1:『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』

2022年11月23日から劇場公開されている本作の魅力は「世界観」。「もうひとつの世界」にいるキッチュだけどかわいい動物たちは『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』を思わせる。その場所でのスペクタクルと、家族と仲間と世界の危機を救いに行く王道の冒険物語でもあり、『インディー・ジョーンズ』的な昔懐かしの(でも新しくもある)アドベンチャー映画の楽しさが詰まっていた。

(C)2022 Disney. All Rights Reserved.

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3世代にわたる「親へのコンプレックス」の話にもなっていることも重要だ。主人公は伝説的な冒険家の父親をずっと嫌っていた農夫の男性。彼にもまた息子がいて、自分がかつての父親のようにならないよう努めているが、実は息子の気持ちが尊重できていないことが明らかになっていく。

さらには「おじいちゃんと父親のどちらの教育方針が正しいか」というような、当の息子のことを顧みないバトルが始まるのは情けないやら可笑しいやら。ある意味では「家族あるある」を描いた作品とも言えるだろう。

(C)2022 Disney. All Rights Reserved.

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また、息子が男の子が好きなオープンリーゲイであり、親も含め周りがそのことをまったく特別視しておらず、当たり前のことして描かれていることも素晴らしい。2022年7月1日に劇場公開された『バズ・ライトイヤー』でもそうだったが、同性愛を大げさに扱わないことも、今のエンターテインメントの姿勢として支持したいのだ。

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さらには、人々の暮らしを支えるエネルギーの危機から「世界が変わってしまうかもしれない」という恐怖と、そのことにどう向き合えばいいのかという、コロナ禍が続く今でこそ響く問題提起も込められている。「この結末は、〈あなたの世界〉も変える」というキャッチコピーが伊達ではない、あっと驚く「秘密」も楽しみにしてほしい。また、原田泰造、鈴木福、大塚明夫らによる日本語吹き替えも素晴らしいクオリティだった。

(C)2022 Disney. All Rights Reserved.

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2:『魔法にかけられて2』

2022年11月18日よりDisney+(ディズニープラス)で独占配信がされているこちらは、2007年公開の『魔法にかけられて』の15年ぶりとなる続編。そちらのアニメの世界と実写の世界を行き交う様や、「ミュージカル映画っていきなり何で歌い出すの?」というツッコミをギャグにする様はなかなかに攻めていた。

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その楽しさが今回も踏襲されているのはもちろん、今回は親をうっとおしく感じてしまう年頃のティーンエイジャーの娘が物語の中心にいるのがミソ。娘とギクシャクしてしまった末に主人公は「あること」を願ってしまい、そこからとんでもないことが起きてからのドタバタ劇が中心に据えられていて、前作とはまったく違う面白さを打ち出していたりもする。親御さんが見れば、子どもへの向き合い方へのヒントももらえるだろう。

主演のエイミー・アダムスの、魔法の影響で「闇堕ち」しそうになるも、瞬時に元の自分のままにいようとする様を瞬時に切り替える演技力も見もの。豪華絢爛な美術の数々と、これぞミュージカル!と思えるメロディアスな楽曲の数々、過去作のオマージュなど、ディズニーファンには見どころたっぷりの嬉しい作品だ。

>>Disney+ (ディズニープラス)はこちらから 

–{3作品目は…}–

3:『私ときどきレッサーパンダ』

2022年3月11日よりDisney+で独占配信となったこちらは、いわゆる「オタク」の少女が主人公となっているのが最大の特徴。母親のために「いい子」でいようとするも、時には反抗したくもなる思春期ならではの葛藤はリアルで同情できるものであるし、その様が「オタクあるある」な切なくも笑えるギャグにもなっていたりもする。

さらには同じくオタクな友人たちが個性豊かでかわいらしく、「実際にこういう子たちいるいる!」と思えるのも嬉しい。ディズニー作品は理想的な美男美女も描くこともあり、それももちろん良いのだが、ここにきて「現実にいるオタク少女たち」を真摯に描いてくれたことにも感動があったのだ。

そんな主人公やその友人たちを理解しようともしない母親は、ほぼほぼ「毒親」寸前になってしまっているのだが、その母親もまた「伝統」により縛り付けられていたことが明らかになる。そこから、親は子にどう接するべきか、どのように負の連鎖を断ち切ればいいのか、そしてオタクとして、いや1人の人間としての幸せとは何か?というさらに深い問いには波及していく。ネタバレ厳禁の終盤のサプライズ&スペクタクルも圧巻の、ディズニー&ピクサーの新時代を告げる大傑作だ。

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4:『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』

2022年5月20日からDisney+で独占配信となったこちらは、1989年より放送されたアニメシリーズの続編にして、その「出演者」の30年後を描いた内容。保険会社のセールスマンとなったチップは久しぶりにかつての相棒のデールと再会し、かつての仲間が失踪した謎を共に追うことになる。凸凹コンビの活躍や、さまざまなヒントから真実に迫る捜査の過程は『48時間』や『ズートピア』などの「バディ刑事(探偵)もの」の面白さが詰まっていた。

最大の特徴は、実写の世界に、2Dのアニメと、さらには3DCGのアニメのキャラクターが同時に存在していること。実写に2Dのアニメを融合させる様は『メリー・ポピンズ』や『ロジャー・ラビット』もあるが、それよりもさらに次元の違う者たちが混在しているような、良い意味で脳がバグる感じにもなる。有名映画のパロディや人気キャラの扱いも攻めていて、現実の世界で大不評を買った「修正前の気持ち悪い映画のソニック」が登場するし、誰もが知るピーター・パンの描き方はファンから怒られやしないかと心配になるほどだった。

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そうしたギャグやパロディが短絡的に出して終わりではなく、しっかり物語と絡んでくる、実は計算が行き届いている内容になっているのも美点だ。何より「チヤホヤされていたのは過去のこと、今ではしがない中年男性になってしまった……」という切なさと、それでもコンビを再結成し友情と信頼を育んでいく展開はやはり大人こそ沁みるものだろう。

5:『ソウルフル・ワールド』

2020年12月25日にDisney+で独占配信となったこちらは、ディズニー&ピクサー史上、もっともメッセージとテーマが大人向けと言っても過言ではない作品だ。何しろ主人公が、プロのミュージシャンに憧れる、今は非常勤の音楽教師である独身の中年男性であり、現実に多くいるであろう「夢を叶えられなかった人」にも向けられた物語にもなっているのだから。これまでもほぼ全ての作品で「夢への向き合い方」をアップデートしながら描き続けたピクサーが、ついにたどり着いた到達点とも言えるだろう。

何かを続けても夢にはつながらないかもしれない、だけど「好きだから」という根源的かつシンプルな理由は、それだけで何かを続ける大きな理由になるし、(大きな夢を叶えられなかったとしても)大切な何かにはきっとつながっていく……それはもう大人になった全ての人はもちろん、親御さんが子どもにこそ伝えてほしいと願える尊い価値観だった。

圧巻のクオリティのアニメで描かれるで「現実の世界」と「ソウルの世界」のギャップ、優れた音響や音楽による「没入度」も半端ではない作品であるので、劇場公開がされなかったことも今でももったいなく思ってしまう。でも、だからこそ、配信で観る場合も、可能な限り映画館に近い環境を作り上げてから観てほしい。

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なお、Disney+では本作の前日譚となる6分の短編作品『22番 vs 人間の世界』も配信されている。こちらでは万国共通の政治家へのムカつきを切れ味抜群に皮肉ったギャグに大笑いできる楽しい作品だった。

その他、大人こそおすすめの近年のディズニー作品には、子どもの頃の友人を思い出す大人も多いであろう『あの夏のルカ』や、多様性のあるキャラクターが織りなす王道のアドベンチャー『ラーヤと龍の王国』もある。これらのディズニー映画を、ぜひ親子で観る候補に入れてほしい。そして、大人が人生に疲れた時に観る、ちょっと前向きになれるエンターテインメントとしてもおすすめだ。

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(文:ヒナタカ)