2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町・東大阪で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。
CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事では主人公・舞が航空学校に入学した8週目~11周目までの記事を集約。1記事で感想を読むことができる。
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「舞いあがれ!」インタビュー「CINEMAS+ MAGAZINE」にて掲載中!
もくじ
第36回のレビュー
第8週「いざ、航空学校へ!」(演出:野田雄介)のはじまりは、両親を説得した舞(福原遥)が本格的に航空学校受験を目指して勉強をはじめます。大学も2年間は行っていないといけない条件もあるため、大学行きながら勉強もしてバイトをして……と大忙し。
舞は人力飛行機のトレーニングもやっていたから体力はありそうです。
大学行くのにかばんを忘れそうになったり、バイト先ノーサイドではティーカップの乗ったトレーを持ったままつんのめってしまったり。ドジっ子描写があって、先週までのしっとりゆったりムードと印象が違う……と思ったら脚本家が変わっていました。「エール」にも参加していた嶋田うれ葉さんです。
制作統括の熊野チーフプロデューサーに筆者がヤフーニュース個人で取材したら、航空学校編は専門用語も多く下調べしたり確認したりする作業が大変なので別のチームにしたと回答をいただきました。
脚本だけでなく制作チーム全体が航空学校編チームになっているとか。それはそれでどんなふうになるのか楽しみです。
確かに現実でも、場所によって、そこにいる人達のムードは違いますから、地元でも田舎でもない、学校とはいえ義務教育や大学とも違う、プロフェッショナルを目指す場所、独特の雰囲気はきっとあるでしょう。
いよいよ受験。両親からはお守りをもらって出かけます。
面接で一緒になったのは柏木(目黒蓮)というしゅっとした人物。ええとこのお坊ちゃんらしく、乗馬が趣味で、面接で専門用語をすらすらと語り、面接官も目をしろくろ。
一方の舞は特技を聞かれても、ピントの合っていない回答をしてしまいます。でも、なぜパイロットになりたいのか、その理由を聞かれると、熱い胸の内を語ります。これには面接官もにこにこ。
面接が終わると、柏木は冷たく、舞に「もう君と会うことはないだろう」といかにも僕と君は住む世界が違うというような発言をしますが、舞が合格し、期待に胸膨らませて宮崎本校にやって来ると、柏木にばったり再会。お約束の展開であります。
目黒蓮さんは現在、恋愛ドラマ「silent」(フジテレビ 木曜10時〜)に出演して、もどかしく切ない恋愛シチュエーションでの演技が魅力的で話題を振りまいています。
「舞いあがれ!」では目下、かなりクールで、滅多に人を悪く言わない舞が「感じ悪い」と言うような人物ですが、それで終わるわけもないのは明白。これからどんな展開が待っているでしょうか。
【朝ドラ辞典 第一印象(だいいちいんしょう)】第一印象は最悪だけど後々、重要な存在になることはラブストーリーの定番。とはいえ、朝ドラではそのパターンは少なめで、直球・ときめきの出会いのほうが多い。「ごちそうさん」のヒロインと相手役は、出会いが最悪のパターンだった。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第37回のレビュー}–
第37回のレビュー
舞(福原遥)は航空学校の宮崎本校に入学。寮生活をはじめました。まず4ヶ月ここでみっちり勉強して帯広のフライト過程に進みます。
男子ばかりかと思ったら、ひとり女性がいて、ルームメイトになりました。矢野倫子(山崎紘菜)です。彼女は舞より年上で部屋にはお化粧道具やきれいな服がたくさんで、その女子力に舞は圧倒された様子です。舞の持ち物は、ばらもん凧ですから。
クラスは18人、そのなかで6人のチームができて、
舞は、中澤真一(濱正悟)、吉田大誠(醍醐虎汰朗)、水島祐樹(佐野弘樹)、柏木(目黒蓮)、矢野とチームになります。
ランチタイム、食事をしながら自己紹介しますが、柏木はここでもまた無愛想。
「別に馴れ合う必要ないだろう」と第36回の「二度と会うことはないだろう」に続いて感じ悪い発言をします。
中澤はチーム最年長でお兄さんぽい、吉田はまじめそうだがおとなしそう、水島は元気がからまわりしているタイプという印象です。
ここで注目は、このクラスメイト役5人は、朝ドラ初出演の俳優ばかりでフレッシュであることです。戦隊ものや2.5次元などで活躍してきた生え抜き俳優たちによって、これからどんな人間もようが展開していくか注目しましょう。
授業では皆、競い合うように教官の質問に答えていきます。みんな優秀! チームだから助け合いが必要ですが、その前に各々の知識を高めていることが前提であるというなかなか厳しい世界です。
大学では舞はよく居眠りしていましたが、そんなことは許されないし、なにわバードマンのようなサークル活動のほのぼの感はいっさいありません。
慣れない新生活、舞は様々な新しい経験をしていきます。
倫子が夜、メイクして男子寮へでかけていくので、何をしているのか気になって舞はあとをつけます。そこで見たのはーー。
柏木もつんけんしているし、倫子も舞をライバル視して空気悪くなるかと思いきや、倫子に関してはそんなことはなくてほっとしました。
面接もしていた都筑教官(阿南健治)は生徒たちの動向をメモしていて、それが成績に影響するのではないか、という中澤の言葉に舞たちはざわつきます。
新章突入という感じで、かなりドラマの雰囲気が変わりました。厳しい航空学校の様子をライトにポップに親しみやすく……という意図のようですが、繊細な感情をゆったり描いていた先週までとかなり違うので戸惑いも否めません。
舞はなにかとうちに秘めるクセがあるから誤解されがちなだけで、聡明でしっかり者のキャラではなかったでしょうか。とはいえ、彼女は20歳で、ほかの皆さんよりも若い設定なうえ大学中退。人生経験が少ないのでみんなの後ろを戸惑いながら走っているという状況を描いていると思えば、おかしくはないかもしれません。が、スピンオフで別の作家が書いた本編と違うライトなドラマのような印象も受けます。でもまだ航空編ははじまったばかり。決めつけてはいけません。
【朝ドラ辞典 ライバル(らいばる)】朝ドラに限らずドラマに不可欠なライバルの存在。ライバルがいてこそ主人公は輝く。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第38回のレビュー}–
第38回のレビュー
【朝ドラ辞典 違うドラマが始まったかと思った(ちがうどらまがはじまったかとおもった)】朝ドラは長丁場なのでメリハリをつけるためと思うが、半年間のなかで◯◯編、◯◯編といくつかのパートに別れている。「舞いあがれ!」では幼少期の五島編、なにわバードマン編と来て、航空学校編となっている。編によって舞台や時代、登場人物などが変わるので自ずと雰囲気が変わるのだが、時々、それとは関係なく作品のムードが変わることがある。そんなとき「違うドラマがはじまったかと思った」と視聴者は思う、あるいはSNS でつぶやく。その言葉が歓迎をもって吐かれることは滅多にない。関連語:キャラ変
違うドラマが始まったかと思いました。
航空学校編に入った舞(福原遥)は二十歳に成長(成人式祝わなかったのかな)して、宮崎の寮生活をはじめたということで、違うドラマ感はあっても仕方ないわけですが、それにしても、ライトな学園ものの雰囲気になりました。
すでに、バイト先で、すべってコーヒーをトレーから落としそうになる。
ルームメイトの倫子(山崎紘菜)の夜行動が気になって後をつけ、ドアの前で聞き耳を立て、ドアを開けられガン!と当たる。等々、明るくちょっとドジな子みたいになっていますが、第38回では、またしても開いたドアにぶつかってしまいます。
そして、都築教官(阿南健治)の「つづきポイント」に激しく反応し、漫画ぽい妄想をします。この妄想場面が……。
不思議なのは、幼少期は年齢よりも聡明そうな主人公が、大人になると逆に子供っぽくなることです。子供時代の良さを大事にしようとするあまりリアルな成熟が不足してしまうのでしょうか。あるいは、人はそれほど変わらないという哲学的なことを表現しているのでしょうか。
ぜひとも聡明な少女の聡明な成長を描いていただくことを願うばかりです。
まあ、20歳になってもナレーション(さだまさし)は「舞ちゃん」ですから、かわいい舞ちゃん感が大事なのかもしれません。
そんな舞ちゃんが、チームの結束を大事にしようとクリスマスにお好み焼きパーティーを企画します。三角帽子をかぶった姿はじつに無邪気です。
せっかくの企画ですが、柏木(目黒蓮)は不参加。でも舞は、都築教官も来るから「都築ポイント」に響くと脅し、柏木を参加させることに成功します。舞はこのように敏いことは敏いのですが、敏さを発揮するのはそこじゃないのでは……。
パーティーしながら、チームメイト6人の背景がじょじょにわかっていきます。
柏木はお坊ちゃんでお好み焼きを食べたことがなく、はじめて食べたそれが気に入って「もう一枚焼いてくれ」と舞に頼みます。あれほどクールにつっけんどんだった柏木ですが、「これうまいから」と意外と素直。三角帽子までかぶっていて、驚きます。いわゆる「ツンデレ」のようですが、デレるのが早くないでしょうか。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第39回のレビュー}–
第39回のレビュー
第38回では、お好み焼きにデレていた柏木学生(目黒蓮)ですが、またツンに戻っています。
岩倉学生(福原遥)のテストの成績を見て冷たいことを言います。フィクションだから、かっこいい人だからいいけれど実際こういう人がいたら振り回されるからいやだなあと個人的には思いますが、慣れてしまえば適当にあしらえるのかもしれないですね。学生づけにしたのはドラマに倣って。航空学校では「◯◯学生」と呼ぶのが面白いです。
舞は「あの人には負けてられない」と勉強を奮起します。柏木はなんだかんだ言って舞のモチベーションになっているようです。
がんばっている舞に、浩太(高橋克典)が電話してきます。工場をさらに建てて自動車向けの部品を作り始めようと思って、舞に相談するのです。
どうやらその話をめぐみ(永作博美)は聞いていなかったようで、電話を立ち聞きしていたのぞみに浩太は3億円で工場を建てる決意を語ります。
めぐみはいつも聞き役で、彼女の自主性は過去に駆け落ちしたときからストップしているように見えます。浩太と舞が気があっているぶん、めぐみはどこか関われていない感じがするのです。このままずっとそうなのか、何か転換するときが来るのか、この疑問はいったん保留しておきましょう。
なんだかんだで舞の家庭は安定しています。小さいとはいえ町工場の社長一家です。航空学校のチームメイトもクリスマスパーティーでわかったのは、スーパーの経営者の御曹司とか父がパイロット、母が元CAとかわりとアッパークラスの人たちが多そうです。そんななかで吉田(醍醐虎汰朗)
は母ひとり子ひとりで育った苦学生。そして、その母が病気で介護のために学校を長期に休むことになってしまいます。
吉田はパイロットになってお母さんを飛行機に乗せてあげることが夢。でも勉強が遅れてしまい、やめることを考えはじめます。舞はなんとかしたいと考えます。
恵まれている分、仲間に手を差し伸べるのが舞の役割のようです。クリスマスパーティーを行ってチームのコミュニケーションを円滑にし(ついでに都築ポイントに上がったかもしれない)、吉田の学んできたことがいかにすばらしいかを都築教官(阿南健治)にアピールします。こうして、チームの結束が強くなりますが、吉田はどうなる?
朝ドラ初出演の俳優を集め、彼らの役の悩みなどを描く青春群像路線のはじまりなのかもしれませんが、航空学校の珍しい部分をもっと知りたい気もします。たとえば「◯◯学生」呼びについても
それを題材にした楽しいエピソードが見たかった。
【朝ドラ辞典 母(はは)】主人公を生む人物。たいてい主人公をあたたかく見守る理解者だが、稀に主人公を置いて出ていってしまうような人物もいる。たいていはどんなことがあっても主人公の味方である。やがて主人公自身が「母」になり、「母」の心を知るのである。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第40回のレビュー}–
第40回のレビュー
舞(福原遥)が航空学校に入ってあっという間に最終試験がやってきて、あっという間に宮崎校での座学終了、来週は函館でフライト課程です(朝ドラ辞典「展開早い」の項参照)。
一時は脱落か……と思われた吉田(醍醐虎汰朗)も一緒に合格です。バラバラだったのがよくまとまったとご機嫌な都築教官(阿南健治)。
専門的なことや具体的な過程がかなり略されて、登場人物のやってることの内容がよくわからないまま話がトントン拍子に進んでしまうことは朝ドラによくあります。ワープ、ショートカットなどと呼ばれます。最近の流行りの「倍速」という呼び方でもいいかもしれません。
このショートカットが「舞いあがれ!」では少ないと好評でしたが航空学校編に来て、いつもの朝ドラになりました。まあ、視聴者も気にせず朝ドラのノリに身を委ねるのが一番かと思います。
宮崎校の前で写真を撮るチームメイトたち。ノリノリな5人のなかでひとりだけ柏木(目黒蓮)は無愛想ですが、ノーサイドの店主・津田道子(たくませいこ)は、このひとこそ、舞の恋の相手に違いないと思い込みます。
道子「(前略)フォーリンラブや! 恋に落ちてるやつや」
舞「落ちてません」
というやりとりがおもしろかったです。
ライトなドラマとしてはよくまとまっています。
「金」をモチーフにして様々な人間もようがつながっています。
浩太(高橋克典)は3億円も借金して工場を増設し新規事業(自動車の部品製造)を目指しています。経理担当のめぐみ(永作博美)は心配しています。
東京にいて連絡をあまりしてこない悠人(横山裕)がビリケンさんのような宇宙人のような、謎の金の置物を送って来て、そのあと、東京でトレーダーの仕事をきりっとやっている。なかなかすごいお仕事をされているようです。
佳晴(松尾諭)は久留美(山下美月)にお小遣いをもらっています。
お金、お金、お金……一見バラバラな場面がひとつの共通点でつながっていてわかりやすいですね。
そんな流れで、今週の終わりは、舞たちを待ち受けている函館校の教官役の吉川晃司さん。トップガンかというようなムードが漂いました。第8週は学校と生活であたふたしている感じでしたが、第9週は広大な空と大地が広がりそうです。
【朝ドラ辞典 相手役(あいてやく)】「戯曲というものは、やっぱり恋愛がなくちゃいけないとあたしは思うわ……」というのはチェーホフ「かもめ」のセリフ。朝ドラにも恋愛が、主人公の相手役は必須。常に相手役は誰だろうという興味がある。朝ドラでは夫役、妻役として事前に紹介されることもあるが、誰が相手役になるかなかなか明かされないパターンもある。「舞いあがれ!」はこのパターン。幼馴染か? 学友か? 「恋に落ちてるやつ」と予言されたがまだわからない。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第41回のレビュー}–
第41回のレビュー
2007年4月、舞台は帯広へーー。
第9週「私らはチームや」(脚本:嶋田うれ葉、演出:松本健佑)
航空学校のフライト課程に進んだ舞(福原遥)のもとに貴司(赤楚衛二)からはがきが届きます。
トビウオが飛ぶ時 ほかの魚は知る 水の外にも世界があると
貴司は福井の漁港で働いているようです。いつの間にかたくましくなっている。貴司は決して仕事ができないタイプではなく単に会社勤務が向いていなかったのかもしれません。
貴司も舞もまさに外の世界を見ている最中のようです。
ところで貴司は久留美(山下美月)にもはがきを出しているのでしょうか。たぶん、出してない気がします。たとえそうでも久留美は気にしなそう。3人の友情ってそういう自由で囚われていないような雰囲気を感じます(勝手な想像ですけれど)。
ドラマのなかの詩や短歌は歌人でもあるメインライターの桑原亮子さんの作らしいです。脚本家が変わってもこういうところで変わらない軸が示されるようでいいですね。
宮崎校では6人チームでしたが、帯広では3人ずつに分かれました。舞は柏木(目黒蓮)と水島(佐野弘樹)とチームになり、担当は鬼教官と恐れられている大河内(吉川晃司)です。すぐにフェイル(退学)させる厳しいことで有名な人物という噂があります。
フライト課程は実技。まず「プロシージャー」という飛行機を安全に飛ばすための手順をやってみます。舞は手順を完璧に覚えられなかったため、部屋にパネルと手製のコントローラーを作って練習します。手製のコントローラーは、舞が手先が器用であったことを思い出させます。
倫子(山崎紘菜)と一緒にやろうと誘いますが、やる気がないため(宮崎校の頃のがむしゃらに勉強していたときと別人のようです)、舞は水島につきあってもらいます。部屋には柏木もいて、水島が席を外した間、舞の練習につきあいます。
どうやら柏木は口は悪いけれどいやな人ではないようです。マイペースというのでしょうか。その時、その時、感情のままに動いてしまう人というか。あるいは、チーム制なので協力し合わないといけないことを宮崎で学んだのかもしれません。学習能力は高そうですから。
でも柏木の舞への接近(お好み焼きを焼いてと頼む、練習につきあう)がこのまま恋モードにシフトしていきそうな気もして……。わざわざ「彼女はいない」というセリフもありましたし。考え過ぎかもしれませんが。
水島を見ていても、とっても難しい勉強中にも恋は別腹なんだなと思うのです。優秀な人は優秀だけに勉強や仕事をバリバリしながら恋愛にも時間が割けるのです、たぶん。
そんなとき冒頭に出てきた貴司の存在も気になるところ。すてきな男の子たちに囲まれながら舞はまだ初恋もしていないようですが……。
【朝ドラ辞典 ツンデレ(つんでれ)】恋愛ドラマには欠かせない属性。クールでとりつくしまのない人物がふいにデレるギャップの魅力は絶大である。若手俳優はこの手の役がいかにうまくできるかでブレイクが決まると言っても過言ではない。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第42回のレビュー}–
第42回のレビュー
【朝ドラ辞典 反省会(はんせいかい)】朝ドラファンがネットで作品批評を行うときに使う用語。かつてはこっそり裏の活動として行われていたが2022年、ネットニュースになるほど広く認知された。
冒頭、飛行機が運ばれていく画が印象的でした。これからこの飛行機が飛ぶのだなと思って、わくわくします。
舞(福原遥)がはじめて飛行機に乗ることになります。
フライト前に「ブリーフィング」という安全にフライトが行えるか訓練計画を教官に説明します。
気象のことなども踏まえないといつでも飛べるわけではないのですね。しかも飛行機のチェックも
行います。かなりの知識と観察眼も必要です。
舞をはじめ学生たちがのんきに見えて、精密機器・飛行機を飛ばす能力をいつの間に培ったの?と驚いてしまいますが、そこは物語の省略です。
飛行機を操縦し、離陸する前の緊迫感はなかなかドキドキしました。フライトシミュレーションゲームをしているような感覚があります。
「飛べた 空、飛べた!」
トントン拍子に飛べましたが、ことは容易ではありません。うまく操縦できず、交代。
車の運転も最初は怖いと思うけれど、空を飛ぶってすごいことですよね。
教官(吉川晃司)が隣にいて、操縦桿もあるので、何かあったら助けてくれるとはいえ。
後ろに乗った水島(佐野弘樹)は気持ち悪くなっているし、柏木(目黒蓮)もちょっと気持ち悪くなっているように見えます。
I have control
You have control
と操縦するとき、操縦を代わるときはこういうふうに言う決まりがあるようです。
カリキュラム名は英語だし、英語もできないといけなそうです。あらゆる知識が必要なんですねパイロットは。
初フライトのあとはデブリーフィング(「反省会」)が行われます。デブリーフィングを「報告」や「確認」ではなく「反省会」と意訳したことにはユーモアを感じます。「反省会」とは今年の流行語大賞の候補に「#ちむどんどん反省会」がノミネートされたほどの印象的なワードです。
その日、舞をはじめみんな、すっかり疲れて言葉も食欲もありません。
夜になってお腹が空いて、談話室(?)でカップ麺を食べていると(なぜかラベルレス)、吉田(醍醐虎汰朗)も来て、ふたりで今日のフライトをしみじみ振り返ります。いい感じのふたりの様子を、柏木が立ち聞きしていて……。
出た、朝ドラ名物「立ち聞き」!
【朝ドラ辞典 立ち聞き(たちぎぎ)】物語の進行に必要なもの。立ち聞きなくして物語は進まないと言っても過言ではない。誰かが誰かの話しをこっそり聞いたことで、明るみになる真実。動く感情。そこから転がる思いがけない展開。和室、ふすまの時代は立ち聞きも比較的自然だが現代劇でドアで塞がれた場での立ち聞きはなかなか難しい。「舞いあがれ!」では舞がすでにドア越しの立ち聞きを行っている。第42回では柏木が……
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第43回のレビュー}–
第43回のレビュー
東大阪のノーサイドに悠人(横山裕)がやって来ます。うめづに続いてここでも常連ぽい。意外と近隣の店によく通っていたわけですね。
悠人はお好み焼きやオムライスなど炭水化物がどん!と一点主張しているものが好きなようです。
悠人は一流企業を辞めて投資家になっていました。偶然、店で再会した久留美(山下美月)にも投資を勧めます。
「もっとええ仕事ありそうやけどなあ」「俺に金預けてくれたら何倍にもできんで」というセリフはなかなかやばい響きがしますが、筆者がヤフーニュース個人で取材したところ、制作統括は「クズではない」とおっしゃっていました。
訝しい顔になる久留美。さっそく舞に悠人が会社を辞めた情報をメールで報告。
タイトルは「びっくりやわ!」で本文には「あんな感じやったっけ…」と。
ですが、久留美と悠人が店の入り口でぶつかって彼女のもってるものが落ちて……というのは恋愛ドラマあるあるふうでしたが、そう思わせて単に、悠人だったというユーモアでしょうか。それともこのふたり、今後何かあるのでしょうか。救命救急で働いている久留美に雰囲気変わったという悠人とそれを聞いてちょっと反応する久留美を見ると、何かありそうな気もしますが、フライトとフライドポテトのくだりといい、いまひとつどう捉えていいのか掴みどころがありません。
ただ、舞(福原遥)が慎重になり過ぎてひとつひとつの動作が遅いと大河内教官(吉川晃司)に注意されたことは、舞の元来の性格(慎重)から来ていると思わせ、二十歳になってキャラ変したわけではないようです。
操縦がうまくできなくて元気のない舞に、柏木(目黒蓮)が着陸のイメトレにつきあうと申し出ます。にこにこする水島(佐野弘樹)を訝しげに見る倫子(山崎紘菜)。ちょっと気になる顔をする吉田(醍醐虎汰朗)。
第42回のラスト、舞と吉田がいい雰囲気だったことから考えると、複雑な恋もようになるのでしょうか?(「あさイチ」の博多華丸さんは「(吉田と一緒にいるのを見たから)急に横入り」「乱気流ですねえ恋のほうは」などと朝ドラ受け) まずは勉強しろと言いたいところですが、恋もしたい年頃でしょうねえ……。
柏木の部屋で熱心に勉強する柏木と舞。柏木は乗馬のことをはじめ専門用語になると言葉数が多くなります。しかもすごく熱心に。
イメトレ用の図面が細かくて、美術スタッフさんが丁寧な仕事をされていることを感じます。
さて、鬼教官こと大河内は、鬼というから雷を落とすような人かと想像したところ、こわいくらいにクールな人物でした。クールに物事を鋭くチェックし、小さなことも見逃さないタイプのようです。
怒る人は怖いですが、淡々とすべてを見逃さない人はもっと怖い。でもそういう人は信頼できる気がします。
【朝ドラ辞典 師匠(ししょう)】家族以外でヒロインを導く人物。ひとつの道を極めた人物でヒロインの人生に大きな影響を与えることになる。「半分、青い。」の秋風羽織(豊川悦司)、「スカーレット」のフカ先生(イッセー尾形)など。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第44回のレビュー}–
第44回のレビュー
柏木(目黒蓮)の部屋でイメトレを行う舞(福原遥)。同室の水島(佐野弘樹)は気を利かせ隣室にいて、壁に耳を当て盗み聞きしています。
世の中には俗っぽいことが好物の人がいて、水島や、東大阪のノーサイドの店主さんなどがそうですね。
ふたりきりの部屋では、イメトレに夢中になるあまり、いつの間にかコントローラーを握る舞の手のうえに柏木が手を乗せています。
空を飛ぶ想像に、ピアノの劇伴がかかって、なんともロマンティック。
ある意味、自然な接近です。
恥ずかしくなった柏木はよくできてるとコントローラーを褒めます。
浩太(高橋克典)にも手伝ってもらって作ったという話から、柏木も父の思い出を語りはじめます。
舞と柏木、ふたりとも父から多大な影響を受けているようです。
ここまで来ると、舞と柏木に恋が生まれるのは必定……。
ですが、ここで問題勃発。
あれほど自信満々だった柏木が飛行の途中でポジションを見失ってしまいます。ロストポジションというとかっこいいけれど、つまり「迷子」。
「完璧王子柏木くんも人の子だったってことよ」と水島の「完璧王子」はナイスネーミングでした。
クールで優秀な柏木のはじめての失態が迷子というのもギャップが大きい。ツンデレはかわいいけれど、堂々としていた人が空間と地図を同時に把握できずにオロオロしてしまうのはお気の毒とはいえいささかかっこ悪い。
自分を過信する者はパイロットに向いていないと大河内教官(吉川晃司)に指摘されてしまいます。それより空間把握できないほうが心配ですが、精神的な問題で、努力で直せるものなのでしょうか。自分を過信するあまり、何かあったとき考え方を柔軟に切り替えられないことが問題なのかもしれないですね。
すべてをあははと笑って済ませず、ひとり飯したり、舞に心配声されても意地張ったり、そのうちヒステリックになったり。
柏木「ラジャーしか言えないやつは黙ってろよ」
水島「この迷子野郎が」
ギスギスしたうえ、あの大事なコントローラーが……。
前半のちょっとキュンとなったイメトレ場面と後半のギスギス場面の落差が激しかった回です。ここでも上がったり下がったり。
そんなおり、中澤(濱正悟)は夫婦関係に問題があるようで。みなさん、それぞれ事情を抱えながら頑張っているのです。
柏木がたそがれていた航空学校の裏庭みたいなところが雰囲気あって素敵でした。
【朝ドラ辞典 ときめき】朝ドラに限らず、ドラマには「ときめき」が必要。類語:キュン
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–{第45回のレビュー}–
第45回のレビュー
迷子野郎・柏木(目黒蓮)とラジャー水島(佐野弘樹)の諍いから、舞(福原遥)の大事な手製のコントローラーが壊れてしまった。
コントローラーはぺしゃんこ。
外は雨。
水島は吉田(醍醐虎汰朗)たちの部屋へ。
コントローラーを壊された舞ですが怒ることなく、むしろ柏木を心配して、大河内教官(吉川晃司)に相談に行きます。でも本人がパイロットの本質に気づくしかないと相変わらずクールです。
こういうとき、倫子(山崎紘菜)はやたら冷静で、成功体験を積み重ねて自信を取り戻すしかないと言います。倫子さんは、他人に対して何かとずけずけ言いますけれど、本質を見る目があるのでしょう。それがときにいやなところを突いてしまう。
吉田はやさしくて、息苦しいと言う水島にこういうときこそ一緒にいてあげたほうがいいのではないかと言います。
さすがパイロット候補生、みなさん、それぞれ違いはあれど、聡明であります。
たったひとりで問題を解決しようとしてトンネルから抜け出せないでいる柏木に舞は寄り添おうとします。仲間を誘って、柏木のロストポジションを修正する練習を体育館ではじめます。
なんだかんだ言って手伝う仲間たち。怒っていた水島もからっと気持ちを切り替えて協力します。
爽やかな音楽が流れて、自分を取り戻していく柏木学生。
頭だけでなく体で覚えるために、椅子や紐を使って作った立体的な地図がまた美術スタッフさんのいい仕事。コントローラーだって浩太(高橋克典)や舞が作った体(てい)で美術スタッフさんが作っているわけで。ほんとうにすばらしいお仕事です。
柏木はあっという間に復活しましたが、舞はまだ着陸がうまくできません。自分のことを脇に置き、柏木のことを心配していた舞。他人思いは子供の頃から変わっていないのです。
パイロットはたったひとりで重責を負うものと思いこんでいる柏木に対して舞は「客席乗務員がおって、整備士さんがおって……」と、つねに仲間がいて、助け、助けられやっていこうと思っています。
柏木の頑なな心も舞のやわらかい心(でも強さ・信念がある)に感化されたようで……。
ひとり自主練している舞のところに柏木が持ってきたもの、そして発した言葉ーー
持ってきたものはいいとして、その言葉、もう発します? ここで金曜日。このつづきを2日間待たないといけないのは、いけずですよ〜(笑)。
【朝ドラ辞典 明日もこのつづきをどうぞ……】これは昔の朝ドラの各回の終わりについていた文言。2022年8月〜9月にかけて放送された夜ドラ「あなたのブツが、ここに」でも使用された。
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第46回のレビュー
「岩倉、俺、おまえのことを……」の続きを待って2日。週明け、最初はこれまでのあらすじ。着陸がうまくできない舞(福原遥)、空で迷子になって立ち直れなくなる柏木(目黒蓮)。
舞は自分のことそっちのけで柏木を応援します。そんな舞に柏木が「おまえのことを……」と言い出しますが、「なんでもない」とはぐらかします。
「何なん?」とどきどきする舞。それまでは柏木が心揺れていましたが、今度は舞に移ります。
大事なプリソロチェックの前に眠れなくなる舞。へんな夢まで見てしまうほど「おまえのことを」パワーは強烈です。
こうなると、柏木も無責任といいますか……。学生の本分である勉強、それも大事な審査の前、そこでフェイルしたら学校を去らないといけないという大変な状況を前にして、余計なことを言いますかね?
余計なことを言って相手を動揺させたら悪いなと、思いとどまるべき。いえ、「おまえのことを」でぎり留まったということなのかもしれませんが。柏木の協調性のなさはこういうところにもあるようです。相手のことを慮らず、自分の思ったことを優先しがち。迷子は治っても、ここを直さないといいパイロットになれないと、大河内教官(吉川晃司)にぜひとも指導していただきたい。
「いまは明日のプリソロチェックに集中しなよ」
これは倫子(山崎紘菜)の台詞です。これがすべてを物語っています。が、この台詞は柏木と舞に放たれたものではありません。中澤(濱正悟)に対してのものでした。
中澤は、妻から離婚届けが送られてきて動揺します。以前からうまくいってなくてピリピリしていた中澤。“妻子がいて、役場づとめをしていたが、パイロットになる夢を諦められず、退職して航空学校に入った”(NHKドラマ・ガイドより)ということで、負担を強いている妻への思いやりにどうやら欠けているようで、耐えかねた妻が離婚届を送ってきたようです。
こちらもどっちもどっちという印象で、妻子を置いて夢を追っている夫と、夫が大事な局面にいるときに(状況を知らないとはいえ)離婚届けを送ってくる妻。この時点でこの夫婦はもうだめかもしれないという気もしないではありません。
目下「舞いあがれ!」はたくさんの人々の命を背負って空を飛ぶ重責のパイロットを目指す学生たちが、柏木にしても中澤にしても自分のことばかり考えているという皮肉を描いているように見えます。
ドラマを盛り上げるためには障害が必要なのはわかりますが、柏木も中澤ももうちょっと相手の身になってほしいものです。
第10週「別れと初恋」(脚本:佃良太 演出:野田雄介)で、3人めの脚本家の登板です。
目がランランとして眠れない舞に、ばらもん凧(さだまさし)が「舞ちゃん、せめて目をつむって!」と語りかけたり、舞たちが食堂で円陣組んで「全員合格するぞ! お〜〜」とやったり、ほのぼの感が増した印象です。でも、夢見て起きたときの舞は、ちょっと色っぽく、飛行のまえにドゥンドゥンと盛り上げる劇伴はエヴァのようで演出にはポップ感が増しています。
【朝ドラ辞典 脚本家交代(きゃくほんか・こうたい)】朝ドラの脚本家は基本ひとり。時々、複数制になることがある。「君の名は」「てっぱん」「エール」などが複数で担当している。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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–{第47回のレビュー}–
第47回のレビュー
厳しい訓練のさなか、舞(福原遥)と柏木(目黒蓮)はなんだか心を通わせはじめているようです。人生を左右するプリソロチェックの前に告白未遂みたいなことをやってドキドキするようなふわっと恋愛もようを挟み込む理由がわかりました。第47回の柏木のせりふを思い出してみましょう。
「水島(佐野弘樹)は同時に複数のことができない」
そう、パイロットになるには複数のタスクを同時に適切に処理できないとならないのです。操縦しながら管制官の司令も聞き取らないといけません。学校の課題をクリアしながら恋もできるような器用さやエネルギーの余裕がないといけないのです(たぶん)。
思えば、水島も勉強しながら女の子を追いかけていましたよね。彼も彼なりに複数のことをできるようにしようとしていたのでしょう(たぶん)。
残念ながら、水島は最初のプリソロチェックで不合格になり、再審査でも不合格。フェイル(退学)することになりました。
たとえ、複数のことができなかったとしても、ごまかさず、真摯にそれを認め、助けを求めることが必要でした。舞は不器用でいろいろできませんが、離陸を強行突破することなく、愚直なまでに慎重であることが買われているようです。
水島はいつも「ラジャー」と軽く言ってできてないことを誤魔化し続けたことがよくなかったようです。「ラジャー」しか言わないと柏木が水島と喧嘩したときの指摘は、笑い事ではなく、意外と根の深いものだったようですね。
複数のタスクをこなすこと、ごまかさず流さないことが重要であると指摘する柏木だって、地図が読めなかったことをごまかそうとしていましたけど、彼は舞によって救われたのです。
舞がもっと早くに水島の欠点に気づけていたら……。母の介護で大変な吉田(醍醐虎汰朗)、挫折に弱い柏木までは目が届いたけれど、飄々として弱さを見せなかった水島にまでは行き届かなかったようです。
水島は柏木の練習につきあっていたのに。自身の欠点と向き合わず、直す機会のないまま試合終了してしまいました。脇役だからとしかいいようのない流れですが、世の中、不公平に感じてしまいます。
いつでも陽気なふるまいで自分を誤魔化してきた水島。吉田や柏木のように弱さを早いうちにみんなに見せておけばよかったということなのです。現実にもこういうこと、ありますよね。問題を言い出せず抱えすぎて、よけいに悪い事態を引き起こしてしまうことが。
チームワークの必要な仕事はつねに心を開き合うことが大事と思わせるエピソードでした。
【朝ドラ辞典 挫折(ざせつ)】人生につきもの。朝ドラ主人公には意外とそれがなく、周囲の人たちが体験することが多い。主人公に挫折がなさすぎることを指摘されることもときにある。
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–{第48回のレビュー}–
第48回のレビュー
フェイルになった水島(佐野弘樹)は去っていきました。彼は来たときも帰るときも大きな楽器ケースを持っていました。じつは知らないうちにクリスマスパーティーのときに演奏を披露したり、柏木(目黒蓮)がいやがるのに部屋で爪弾いたりして、アリとキリギリスのキリギリス的な雰囲気を醸していたのかもしれません。
水島がいなくなってひとりになった柏木の部屋に舞(福原遥)が訪ねてきます。吉田(醍醐虎汰朗)のまとめたノートを届けに来たのはおそらく口実で、柏木がしょんぼりしているだろうと慰めに来たようです。
舞もしょんぼりしていたので気持ちを分け合いたかった(水島と3人チームでしたから、ほかの3人とはやはり思いが違うでしょう。でもほかの3人も水島ショックによって協力的になっています)のだとは理解できますが、「俺はおまえのことを」と言われてから舞は柏木に少し違う感情が沸きはじめているような気がします。
柏木の部屋のなかでの身振り口ぶりが妙にあとを引く感じで。そのうえ、「あさイチ」の博多華丸さんも言ってましたが、部屋着で部屋を行き来するのってどうなんでしょう。パジャマのような格好で、緊張感なさすぎですよね。
この番組を見ている親世代の方々は、子供が航空学校に行きたいと言ったら心配で行かせたくなくならないものでしょうか。
舞は柏木の部屋に自分のノートを置き忘れ、柏木はわざわざ届けに行きます。明日も授業で会うのだから、明日でもいいじゃんという気がしますが、そこはもう本能がそうさせるのでしょう。
でももう消灯時間。警備員の気配がして柏木が食堂に隠れると、テーブルの下に舞が……。
舞もまた警備員の巡回から隠れていたということでしょうけれど、なんとなく不自然な感じがします。暗闇ですぐ柏木であることに気づくのも違和感だし……。
無理くりなシチュエーションのなか、テーブルの下で気持ちが近づくふたり。柏木は舞を驚かすことを言います。
早い早い。ソロフライトが無事に終わるまで待つという節度はないのでしょうか。
岩倉と一緒にいると不思議と素直になれるんだ。
素直になって理性が抑えられなくなってしまうようですね。大河内教官(吉川晃司)がこれを知ったら、フライト中に別の感情がもたげてきたとき抑制できない者はパイロット失格と言うのではないでしょうか。都築教官(阿南健治)の都築ポイントは学生のこういうところをチェックするものではないのでしょうか。とはいえ、いつの世でも、若者は大人たちの規制から逃れて自由に羽ばたいていくものなのでしょう。
救命医療で働く久留美(山下美月)も医師・八神蓮太郎(中川大輔)に優しくされて……。
若者の心は舞いあがっていますが、恋には落ちるとはこれいかに。
【朝ドラ辞典 腕をつかむ(うでをつかむ)】男性がヒロインの腕を掴んで何か言うシチュエーションが朝ドラにはよくある。これがスイーツものにおける壁ドン的なキュンポイント。
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–{第49回のレビュー}–
第49回のレビュー
「行きます!」と言えばガンダムを思い出します。舞(福原遥)がついにソロフライトに挑戦します。
着陸時にセンターラインに乗せることができない舞が空ではふつうにフラフラすることなく飛べるものなのでしょうか。
制作統括・熊野律時CPにYAHOO!ニュース個人で取材したところ、航空大学校の取材を徹底して行っていて、舞の描写はリアルだそうです。
ひとりで乗った瞬間、「やっぱこわいな」と感じること、訓練初期は飛ぶ喜びどころではなく元気がないことなどは実際の訓練生のかたの経験に基づいているとか。
筆者は運動神経が鈍く車の運転もできないし、運転系のゲームも苦手なので、飛行機を飛ばす感覚がまったくわかりません。最初は教官と並んで飛ばして訓練していたとはいえ、こんなふうに短期間で飛べるなんてびっくりします。離陸した瞬間、どっからガッシャンとなるような気がしてドキドキしながらドラマを見ています。こういうときこそ、飛ぶ(成功)イメージをすることが大事かもしれないですね。
日常、電車や車の運転に身を任せながら、運転手が乱暴で下手だなと感じることがありますが、飛行機で下手だなと思ったことはあまりないです。天気が悪くて揺れまくっているとき、うまく交わしているように感じるときと、不安過ぎると感じることがありますが、天候の荒れ具合がわからないのでパイロットの腕かどうか判断できません。少なくとも離着陸で不安を感じたことはないように記憶していて、やっぱりパイロットの操縦技術は相当の訓練がなされているのではないでしょうか。
精神力も技術力も高度な仕事を目指す舞。第一回ソロフライトは満足の行くものではないながら終了し、ウイングマーク(バッヂ)を獲得します。舞は、大河内教官(吉川晃司)に特訓してもらいます。
「私教官に負けたくないんです」というせりふは、第48回で、柏木(目黒蓮)が「俺は大河内教官から絶対に逃げない」「見返してやる」と言ったことに影響されているのでしょう。ちょっとニュアンスを誤解して受け取っているような気がしますが、それで奮起して頑張って、欠点を乗り越えたのだから結果オーライです。
努力してもパイロットになれるわけではないという大河内教官に対して、努力は報われることを示したいと奮闘した舞。水島(佐野弘樹)の努力が足りなかったということを証明したような気もしますが……。
舞が言いたかったことは、大河内のフェイルの判断が早過ぎるから、もうちょっとじっくりゆっくり待ってほしかったということなのでしょう(たぶん)。でも大河内教官は、舞に特訓しているとき「フライト中に考えているひまはない」と言います。つまり、ゆっくりじっくりできる職種ではないということです。人の命がかかっていることなので一回失敗したからまた次はがんばるという猶予はない。瞬時の判断、実行力が必要ということなのでしょう。
長い経験上、厳しい教官と、経験のない舞の相違です。舞は、人の気持ちを慮れる性格だったはずですが、なぜか教官の気持ちに気づこうとしません。
【朝ドラ辞典 努力(どりょく)】朝ドラでは努力の過程が省かれると不満に感じる視聴者層が一定数存在しているため、適度に努力を描写する必要がある。類語:壁
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–{第50回のレビュー}–
第50回のレビュー
珍しくアヴァンなしで主題歌はじまりでした。
舞(福原遥)がソロフライトの訓練で頑張りすぎて発熱、寝込んでしまいます。子供の頃はよく熱を出していた舞。久しぶりに当時のいろいろ考え過ぎて熱が出てしまう体質がぶり返したのでしょうか。
不思議なのが、東大阪のめぐみ(永作博美)です。舞が熱を出したことを電話で聞いてもあまり心配した様子ではありません。浩太(高橋克典)のほうが心配しています。子供の頃はあれほど舞の状態にぴりぴりしていたのに。めぐみもキャラ変?
舞は五島に行った以降、すっかり治ってしまって、その後、まったく心配なかったのかもしれませんが。いまのめぐみには投資をやってる悠人(横山裕)のほうが心配なのです。
舞を心配してくれる人はほかにいます。同室の倫子(山崎紘菜)も親切ですし、柏木(目黒蓮)も大河内教官(吉川晃司)も。
まず、柏木が倫子にアイスを託します。「熱があるときはアイスだろ」とぶっきらぼうに言う柏木に「いちいちずれているのよ」と倫子は懐疑的な反応です。部屋に冷蔵庫がないからでしょうか。
柏木「これ」
倫子「えっ 何これ くれんの〜」
柏木「いや 分かるだろ 察しろ」
倫子「はい むかつく」
柏木「熱があるときはアイスだろ」
倫子「あんたやることはいちいちずれてるのよ」
この会話は現代っ子の軽味があってよかったです。
大河内もアイスを差し入れますが、こちらはクーラーバッグに入れてあり、少しだけ気が効いています。でもそれは預かってきた宮田という人(似顔絵が書いてあった人?)の気配りでしょうか?
舞は倫子とふたりでアイスを食べます。二段ベッドの前で座ったふたりはいい画でした。舞は柏木のくれたアイスバー、倫子は大河内のカップアイス。ほんとうは半分こにするなり、味見をするなり、してほしかったけれど、コロナ禍の撮影、そういうことはできないかもしれません。
このときまだ舞は大河内が差し入れてくれたのかわかっていません。「教官から」とだけ聞いて大河内のわけないだろうと思っていたら、そうだったという意外性。
大河内は舞と話をします。それを聞くと、ただの鬼教官ではなさそうです。いや、傍からみたら全然、鬼に見えてないですけどね。
でも柏木はこのまま厳しい教官のもとではフェイルになってしまうと舞を心配し、教官を代えてもらおうと言い出します。
面白いのは、柏木と大河内が実はちょっと似ていること。ぶっきらぼうで完璧主義で、でも決して意地悪なわけではない、志のある人。病人にアイスを差し入れる人。気のせいか、低めの抑揚のない声で話すのも似ています。面長で高身長であることも。
【朝ドラ辞典 病気(びょうき)】朝ドラに限ったことではないが、主人公が突如、倒れることは往々にしてある。病気がドラマの主題に関わる場合と、単にメリハリをつける場合とがある。前者はあざとくないように、後者は肩透かしにならないように気を配る必要がある。関連語:病院
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–{第51回のレビュー}–
第51回のレビュー
第11週「笑顔のフライト」(脚本:佃良太 演出:松木健祐)
訓練を頑張りすぎて熱を出した舞(福原遥)。大河内(吉川晃司)の厳しさが要因と思い込んだ柏木(目黒蓮)は担当教官を変えてもらおうと提案します。でも舞は大河内と話した(アイスも差し入れてもらった)ことで教官に対する印象が変わってきていました。もう少し頑張ってみたいと柏木に言いますが……。
熱が出て勉強が遅れている舞に、倫子(山崎紘菜)たちは親切。とりわけ吉田(醍醐虎汰朗)は親切で、舞に気がありそうな素振りですが、舞は気づきません。倫子がやや悟っているふうです。
残念ながら舞には柏木がすでに告白しています。舞はまだ返事はしていませんがまんざらではない感じです。この流れ、冷静に見ると、吉田と舞もいい感じになっていたところを柏木が偶然見て、そこから俄然、柏木がことを急くようになっていました。吉田が早く動いていたら舞は吉田にも心が動いたかもしれない。それだけ舞は受け身に見えます。恋愛慣れまったくしていないし。
柏木はこういう点からしてもエリートなんだと感じます。これと思ったら躊躇なくとりにいく。そうやって勝ち抜いてきたのでしょう。お坊ちゃんだからといってのんびりしているとは限りません。成功者の血筋は鋭い勘で自分にとって良いものを素早く発見し獲得していくものなのでしょう。吉田学生が不憫です。
「エリート男性、何日も待たせて、あんたええ女やな」と舞をからかう久留美(山下美月)。彼女もまたエリート医者から差し入れをマメにもらって、気持ちが動いています。久留美が「あんたええ女やな」と言うのは柏木に関することだけですが、どうやら舞はモテているので、期せずして、その罪な感じを指摘しているとも言えるでしょう。
セカンドソロで天候が悪化しそうなため、緊急着陸しないとならなくなった舞のピンチを助けに飛んできた大河内教官も頼りになるし、むしろ、この瞬間、大河内教官に惚れてしまいそうなシチュエーションです。
燃料は保ちそうだけれど、もし釧路空港も天候が悪くて着陸できなかったらーーと不安定な空の上でたったひとり途方に暮れているとき、横に飛行機が並んだ瞬間の舞の表情。ここは感動シーンでした。
柏木、いやに教官替えようとするのも、舞から大河内を引き離そうとしているのでは?という気さえしてきます。吉田学生のことを思うとそういうふうにも見えかねなくて、おそらく作り手は意図していないでしょうけれどちょっとおもしろいです。それだけ柏木が舞に夢中に見えるんですよね。舞のことばっかり考えて心配していて、自分の訓練は大丈夫なの?と気になります。ついこの間まで迷子になっていたのに。
【朝ドラ辞典 ピンチ(ぴんち)】ピンチはチャンス。ピンチはドラマを盛り上げる。朝ドラではピンチになってもすぐに解決することが少なくない。たいてい翌日解決。
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–{第52回のレビュー}–
第52回のレビュー
今朝、「おはよう日本」の伊藤海彦アナの朝ドラ送りのノリが良かったです。
「右を見ろ」の大河内教官(吉川晃司)がかっこよかったと盛り上がったところ「左を向けって柏木学生(目黒蓮)が来たらもっとかっこよかったですよね」と言ったのです。伊藤アナは目黒蓮さんの演技の幅が広いというコメントもしたことがあって、目黒さんを応援しているように見えます。
当初、三條雅幸アナの「送り」が期待されていましたが、4人の若手アナたちによるおしゃべり感が逆にいい感じの今の「おはよう日本」の朝ドラ送りです。毎日必ずやるわけでもないのも程よいです。
【朝ドラ辞典 朝ドラ送り(あさどらおくり)】「あさイチ」の朝ドラ受けに対して、前の番組である「おはよう日本」で行うのが「朝ドラ送り」。番組の最後の数秒でこれからはじまる朝ドラに期待をもたせるための気の利いたコメントをいかに発するかアナウンサーの腕の見せ所となる。高瀬耕造アナが頻繁に行いはじめてからこの用語が定着した。関連語:朝ドラ受け
さて、そのかっこいい大河内教官が舞(福原遥)のピンチに颯爽と飛んで来ます。ソロフライトのさなか、天候が悪くなり予定していた空港に着陸が困難のため、急遽、釧路空港に向かった舞。たったひとり空の上、心細く感じているところに、「岩倉、右を見ろ」「わたしが誘導する」と横についてサポートしてくれたのです。
こうしてこれまでで一番の着陸もできました。
「不測の事態は必ず起きる。それでも冷静でいなければならないのがパイロットだ」と岩倉に語る大河内。それから、なぜパイロットになりたいか、原点に立ち返るよう促します。目的を自覚すればそのために何をすべきかわかるということですよね。
学校に戻ってきた舞に、柏木がつかつかつかと歩み寄ると、驚くべき態度を取ります。舞もびっくり。視聴者もびっくり。でも横切る整備士たちはスルー。
柏木ってほんとうに思ったことが言葉や態度にだだ漏れになる人ですね。よく言えば素直ですが……。こんなに抑止力のない人物ははたしてパイロットに向いていると言えるのでしょうか。「冷静でいなければならないのがパイロットだ」の言葉は柏木が心に留めないといけない気がいたします。
部屋に戻ってまた舞と語っていると、倫子(山崎紘菜)たちが心配して入ってきます。「おまえらノックしろよ」とぶっきらぼうに言う柏木。誰も入ってこなかったら何かまたする気だったのかと勘ぐってしまいます。もしかして柏木、ネタキャラとして作られているのではないでしょうか。それはそれで面白いですよね。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第53回のレビュー}–
第53回のレビュー
最終審査5日前。雨がざあざあ降っています。寮のなかでは中澤(濱正悟)が離婚問題で悩んでいます。共に考える舞(福原遥)と倫子(山崎紘菜)と吉田(醍醐虎汰朗)。このとき柏木(目黒蓮)は呼ばれないのですが、あとで知ったらむすっとなるのではないでしょうか。だって宮崎校からの仲間なのに。一緒に円陣組んだ仲間なのに。ちょっとかわいそうな柏木。
「だって愛してるんだから」と離婚したくないと苛立つ中澤に倫子がいつものごとく喝を入れるわけですが、彼女は妙に中澤にこだわっていて、まさか若干好意を頂いているのだろうかと思って見ていたら、そういうわけではなかったようです。
倫子は中澤の悩み(パイロットになりたい自分の夢を妻が理解してくれない、支えてくれない)は男特有のものであり、女はそんな悩みすら持てないことにもやもやを抱えていて、ついに爆発します。
中澤にお茶をぶっかけて倫子は泣きながら語ります。
「だから私は変えたいの! 変えるためにここに来たの 自分の人生を世の中に決められたくない 男も女も関係ない」
それぞれ悩みを抱えながら空を飛ぶというコンセプトなのでしょうけれど、中澤と倫子のセリフが、なんだかやらなきゃいけないことを事務的に入れときましたふうに見えます(令和の朝ドラの三題噺 移住、SDGs、多様性)。
中澤はすぐに気持ちを切り替えて、妻に手紙を書き、話し合うことになります。これ見て、中澤なり倫子に感情移入してうんうんそうだね共感するよと思うものなのでしょうか。仮にそうだとして、そこに発展性はあるでしょうか。なにかが解決するきっかけになるでしょうか。男も女も関係ないというような言葉が最近、あまりにも形骸化されて切実さが感じられなくなっているような気がしてなりません。
最終審査に向けてそれぞれがなぜパイロットになりたいか改めて考える日であり、舞には鶴田(足立英)と刈谷(高杉真宙)から電話があります。舞は、はじめて空を飛んだ日のことを思い出し、自分を立て直すのです。鶴田と刈谷の出番のために、中澤と倫子の話はギュッと凝縮されてしまったとしたらしょうがないという気もします。鶴田と刈谷の登場にはホッとしましたから。
鶴田と刈谷はお好み焼き〈うめづ〉で飲み食いしています。きっと舞に紹介されていつの間にかうめづに通うようになっているのでしょう。
【朝ドラ辞典 再登場(さいとうじょう)】朝ドラはいくつかのパートに分かれていて、そのパート限りの登場情人物もいるが、たまに再登場することがあり、歓迎される。とりわけ最終回近くに前半の登場人物が出てくると盛り上がる。
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–{第54回のレビュー}–
第54回のレビュー
帯広校での最終審査を終えて、舞(福原遥)も柏木(目黒蓮)もクリア。厳しかった大河内教官(吉川晃司)にこれから目指すべきものについて強く決意表明し、帯広課程無事終了。
ホッとした休日、ふたりは公園デートに出かけます。おめかし(あえてこの言葉を選択してみました)した舞はデートを楽しみ、柏木の告白に応えます。展開早っ。
【朝ドラ辞典 展開早い(てんかいはやい)】朝ドラは半年という長い放送期間があり登場人物の半生や人生をたっぷり描けるところがいいところとはいえ長い人生をなぞるには短い。そこでどこかをはしょる必要がある。そこもうちょっと丁寧に時間をかけて描いてほしいと思うところをスキップするように進めてしまうことがある。視聴者は「展開早っ」と思うのである。
厳しいフライト課程でいろんなことを学びながら、友情も育み、初恋(両思い)を経験と、帯広の時間は、舞があとで振り返ったらじつに濃密であったことでしょう。
「これからも一緒に空飛びたいです」と心まで舞い上がる。木曜日なのに週の終わりかと思いました。本来の週の終わりとなる明日、第55回は何があるんやろ……。
さて、第54回は、セリフについて考えてみたいと思います。前述した「一緒に空飛びたいです」は
パイロットとして空を飛ぶことと、舞と柏木が互いを好きになって心が舞いあがっていること、かつ、ふたりで共に歩んでいくことなど、いろいろな意味を重ねることができますね。
このような掛詞は短歌でよく使われます。
舞が貴司(赤楚衛二)から送られた短歌にも「トビウオ」と飛ぶ魚が描かれています。「飛ぶ」「舞いあがる」から連なっていく言葉をところどころに置いていくのは、歌人でもあるメインライター桑原亮子さんらしい趣を感じます。
情緒あるセリフの一方で、ドラマには説明セリフというものが存在します。状況をセリフにして見てる人に情報伝達するためのセリフは退屈なものになりがちで視聴者から「説明セリフ」と見抜かれてしまいます。でもその説明を俳優の力で退屈にしないいい例が、山下教官(板倉チヒロ)です。冒頭、最終審査の段取りを語る彼は、クセの強い、英語を交えた喋り方で、説明セリフを楽しく聞かせてくれました。
もうひとつ、専門的な言葉。これも説明セリフのようなものですが、第55回で、柏木がデート先で馬の話をする場面。馬好きな柏木らしく詳しく話していますが、このとき柏木は実に楽しそうで、彼の性格が滲み出ています。得意なことを話すとき、人はリラックスしています。それを舞が嬉しそうに聞いています。
アイスを買ってきてくれた柏木に「迷ってました?」と聞いて「ちょっと」と応えるところも、柏木が運転中迷子になったことを思い出します。
出会いの面接での馬のうんちくから迷子、アイスまで、柏木と舞のこれまでがデートのなかで振り返りになっているのです。回想場面をいれず、ちょっとしたセリフと行動でそれをやったことを評価したい。
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–{第55回のレビュー}–
第55回のレビュー
帯広校から宮崎校に戻る途中、実家に戻った舞(福原遥)は柏木(目黒蓮)を連れて来ます。
正式におつきあいするならまずご両親に挨拶を、という折り目正しさはわからないでもありません。こういう生真面目な人はいるものです。
ただ、舞が会わせたい人がいるとあらかじめ言わず、お好み焼きを食べたい友達を連れていくとぼかすことが解せません。照れくさいのもわかりますが、長らく実家を離れていた娘が久しぶりに帰ってきたとき、彼氏連れというのはなんだか微妙ではないでしょうか。折り目正しい柏木は、それでいいのでしょうか。
案の定、いきなり「おとうさま」と柏木が言い出し微妙な空気になったので、舞は慌てて「友達」を強調します。もともと、いきなり実家に挨拶ではなく、隣の「うめづ」で本場のお好み焼きを食べることが目的で、お好み焼きを食べて、ついでに両親に挨拶できたらええなあという感じだったのかもしれませんが。
うめづに集まった、浩太(高橋克典)、めぐみ(永作博美)、笠巻(古舘寛治)、結城(葵揚)。彼氏と実家コントみたいなことが繰り広げられ、浩太に認められた柏木は実家に泊まることになります。
順風満帆と思ったら、貴司(赤楚衛二)の存在が柏木を刺激して……。
舞が第54回のデートのときに柏木に話したトビウオの短歌が窓を隔ててすぐのところにいるお隣さんの男の作ったものだったと知ったときの柏木の動揺っぷりの可笑しさ。すぐマウントをとります。貴司は余裕で交わしている感じ。シンプルで愉快な大衆娯楽的なエピソードです。
「水の外にも世界はあると」(自分の知らない舞の世界)知ったトビウオのような気分になっている柏木の顔が面白い。
舞は男たちの気持ちも、父親の気持ちもまったく介さない、のんきキャラになっています。人のことを心配し過ぎててんやわんやになる舞主体の面白さが見たかった気もしますが、本編内スピンオフ的な回と思えばいいかなという気がします。というか、最近の「舞いあがれ!」は乙女ゲームの要素も盛り込もうとしているのではないかと感じます。吉田(醍醐虎汰朗)、柏木、貴司……と舞のまわりに素敵な男子がいっぱいで、誰を選ぶの? というムードがあります。さらに大人の魅力の大河内教官(吉川晃司)も舞を迷わせるひとりのようです。
でも来週・12週は五島で、情緒ある「舞いあがれ!」が戻ってきそうです。
【朝ドラ辞典 三角関係(さんかくかんけい)】朝ドラに限ったことではないが、恋愛エピソードに、ヒロインがふたりの男性の間で心を揺らす三角関係は王道中の王道。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{「舞いあがれ!」作品情報}–
「舞いあがれ!」作品情報
放送予定
2022年10月3日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)
翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)
※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月 、目黒蓮、高杉真宙、長濱ねる、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、鈴木浩介、哀川翔/吉川晃司、高畑淳子 ほか
作
桑原亮子 、嶋田うれ葉、佃 良太
音楽
富貴晴美
語り
さだまさし
主題歌
back number「アイラブユー」
制作統括
熊野律時、管原 浩
プロデューサー
上杉忠嗣 三鬼一希 結城崇史ほか
演出
田中 正、野田雄介、小谷高義、松木健祐 ほか