ドラマ「アトムの童」の魅力を大解剖!ストーリー要素・俳優陣・音楽に大注目

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ゲーム業界を舞台に、若き天才ゲーム開発者と老舗玩具メーカー「アトム玩具」が手を組み、巨大資本の大企業に立ち向かう日曜劇場「アトムの童」。実にいろいろな要素が盛り込まれ、引き込まれる作品となっている。

本記事では、この作品が持つさまざまな“ストーリー”要素・俳優陣・音楽や演出などの魅力について触れていきたい。

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さまざまなストーリー要素

■会社・ゲーム作り・人間関係……あらゆる再生の物語

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「アトムの童」の物語はゼロから何かを作り上げるのではなく、一度いいところまで行った後にどん底に落ちた者たちが、再び立ち上がる“再生の物語”だ。主人公・安積那由他(あづみなゆた・山﨑賢人)は、天才的なゲーム開発者だったが、とある事件をきっかけにゲーム開発から離れていた。一方で老舗玩具メーカー「アトム玩具」は、海外との価格競争などに勝てず、廃業の危機を迎えていた。

社長である父・繁雄(風間杜夫)が倒れ、「アトム玩具」の再建に動く一人娘・富永海(岸井ゆきの)が、ゲーム開発者「ジョン・ドゥ」を探し始めたところから物語は動き出す。実は那由他こそが、ジョン・ドゥであった。もうゲームに関わるつもりはないという那由他に、過去に彼が作ったゲームのバグを見つけたら考えると言われ、無謀にもネットゲームカフェにこもって探し続ける海。

そんな海の姿に、頑なだった那由他が心動かされはじめた矢先、火事で「アトム玩具」の工場が全焼。いよいよ駄目かというところで那由他が合流し、互いの力をかけ合わせることで今までにないゲームを作ることになる。終わりかけた両者が、手を組むことで再生する第1話は熱いものがあった。

再生するのは仕事だけではない。海と繁雄の親子の関係も、那由他ともう1人のジョン・ドゥであった隼人(松下洸平)との友情・ゲーム作りのバディという関係も、物語の中で再生されていった。世界的にもさまざまな困難に見舞われ、何かが思い通りにいかなかったり挫折したりすることも多いであろう現在。どん底から這い上がろうとする主人公たちの姿に、勇気づけられる人は決して少なくないと思う。

■友情の物語

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特に熱いのが、那由他と隼人の友情だ。もともと2人は一緒にゲームを作っていた。序盤で隼人は2人の敵であるはずの興津(オダギリジョー)の会社・サガスに入社しようとしており、それが原因で2人の友情は決裂していた。興津とのいきさつを振り返っておくと、数年に出した新作ゲームの権利を、汚いやり口で興津に奪われていた。営業を担当していた2人の友人・公哉(柳俊太郎)は、そのことを苦に自殺してしまったのだ。実は、隼人がサガスに入ろうとしていたのは、自分が今後作るゲームの権利をすべてサガス名義に渡す代わりに、友達・公哉の死のきっかけになったゲームの権利を返してもらうためだった。

公哉のことに責任を感じてゲーム作りを辞めた那由他も、公哉の死のきっかけになったものを取り戻すために自分の未来を差し出そうとした隼人も、この上なく友達思いないい奴らではないか。真意を知った那由他が隼人を止めようと伝えた言葉は、もはやプロポーズや告白のようで、筆者含め「この作品のヒロイン枠は隼人だったのか」と言う人も続出するほどだった。

「バカだなお前!俺がここにいんだろ。また一緒につくればいい」
「癪だけどさ、俺、一緒につくってる時間が一番楽しいんだよ。俺はもう一回、隼人と一緒につくりたい」
「お前じゃなきゃ駄目なんだよ。アトムに来いよ」
「スマッシュスライド(権利を奪われたゲーム)なんて、サガスにくれてやろうぜ!あれ超えるもっと面白いもん、俺と一緒につくろうぜ」
「公哉が望んでんのも、そういうことだよ」

いまゲームに詳しくない人でも、かつて通ったことがありそうな「ストリートファイターII」でのプレイスタイルを絡めたエピソードにもしびれた。仕事に絡めたストーリーが多い日曜劇場の中でも、この熱い男の友情が絡んでくるところがたまらない。

ぱっと見猪突猛進で突っ走る那由他と的確にアドバイスしつつ調整する隼人、という構図が基本である一方で、第4話で見せた2人のやりとりは印象的だった。仲間のために自分の意見を引っ込めて折れようをする那由他に「俺が我慢できないんだからお前ができるわけねぇよ」「いつもホームラン狙いで思いっきり全力でバット振るような奴がさ、なんでそれでいいとか言うんだよ」「お前の超絶わがまま、俺がとことん付き合ってやるよ」と発破をかけたのだ。

見事に絶妙なバランスで成立している、どちらが欠けても成立しないニコイチっぷりがいい。

■復讐劇・逆転劇

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過去に那由他たちのゲームの権利を奪い、那由他と隼人の友達・公哉が自殺する原因を作り、今もなおあの手この手で彼らの技術を自分のものにしようとたくらむ興津。そのために銀行の人間を操ったり、今度は経産省まで巻き込もうとしている。いくら有名だからって一企業にそんなことできるのか?という疑問は置いておいて、とにかく手強すぎる敵である。

本作はそんな興津への復讐劇・逆転劇という見方もできる。毎回これはもう駄目かもという無理難題をすれすれのところで挽回していくアトム玩具のメンバーたちの様子には勇気づけられるし、大きな力に決して屈しないところにスカッとする。絶対に勝てないと思うような相手に勝つところを見てみたい。興津がギャフンというところ、見たいなぁ。(絶対に言わなさそうではあるが)

■仲間が増えていくRPGであり、成長物語

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第1話の冒頭では、那由他も海も隼人も1人だった。まず海が父親である繁雄を支えることにし、那由他を引き入れ、隼人も取り戻した。そして興津のスパイだった財務顧問・鵜飼(林泰文)もゲームを消すといった妨害を続けていたものの、那由他や海の自分に対する態度や、信頼し合って生き生きと働く社員たちを見て心を改め、海の計らいにより社員として働き続けるようになった。

まるでRPGのように、一緒に冒険(挑戦)する仲間が増えていくのだ。言葉による説得や強い態度ではなく、行動や裏切られながらも信じていると伝えることで相手を味方にしてしまう様子は「北風と太陽」のよう。

そして、登場人物一人ひとりの成長物語でもある。那由他も海も隼人も、アトム玩具の社員たちも、一緒にゲーム作りを目指す過程で自分のやり方を変えてみたり、一度は壊れた関係を修復していったりして成長している。いつか興津も成長してくれるといいのだが……。

役柄・俳優陣の魅力

主演から脇役・敵まで、全体的に役柄と演じる俳優陣が素晴らしいのも「アトムの童」の魅力だ。

■那由他(山﨑賢人)

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本作を見て「山﨑賢人ってこんなにかっこよかったっけ!?」と思った人も多いのではないだろうか。

今までも那由他のような役をやっていなかったわけではないが、このタイミングでの真っ直ぐで熱い役どころやロン毛でラフなビジュアルが、妙に迫力や凄みが加わってハマっている。そして何より、目力に意志の強さが現れていて、作中で他の人物が那由他に感じたように「この人ならやってくれる」という気持ちにさせてくれる。

天才肌で自由人な那由他だが自分の意見を押し通すだけではなく、過去の失敗を振り返って自分から変わろうとしているところもいいし、かっこよさも出てきつつ少年らしさも失わない、今の山﨑賢人が最高にいい。

■隼人(松下洸平)

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昨年~今年にかけて連続ドラマに重要な役柄を演じる機会が増え、確かな演技力と他の人にはない魅力で知名度をグッと上げた印象のある松下洸平。「知ってるワイフ」津山・「最愛」大輝・「やんごとなき一族」健太など、彼本人の誠実で優しい人柄がどこかに反映されたような役柄を演じることが多かった。そのため「敵であるサガスに入社しようとしている」「闇落ち」などに一瞬動揺した人もいるのではないだろうか。それだけに、真意がわかった瞬間にやはり松下洸平っぽい……!と少しだけ思った。

今回も松下洸平らしさのある役だったことに安堵しつつも、いつか彼のイメージを裏切るような悪い役もやってほしいと思う。

■海(岸井ゆきの)

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ヒロイン枠かと思いきや、ヒロインというよりはヒーローのような立ち位置であるのが、岸井ゆきの演じる海だ。幼少期は父が作るおもちゃが大好きだったが、仕事重視で家庭を顧みなかったために母が家を出て行って以来、父に反発して生きてきた。

堅実な銀行員として過ごしていたが、アトム玩具のピンチを目前にして、すべてを投げ打って社長となり、立て直しに奔走する。靴に血がにじむほど歩き回り、泣き言は口にしない。裏切り行為を見つけても、これからは信じていると告げて糾弾しない。

岸井ゆきのは、海のひたむきさをよく表現していると思う。映画『愛がなんだ』『やがて海へと届く』『犬も食わねどチャーリーは笑う』ドラマ「恋せぬふたり」など、一見控えめだが抱えているものがある役が抜群に似合う印象がある。

現時点で社長になって以降の海は、若干馴れ馴れしかったり、発売前のゲームを社外の人間に見せたりと多少疑問な行動はあるものの、人間が出来すぎているためかえって心配になる。あらためて海にクローズアップするような回もあったらうれしい。

■興津(オダギリジョー)

数年前、営業に来た公哉の知識不足に漬け込み、ジョン・ドゥの新作ゲームの権利を奪った張本人であり、今も彼らの技術やアイデアを自分のものにすべく、あらゆる汚い手を使って妨害してくる敵。

キャスト変更による登板であっても、オダギリジョーは興津の血も涙もない感じをうまく表現しており、ハマっていると思う。本作では本当に嫌な奴で、視聴者のうちのほとんどが興津のことを大嫌いになりそうな悪人ぶりである。

一方で思い出すのは昨年「大豆田とわ子と3人の元夫」で彼が演じた小鳥遊だ。小鳥遊は仕事でとわ子を追い詰めながらもプライベートで会っているときにはとわ子の心を和らげ、誰にも言えなかった死んだ友人の話を初めて話せたほどであった。あの作品ではいい部分が見えたため、小鳥遊を好きな人も多かったと思うが、仕事においてはまさに興津のような面もあったのだろうな、とふと思ってしまう。

すでに「そこまでやるか?」というレベルで、諦め悪く那由他たちを陥れようとする興津だが、こうなったらとことん悪いオダギリジョーを見せてほしい。

■爺さんズ(風間杜夫・でんでん・塚地武雅)

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物語に適度なお笑い要素と、この道何十年ものづくりに関わる職人的な一面を見せてくれるのが、那由他が“爺さんズ”と呼ぶ海の父・繁雄と、社歴の長い八重樫・各務だ。この3人、ゲームのキャラクターとしていい味を出している。

繁雄は頑固親父的なところもありながら、たまに話すものづくりへの想いの強さが伝わってくるし、そんな繁雄と那由他・隼人という若手が一緒になってものづくりをする描写が「アトムの童」の醍醐味のひとつだ。

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八重樫・各務は幼少期から海を知っており“姫”呼ばわりするなどコミカルな一面もありつつ、八重樫は鵜飼の不正にいち早く気づいて単独で問い詰めようとするなど、鋭い一面も見せる。結局はアトム玩具という会社が大好きである様子に、好きな会社で長く働く羨ましさも感じる。

物語を盛り立てる、ゲームミュージックのような音楽

ゲーム作りをテーマにした作品というだけあって、BGMがゲームミュージックっぽいところもポイントだ。

メインテーマ・日常のほんわかしたひとコマを切り取ったシーン・問題が勃発するシーン・敵に立ち向かうべく決意を固めるシーンなど、それぞれにぴったりなゲーム感溢れる音楽が流れる。

特に物語が盛り上がるシーンでかかる音楽が気持ちをより高揚させてくれ、ドラマを楽しむと同時に、大好きなゲームをプレイしているときのワクワク感をも思い出させてくれる。音楽を担当する大間々昂さんは、今期放送のアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」でも音楽を担当しており、話題作2作を同時に盛り上げている。

プロデューサーは「ぎぼむす」「つましょー」「凪のお暇」などを担当

プロデューサーの中井芳彦さんは、「義母と娘のブルース」「妻、小学生になる」「凪のお暇」など、心理描写や人間関係の描き方が秀逸な作品を手掛けてきた。

本作でも、登場人物一人ひとりの心の動きが丁寧に描かれている。物語の後半戦に向け、どんなドラマを描いてくれるのか、期待が高まる。

後半に向け、さらなるストーリーの盛り上がりに期待

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これから後半に向け、さらに盛り上がっていくと思われる「アトムの童」。本記事で注目したさまざまなストーリーがどんな結末を迎えるのか、この最高の俳優陣がどんな演技を見せてくれるのか。今後の展開も楽しみだ。

(文:ぐみ)

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–{「アトムの童(こ)」作品情報}–

「アトムの童(こ)」作品情報

出演
山崎賢人
松下洸平
岸井ゆきの
岡部 大(ハナコ)
馬場徹
柳俊太郎
六角慎司
玄理
飯沼愛
戸田菜穂
皆川猿時
塚地武雅(ドランクドラゴン)
でんでん
風間杜夫
オダギリジョー
神田伯山

脚本
神森万里江

音楽
大間々昂

プロデューサー
中井芳彦
益田千愛

演出
岡本伸吾
山室大輔
大内舞子
多胡由章

制作著作
TBS