<アトムの童(こ)>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

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山﨑賢人主演、岸井ゆきのや松下洸平が出演する日曜劇場「アトムの童(こ)」が、2022年10月16日より放送を開始。

山﨑賢人演じる安積那由他(あづみ・なゆた)は、凄腕の若きゲームクリエイター。とある事件をきっかけに開発から離れているが、企業や販売元を通さずに個人で制作していたスタイルは「ゲーム業界のバンクシー」「インディー」と呼ばれ、知る人ぞ知る存在だった。そんな彼を探しているのが、経営崖っぷちの老舗おもちゃメーカー・アトム。ゲーム業界の覇権争いを描くドラマが、始まる。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・最終回ストーリー&レビュー

・「アトムの童(こ)」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー


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安積那由他(山﨑賢人)は大手企業や販売元を介さず個人でゲームを制作する、通称「インディー」と呼ばれる若き天才ゲーム開発者。「ジョン・ドゥ」という名前で活動し、誰もその素顔を知らないことから「ゲーム業界のバンクシー」と称される存在。しかし、現在は自動車整備工場で働き、ゲーム開発からは離れ静かに暮らしていた。

そんな中、老舗玩具メーカーの「アトム玩具」は海外との価格競争などの影響で、廃業の危機を迎えていた。そこで一発逆転の経営再建をはかり、ゲーム制作へ参入すべく、「ジョン・ドゥ」を探し始める。資金もノウハウも持たないアトムは、藁にも縋る思いで「ジョン・ドゥ」とコンタクトを取ろうと奔走するが…。

第1話のレビュー

任天堂からファミリーコンピュータ(通称ファミコン)が発売されたのが、1983年。SONYからプレイステーション(通称プレステ)が発売されたのが、1994年。冒頭から余談で恐縮だけれど、1989年生まれの筆者にとって、幼少期の思い出を語るのにゲームは切っても切り離せない。

ファミコンで「じゃりン子チエ」のゲームをやったのが、もっとも古い記憶。「聖剣伝説」「ぷよぷよ」も狂ったようにやりまくった。プレステでは「クラッシュ・バンディクーシリーズ」「チョコボの不思議なダンジョン」「テイルズオブシリーズ」「パラッパラッパー」をやり込みまくり……。ああ、書いていて懐かしさが込み上げてくる!

本作で山崎賢人が演じる那由多は、個人でゲームを開発する「インディー開発者」。素性は知られておらず、ゲーム業界のバンクシーとも言われている。

彼がゲームや玩具にそそぐ愛情も並大抵のものではない。老舗玩具メーカー・アトムの娘である海(岸井ゆきの)と出会ったときも、彼は「俺は夢を買ってるんです。カプセルトイってのは、一期一会なんだよ」と熱弁を古いながら、ネッキーのガチャガチャに興じていた(そう、このドラマにはファミ通でお馴染みのネッキーが出てくる!)。

作中におけるネッキーは、アトムの看板キャラクター。アトムの作る玩具に対し、那由多は「作り手の熱をこっちも感じて、ワクワクする」と評するほどの熱狂的ファンなのである。

そんな那由多だが、現在はゲーム開発から離れ、知り合いのツテをたどり車の整備工場で仕事をしている。ネットカフェの店長である知り合いは、那由多がふたたびゲーム業界へ戻ることを熱望しているが……「俺はゲームはしない」の一点張りを崩さない。

那由多は菅生隼人(松下洸平)、緒方公哉(柳俊太郎)とともに、「ジョン・ドゥ」名義で伝説的ゲームを世に残した過去がある。しかし、大手IT企業「SAGAS」の興津社長(オダギリジョー)との間に、何らかの揉め事が。

おそらく、ジョン・ドゥが作ったゲームの権利が興津に奪われ、責任を感じた公哉は自死。それをきっかけに、那由多と隼人も袂を分かつことになったと推測できる。

日曜劇場に初主演となら山崎賢人も素晴らしいが、これまでとは少々違った印象の演技をしている松下洸平にも注目したい。「最愛」(TBS)で演じていた大ちゃん、「やんごとなき一族」(フジテレビ)で演じていた健太など、彼が近年演じてきた役柄とは一味違っている。

メガネをかけた鋭利なイメージは、たびたび挟まれる回想シーンで見られる隼人とは別人のようだ。いったい、那由多・隼人の共同名義であるジョン・ドゥには、何があったのか。那由多がゲーム開発から離れていた6年の溝は、想像よりも深そうである。

そんな那由多を、ふたたびゲーム業界に引き戻したのは、父の代わりにアトムを継ぐことになった海の熱意だった。

銀行で働く海にとって、自身の実家である玩具メーカー・アトムは歓迎できない存在だった。他では作れない唯一のおもちゃ作りに精魂を込める父は、その過度な情熱により妻に愛想を尽かされてしまう。

アトムの看板キャラクター・ネッキーの生みの親である海にとって、父の背中は尊敬の対象から軽蔑のそれに成り代わってしまった。彼女からしたら、家族を壊してまでおもちゃを作り続けることにどれだけの意味があるのか、はかりかねてしまったのだろう。

時代の流れとともに、アトムの業績は悪化する一方。おもちゃやゲーム業界も進歩し続けるなかで、カプセルトイやプラモデル、ソフビ人形のみで経営を続けるのは、確かに厳しいのかもしれない。社長である父が脳梗塞で倒れ、アトム本社が火事になってしまった事件も手伝い、海は会社を畳む方向で動こうとする。

そのタイミングで、渡りに船というべきか、興津が社長を務める大手IT企業「SAGAS」がアトムを買収したいと申し出てきた。アトムが特許を取得している独自の技術を使えば、これまでにない新たなゲーム開発ができる。興津はその技術欲しさだけで、アトムに声をかけてきたのだ。

これ以上ない話に飛び乗ろうとする海だが……。那由多が語る、アトム製のおもちゃに対する愛情、そして父親の叫びに心を動かされ、一転、アトムを継ぐことに決める。

「おもちゃなんかなくたって、誰も困らねえ」

「でも、あればワクワクするし、笑顔になる。俺たちはそういうものに、人生かけてきたんだからよ」

おもちゃやゲームは決して、不要不急なんかじゃない。コロナ禍によって世界は様変わりしたが、各国において芸術やエンタメ業界への対応は二分した。あらためて、自国の姿勢を問われるセリフだとも感じられる。

アトムを再興させるため、海が目をつけたのはゲーム開発事業。伝説のインディー開発者であるジョン・ドゥとコンタクトを取り、アトムのゲーム開発に参加してもらおうと計画を立てる。

表舞台にはいないジョン・ドゥを引っ張り出すには、たった一作だけ世に残っているゲームをやり尽くし、バグを探して報告するしかない。海はネットカフェに陣取りながら必死でバグ探しに打ち込む。

那由多が一言「俺がジョン・ドゥだ」と言えば済む話だが、最後の最後まで、海がバグを見つけ出す瞬間まで名乗りを上げることはなかった。彼女の熱意と根性を見込み、リスペクトしたうえでの判断だったのかもしれない。

彼女の姿を見て奮起した那由多は、6年間の沈黙を破り、ふたたびゲーム業界へ戻ってくる。

「アイデアで勝つところを、俺が見せてやる!」

大手で、資金も人材も潤沢にある環境じゃなければ、面白いゲームは作れないのか? そうじゃない。少数精鋭でお金なんかかけなくても、アイデアで面白いゲームは作れる。それを証明するため、そして、いわゆる“過去の雪辱”を晴らすために、那由多はアトムのゲーム制作に手を貸すことを決めた。

大手 VS 老舗の覇権争いが、ここから始まるのだ。

少々、不穏な予感をさせるのが、隼人の動向である。那由多と同じくジョン・ドゥの名義を持つ彼は、興津と接触した。隼人もまたSAGASと手を組み、ゲーム開発に乗り出すのだとしたら……。元は仲間だった二人が、全面的に対決することになる。

1話から見どころ満載。何とも面白くなりそうだ。

※この記事は「アトムの童(こ)」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー


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新生「アトム玩具」がついに動き出した。ところが、那由他(山﨑賢人)から一向にゲームのアイデアが出てこない。社長の海(岸井ゆきの)は「ジョン・ドゥ」再結成を促すが、那由他は頑なに拒否する。

新たなパートナーを探すことになった那由他は、海に連れられゲームジャムのイベントに参加。その会場で隼人(松下洸平)とばったり会い…。

二人の態度に深い溝を感じた海は、ネットゲームカフェの森田(岡部大)を訪ねる。森田の口から語られたのは、那由他と隼人と公哉(栁俊太郎)の関係、そして興津(オダギリジョー)との因縁だった。

第2話のレビュー

深い優しさゆえに、裏切りとしか思えない行動に出る。人間は不可思議で、だからこそ愛おしく思えてならない。那由他(山﨑賢人)と隼人(松下洸平)のやりとりを見ていると、そう痛感する。

興津社長(オダギリジョー)との確執から、責任をとった公哉(柳俊太郎)が自死。この壮絶な現実を前にして、那由他と隼人が選んだ道はそれぞれ真逆だった。

那由他は、公哉への償いのためにゲーム制作をやめた。反して、隼人は因縁の敵・SAGASに入社してまでゲーム制作を続けた。やめた者と続けた者。二人の間にできた溝は、どこまでも深いように思われた。

なぜ、隼人はSAGASに入社したのか? 那由他だけではなく、アトム玩具の社長となった海(岸井ゆきの)にとっても、それは謎に思えた。多くの視聴者にとってもそうだったろう。何か意図があるはず、と信じたい気持ちと、どう見ても「地位や名誉や金のために」敵の懐に入ろうとしているようにしか見えない現実。相反する両面が迫ってくる。

隼人は、責任の重さゆえに自死した公哉の名誉を晴らすため、そして那由他自身の将来を慮ったゆえに、SAGASに身を捧げるような真似をしたのだ。

隼人が「ジョン・ドゥ」としてSAGASと契約すれば、SAGASに盗まれたゲーム「スマッシュスライド」を取り戻せる。しかし、その代わりに、隼人が企画・制作するゲームは今後すべてSAGASの名義となる。

隼人の行為は決して裏切りではない、と多くの視聴者が予想していたはずだが、まさかここまで自己犠牲的だったとは……。深すぎる優しさのように思うが、自由奔放に作りたいゲームを作る那由他と隼人のバランスは、この思いやりゆえに成り立っていたとも言えるのかもしれない。

隼人の意図に気付いた那由他は、契約直前の隼人をつかまえ、必死に説得する。

「バカだな、お前。俺がここにいんだろ? また一緒に作ればいい」

「あれ超える、もっと面白いもん、俺と一緒に作ろうぜ」

ここまで来て後戻りはできない、と拒否する隼人と、必死で言葉を尽くす那由他。二人の緊張と不安定な関係性が、少しだけ揺れる画角に表れているように見えた。

一度はSAGASの社内へ戻ってしまった隼人だが……。那由他の言葉が届いたのだろう。過去、一緒に対戦していたゲーセンで再会する二人。あの頃に戻ったように、軽妙なやりとりをしながらゲームをする二人の姿は、まさに「エモい」「少年漫画的熱さ」に満ちていた。

晴れてアトム玩具に仲間入りすることになった隼人。一難去ってまた一難というやつで、新しくやってきた財務顧問が新たな“災厄”を持ち込んできそうだ。

しかし、今はまだジョン・ドゥの復活と新生・アトム玩具の誕生を喜びたい。

※この記事は「アトムの童(こ)」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー


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那由他(山﨑賢人)と隼人(松下洸平)が「アトム玩具」でゲーム作りを始めて10カ月。繁雄(風間杜夫)たちがデザインしたキャラクターはPC画面の中でイキイキと動き出し、経営再建に向け順調な滑り出しをうかがわせた。

ところがその矢先、やよい銀行の小山田(皆川猿時)から突然、融資金の即時返金を迫られる。期限は1カ月。従業員総出の資金集めが始まる。

そんな折、パブリッシャーの晶(玄理)が、投資家とゲームクリエイターをつなぐ大規模プレゼン大会の参加を提案。那由他たちはラストチャンスに賭けるが…!?

第3話のレビュー

まさか……としか言えない。

海(岸井ゆきの)が新社長となったアトム玩具の財務顧問・鵜飼(林泰文)が、ここまでスパイらしい動きをするとは、予想していなかった。ドラマ公式サイトのあらすじや相関図にさえ名前のない彼が、徹底的にアトム玩具を潰す立ち回りをしている。「鵜飼やめろ」タグができても、おかしくない。

興津社長(オダギリジョー)の息がかかった、やよい銀行の小山田(皆川猿時)による策略で、アトム玩具は倒産の危機に。1ヶ月以内に5000万円を返済できなければ、アトム玩具の社屋・土地・技術特許すべてがSAGASのものになってしまうのだ!

小山田がそんなことをするのは、定年後にSAGASの役員に就任し、悠々自適な老後ライフを送るため。

そして、おそらく鵜飼も、私立学校に入る娘の学費のために悪事に手を染めている。

二人を並列にしてしまったら鵜飼に申し訳ないが、自己保身のためにひとつの会社の未来を潰そうとしている点では同じだ。

次から次へとやってくる困難に立ち向かうため、那由他(山﨑賢人)と隼人(松下洸平)はゲーム制作以外にも、資金調達のため営業にまわることを決める。過去、金策にあえいだ親友・公哉を亡くした経験から、しっかり学んでいることを示唆していた。

隼人と親交のあるパブリッシャー・晶(玄理)の教えのもと、エレベーターピッチ(一昔前に流行した、エレベーター内の数分で投資家にプレゼンする手法)の練習をしたり、クリエイターと投資家を繋ぐプレゼン大会「GAME TO MATCH」に参加したり。

努力の甲斐あって、インドの投資家と縁を繋ぐことができたが……。

なんと、鵜飼がゲームのデータを全消去してしまったところで、3話は終わる。

いくら家族のためだからって、こうも出世のために人の心をなくせるものだろうか? 4話の予告を見る限り、那由他たちは消えたデータの復旧を急いでいるが、重ねての消去を企んでいる様子。頼むから……頼むから誰か、鵜飼の裏切りに気づいて告発してほしい!

那由他が「GAME TO MATCH」会場で、興津社長からの質問に対し「俺はアトムのファンなんです」と宣言したシーン。とくに、ものづくりに携わる方たちの心に、ジワッと沁みるセリフだったのではないだろうか。ファンだからこそ、身を粉にできるのだ。那由他たちのゲーム作りに注ぐ情熱を削ぐことだけは、絶対にしないでほしい。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー


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完成を目前にしていたアトム玩具のゲームだったが、データが消える事件が発生する。

10日後までにゲームを復元できなければ、インド人投資家へのプレゼンに間に合わず、融資は到底受けられない。時間が迫る中、那由他(山﨑賢人)らは急ピッチで復元を試みるが、作業の進め方をめぐって隼人(松下洸平)と意見が割れ口論になってしまう。空気の悪い社内を社長としてまとめきれず、海(岸井ゆきの)は焦燥にかられていた。

そんな中、興津(オダギリジョー)は次なる一手を進めており…。

第4話のレビュー

果たして、鵜飼(林泰文)はアトム玩具を裏切っているのか、いないのか?

長らく争点だったこの問題に、終止符が打たれる。

ゲーム完成間近で消えたデータ。5000万返済問題を解決してくれるかもしれないインドの投資家・ラマが来日するのは10日後。それまでに、なんとか復旧しなければいけない。

幸いにもプログラミングデータは残っていたので、1ヶ月ほど特急で作業をすれば復旧できる見込みはあるが、それじゃ間に合わない……。苦境に立たされたアトムの面々たち。那由他(山﨑賢人)が提案したのは外注だった。

この件でふたたび那由他と隼人(松下洸平)は意見の不一致でケンカをしてしまう(本当に、ケンカの多いふたりだ)。

より良いゲームにしたい。その気持ちは同じくしているが、目先の問題を解決するのにいっぱいいっぱいになる那由他と、アトム玩具らしいゲーム作りにこだわりたい隼人。ケンカが多いふたりだけど、互いに欠けてしまっては上手くいかないものなのだろう。

「俺たちのゲームなんだし、本当は誰にも触らせたくない!」などと本音+ワガママをぶちまけるあたり、ああ、那由他らしい。この回終盤で隼人が「トラブル最高!」と言うセリフがあるが、まさに、トラブルがエンジンのような役割をしている。

鵜飼がゲームデータを消してしまったばっかりに、那由他を含め、海(岸井ゆきの)たちも大変な思いをさせられた。しかし、このトラブルがあったからこそ、よりアトムらしいゲームができたとも言える。よりチームとしての結束が固まった面もあるだろう。

小山田(皆川猿時)からふたたび「ゲームを消せ」と命令を受けた鵜飼だが、どんな窮地に立たされても諦めないアトム玩具の面々を見るうちに、感化されたようだ。

最後には上司を裏切り、アトム側についた。

土下座までして謝ってくれたから良いものの、よく鵜飼のことをひとつも責めずに全肯定できますね、アトム玩具のみなさん……。何の釣りでもない、正真正銘の「アットホームなホワイト企業」じゃないですか。求人募集があったら応募したいです。

投資家・ラマからも無事に支援を受けることができ、一件落着。

ひとつだけ、裏切られた小山田が逆上し、鵜飼が僻地に飛ばされないかだけが心配。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー


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「アトム玩具」初のゲームがようやく完成した。販売に向けて早速、配信サイトに申請を出すが、どのサイトからも審査で弾かれてしまう。

理由がわからず途方に暮れる那由他(山﨑賢人)たちに、興津(オダギリジョー)は「SAGAS」が運営する世界最大のゲーム配信サイトで新作ゲームを扱わないかと持ち掛ける。

興津の力など借りたくない那由他たちは、自社のホームページで細々と配信を開始。アトムワールド体験会のイベントも開いて販促用のゲッチャリロボを配るが、ゲームの売り上げは一向に伸びない。それどころか「SAGAS」の力の大きさを痛感するばかりだ。

万策尽きた「アトム玩具」…。そこに、一通の問合せメールが届く。

第5話のレビュー

ゲーム業界の覇権争いを描いた本ドラマも、折り返し地点。次回から新章のスタートだ。日曜劇場らしい壮大なスケールと、続きが気になるハラハラドキドキ感には、毎回と言っていいほど目が離せなくなる。

そして、このドラマをみていると、どうしても「六本木クラス」を思い出してしまうのは筆者だけだろうか?

大切な人を亡くした主人公、復讐するために宿敵を追う構図、そこから生まれる悲喜交々……。「六本木クラス」で竹内涼真が演じていた新と、「アトムの童」で山﨑賢人が演じる那由他。背景は違っても、追っているもの、叶えたい夢はリンクして見える瞬間がある。どちらも、仲間に対する情に厚い点も同じだ。

そうなってくると、やはり、このドラマで興津社長(オダギリジョー)の土下座が見られるのか、気になってしまう。

アトム玩具が製作したゲーム「アトムワールド」がついに完成。さっそくゲーム配信サイトで売り出せるよう申請するが、ことごとく審査が通らない。やはり、それも興津社長の根回しによるものだった。

アトム玩具の公式SNSやサイトで宣伝・販売しようにも、効果は薄い。

さて、どうするべきか?

そこはさすがのアトム玩具、とでも言おうか。おもちゃ会社らしい売り方を押し出したことで、口コミから一気に火がついた。

ゲームのメインキャラクターである「ゲッチャリロボ」をプラモデルの要領で販売し、ユーザーがオリジナルのロボを作って、ゲーム内で使用できる工夫を施したのだ。

かつて那由他が興津社長に宣言したように、まさにアイデアで勝負に出たのである。

惜しくも「ジャパンゲーム大賞(ゲーム界のアカデミー賞のようなもの)」の受賞は逃してしまったが、代わりに「アジアゲームアワードベストワン」に選ばれた。

海外ユーザーの圧倒的な支持を得ることに成功したアトムワールドは、いずれ日本に逆輸入され、さらなるブームを生むことになるだろう。

興津社長からのしつこい嫌がらせに耐えつつも、「大事なのは数字ではなく、アイデアと熱量」を姿勢で示してみせたアトム玩具の面々。那由他、隼人(松下洸平)、海(岸井ゆきの)で、ともに「ありがとう」と繰り返し伝え合うシーンには、グッと込み上げるものがあった。

しかし。

最後の最後で、小山田(皆川猿時)の策略が。

なんと、アトム玩具はSAGASに買収されてしまったのだ。

次回からの新章は、社屋も土地も奪われたアトム玩具の面々たちが、どう再起していくかを描くことになるのだろう。ガラッと色合いが変わること必至ではあるが、ここまで見守ってきた視聴者たちはすでに、彼らの「アイデアと熱量」の凄さを知っている。

きっと彼らはやってくれる。私たちに、興津社長の「悔しがる顔」を見せてくれるはずだ。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー


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SAGASにより買収されてしまったアトム玩具。
それから一年の月日がたち―。
那由他(山﨑賢人)をはじめとする元社員たちは今、何を思うのか。

第6話のレビュー

興津社長(オダギリジョー)率いるSAGASに買収されたアトム玩具。那由他(山﨑賢人)は自動車整備をしながら学童で働き、隼人(松下洸平)は自動車開発の会社へ、海(岸井ゆきの)は契約社員として銀行に戻っていた。

バラバラになってしまったアトム玩具の面々。しかし、ここから日曜劇場らしい、華麗すぎる復活劇が始まる!

転換点となったのは、那由他がアルバイトをしている学童にて、「シリアスゲーム」の可能性に気づいたことだった。

学童に通う子どもの一人・翔太(岩川晴)と、その母親・美佐子(加藤ローサ)が、「学童から自宅までの帰り道が危ない」と悩んでいることを知った那由他。

ゲームで社会問題を解決するシリアスゲームによって、子どもたちの安全を守ることができるはず。そう考えた那由他は、さっそく隼人に声をかけ、「登下校ゲーム」作りに着手する。

このドラマを見守ってきた方々なら、この辺りでジワジワと心配になってきたはず。「じいさんズは果たして、無事なのか……?」と。ご安心を。海の父親・繁雄(風間杜夫)も、各務(塚地武雅)も、八重樫(でんでん)も、みんな元気にカムバックし、ゲーム作りに合流した。

PTAからの猛反対にあうなど障害はあったが、学童の親子たちから絶賛を受ける。最終的に登下校ゲームは5000万円で保険会社が買い取ってくれ、それを元手に那由他たちはアトム玩具の跡地を取り戻すことができた!

海は、自分が那由他・隼人に声をかけアトム玩具に入ってもらったのに、結果的にSAGASに買収されてしまったことに責任を感じていた。

社長になったはいいものの、不甲斐なく終わってしまい、罪の意識を持っていたのだろう。ふたたびアトムの面々でゲーム作りをしたい、と望んではいても、罪悪感が邪魔をして口にはできなかったのだ。

しかし、那由他たちがアトムを復活させ、新会社「アトムの童」が爆誕! 華麗すぎるタイトルの回収に、さすが日曜劇場だ……と見応えを感じた方も多いはず。

今後は、那由他がエンタメ系ゲームを、隼人がシリアスゲームを開発する役割分担で進んでいく。この展開を興津社長が黙って見ているはずはなく、またもや何かしらの妨害をしてくるだろうが……。

ひとまずは、アトムの面々が再結集したことを喜びたい。

そして、サラッといなかったことにされている鵜飼(林泰文)もカムバックしてくれることを、祈っている。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー


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「アトム玩具」が「アトムの童」に社名を変え、新たなスタートを切って数年の月日が経つ。従業員も増え、会社はかつての活気を取り戻していた。

そんな中、那由他(山﨑賢人)と隼人(松下洸平)はゲームクリエイターの交流会での出会いを通し、次のステージを見据えるように。その思いを知った海(岸井ゆきの)は社長として、複雑な気持ちを抱えていた。

一方、興津(オダギリジョー)は「SAGAS」の株が大財閥の「宮沢ファミリー オフィス」に大量取得され始めたことに危機感を覚えていた。そこに、同社の社長・宮沢沙織(麻生祐未)が突然やって来る。

「宮沢ファミリーオフィス」の影響力は「アトムの童」にも忍び寄っていて…。

第7話のレビュー

目には目を、歯には歯を。因果応報や自業自得、といった言葉があるが、自分がやったことは確実に返ってくるのが世の中というもの。興津社長(オダギリジョー)の姿を見て、そんなことを考えてしまった。

新会社「アトムの童」も軌道に乗り、那由他(山﨑賢人)や隼人(松下洸平)を筆頭にシリアスゲームも好調。海(岸井ゆきの)率いる一同は、新しい社員も増え、まさに順風満帆と言えた。

そんななか、那由他と隼人はイベントにて、シアトルからやってきた技術者・ティムに出会う。

人の表情から感情を読み取り数値化できる技術をプレゼンしていたティム。この技術を使えば、また新しいゲームが作れるかもしれない。「シアトルで一緒に会社をやらないか」とティムに誘われ、那由他と隼人は新しいステージに進むことを決めた。

海たちも、惜しい気持ちはあれど、「ワクワクを大事にする」アトムのポリシーにのっとって、二人の選択を応援。

しかし、ここでまたもや、興津が場を引っ掻きまわす。

投資会社・宮沢ファミリーオフィスが、SAGASの株を5%買い占めたことが報道された。これはつまり、宮沢ファミリーオフィスがSAGASを買収しようとしている事実を示す。

元はアトム玩具が保有していた特許技術「アトムロイド」をはじめ、SAGASが保有している技術を市場開放させることが目的だ。

宮沢ファミリーオフィスの言い分は、もっともなようにも聞こえる。使いこなせない技術を持っていても、宝の持ち腐れではあるだろう。

しかし、誰でもフリーに技術を使えるようにしてしまったら、意図しない方面で悪用される恐れもある。興津は興津で、彼の正義にしたがって動いているのだ。

「正義の逆には、また別の正義がある」とはよく言ったもの。このドラマでの分かりやすい悪役は興津だが、彼の言動だって見方を変えれば正論なのである。

このままではSAGASは買収され、アトムロイドもフリー技術になってしまう。

それを阻止するためには、株主総会までに「e-sports」用の新しいゲームデモ映像を作成し、株主たちにアピールしなければならない。SAGASのゲーム事業がいかに凄いかを、見せつけねばならないのだ。

そのためには、那由他たちの助けが必要だ。土下座こそしなかったものの、「助けてほしい」と率直な物言いでヘルプを求めにきた興津。那由他以外の面々は、もちろん拒否の一択だが……。

3日後にシアトル行きが決まっている那由他と隼人。なんと、那由他は「アトムのファンだから」「最高の形でおもちゃ(作り)を再開してほしい」といった理由で、SAGASに手を貸すことを決めてしまった。

契約書もなしに興津が仄めかした「上手くいったらアトムロイドの技術は返す」の口約束を、信じてしまった那由他。まさか、公哉(柳俊太郎)の件を忘れたわけではないだろうが、新しい技術を前にして、これまでにないゲームの可能性に衝動がおさえられなかったのだろう。

隼人も言っていたように、やっていることは、過去の隼人と同じである。

自分を犠牲にして、アトムを助けようとしている那由他。

次のステージへ足を進める隼人。

またもや、ジョン・ドゥが決裂しようとしている。

次回から最終章。前後編にて、今後の展開が描かれる。

毎回、なんとも日曜劇場らしい盛り上がりを見せてくれる「アトムの童」。このまま最終回まで突っ走っていくのだろう。

ひっそりと胸を撫で下ろしているのは、鵜飼(林泰文)が投資コンサル会社を立ち上げていたことだ。しれっと存在がなかったことにされている……と心配していたが、彼は彼で新しいステージに進んでいた。

またもや行く先を分かちそうになっている那由他と隼人。ここまで見守ってきた視聴者としては、その道がまた合流してくれる展開を待ち侘びている。

※この記事は「アトムの童(こ)」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー


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「宮沢ファミリーオフィス」による「SAGAS」の買収問題が浮上する中、「アトムの童」の技術を取り返すためにも、宿敵・興津(オダギリジョー)のもとでゲーム開発をすることを決めた那由他(山﨑賢人)。

隼人(松下洸平)は一人シアトルへ向かうことを決め、二人の溝は深まり、決別することとなった。

「SAGAS」の経営存続を賭けた株主総会までに、新作ゲームの開発に取り組む那由他だが、期日が迫る中、アイデアが浮かばず行きづまってしまう。

不利な状況を察した興津は、最後の頼みの綱である、ある男(山﨑努)の元へ向かうが…。
そんな中、運命の株主総会が開幕する。

第8話のレビュー

完全に対立してしまった、那由他(山﨑賢人)と隼人(松下洸平)。

SAGASの買収を阻止するためには、株主の一人・伊原(山崎努)が保有している委任状を回収する必要がある。しかし、なかなか首を縦に振らない伊原。

彼は、那由他たちが作ったシリアスゲームに惚れ込んでいる。そこに付け込んだ宮沢ファミリーオフィスは、隼人を伊原の元へ送り込んだ。それが功を奏し、伊原は宮沢側に傾きつつある。

SAGAS側についた那由他と、宮沢側についた隼人。元はジョン・ドゥとして、「アトムの童」の社員として手を組んできた二人が、またもや対立関係になってしまったのだ。

この回で最も注目したいのは、那由他と興津(オダギリジョー)がともにゲームで遊ぶシーンだろう。

なんと、あの有名なゲーム「ぷよぷよ」を「聞いたことはある」と言ってのけた興津。那由他の圧勝かと思いきや、意外と接戦である。伊達にゲーム事業に手を出してはいない、ということか。

ゲームを間に挟み、お互いの本音を少しばかり出し合う那由他と興津。那由他にとって、興津は「金儲けのためにゲームを奪った悪党」であり、公哉(柳俊太郎)の敵でもある。

しかし、興津には興津の正義があるのだ。日本の優秀な技術は、そのほとんどを中小企業が保有している。海外の大手企業に奪われてしまわないよう、守るために作ったのがSAGASだそうだ。

興津のやってきたことは許されない。やって良いことを悪いことがあるし、言葉選びも杜撰だ。おまけに性格も悪い。本当は、興津だって善人だったのだ……と言うつもりはないが、立場や見方によって、人がやっていることは善にも悪にもなる。それは事実だろう。

株主総会当日。

なんと、伊原が所有していた委任状は、宮沢の元へ渡ってしまった。保有株に大差をつけられてしまったSAGAS。逆転のためには、株主総会に出席する全員の票を得なければならない。

すべては、那由他のプレゼンにかかっている。

アトムロイドの技術をデジタルに移行させるのに手間取り、ゲーム開発は思うように進んでいなかったものの、ギリギリのところで繁雄(風間杜夫)たちの手を借りることができた。

果たして、株主たちの心を掴むことはできるのか?

そんな大事な場面で、何と興津が警察に連行されてしまう。「顧客データの不正利用」を疑われてのことだが、これはどうやら“飼い犬に手を噛まれた”可能性が高そうだ。

興津不在のプレゼンで、那由他は何を語るのか。

宮沢ファミリーオフィス側で役割を終えた隼人は、どう動くのか?

答えは最終回に持ち越される。

※この記事は「アトムの童(こ)」の各話を1つにまとめたものです。

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–{最終回ストーリー&レビュー}–

最終回ストーリー&レビュー

最終回のストーリー


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興津(オダギリジョー)が警察に連行され、株主総会は大混乱に。代表不在で有力な委任状も奪われ、勝つ見込みがない。劣勢を強いられる中、壇上に上がる那由他(山﨑賢人)だがー。

これまでに様々な局面で仲間と共に闘ってきた那由他。ゲーム業界の未来をかけた大勝負はついにラストステージへ。

軍配はどちらに上がるかー

最終回のレビュー

SAGASの未来は、那由他(山﨑賢人)のプレゼンにかかっている。任意同行を求められた興津(オダギリジョー)の命を受け、新しいゲーム「e-parkour journey」のアピールをすべく、予定どおりに株主総会を進める那由他。

ここにいる株主たちの、過半数の賛同を得なければ、SAGASの経営陣も総とっかえになってしまう責任も負わされた。いくらアトムのためとはいえ、背負わされた荷物が重すぎるのでは……。

場の空気が宮沢ファミリーオフィス側に流れようとするなか、それを一変させたのは伊原(山崎 努)だった。

車椅子に乗り、隼人(松下洸平)に連れられてきた彼の存在感は、まさに大御所のなかの大御所。実際の撮影現場も、さぞ緊張感があったのではないだろうか。

伊原は那由他に問う。アトムロイドのような素晴らしい技術は、ゲームなんかじゃなく、もっとほかに活用の場があるのではないか。

ゲームに対する世間の目は、まだまだ厳しい。仕事やスポーツとして捉える視点はまだまだ少なく、「子どもの遊び」の範疇を出ない。

このドラマで描かれているように、「シリアスゲーム」として社会問題を解決に導ける可能性や、e-sportsとして新たなエンターテイメントを生める余地だって、あるにも関わらず。

しかし、那由他は言う。ゲームにこそ、世界を変える力がある。ゲームのなかでは、年齢も性別も体格のハンデも関係ない。誰しもが平等になれる世界なのだ、と。

伊原に「あの男、何者だ」と言わせた那由他の熱きプレゼンのおかげで、宮沢ファミリーオフィスは退き、SAGASを守ることができた。隼人は、伊原に直接、那由他のプレゼンを聞かせるために暗躍していたのである。

「もっと面白いゲームを作ります」と言って握手した那由他と伊原の姿。裏切りがバレて捕まった小山田(皆川猿時)。そして1話から現在までのダイジェストをまとめた回想シーン。きっと、ここまで見守ってきた視聴者全員に、この映画のような重厚さが胸に迫ったことだろう。

那由他はSAGASに残り、隼人はシアトルへ飛んだ。結果的にはバラバラになってしまったが、離れていてもジョン・ドゥはジョン・ドゥである。

描かれないふたりの今後に思いを馳せつつ、少しでも国内におけるゲームの地位が向上することを、祈るばかりだ。

※この記事は「アトムの童(こ)」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「アトムの童(こ)」作品情報}–

「アトムの童(こ)」作品情報

出演
山崎賢人
松下洸平
岸井ゆきの
岡部 大(ハナコ)
馬場徹
柳俊太郎
六角慎司
玄理
飯沼愛
戸田菜穂
皆川猿時
塚地武雅(ドランクドラゴン)
でんでん
風間杜夫
オダギリジョー
神田伯山

脚本
神森万里江

音楽
大間々昂

プロデューサー
中井芳彦
益田千愛

演出
岡本伸吾
山室大輔
大内舞子
多胡由章

制作著作
TBS