<ファーストペンギン!>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

奈緒主演、堤真一や鈴木伸之が脇を固める日テレ系列ドラマ「ファーストペンギン!」が、2022年10月5日より放送をスタート。

寂れた漁港を復興する”実話を元にした”オリジナルストーリーである本作。奈緒演じるシングルマザーの岩崎和佳(いわさき・のどか)は、職なし・宿なしのギリギリ状態で5歳の息子を連れ、とある港町に行き着く。堤真一演じる漁師かつ漁船団「さんし船団丸」の社長・片岡洋(かたおか・ひろし)と出会ったことで、和佳の生活に変化が訪れる。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・最終話ストーリー&レビュー

・「ファーストペンギン!」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー


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家なし、金なし、仕事なし――人生崖っぷちのシングルマザー・岩崎和佳(奈緒)は、5才の一人息子・進(石塚陸翔)を連れて、寂れた港町・汐ヶ崎に移り住んできたばかり。地元のホテルで仲居として働いていたある日、漁師の片岡洋(堤真一)と出会う。彼は、幼なじみの磯田高志(吹越満)と山中篤(梶原善)と共に立ち上げた漁船団「さんし船団丸」の社長。漁師たちの高齢化が進み、漁獲量も減りゆくばかりの港の窮状を憂い、かつての賑わいを取り戻したいと思っていた片岡だったが、これといった打開策も見いだせぬまま、ひそかに危機感を募らせていた。

そんな中、地元漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)の古希を祝う宴会の場で、仲居として働く和佳の姿を偶然見かけた片岡は、彼女の機転と働きぶりに感心し、「浜の立て直し」を頼み込む。アジとサバの違いもわからない和佳は、未知なる“漁業の世界”に飛び込むことに尻込みするが…。

片岡に連れて行かれた漁港で、「さんし船団丸」で働く若手漁師・永沢一希(鈴木伸之)がさばいた魚を振る舞われた和佳。すると、魚嫌いであるはずの進が、大喜びで食べている様にびっくり!自らも半信半疑で口にすると、あまりの魚の美味しさに感動し…!

こうして、半ば押し切られる形で、片岡の依頼を引き受けることになった和佳は、早速漁業について勉強を開始。東京にいる相談相手・琴平祐介(渡辺大知)からアドバイスを受けながら、魚の直販ビジネス「お魚ボックス」のアイデアを思いつき、片岡たちに提案。

しかし、和佳の話を聞いた一同は渋い顔…。どうやら和佳が掲げた「お魚ボックス」案は、既存の流通の“中間業者”にあたる漁協や仲買をすっ飛ばすこととなるらしく、彼らに喧嘩を売るも同然なのだという。片岡たちから「漁協に逆らうなんてありえない」と猛反対を受け、渋々引き下がろうとする和佳だったが、内心は納得しきれていない様子で…。

漁師たち自ら、全国のお客さんたちに新鮮な魚を直接届ける「お魚ボックス」の実現に向けて、孤軍奮闘し始めた和佳。漁業ド素人の彼女が、ジリ貧状態の港に嵐を巻き起こそうとしていた!

第1話のレビュー

「あんたなんかね、クソ野郎ですらないわ。ただのクソだよ、クソ!」

「なんの身動きも取れない、哀れなクソ!」

こんな奈緒、見たことない。それが、10月5日からスタートした新ドラマ「ファーストペンギン!」1話を見て出た率直な感想だった。

奈緒演じるシングルマザー・和佳と、5歳の息子・進(石塚陸翔)。2人は、とある理由から寂れた港町にやってきた。職なし・金なしの和佳は、とにかく食い扶持を確保するため、地元のホテルで仲居として働きながら副業の当ても探している。泊まり客の世話をしながらも営業に余念がない様は、行動力に満ち溢れている。

そんな彼女の姿をたまたま見かけ、自身の亡くなった妻・みやこ(中越典子)の面影と重ねるのは、漁船団「さんし船団丸」の社長・洋(堤真一)。シングルマザーであり子連れである、2つの共通点があるだけで「みやこの生まれ変わり!」と運命を感じちゃう性格は、なんとも可愛らしく映る。

余談だが、近年だと映画『砕け散るところを見せてあげる』(2021年)や『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(2021)などで演じた、少々アナーキーな役柄が目立っていた堤真一。このドラマでは、豪快な海の男を演じるTHE・堤真一が見られそうで、ちょっとホッとしている。

シングルマザー&子連れで仕事を切望している和佳、そして年々寂れ人が減っていくばかりの漁港を立て直したい洋。一悶着ありはしたものの、利害が一致した2人は港町の再生に乗り出す。

和佳が着想したアイデアは、「さんしのいきいきお魚ボックス」!

通常、漁師たちが獲った魚を売るためには、漁協を通す必要がある。いわば、この「仲介」をなくし、さんし船団丸が直接お客さんの元へ魚を届ければ、これまでの数倍の利益が得られることになる。和佳は、実にシンプルに考えた。

しかし、漁師たちと漁協の関係性は、そう簡単なものではなかったのである。

漁協の組合長である杉浦久光(梅沢富美男)が、何やらよそ者(=和佳)が良からぬことを企んでいると嗅ぎつけてきた。和佳が必死の思いで、最終的には農林水産省にまで出向き許可を得たにもかかわらず、その努力を無下にする。

「お前、こんなことしたら、何が起こるかわかっちょるやろな?」と洋に凄む様は、さすが梅沢富美男、迫力があった。

しかし、その迫力と勢いを上回って見せたのが、奈緒である。

漁協を怒らせてはならない、とギリギリのところで態度を変えた洋。ここまでは頼んでない、我々もいま知ったばかりで、とお上に媚を売る始末である。和佳は学生時代、同じように先陣を切って、クラスのために校則を変えるよう声を上げた経験があった。しかし、当時も味方についてくれる人間はいなかった。

「また、これか」と呟いたあとの、彼女の怒涛の勢い。ぜひ実際に味わってほしい。冒頭に挙げた暴言、罵詈雑言の嵐ではあるが、ひとつも間違ったことは言っていない。流れるように畳みかけ、有無を言わせぬ迫力に満ちた一幕は、このドラマに賭けるキャスト・スタッフの熱をそのまま表しているようにも見えた。

もう一度言おう。こんな奈緒、見たことない。

脚本家・森下佳子の手腕もあり、1話からググッと心を掴まれた。「漁港の再生物語」とキャッチーな言葉でくくってしまえばそれまでだが、きっとこれまでにない新しい要素や仕掛けが待っているはず。

最後に、和佳の頼もしすぎる以下のセリフで本レビューを閉じよう。

「つべこべ言わんと、ついてこい!」

※この記事は「ファーストペンギン!」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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威勢よく啖呵を切ったものの、漁協だけでなく、漁師たちまで敵に回してしまい、孤立する岩崎和佳(奈緒)。

それでもめげずに次の作戦を考え、漁師の片岡洋(堤真一)たちに、「お魚ボックス」の注文が取れたから魚を分けてほしいとお願いするのだが…。

片岡は、漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)と約束したからと、魚を1匹も譲ってくれない。
さらに杉浦の圧力は、和佳が勤めるホテルにまでおよび、和佳は仲居の仕事を辞めざるを得ない状況に。従業員寮も出て行かなければならなくなってしまう!

そんな和佳のもとへ、追い打ちをかけるように、農林水産省の溝口静(松本若菜)から、「お魚ボックス」事業の認定取り消しに向けた動きがある、と電話が入る。溝口曰く、申請書類に判をついた統括支店長――通称「統括さん」(伊沢弘)が、「和佳から脅迫され判をつかされた」と漁協に訴え出たらしい。

立て続けに襲いかかる苦難に心折れそうになるも、東京にいる琴平祐介(渡辺大知)に背中を押された和佳は、“ある秘策”を思い付く!

溝口に相談を持ちかけ、「『女』を使えないか?」という和佳だったが……果たしてその思いもよらぬ大胆な秘策とは!?

第2話のレビュー

波乱万丈、“逆風”満帆といっては月並みだが、本ドラマで起こる事件や和佳(奈緒)の行動力を見ていると、本当に実話を元にしているのだろうか……と疑いたくなってしまう。

それくらいに、心が折れても仕方のないようなことばかり発生するのだ。

片岡洋(堤真一)たち、さんし船団丸とともに、新事業「お魚ボックス」を始めようと奮起する和佳。しかし、漁協組合長・杉浦(梅沢富美男)の妨害により、事は上手く進まない。

漁協に刃向かえば、自分たちの食い扶持も危うくなる……と尻込みした漁師たちも、力になってはくれない。地域住民に煙たがられても、勤めるホテルを辞めさせられ、家から追い出されそうになっても、自らの生活が厳しくなっても、和佳は諦めない。

なぜ和佳は、自分に直接の関係はない漁師たちのために、ここまで時間と労力を使えるのだろうか?

そう問われた和佳は、力強く、こう答えた。

「もう、私自身が、やったほうがいいって思っちゃってるからです」

もはや他人事ではなく、自分事なのだ。学生時代、長いものに巻かれて自身の意見をねじ曲げた経験が、和佳の心にこびりついている。

ここで折れたら、自分の子どもに「そんな人になるな」って言えなくなる。半ば、意地もあったのかもしれないが、一本筋の通った美学の元に動く人は、こうも美しいし頼りになる。

お魚ボックスを始めれば儲けが見込める! と思ってもらえれば、洋たちの気も変わるかもしれない。そう企んだ和佳は、何十件も注文が入っているとウソをつき、琴平先生(渡辺大地)をはじめとする知り合いたちに「お試し」と称してプレゼントしていた。

漁港では厄介者になりつつある和佳だが、助けてくれる人が皆無なわけではない。状況を察した琴平先生は、わざわざ和佳と進に会いに来て、お魚ボックスの利点となるヒントをくれた。新鮮な魚が直送される=魚ギライの子どもも食べられるようになるかもしれない。琴平先生のおかげで、和佳は勝機を見出す。

仲買人の重森梨花(ファーストサマーウイカ)も、漁港の魚を譲ってもらえなくなった和佳に手を差し伸べてくれた。この一件から、和佳は「混獲魚」の存在を知る。

狙った魚ばかり都合よく獲れるのが漁ではない。アジやサバ漁で、タイやトビウオなど別の魚が混じることはよくある。そんな「混獲魚=まじりの魚」は、売るルートが確立されていないために、これまでは正規の流通ルートに乗せられなかった。

自分たちで食べるか、格安で仲買人に流すか、廃棄料を払って処分するか。3つの選択肢しかなかった混獲魚を、お魚ボックスで扱えるようになれば……。

どんどん光明を見出していく和佳は、極め付けに、政府が打ち出したとある動きに目を付ける。

男女共同参画社会、女性の活躍を推進する取り組みのひとつとして、和佳自身が認定事業の第一号者となるのだ。そうすれば、女性登用をアピールしたい大臣から、お魚ボックスのお墨付きをもらえるかもしれない。

狙い通り、和佳は大臣からの後押し&杉浦組合長からの許可を得ることに成功した!

約1時間に収まっているとは信じられない濃密さで、逆境をはねかえす様を見せてくれた和佳。1話の終盤にて、威勢よく啖呵を切っただけのことはある。彼女の行動力、粘り強さ、戦略の立て方は、「どうせドラマでしょ」と斜めに見ることを許さない。何せ、これは実話なのだから。

しかし、一難去ってまた一難、とはよく言ったもの。杉浦がこうも簡単に許可を出すはずがない、とは思っていたが。和佳にハニートラップの疑惑をかけ貶めようとした次は、なんと詐欺師の疑いをかけようとしている。

すっかり、奈緒演じる和佳のファンになっている筆者は、彼女がそんなことするはずない! と信じ切っているが……。さんし船団丸の通帳、そして暗証番号をゲットした彼女は、さっそくATMで大金を下ろす。

詐欺師のはずはない、だけど、もしかしたら……。そんな思いを少しでもチラつかせてしまうのは、ドラマ「あなたの番です」でサイコパスな尾野ちゃんを見事にやりきった、奈緒の表現力の賜物ゆえかもしれない。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー


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「お魚ボックス」の注文を増やすため、岩崎和佳(奈緒)は東京の飲食店に営業をしに行くことに。

息子の進(石塚陸翔)を昼は保育園、夜はママ友・山藤そよ(志田未来)に預けて、東京との往復を繰り返す多忙な日々を送っていたのだが…。その頃漁港では、漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)が吹聴した、和佳は詐欺師であるという噂が広まりつつあった。

そんな中、進は誕生日を迎える。この日も和佳は東京に出かけており、進は片岡洋(堤真一)たちと一緒に、船団の事務所で帰りを待つことに。しかし、和佳は約束の時間を過ぎても帰って来ず、片岡が何度電話をかけても繋がらない。

翌朝になっても連絡がつかない和佳のことを、漁師たちは「男と一緒なのでは?」と疑い始めるが、片岡だけは、「子供の誕生日に母親がそんなこと…」と和佳を信じようとする。しかし、そこに磯田高志(吹越満)が会社の出納記録を持って飛び込んでくる!片岡が和佳に預けていた船団の口座から、大金が引き出されていたことが発覚し……!?

第3話のレビュー

晴れて「お魚ボックス」の営業に打ち込めるようになった和佳(奈緒)。しかし、またもや漁協組合長(梅沢富美男)の策略により、あらぬ疑いをかけられる羽目に……。

いきなり東京からゆかりの無い港町にやってきたこと、普通の奥さんだった和佳が国の認定まで取れた理由、営業の経費だけで何十万も口座から出し入れしている現状。「彼女は新手のフィッシング詐欺師なのでは?」と吹き込まれるや否や、そうとしか見えなくなってしまう漁師たちの目、節穴なのかもしれない。

和佳が言っていたとおり、「普通の奥さんにこんなことできるわけがない」「裏に糸を引いてる男がいるに違いない」なんて、なかなか女をバカにしている。全員が全員そうだとは思いたくないけれど、男または女しかいない社会では、マイノリティ側の性別を大雑把にくくって下に見がちなのだろうか?

和佳が営業のために何十万も出し入れしていた理由は、東京までの交通費に加え、何件もの飲食店で味を確かめていたから。一度の往復に5万円もかかるとあれば、なるべく多くの店に行こうと考えるのは自然だ。寿司店、割烹、フレンチなどジャンルも多彩で、食費がかさむのも無理はない。

無理して食べては吐き戻し、また食べる……と無理した結果、身体を壊してしまった和佳。運悪く当日は息子・進の誕生日で、彼女は「誕生日の息子をほっぽって東京で遊び歩いていた女」と認定されてしまう。

あの……漁師さんたち……和佳は必死の思いで大臣にまで掛け合い、漁港復興のために新事業「お魚ボックス」を立ち上げた人なんですけど? いいかげん彼女を信じてあげてください……。

洋(堤真一)に「もうあんたと仕事はできん」と言い渡されてしまった和佳。進が聞き分けの良い子に育ったのは、あんたが適当な母親だからだ、と眉根を寄せるしかない偏見までぶつけられては、まさに堪忍袋の尾も切れるだろう。

「育児に専念するので、あとは皆さんでよろしくお願いします」そう言い残した和佳は、進を自転車に乗せ走り去ってしまう。

その直後、和佳が残していったノートを見た漁師たちは、愕然とする。お察しの流れだが、そこには和佳が営業してきた店の情報がみっちりと書かれていた。

ゆかりの無い漁港にここまでするのはなぜ? と疑っていた漁師たちだが、逆を言えば、ゆかりの無い漁港のためにここまで動いてくれる人は皆無に近いのである。ようやく和佳の大切さに気づいた漁師たちは、急いで彼女を呼び戻しに走る、走る!

筆者だったら、たとえ息子から「待ってあげて!」と頼まれても、そのまま無視して走り去るところだ。しかし、和佳は漁師たちの「社長になってくれんか」「わしらのボスは、あんたしかおらんけえ!」というラブコールを受け入れた。

ここで晴れて(?)さんし船団丸の新たな社長が爆誕したのである。

1話の時点から思っていたことだが、和佳の行動力が凄まじい。彼女のモデルとなった坪内知佳さん自身の根性も反映されているのだろう。次々とやってくる壁に負けじと立ち向かっていく様は、さまざまな女性の生きる姿を活写する、水曜ドラマのコンセプトに合っている。

和佳を見ていると勇気がもらえるのは、筆者だけではないはずだ。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー


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漁協からの嫌がらせにも負けず、ようやく岩崎和佳(奈緒)を中心にまとまり始めた、さんし船団丸の漁師たち。

「お魚ボックス」の注文も順調に増え始めたのだが、配送先の飲食店からは、「魚が痛んでいる」「注文が間違っている」などクレームが続出!苦情が来るたびに和佳が代品を送る羽目になり、注文が増えても大赤字!漁師たちへの追加報酬もほとんど支払えず、皆の士気は下がっていくばかり……。

そんな状況を見かねた片岡洋(堤真一)は、和佳に無断でクレーム対応を開始。
片岡が「悪いのは魚ではなく料理人の腕」とお客さんに言い返していることを知った和佳は激怒。片岡も苛立ちを募らせ、2人は大喧嘩に……!

頭を抱える和佳のもとに、東京のフレンチレストランのシェフ・流山(速水もこみち)から連絡が入る。流山と話をするうち、和佳は、漁師たちのやる気をアップさせるための“ある秘策”を思い付き……!?

第4話のレビュー

自分の仕事が何に役立ち、お客様のもとへどう届いているか。どんな仕事にも、想像力は必要だとよく言われる。筆者のような、取材や執筆を主な生業とする職業は、読み手がどう感じ取るかを想像しながら言葉を使わなければならないように。

新事業「お魚ボックス」を軌道に乗せるべく努力している和佳(奈緒)たちにも、同じことが言えるのかもしれない。日々、洋(堤真一)をはじめとする漁師たちは魚を獲り、それをお客へ届けるべくボックスづくりに励んでいる。

しかし、それを受け取る側の気持ちを、どこまで想像できているのだろうか?

さんし船団丸は、120万円もの赤字に苦しんでいた。送るボックスに不備があるせいで、お客からのクレームが絶えないのだ。代わりのボックスを送り直すことで経費がかさみ、膨れあがって120万円……。漁師たちへのプラスアルファの手当ても1000円しか捻出できない始末。

和佳は、大手スーパーやチェーン店にまとめて魚を卸す効率の良い売り方よりは、「これ!」と決めたお店に一尾ずつ売るやり方にロマンを求めていた。

さて、そのロマンをどうやって漁師たちに共有するか……?

その結果、漁師たちを全員、東京へ連れて行く道を選ぶ。

さんし船団丸の魚を卸しているフレンチ料理店へ赴き、実際に料理を食べてもらうのだ。自分たちが獲ってきた魚が、どんな風に店へ届き、どんな料理になってお客の口へ運ばれるのか。それを体感してもらうことで、より「お魚ボックス」の鮮度を保つにはどうすべきか? を自発的に考えてもらおうとしたのである。

結果、この方法は大成功! 魚の血抜きをしてから発送すれば、劇的に鮮度が保たれることもわかった。これまで以上に手間はかかるが、他ではやっていない方法を徹底することで、オンリーワンの魅力が生まれる。最強の「おさかなボックス」誕生となり、さんし船団丸のブランド力が上がるのである。

漁師のみんなに渡せるものはロマンしかない、と語る和佳、今回も熱かった。

「信じてほしい。絶対にみんなをそこに連れていくから。もう少しだけ、私についてきてほしい」

これまでも、和佳は失敗や苦境の乗り越えながら、さんし船団丸にとって最良と思える選択をしてきた。営業による経費はかさみ、漁師たちに満足な給料も出せていないかもしれない。それでも、こうと決めた彼女の瞬発力はすごい。

前回同様、「漁師さんたち、もう少し和佳のことを信じてあげてよ〜」と思わなくもない場面もあったが、実際にもこうやってぶつかり合いながら信頼関係を築いていったのだろう。実話を元にしている事実を忘れてしまいそうになるが、このドラマはどこまでもリアルなのだ。

なかなかやる気を見せてくれなかった若手漁師・たくみ(上村侑)の背景も明らかになった。地元や家族に感じる鬱陶しさ、東京への憧れと恐怖。それらはきっと、地方出身者にとっては“あるある”な感情である。

彼もともに東京へ赴き、自身の獲った魚がどんな風にお客のもとへ届いているかを知って、仕事への誇りを思い出せたのではないだろうか。このドラマでは、さまざまな“成長”が描かれている。

これからも、さんし船団丸は右往左往しながら結束力を高めていくのだろう。こうなってくると、心配なのは漁協の動きである。組合長(梅沢富美男)がまたもや不穏な企みをしているようだが……。頼むから、もう余計なことはしないでくれ! と和佳とように吠えたい気持ちでいっぱいだ。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー


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岩崎和佳(奈緒)が発案した、「お魚ボックス」の売上は好調。その将来性を見込んで、銀行が融資をしてくれることになった。設備も整い、漁師たちの報酬もアップ。さらに事務員として山藤そよ(志田未来)が加わったことで漁師たちのモチベーションは急上昇!活気に満ちた日々が訪れたのだが…。

ある日、和佳が「先生」と呼ぶ相談相手・琴平祐介(渡辺大知)が、「大事な話がある」と言って東京からはるばる和佳に会いにきた。

そんな二人の姿を、漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)が偶然目撃。杉浦は何かを思いついた様子で、不敵な笑みを浮かべ…!?

一方、和佳が「先生」と会っていると知った片岡洋(堤真一)は、どんな男なのかとモヤモヤ…。そんな中、杉浦から片岡に連絡が入り、謎に包まれた「先生」の正体が明らかに!

杉浦の話を聞いた片岡は、「わしゃもうボックスなんかやらんけぇの!」と事務所を飛び出してしまい…!?

第5話のレビュー

ずっと謎だった、琴平先生(渡辺大知)の正体が発覚!

なんと彼は洋(堤真一)の義理の息子だったのだ。つまり、亡くなった妻・みやこ(中越典子)の連れ子が、琴平祐介だったのである。

みやこが急死してしまったのは、琴平先生が高校生の頃。ちゃんと病院に通っていれば助かった命、と医者に言われたことで、とっさに洋に対して「母を殺したのはアンタじゃないのか」などと言ってしまう。

洋も洋で、琴平先生が医学部に通うための学費援助を、みやこの実家に頼んだことが気に障っていた。これを機に二人は仲違いしたままだったのである。

琴平先生がやけに和佳(奈緒)を気にかけていたのは、彼女の活動を通して故郷の助けになりたかったから。再会した洋と琴平先生は、一度は再決裂してしまったものの、周囲の後押しもあり無事に仲直りをする。

しかし、一難去るとまた一難やってくるのが、この港町の不思議なところだ。

ゆくゆくは故郷に戻って医者を続けたい、と告げた琴平先生。場の流れから、周りは和佳と琴平先生を煽り出す。「さっさと結婚しろ!」とでも言いたげな、あからさまなノリに、辟易した視聴者も多いのではないだろうか。

このタイミングで、琴平先生が同性愛者であることが判明。和佳との結婚を拒んだ理由は、シンプルに恋愛対象ではなかったからだ。

この事実に対する反応も、実に視野の狭い田舎っぽさが滲み出ていた。

「男が好きって、男なのにか?」

「治らないのか?」

「東京でかぶれたのか?」

「女にこっぴどく騙されたからじゃ?」

この令和の時代に何を……と反射的に思ってしまう。けれど、毎日、似通った人間としか顔を合わせない環境であれば、こびりついた価値観や無意識な偏見をアップデートするのは、難しいのかもしれない。

この微妙すぎる感覚を、あけっぴろげに織り込む森下脚本の妙に、うなってしまう。

東京ならいざ知らず、田舎町で生きていくのはつらいだろう。洋自身もそう思ったのか、ふたたび突き放すような物言いをしてしまう。

和佳の後押しもあり、洋と琴平先生の“親子の縁”はなんとか切れずに済みそうだが……。ここで、またもや一難が。

なんと、永沢くん(鈴木伸之)からまさかの退職宣言!

その理由が「子どもができたらしいんで」……?

らしい、と仮定形なのがまず気になるし、本当に子どもができたのなら、むしろ会社を辞めるのは悪手だろう。十中八九、悪い女に騙されてるパターンに違いない。素直で隠し事が下手な永沢くんらしい言動である。

内輪のゴタゴタが、お魚ボックスの売れ行きに影響しないことを、祈るばかり。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー


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永沢一希(鈴木伸之)から突然、「子どもができたから会社を辞める」と告げられた岩崎和佳(奈緒)は、遠距離恋愛中の永沢の彼女・白峰アイナ(足立梨花)に会いに行き、事情を探ろうとする。しかしアイナは、「ずっと一希に漁師をやめてほしかった」と和佳の説得もことごとく笑顔でかわし…。

頭を悩ませる和佳のもとに、テレビ局のディレクターから、「『お魚ボックス』の将来性を見込んで取材をさせてほしい」と連絡が入る。テレビで「将来有望なビジネス」だと取り上げられれば、アイナの気持ちも変わるのではないかと思い立った和佳は、片岡洋(堤真一)たちに事情を説明。永沢に残ってもらうためなら、と皆で盛り上がっていたのだが…。

さんし船団丸の面々がテレビに出るという噂が浜全体に広がると、漁協だけでなく、妬みを募らせた浜尻公平(高杉亘)ら他の船団の漁師たちの不平不満が爆発。「さんしは出ていけ」と喧嘩をふっかけられ、大乱闘に発展!

嫌がらせも日増しにエスカレートし、“村八分”状態にまで追い込まれる中、和佳は片岡の一言をきっかけに、ある“逆襲の一手”を思い付き…!?

第6話のレビュー

なんと永沢くん(鈴木伸之)が父親になるという。

実は、白峰アイナちゃん(足立梨花)という彼女がおり、これまで別れては戻り別れては戻り……を繰り返していたのだとか。

「子供ができるから、さんし船団丸を辞める」の理屈は通っていないように思えたが、アイナはずっと「一希には漁師を辞めてほしかった」らしい。

アイナ祖父の遺産があるから、しばらくは経済的にも困らないという。身体に負担のかかる漁師業ではなく、別の仕事をゆっくり探してほしい……といったアイナの言い分は、表面的には永沢のことを慮っているようにも聞こえるが……

シンプルに考えて、誇りを持って漁師の仕事をしている恋人のことを、少しも理解しようとしない姿勢は危険じゃないだろうか。大切なものを手放して自分を選んでくれる、その行為にしか愛情を見出せないなんて、典型的な「地雷女」ってやつでは?

もはや「妊娠した」もウソにしか思えてなくなってくる。

永沢、本当に、その彼女でいいのか……?

そんな心配はどこ吹く風、さんし船団丸にはテレビ番組出演のチャンスが舞い込んできた。より広く、お魚ボックスの魅力を知ってもらうためには、全国ネットに乗せるのが手っ取り早い。

最初は乗り気だった和佳(奈緒)たちだが……。漁協や、ほかの漁師たちは黙っちゃいない。まるで、さんし船団丸が欲のために暴走していると決めつけているかのように、想像を超える嫌がらせを仕掛けてくる。

飲食店への入店拒否、廃棄物の受け取り拒否、誹謗中傷の落書き、仲間はずれなどなど……わかりやすい村八分だ。

誹謗中傷の落書きだけは、通報すれば一発では? と思わなくもなかったけれど。このあたりも実話を元にしているのだとしたら、具体的にどこまでが実際にあったことなのかを知りたくなってしまう。

耐えかねた和佳、洋(堤真一)たちは、何度もテレビ番組出演を断念しようとするが、途中で方針を変える。嫌がらせの証拠を集め、番組を使って告発すると決意したのだ。

しかし、それは和佳の作戦だった。

穏便に嫌がらせを止めさせるため、あくまで告発すると脅してみせただけだったのだ。

企みは驚くほど上手くいき、お魚ボックスの認知度も上がった。いろいろと騒動が起こったが、総体的には丸くおさまったと言える。

たったひとつ、永沢くんが、さんし船団丸を辞めてしまった事実以外は……。

正直言って、この展開は予想外だった。あれだけ「社長に出会えてよかった」と泣いていたのに。永沢くんらしいケジメの付け方とも言えるが……。アッと驚かせてくる展開は、やはり森下佳子脚本だ、と痛感せざるを得ない。

最終回で「やっぱり妊娠はウソでした!」と永沢くんが漁港に帰還するエピソード、求む。

※この記事は「ファーストペンギン!」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー


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テレビ出演のおかげで、「お魚ボックス」の売り上げは絶好調!人手が不足してきたため、岩崎和佳(奈緒)は人員募集をすることに。その頃漁協では、組合長・杉浦久光(梅沢富美男)のもとへ、地元の有力者・辰海一郎太(泉谷しげる)がやって来て、「さんしを潰すには『針』を仕込めば良いのだ」と不敵な笑みを浮かべ…!?

しばらくして、さんし船団丸には3名の新人が加入。どうやらその中の1人が、辰海の差し金で紛れ込んだ「針」らしいのだが、何も知らない漁師たちは、浜に若者が来てくれたことを喜び、歓迎ムードに。

多忙な和佳に代わって、片岡洋(堤真一)が自ら教育係に名乗り出るも、世間知らずで空気を読まない大卒の新人・小森賢太郎(北川尚弥)の振る舞いに、皆のストレスはたまっていくばかり。

船団の空気がどんどん険悪になる中、命にかかわる大きな事件が…!?

第7話のレビュー

農林水産省・溝口(松本若菜)からの打診により、6次産業化推進のため動くことを決めた和佳(奈緒)。ほかの漁師たちが、さんし船団丸の後を追うためには、漁協の意識から変えていく必要がある。地道な講演活動が、日本の漁業を変えていくかもしれない。

タイミングを同じくして、さんし船団丸には3人の新人が!

忙しくなった和佳の代わりに、洋(堤真一)が教育役を買って出るが……。3人のなかでも厄介なのが、大卒で論理的な物言いをする小森くん(北川尚弥)である。

漁に出た時間が長引けば「労働基準法に違反するのでは?」、そよそよ(志田未来)特製のジュースをすべて飲んでしまったことを責められたら「ご自由に、と書いてあるのが悪いのでは?」……。

洋の言うように、小森くんの言うことは所々正論でもある。だからこそ、一方的に悪いと決めつけ、叱ることもできない。洋のそんな中立的な(ある意味、どっちつかずな)態度に、ふつふつと不満が高まる漁師たち。

そして、ヒヤッと背筋が冷える事故が起きてしまう。

漁に出る際、大きな網には大量の魚がかかる。網が出ていない側から「抑え船」で引いていないと、船は転覆してしまう。

なんと、その抑え船のロープが切れてしまい、あわや転覆事故の大惨事になるところだった。

小森くんに疑いを抱いた篤(梶原善)は、「お前がやったんじゃないんか!?」と責め立てる。この時点で漁師たちは気づいていないが、実は新人3人のうち、1人は漁協側から送られた「工作員」なのだ。

お魚ボックスの好調な売れ行きに、まさに波に乗るさんし船団丸に対し、これ以上調子に乗らないよう灸を据えるつもりで仕組まれた事故。

すんでのところで漁師たちの命は守られたが、最後の最後まで中立な態度を崩さない洋に対し、篤は激怒。不満を募らせていたほかの漁師たちも追随する形で、みんな出ていってしまった。

残ったのは、洋、和佳、そして小森くん。

こうなってくると、なぜ小森くんが後に残ったのか不思議に思えてくるが……。次回から、少数精鋭となったさんし船団丸の復活劇が始まるのだろう。

いつもの「ファーストペンギン!」では、たとえ仲間同士や外部とのすれ違いがあっても、自分の頭で考え言葉にした思いは必ず相手に伝わり、最後には和解できていた。

今回は、本心をなかなか言葉にできないもどかしさと、それにより決裂する絆のもろさを感じる、やるせない回になってしまったと言える。

せめてもの救いは、永沢くん(鈴木伸之)が着実に“良いパパ”の道を歩んでいるのがわかったことである。しかし、まだ彼女の妊娠が確信できる証拠はない。妊娠が嘘だった可能性は、まだ捨て切れない。

※この記事は「ファーストペンギン!」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー


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船の転覆事故をきっかけに漁師たちが去って行き、片岡洋(堤真一)と小森賢太郎(北川尚弥)ら数人だけが残されたさんし船団丸。岩崎和佳(奈緒)は皆を呼び戻しに行こうと提案するが、片岡は断固拒否。さらに片岡は、和佳が講演を行う水産フェアの会場で、新たに経験のある漁師を募集すればいい、と言い出す。

こうして和佳は、全国から漁師たちが集う水産フェアの会場に、片岡も一緒に連れて行くことに。

講演会終了後、和佳と片岡は、元官僚のビジネスコーディネーター・波佐間成志(小西遼生)を紹介される。

見るからにやり手な波佐間から、「さんしと一緒にビジネスをしたい」と言われた和佳は目を輝かせるが、片岡はそんな2人の姿にモヤモヤし、帰り道に大喧嘩に!東京に置き去りにされる形となった片岡は、帰る手立てを失い、一人迷子になるが…。

一方、汐ヶ崎に戻った和佳のもとに、銀行から「融資を切り上げたい」と唐突に連絡が入る!突如として“倒産危機”に直面した和佳に、挽回のチャンスは訪れるのか…!?

第8話のレビュー

日本の水産業を立て直すため、水産フェアで講演をすることに決めた和佳(奈緒)。農林水産省・溝口(松本若菜)の後押しもあり、聴講していた漁師たちの反応も上々。

前回、漁協側が送り込んできた“工作員”のせいで、バラバラになってしまったさんし船団丸をなんとかするためにも、新しい漁師を勧誘するチラシをまく洋(堤真一)。和佳の講演のおかげで、お魚ボックスに興味を持ってくれる漁師はいるものの……わざわざ、さんしに来てくれる経験者はいない。

目の前の現実をなんとかしたい洋と、日本水産業の未来も見据えている和佳。視点が短期・長期に分かれているだけで、目指すゴールは同じなはずなのだが……。ちょっとした言い争いが原因で、洋は東京に置き去りになってしまう。

講演の場で出会った、ビジネスコーディネーターを名乗る波佐間(小西遼生)の存在も、洋のモヤモヤに拍車をかけていた。和佳は特段、彼に特別な好意を寄せているようには見えないのだが、洋にはそうは見えなかったのだろう。

果たして、洋が和佳に抱いているのは、恋心なのか?

洋、東京へ置き去り事件が勃発しているなか、さんしでは新事実が発覚。そもそも、この事態の発端となった“ロープを切った真犯人”は、小森(北川尚弥)ではなく逢坂(矢崎広)である可能性が浮上したのだ。

逢坂と、ぬいぐるみを介したやりとりを思い返した山藤そよ(志田未来)。調べてみたら、履歴書も免許証も偽造だった。携帯はプリペイド式で連絡がつかない。決定的な証拠はないものの、逢坂が漁協側による工作員だったと見て、間違いはなさそうである。

それにしても、事務も接客もできて、漁師たちの健康管理やカウンセリングのようなことまで対応し、おまけに推理力もあるとは……。そよそよ、恐るべしである。

こんな、てんやわんやな状況で、「貸し剥がし」と呼ばれる最後の手段に出た漁協。彼らもまた、さらに大きな圧力に脅されている立場ではある。しかし、今日〜明日で2億近い借り入れを耳揃えて返せというのは、さすがに……。

しかし、これまでも「なんとかするから!」と宣言し、実際になんとかしてきた和佳。講演で知り合った波左間の紹介で、支援してくれる会社と繋がることができ、窮地を脱した。

東京に置き去りにされていた洋も、無事に帰ってこられて、一件落着……と思いきや。

「さんしの救世主じゃ!」と波左間が崇められている現場に遭遇してしまった洋、またもやヘソを曲げて踵を返してしまう。

いいかげん帰ってきてよ……と皆が思っている最中、なんと、帰ってきたのは永沢(鈴木伸之)だった。

立派なイクメンに成長しつつあった永沢だが、奥さんを引き連れてきた様子は見受けられなかった。まさか、ここにきて本当に、彼女の妊娠はウソだったのだろうか。

日本の水産業をなんとかする以前に、個人の私的なアレコレで潰れてしまうのではないか……と心配しているのは、筆者だけではないはず。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー

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永沢一希(鈴木伸之)が戻って来たことに、岩崎和佳(奈緒)とさんし船団丸の漁師たちは驚きながらも大喜び!

その頃東京では、片岡洋(堤真一)が「もうワシの居場所はあそこにはない」と、息子・琴平祐介(渡辺大知)がパートナー・楽(大貫勇輔)と暮らすマンションに居座っていた。

片岡がいない間も、お魚ボックスの注文は殺到しており、漁師たちはなんとか片岡の穴を埋めようと大忙し。

そこに波佐間成志(小西遼生)が現れ、「お魚ボックス」用の血抜き作業を手伝ってくれることに。パーフェクトに仕事をこなしていく波佐間は、片岡の代わりをいとも容易く務めて、皆の信頼を得ていく。

そんな中、波佐間は和佳に「浜の船団を一つの会社にまとめませんか?」と大胆な提案を持ちかける。

こうして片岡不在の中、波佐間と手を結んだ和佳は、浜尻公平(高杉亘)ら他の船団の漁師たちも巻き込み、「浜の一企業化」実現に向けて動き出すが…!?

一方、急接近する和佳と波佐間の様子に、モヤモヤを募らせた永沢は、片岡を連れ戻すべく、“ある行動”を起こし…!?

第9話のレビュー

波佐間(小西遼生)が、さんしのニューリーダー的扱いを受けている。洋(堤真一)は「居場所がなくなった」と拗ねて家出を続行、和佳(奈緒)に知識で言いくるめられると何も返せず、過去の「長いものに巻かれていた自分」に戻りつつあり……。

お魚ボックス事業は引き続き好調、さんしを筆頭に「浜をひとつの会社にする」動きも軌道に乗り始め、すべてが順調に進みつつあった。

この大きな流れのなかで、永沢(鈴木伸之)が浜に戻ってきた理由が、いまいち掴めなかった。

いや、彼は生まれてくる子の実の父親ではないことが判明し、実質、あのワガママ彼女にフラれた形となったのである。本人も「いつ戻ってきてもいいと言ってくれたから」と言っていたように、浜に戻ってくるもっともな理由は、確かにあるのだ。

しかし、このドラマにおいて「一度出ていった永沢くんが戻ってくる」展開の必要性が、ギリギリまでわからなかったのである。脚本上、なくても影響がなかったのでは……?

その理由は、終盤になって明らかになる。

すっかり拗ねきってしまった洋。連れ戻しにきた漁師仲間から、ニューリーダー・波佐間の活躍を聞かされたことで、さらに帰る気をなくす。正直、洋がいなくても浜はまわるほど、波左間の有能っぷりはすごい。

しかし、永沢がそれを許さなかった。

確かに、頭がよく弁も立ち、漁師たちをまとめる人身掌握にも長けていて、漁師の経験もある波佐間はこれ以上ない人材だ。資金を調達してくれた意味でも、さんしの救世主と言えるだろう。

ところがどっこい。永沢が視聴者の心を代弁してくれた。「なんか好きになれない」! そう、なんか好きになれないのである。

洋がいなければ浜は浜じゃなくなる、洋がいてこそのさんし船団丸だ。そう強く主張する永沢は、珍しく熱かった。一度離れ、再び戻ってきたからこそ、慣れ親しんだ者への親愛が強まることはある。

永沢のプレゼンに心打たれた洋は、ようやく浜に戻ることを決意してくれた。永沢出戻り事件は、洋を浜に戻すきっかけとして入れられた展開だったと解釈できる。

ところが、洋が無事に帰ってきて、ちゃんちゃん……とはいかない。

波佐間が紹介してくれた会社「神饌オーガニクス」は、ほとんどの株主が海外の会社もしくは人間だったことが判明。

決して違法ではないのだが、この会社の先導で浜を一社化してしまったら、海の資産的にも、経済的にも、防衛的にも、日本側の不利になり得るという。

溝口(松本若菜)の言葉を借りるなら、「極めて意図的な脱法行為」なのだ。

次回、最終回。和佳と洋は、無事にさんし船団丸を取り返し、互いの夢を叶えることができるのか?

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–{最終話ストーリー&レビュー}–

最終話ストーリー&レビュー

最終話のストーリー


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岩崎和佳(奈緒)は、浜全体を外国資本に売り渡してしまったと片岡洋(堤真一)に報告。

この話をなかったことにするには、浜の全船団が、波佐間成志(小西遼生)の仲介で締結した神饌オーガニクスとの契約を破棄しなければならないのだという。

そこで片岡は、磯田高志(吹越満)と山中篤(梶原善)らを率いて船を出し、他の船団の面々も契約を白紙に戻すよう、説得のために動き出す!

さらに和佳は、これまでさんしと敵対関係にあった漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)に“ある協力”を依頼し…!?

一方汐ヶ崎に現れた波佐間は、浜尻公平(高杉亘)たちを丸め込み、さんし以外の船団で“浜の一企業化”を進めようと画策。

絶体絶命の危機に追いやられた和佳が、最後に下した決断とは…!?

最終話のレビュー

波佐間(小西遼生)の計らいにより、神撰オーガニクスから資金援助を受け、なんとかピンチから乗り切った……かのように思えたが。蓋を開ければ外国資本だった神撰。このままだと、形として「浜を外国に売り渡す」ことになってしまう……。

なんとか神撰との契約が無効になるよう動く和佳(奈緒)だが、事態は絶体絶命。そんな、ギリギリの細い糸で繋がった状態から救ってくれたのは、皮肉にも、さんしを潰そうとしていた政治家・辰海(泉谷しげる)だった。

辰海側から見ると、確かに神撰はさんしの味方に見える。「さんしとの取引を中止しないと、さもなくば……」と古風な脅しを入れたのだ。さんしを陥れようとした辰海が、結果的に彼らを救ってくれた。

しかし、もちろんそれでチャンチャン! とはいかない。

辰海はとにかく、平穏な浜に危険分子を引き込んだ新参者=和佳が気に入らないのである。せっかく軌道に乗ったお魚ボックスを諦めない限り、今後も同じようなことが続くだろう。

何せ、工作員を仕込んで船ごと転覆させようとした人間だ。命を軽く扱う人間を敵に回しても、良いことは何もない。さんしの未来を見据えたからこそ、和佳は交換条件を出すことにしたのだ。

お魚ボックスを残す代わりに、自分が浜を去る、と。

その事実を、和佳自身の口から漁師全員に伝えたシーンが、なんとも感動的だった。

「社長を浜に残すためにお魚ボックスはやめる」と言い出した洋(堤真一)と、「お魚ボックスがもっと広まった、すごい世界が見たい」と主張する和佳。

心の奥底から出る本音を、それぞれの言葉で伝え合う。どちらも顔を涙で濡らして、全身全霊で思いの丈をぶつけているのがわかる。和佳の啖呵を聞けるのも、これで最後なのだと思うと、寂しい。

和佳の思いは、洋に、そして漁師全員に伝わった。

時は経ち、お魚ボックスの販路はどんどん増え続けている。高知にまで出張し、ノウハウを伝える洋。営業の腕を上げる若い衆。永沢(鈴木伸之)は、離婚して浜にやってきた彼女と結婚してパパになった。少しだけ予想していた展開だったけれど、さすがに驚いた。

和佳の息子、すっくんは成長し、高校生に。漁業に興味があるようだ。当の和佳といえば、「海を作るのは山から」と思いを新たにし、林業に手を出したのだという。

そこでも、屈強な野郎どもに囲まれながら、「素人が!」と乱暴に扱われているのだろう。そしてお得意の「黙ってついてこい!」と啖呵を切る。

このまま最終回なのは寂しいので、ぜひオリジナルストーリーで「ファーストペンギン!〜林業編〜」をやってほしい。そう願うのは、筆者だけだろうか。

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–{「ファーストペンギン!」作品情報}–

「ファーストペンギン!」作品情報

出演
奈緒
鈴木伸之
渡辺大知
松本若菜
ファーストサマーウイカ
遠山俊也
志田未来
中越典子
梶原 善
吹越 満
梅沢富美男
堤 真一

脚本
森下佳子

演出
内田秀実
小川通仁
今和紀

プロデューサー
森雅弘
森有紗
阿利極(AX-ON)

企画プロデューサー
武澤忠

チーフプロデューサー
三上絵里子

制作協力
AX-ON

制作著作
日本テレビ